第1081回「コレは俺に対する挑戦状だな!?」
2011/09/23

「今日さー」
「下らない事だったらぶっとばすわよ」
「い、いやそう言われると自信が……」
「まぁ聞こうじゃないか。中尉の処遇は、そのあと考える」
「お前が言うとなんだかアレだなぁこえぇなぁ
「私はナチじゃないぞ」
「冗談だ。で、話の続きだけど、今日の品出し中に起こった出来事だ」
「……お忘れの方もいらっしゃるかも知れませんが……マスターは某大型スーパーで、青果を担当しています」
「ん。で、その品出し、青梗菜(チンゲンサイ)を出していた時だ。一つ、二つ、と、まぁ実際には幾つか同時に持って、バッバッバッと痛みチェックして出すんだが、そうやって出して行ったとき、青梗菜に何やら黒くてでかい物体がくっついてる!」
「黒くてでかい物体?」
「何かしらね」
「うん、俺は咄嗟に思った。なんかでっかい生き物では?と」
「なんでそうなるのよ」
「お前、野菜は何処で作られるよ? 基本的に土の上だ。特に葉物は地面に近く、そして葉があるが故に虫が隠れやすい……ぶっちゃけ自然物だから虫の一匹や二匹はくっついてんの。勿論見つけ次第排除するし、あまりにも食われてたら廃棄だけど。ナスとかすげぇぜ? 芋虫が突撃してるんだ穴掘って。俺はコレを突撃穴と呼んでいる。
ナスの突撃穴チェックポイントは、ヘタ周辺、茎の切り口、そして側面だ。ぶっちゃけ全周囲だが、見落としやすいのは茎の切り口な。小さい芋虫が突撃してる時がある、そんな時は周辺にこまか〜い糞があるから、よく見れば分かるぞ。
あと腐れポイントはやはり全周囲だが、見落としがちなのはヘタの部分、そして茎だ。柔らかくなってたら腐ってんぞ、そしてこの辺は小さい芋虫の突撃ポイントでもある。
突撃穴がないからと油断してはいけない、食い進んだ跡もあるんだ。俺はコレを食い跡(くいせき)と呼んでる。なんか表面が細くウネウネ削られてるなーってのがあったらそいつは芋虫が食った跡だ。細かいところでは、収穫前の成長段階で食われたか、それとも出荷後に食われたかまで判断できるが、これはま、口だけでは表現しきれないかな」
「なんの話してんのよ」
「おっといけねぇ」
「すっかり八百屋になっているな戦友」
「知識も経験もまだまだだがな。ってこのままのわけにも行かないんだけどね、まぁ話を戻そう。で、その青梗菜の黒い物体なんだが、なんかでっかい生物かと慎重に袋を取り出したんだ!」
「うん、それで」
「黒い手袋だった」
「はぁ?」
「ゴム手袋だった」
「なんだそれは」
「いやほんと、青梗菜を包むように入ってやがったの! 黒いゴム手袋が!」
「あんた嘘ついてるとぶっ飛ばすわよ」
「いーやいやいやいやいやマジだって! 信じられないかも知れないが、キャベツの箱に包丁が入ってたことだってあったんだぜ?」
「ははは、冗談を言う」
「いやマジなの。キャベツを出してたら、なんか金属の光沢が──包丁だこれぇぇぇぇぇぇ!!ってな。俺の例以前にもそういうことはあったそうだが、これは収穫の際に使っている包丁を、うっかり箱の中に同梱しちゃうって例。まぁヒューマンエラーなんて、なんでそうなるの!?って事がよくある訳だよ」
「手、怪我しなかったの?」
「大丈夫だった。で、話を黒いゴム手袋に戻すけどな」
包丁のほうが印象深いから、もういいんじゃないかな戦友」
「だめぇぇぇ最後まで聞いて!!」
「はいはい面倒くさいわね」
「そのゴム手袋、左手のだったんだ。つまり……これは俺に対する決闘の申し込みなんだよ!!!!!!!」
「なんでそうなるのよ」
「手袋を相手に投げつける行為は、決闘の申し込みだ。それを拾うと受諾となる」
「へぇ、そうなの」
「左手の手袋を投げつける、ということだが、多くの人は右利きだった為、多くは左手の手袋が投げられたのよ」
「そう、そして俺はそれを拾った……つまり、決闘だ!」
「誰とよ」
「生産者とだ!」
「分かるのかな?」
「農協に問い合わせればいい」
「ふーん、じゃあ行きなさいよ、今すぐ
「え?」
「え?じゃないわよ、さっさと行きなさいよ」
「い、いや……だってほら、意気揚々と行ったらさ、なんか超ムキムキの兄ちゃんが出てきたらどうするよ? 埋められるよ、畑に。肥やしにされるよ絶対
「なんだ怖気づいたのか」
「勘違いするな、君子危うきに近付かずだ!」
「へぇ〜(じとー」
「なんだその目は」
「それで、その手袋は?」
「そっとゴミ箱に捨てておいた」
「使わないの?」
「つかわねぇぇぇよぉぉぉ!」

カタリーナ(Su-37jk)
強気で気さくでお気楽。それでいて世話好き・世話焼きときている娘。
イズベルガ(M-262 A-1b)
軍人気質で結構厳しい。教育してやる!
アリス(Su-37jk)
無口で無表情だが、まったく喋らない訳ではない。
秋元 健太(無気力星人)
アリスのマスター、趣味と萌えに生きる無気力星人。





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