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「なぁ、そっちの世界に対潜巡洋艦知世（ちせ）っているだろ？」 |
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「いるよ。知世級対潜巡洋艦、EEZ（排他的経済水域）内に於ける対潜哨戒ヘリの運用を主眼としながらも、外洋艦隊行動も考慮し、防空能力を強化した巡洋艦。JH-24M
フィッシャー対潜哨戒ヘリを8機搭載・運用、主砲は70口径21cm3連装砲。対空炸裂弾により、その主砲は防空能力を遺憾なく発揮できるよ。ま、巡洋艦としては並だけど、その船体容積の多くを対潜哨戒ヘリ運用と電子戦に割いてるから、電子戦能力は強力だよ」 |
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「どっちかって言うと、空母機動部隊を組んだ場合は、後方で空母を守る役目だな」 |
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「そそ。雷神作戦でも、空母群とともに後方待機してたよ。そういう時に対潜攻撃母艦（ヘリ空母）だとちょっとお荷物になっちゃうから、大幅な対潜哨戒ヘリ運用能力を維持しつつも、護衛として機能するようにってのがこの知世級ネ。2隻がペアになって、対潜攻撃母艦と同等のヘリ運用能力を得るよ」 |
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「で、その知世なんだけど」 |
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「うん」 |
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「なんでともよって読まないんだ？」 |
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「それにはふかーいワケがあるのよ」 |
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「へぇ、どんな？」 |
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「話はさかのぼって、知世＝CCX/1の進水が成される2050年……日本海軍議会ではある事でもめていました」 |
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「ふむ」 |
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「建造中の対潜巡洋艦の名前をどうするかでもめてましたぁ！」 |
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「そんなんでもめるなよ！！」 |
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「いやいや、日本海軍艦艇には空母（花の名前）と戦艦（地名・旧国名）以外には定まった基準がないからネ、もめるのよ。艦級ごとにはついたりもするけど、それは一番艦の名前が決まったらの話。艦種ごとの基準ないからあーでもないこーでもないって、いろいろつけたがるの」 |
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「はぁ、そんなもんか？」 |
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「そんなもんです。で、
『旧海上自衛隊のDDHから踏襲するべきだ』派とか、
『潜水艦を木っ端微塵にしそうな名前にするべきだ』派とか、
『なんでもいいから俺に考えさせろ』派とかいろいろ居たのネ」 |
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「『潜水艦を木っ端微塵にしそうな名前』ってなんだよ」 |
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「さぁ？」 |
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「さぁって、お前なぁ……」 |
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「んで、喧々囂々（けんけんごうごう）やってたら、なんかもうすぐ進水式です！とか言われちゃって、どーすんのよってみんな頭を抱えちゃったの」 |
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「なぁー、外機の日本海軍って頭のネジどっか緩んでないか？」 |
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「んー、上層部には変人が多いとは聞くけどネ。議会に出席できる人間も、階級は様々で、いろんな脈から来てんのよ。実力主義だからネ」 |
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「変人が好き勝手やったら変なモンばっかりになるじゃないか！」 |
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「いやいや、海軍議会って言ったって、国会（日本国議会）の権限にはかないませんて」 |
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「ああ、そりゃそうだ。そういう仕組みになっているならな」 |
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「国会の予算委員会が駄目って言ったら駄目だもん。そこをなんとかして予算出させるのがウデってもんだけどサ。ま、その為の悪知恵会議とかするところみたいな？」 |
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「なんかそう言うとアレだな」 |
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「まーネ。んで、そんな事やってると時間がないので、橋元中将がこう提案するの。
『皆さんそれぞれに、マイナスなイメージを連想させる漢字以外から二文字ずつ選んでいただいて、その中から二文字、ランダムで選んでみては？』
とネ。で、時間もなかったし、一番公平な方法だとして異議はなく、この件は橋元中将に一任されたの」 |
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「マイナスなイメージって言うとあれか、人名用漢字からも削除されるようなやつとか」 |
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「まーそういうとこ。で、橋元中将はTSシステム軍団に、『乱数を使った公平なくじ引きプログラムを作ってくれ』と依頼したんだけど、TSシステム軍団は『プログラムでは体感的に公平性に欠ける』って言って、なんか基地祭で使ってるでっかいビンゴマシーン（透明）と、人数分×2のビニールボールを持ってきたの」 |
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「おいまさか……」 |
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「うん、そのまさか。次の議会で橋元中将は、みんなにビニールボールを二つずつ配って、漢字を一文字ずつ書かせたの。んで、ビンゴマシーンに投入する順番は、テキトーに並ばせて、一回で二個投入してもよし、もう一回並んでもう一個ずつ投入するもよしとして、全員投入が終わったらビンゴマシーン大回転！ シャッフルが終わって、いよいよ一個目……」 |
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「…………」 |
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「…………『知』…………二個目…………『世』」 |
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「冗談だろ？」 |
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「マジです」 |
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「ていうか絶対アホだろ！」 |
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「いえいえそんな事ありません♪ んで、見た目は悪くないのでこれで決定となったんだけど、読みはどうするかって話になって、『トモヨじゃ一般的にはもろに人名だよなぁー』となったので、じゃあ音読みで『ちせ』、訓読みで『しよ』のどっちかにしようってなったの」 |
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「ふーん、それで音読みを選んだわけだ」 |
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「音感がいいからとかなんとか」 |
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「まぁ音感は重要だけど」 |
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「因みに意味は、『世を知る』『知恵を以って世を成す』とかそんな感じのをでっち上げ」 |
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「それでいいのか外機・日本海軍」 |
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「いいんです♪ 実際の話、世の中には二つの船体案の内どっちにするか決めかねて、コイントスで決めちゃったアーレイバーク級って艦艇もあるしネ」 |
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「ああ、そんな話もあったなぁ」 |
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