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「今日さぁ〜」 |
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「うん」 |
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「ジュリア(ゴキブリのコードネーム)が出たんだよ」 |
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「ああー、時期的にわんさか出てくる頃だネ」 |
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「そうそう、かなり多くなるよな」 |
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「で、どうしましたの?」 |
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「うん、そいつ嫌な位置に居てなぁ、殺虫剤が使えなかったんだよ。しかも天井の電灯のカバーの上(超狭い)に乗ってやがるから叩けないし」 |
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「そいつは確かに嫌な位置じゃの」 |
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「だろ? そうだろ?」 |
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「……工夫が必要ですね」 |
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「それでどうしたんですかぁ〜?」 |
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「まずな、90リットルのゴミ袋を用意した。こいつの口を広げてな、棒でジュリアをはたき落とし、ゴミ袋にINさせる。この作戦でやった」 |
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「それ、上手くやんないと上からゴキが降ってくる恐怖が待ってるジャン」 |
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「恐怖の大王的な?」 |
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「世紀末はとうに過ぎたぞえ」 |
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「ふふふ……お前ら知らないようだな? 俺はゴキを撃墜・捕獲するのが得意なんだ! 奴らの行動パターンなんぞお見通しだぜぇわはは!」 |
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「あんまり嬉しくない能力ですねぇ〜」 |
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「ばっか、嬉しいだろ! 見つけたら確実に排除できるんだぞ! で、首尾よく袋の中にINしていただいた」 |
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「そのあとは?」 |
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「袋の空気を抜いて口を縛り、ゴミ箱にポイ」 |
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「一件落着じゃの」 |
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「そう思うか?」 |
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「違うのかの?」 |
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「そう、これで終わりじゃなかったんだ。夜中、電気が消えたあと、水を飲みに部屋に入ったら……なんかガサガサ音がする。野郎、往生際が悪いなと、ジュリアが動いてんだろ程度に思っていたんだが……ふと、嫌な予感がした。すぐに電気をつけてゴミ箱から袋を持ち上げると……」 |
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「持ち上げるとぉ〜?」 |
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「覚えのない小さい穴が開いていた!」 |
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「げぇ、それってまさか」 |
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「そのまさかだな。ヤツはなんと、ビニール袋を噛み切ろうとしていたんだ!」 |
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「恐ろしい程の根性ですわ」 |
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「割と頭いいよネ」 |
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「危なかったのう」 |
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「しかもあの野郎、目が合った瞬間、触覚をこっちに向けながら『俺なんもやってねーし』みたいな感じで顔逸らしやがったぞ」 |
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「うわぁ。で、どうしたのよ?」 |
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「ガムテープで外側からグルグル巻きにしてやったぞ、ざまぁみろ」 |
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「袋の上から叩けば宜しいのに」 |
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「ふっ……無用な殺生は好まないのさ」 |
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「いや最終的には処刑されるけどサ、ゴミ処理場で」 |
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「いやぁ、周辺に家が全くないような状況なら、少し離れたところに逃がしてやるんだけどな。隣近所に家がある状態で外に逃がすと、何処かの家に再び侵入するし」 |
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「どうせあれじゃろ、そこで叩かなかったのは、なんか嫌だからとか思ったからじゃろ?」 |
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「うん」 |
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「……確かになんだが嫌ですね」 |
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「う〜ん、解るような解らないような」 |
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