第241回「出口などないから続いているのか?」
2009/06/05

「日が昇る……朝日が美しい」
「……そうだね……一日の始まりさ……」
「しかし、朝の日を見ると、昔を思い出すな。一日の始まりは、その日が命日となりかねない状況だったから、辛い記憶もある」
「……だろうね……でも、ここはそうじゃないよ……」
「…………死の概念はない……謎の空間さ……」
「ははは、もうとっくに死んでいるけどね、私」
「…………そうだね……」
「アデライード……カルラ……エルヴィーラ……私だけここで笑ったり怒ったりしている。戦争で戦友を失い、自分だけ生き残ってしまった人々は、こういう気持ちなのかしら」
「……そういう人も居るようだね……」
「戦争は様々なものを奪う、何故起こるのかと考えても、答えは雑多すぎて明確なものはない。完全に防ぐ手立ても、ないだろう。悠久の時を経て尚、我々は、個人間の争いさえなくせないのだから」
「…………なくならないさ…………自然界の基本は、戦いなんだからね……」
「……弱い者は死に」
「……強い者は生き残る」
「……だからこそ……強い者が弱い者を守る…………群れのリーダーが、外敵から群れを守るようにね…………ほんの小さな生き物だって……生き残る為に毒を以って……身を守る……」
「……思想を押し付けるテロリスト……自分の欲を満たす為に奪い・殺す犯罪者……武器を構え、今まさに殺そうと迫ってきている身勝手な者達を前に……丸腰で握手を求める事ができるかな……?
「できはしない、できると断言してもやりはしないだろう」
「…………どうしても争いをなくしたいなら、どうする?」
「絶対的な権力と力を持ったたった一人の独裁者が、己の意を以って人民を完全に統括し、誰一人思想の違いのない並列化された社会を築く」
「……無理だね……」
「そう、無理ね」
「……高い知能が仇となっているのさ……人間はね……欲がある……
「欲を排除した人造人間を生産し、全ての人間と入れ替えれば解決」
「……それは実質的な滅亡だね……」
「そうね。でも、人間は高い知能を持っているからこそ、己を自制する事だって出来るのよ」
「……自制の仕方にもよるけどね……本末転倒じゃ困る……」
群れを守る力と、それを制御する理性ね。尤も、その理性自体も、考え方の違いによって様々な形を見せている訳だけど。兵器がなくなったって、人間はその辺の木の棒や石を使って、原始的で更に残虐な戦争をするわ。何故ならば、人間には高い知能と、それを遺憾なく使いこなす身体がある」
「……だから、戦争はなくならないんだね……」
終わりのない無限地獄よ、もう何百万年も続いている。人間がまだ微生物だった時から考えれば、生物が誕生した時から続いているわ」
「…………いつか終わりは来るかな?」
「さあ、どうかしらね。もしかしたら、人類の終わりとともにやってくるかもね……」

イズベルガ(M-262 A-1b)
軍人気質で結構厳しい。教育してやる!
ツアギ(T-10-1)
よく分からない女性。怪しげな笑みを浮かべ、航空ガールを困惑させる。





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