|
「柿にゃ♪ 柿にゃ♪」 |
|
「お、柿か。この時期だから……」 |
|
「もぐもぐ……」 |
|
「渋柿だな。渋抜きした刀根柿」 |
|
「むしゃむしゃ……」 |
|
「渋抜きしてるから、赤くなってなくても十分に甘いんだ。逆に赤くなるにつれて柔らかくなるから、好みで食べる時期を選ぶといい。俺は硬いほうがいいから、ちょっと緑がかっているうちに食べるな」 |
|
「もぐもぐ……」 |
|
「ただな、元は渋柿で、それを渋抜きする事で甘くしているんだが……」 |
|
「むしゃむしゃ……」 |
|
「ごくごく稀に、渋が抜けきってないハズレがある。いやぁ、相当低い確率だが、見た目じゃ分からんからな。聞いた話じゃ、ヘタが生き生きしてると駄目らしいが」 |
|
「もぐ──」 |
|
「にゃ!? 渋いにゃー!!」 |
|
「あ……ハズレ引きやがった」 |
|
「にゃ、にゃ、アキ、なんとかしてにゃ!」 |
|
「甘柿を食うと、甘柿の成分で緩和されるらしいが、今の時期はまだまだ……とりあえず、キャラメルならあるが?」 |
|
「ちょうだい、ちょうだい、ちょうだいにゃー!」 |
|
「ほら」 |
|
「にゃー……」 |
|
「ま、完全な渋柿じゃなくて良かったな。渋抜きが不完全だった渋柿だから、渋さも減ってる。お前、完全な渋柿を食った事ないだろ? あれはやばいぞ……舌に残るんだ、舌に。こう、ザラザラゴロゴロと、あー、思い出しただけでも気分が悪い」 |
|
「にゃ、アキは食べた事あるにゃ?」 |
|
「小学校の頃、な、所謂盗み食いだ。通学路の途中に柿の木があって、子供ながらずっと我慢してたんだが、つい、一口だけって感覚で食ったんだよ。そしたら渋柿でやんの、口の中が気持ち悪くて仕方なかったなぁ。今思うと、あれがこれになるんだからすごいよな」 |
|
「うぅ〜、渋柿は嫌にゃ〜」 |
|
「運が悪いとしか言い様がないな、ほんと滅多にない事だぞ。大抵は出荷前に農家で弾かれるから。ヘタを見て選別しているのかね」 |
|
「アキ、アキ」 |
|
「なんだ?」 |
|
「キャラメルもっとちょうだいにゃ」 |
|
「ん、ああ、そうだな。ほれ」 |
|
「……渋みは大人の味(ぼそっ」 |
|
「いやそういう渋いじゃないぞあれは」 |
|
「…………(ぱくっ←ミオが残した渋抜き損ないを食べた」 |
|
「あ……」 |
|
「……渋い」 |
|
「だから言っただろ、とりあえずキャラメル食っとけ」 |
|
「……はい(ぱたぱた←尻尾を振っている」 |
|
(なぁんだ、構って欲しかったのにゃね) |
|