ACE COMBAT5 The unsung war〜謀略の破壊者・ラーズグリーズ〜 | ||||
ACE COMBAT5 The unsung war〜謀略の破壊者・ラーズグリーズ〜 序章 Bule sky ――15年前、戦争があった。 いや、戦争なら時はるか昔から幾度となくあった。 彼らは北辺の地を出で、強大な連邦を作り上げた。 比類なき工業力を持ち、優れた技術を要した彼らは 世界に向かい、大規模な戦争を挑んだ。 それが15年前の戦争・・・ベルカ戦争。 少数精鋭の強大な空軍、そして優れた工業力を背景とした新兵器。 彼らは持てる力の全てをぶつけ、そして散っていった。 ウスティオとサピンという、彼らが侵略しようとした国のパイロットにより。 自国をレーザーで焼き払い、焦土作戦を行い挙句の果てに核兵器を使う愚まで犯したベルカ人。 それに続く大国を抹消させようとした「国境なき世界」の計画。 戦勝国は無残さを目にし、自らの兵器を捨てようと心に強く誓った。 各地で紛争こそ続いたが・・・ようやく平和が訪れた。 平和に最も遠いこの島で、平和を守って飛ぶ彼ら。 15年前の戦争が残したソラノカケラ。 蒼晶石をコアとしたMLS、そのパイロットたち。 そして、ユージア大陸戦争で台頭したエース達。 これは、そんな彼らの生き様を描いた物語である。 2010年8/14 CVヒューバード(セント・ヒューレット寄航中) 「新入りのパイロット?」 CVヒューバード所属パイロット、リュート大尉は2ヶ月前に新しく配備されたラファールに慣れようと必死に練習を重ねている。 新しいシステムを搭載しているらしいのだが、今までのF/A-18Eとは使い勝手が違いなかなか上手く行かない。 が・・・この前も不審船や潜水艦などを撃沈してきたのである程度の愛着はある。 そんな時に、飛行長から新入りが来ると聞かされたのだ。 「新入りだが、腕前はお前以上だ。多分な。」 「多分?どんな奴だ?ジルファルコンか?グラーバクか?」 ジルファルコン、グラーバク・・・共に現在のオーシア空軍を支えているエース部隊だ。 前者はX-29ZというF-29Aの試作機タイプ。後者はF-15S/MTDを使っている。 「オーシアからじゃない。ISAFからだ。」 「レイピア隊なら俺が捻ってやるよ。」 「お前でも無理だ・・・ま、見ればわかる。」 飛行長は笑いながら立ち去っていった。 誰だ・・・と思いながらリュートは遠くから来る航空機の爆音に耳を澄ます。 効いたことの無い爆音だが1機はミラージュ2000。多分5だろう。 とりあえずラファールにでも戻って無線を効けば、どこかわかりそうだ。 周波数を合わせ、ヒューバード管制塔と彼らの会話を傍受する。 「こちらメビウス1.着艦するよ。」 「CVヒューバード了解。」 「誘導は要らないよ、スフィルナで慣れてる。」 メビウス1!?リュートは梯子を降りてもう一度遠くを見てみる。 あれはF-15Ir・・・ISAF空軍で改造されたイーグル。 ということは、間違いなく本物のメビウス隊だろう。 F-15Irはなれた感じで着艦。確か空軍のはずだが海軍の空母によく着艦しているから慣れているようだ。 スフィルナよりヒューバード級空母の方がアングルドデッキも長い。彼にしたら余裕なのだろう。 パイロットが降りてきたが・・・2人目は14歳くらいの少女。メビウス1もかなり若そうだ・・・16歳くらいか? 「・・・あんたがメビウス1か?」 気になったリュートは、メビウス1に話しかける。 「そういうこと。フィン・リタルダント・・・階級はISAFで少佐。こっちはレナ。」 「よろしく。」 耐Gスーツなしで平然としているとはなんと言うフライトオフィサーだと思ったが、もしかするとMCの可能性もある。 MLSについての説明をリュートは受けていたため、ある程度の予備知識は持っているのだ。 それに・・・メビウス隊はMLS部隊とのもっぱらの噂。おそらく間違いないだろうが・・・ 「何歳だ?フィン少佐。」 「一応23歳かな。」 どうみても16歳だといいたくなったが、リュートも一応は軍人。口に出さないで置く。 続いてミラージュ2000-5が着艦。無尾翼デルタだがかなり上手い。 今度は降りたのは1人だが、機首周辺に光が集まり人の形を成していく。 「・・・お、おい・・・あれは何だ?」 「MCだよ・・・あ、知ってるかな?君も蒼晶石搭載のラファールつかってるみたいだし。」 MLS被験者は同じ機体を一瞬で見分けられる・・・わけは無い。多分飛行中で判断したのだろう。 「覚醒してないみたいだけど?」 「見ればわかるよ。」 レナ・・・と言った少女がフィンに話しかける。 どう見てもこの2人、兄妹にしか見えない・・・ 「艦内を知りたいんだけど・・・ちょっと見てくるね。」 「フィンが行くなら私も。」 2人は早速艦橋から艦内に入っていくが・・・本当にエースかとリュートは不安で仕方ない。 ようやくF-12が着艦してきたが・・・ブラックバードの偵察機より少し小さい。 まぁ、あれだけ大きかったら戦闘などできないだろうが。 やはり機首に光が集まり・・今度は13歳くらいの少女。だが翼がやけに大きい。 「ずいぶん個性的なメンバーだな・・・大丈夫か?」 不安を隠せない様子でリュートはつぶやく。 8/17 ユークトバニア領内ウラゾフグラード空軍基地 「・・・アグレッサー?」 新しく来る部隊は「実働部隊兼アグレッサー」ということでこの基地に来るらしいのだ。 セルゲイ大尉は、それを不安な面持ちでみつめている。 着陸してきたのはSu-47ベルクト。ここ最近Mig-1.44やS-47、Su-37と共に数をそろえている戦闘機だ。 が・・・前進翼なのでおそらくは初期タイプだろう。 「同志大尉、あれは・・・?」 「今日、来るアグレッサーだ。」 8機のSu-47が着陸、パイロットが次々に降りてくる。 「同志大尉、あのカラーは・・・?」 「とんでもない奴らがきやがった・・・」 隣にいるカラエフ中尉が、何かわからない様子で訊ねる。 セルゲイは・・・あれが「円卓の王者」と呼ばれたゴルト隊に違いないと見ている。 そして・・・隊長機から1人の人物が降りてくる。 それと同時に隊長機の機首に光が集まり・・・1人の少女が出てきた。 「・・・誰だ?」 「ここに配属されることになったゴルト隊の隊長だ。アントン・カプチェンコ・・・階級は少佐だ。」 「何!?」 よりによって本物・・・セルゲイはぶっ倒れそうになってしまう。 彼のベルクトの腕前を見て、セルゲイはパイロットになろうと決心したのだから。 「・・・隊長、何か?」 「じ、自分はセルゲイ・ベルジャエフ。階級は大尉であります!」 思いっきりセルゲイは緊張しているが、カラエフは笑いを堪えるのに必死だ。 「ジェラーヴリク隊隊長か。内紛での活躍、聞いている・・・楽しませてくれることを期待しよう。」 カプチェンコは早速少女を連れて格納庫に向かっていく。 「で、隊長・・・あの少女は何ですか?」 「あ、ああ・・・あれはMC・・・精神生命体って奴でMLSに引っ付いてくるんだとか何とか・・・」 「嬉しそうですね。」 「まぁ、憧れの人物に出会ったからな。カラエフも何かいるだろ?」 何気なくセルゲイが訊ねると、カラエフは沈んだ顔で答える。 「・・・俺の親父ですけど・・・死にました。内紛で1機のF-15を追撃して、返り討ちに・・・」 「悪いこと利いてしまったな・・・」 「隊長のせいではありませんから。別に・・・構いませんよ。機体の整備に向かいましょう?」 「ああ。」 カラエフに言われ、セルゲイも格納庫に向かっていく。 9/23 1040時 オーシア領内サンド島空軍基地 「あいつらも出撃か・・・」 滑走路に出ているシーハリアーFA2。そして他の機体が次々に滑走路に出て行く。 操縦席の前で、1人の青年が黙って出撃を見ている。 「えっと・・・あ、すみません。F-4Eの格納庫はどこですか?」 「・・・記者か?ああ、第1格納庫なら一番向こうだ。俺は・・・ウェイン・ラインハルト。国境警備隊ウィンド隊の隊長・・・ま、僚機は去年撃墜されて俺1人でやっている。」 「アルベール・ジュネットです。記者をやっています。」 「ああ。ベルカ戦争のドキュメンタリーなら見させてもらった。いい作品だと思うな。」 5年前、ブレッド・トンプソンという記者の相棒を勤めていたのが彼だ。 そのときもここに来て、取材を申し込んだのだがあの時と格納庫配置が換わり迷ってしまったようだ。 「他の機体と違いますね。」 「ああ。シーハリアーFA2。最近はF-35Bと変わっているからちょっと古いが・・・充分使えるな。国境警備なら充分な機体だ。で・・・訓練生は猛すぐ出撃だ。急いだ方がいい。」 「あ、はい。ありがとうございます。」 記者・・・ジュネットはF-4Eへと向かっていく。 空軍基地といってもここにあるのは訓練生用のF-5Eと教官用のF-4E。それに国境警備のシーハリアーFA2と何故かJAS-39C。それに救助用のCH-46が2機。 つまり、全部旧式機ばかりなのだ。 「30mmバルカン搭載完了・・・と。」 3銃身の対戦車バルカン砲をウェインは好んでいるが・・・同時にAIM-9を6本搭載できる。 対戦車バルカンAM610。30mmの大口径を誇る3銃身ガトリング砲でオーシア空軍のみ採用している。 弾薬200発携行可能。上手くレティクルの先を狙えば航空機でも吹き飛ばせる。 これはハードポイントに搭載するタイプのため、武装が少なくなるのが難点だが。 「今日も出撃準備ですか?」 「国境警備隊は何かあればすぐ出撃だ。」 話しかけてきたのはミスト・・・准尉で整備員を担当。 サンド島の整備長であるデミトリ大尉といっしょにここに来たらしいが、詳しいことはわからない。 「あのおっさんも大変だよな・・・教官なんかやって。7人もああやって監視してな・・・」 あのおっさん・・・ウェインは暗にバートレット大尉のことを言っている。 まぁ、ここのパイロットはあまり腕利きが少ないから役には立ちそうだが。 「あなたもそうなるのでは?」 「俺は教官なんて嫌だね。実働部隊で飛べるだけ飛んで、後は気ままに生きたい。」 そんなことを言っていると、F-4EとF-5Eの部隊が次々に離陸していく。 オーシアは空軍の増強を始めたばかりで、各地にあるこの様な旧式機をようやくF-16SやEFタイフーン、F-15F/25に置き換え始めたのだ。 要所にはラプターやグレイゴースト、ライトニングUと言った新鋭ステルス戦闘機を配備している。 海軍では刷新がいち早く進み、すでにF-15F/25やF/A-18Iなどが所属しているようだ。 「緊急出撃だ!ウィンド隊はランダース岬へと向かえ!」 「着たか・・・!」 国籍不明機などが来た場合、ウェインのような国境警備航空隊が出撃する。 「攻撃された場合、無制限の反撃を許可」されているためすでにウェインも14機を撃墜・・・エースと言える存在だ。 ベルカ空軍機やレサス空軍機が殆どで、回収された機体のパイロットは大半がどちらかだ。 ときおりユークトバニアが来るが・・・ 「行くか。」 梯子を上り、VTOLをかけてウェインはランダース岬へと向かう。 「そういえば・・・確かランダース岬は演習予定空域のはず・・・まずい、急がなくては!」 最大出力でシーハリアーを稼動させ、ウェインは作戦空域へと向かう。 ランダース岬 1109時 「国籍不明機接近中!ウィンド01、至急作戦空域へと突入し教官機を支援せよ!」 「了解!」 幸いにも航行中のフリゲートが国籍不明機を通報してくれたため、教官機接触から5分ほどでつけるはず。 が・・・それは近代戦では永遠とも言える時間だろう。 AIM-9を8本に30mmバルカン砲1基。空戦装備での出撃だ。 「ベイカー、スヴェンソン。配置につけ!教官機のみで敵機を出迎える!残りは低空へ逃げろ!」 低空・・・そこにはMig-21ランサー4機が待ち構えている。 エルビット社がMig-21を近代化改修した機体。F-16Cなどの軽戦闘機と比較しても充分な性能を持っている。 コンフォーマルタンクを搭載して、航続距離を伸ばしている・・・ 向こうのレーダーには映っていないようだが・・・とにかく新入りを支援しないとまずそうだ。 Mig-21ランサー程度なら、教官機の3機で何とかできない相手でもない。 あの5人はベルカ戦争で生き残ったエース。武装もフルに空対空装備をしているため大丈夫だ。 「見えた・・・ちっ、遅かったか!」 Mig-21ランサーがすでにアーチャーを発射、新入りを軽く撃破している。 「しまった・・・た、助けてくれ!」 イジェクトシートの使い方もパニックで忘れている・・・しかもミサイルすら搭載していないのだ。 武装は20mm機銃のみ。F-5Eはバランスの関係で20mm機銃の銃弾を搭載しないと出撃できないからたぶん搭載しているはずだ。 が・・・思いっきり新入りはやられている。 「こちらウィンド01、支援する!」 AIM-9をロックオン、敵の進路を先読みして発射。 フレアーに騙されずAIM-9は敵のエンジンを引き裂いて撃破。これでスコアは15機。 が・・・相手の国籍およびエンブレムははユーク第17邀撃隊。エース部隊だ。 新入りを落とすなど、簡単に出来ることだろう。 「メイデイメイデイメイデイ!」 「あぶないと思ったらイジェクトレバーを引け!無理せず脱出しろ!」 が・・・それも無駄に終わったのをウェインはすぐにわかってしまう。 真横で脱出したパイロットをMig-21ランサーが銃撃、射殺してしまったのだ。 「・・・俺が全機ひきつけるから早く逃げろ!」 後にMig-21ランサー、ウェインはすぐにVTOLを機動させ減速する。 オーバーシュートした敵機にAM610を発射。対戦車砲弾を喰らった敵機は粉々に吹き飛んでしまう。 が・・・また新入りが1機やられたようだ。 「メイデメイデイメイデイ!こちらスヴェンソン、脱出する!」 パイロット2人が脱出。教官機もかなり苦戦している。 周辺の敵機は残り3機。新入りは1機。 が・・・07の機体番号をつけたF-5Eが逆に敵機を追撃している。 「お、少しはやるようだが・・・後ろに敵だ。」 Mig-21ランサーの後にF-5E、その後にまたMig-21ランサー。 ウェインはためらわずにAIM-9を発射。F-5Eの後にいるMig-21を撃破する。 もう1機は教官機のほうへと向かって言ったようだ。 「格闘戦をしっかりと学んでおくんだ。さ、俺は・・・」 教官機のF-4Eは1機が損傷を受けているが・・・ハートブレイク1はしっかりと無事のようだ。 逆にスパローでMig-21ランサーを撃墜。ベルカ戦争を勝ち抜いてきたパイロット・・・ということはある。 「ま、やってやるか・・・」 AIM-9を発射、回避したところにアデン30mmを発射。 敵機は火を噴きながら墜落していくが、後にまだ残っている。 「ハリアーに格闘戦挑もうってのが間違いだ!」 すかさずVTOLを起動。ノズルが下に向き急減速する。 オーバーシュートした敵機にAM610を発射、Mig-21ランサーは叫ぶまもなく爆発を起こして墜落する。 「すまねぇな、ウィンド01。」 「・・・ま、いいって事です。これが国境警備の役目ですし。」 襲ってくる方が悪い。だから絶対にこの空域にいた友軍機のせいではない。 謝る必要はないとウェインは通信を入れたが・・・途端に気が重くなってしまう。 去年、この空域で国籍不明機と交戦し僚機を失った・・・2機も。 「帰るか・・・ここに用はない。」 ウェインは機首をサンド島に向け、そのまま帰還する。 1140時 サンド島空軍基地 シーハリアーFA2はうまくVTOLでエプロンに着陸するという離れ業を見せた後、F-4Eも着陸した。 が・・・ベイカー機の左脚が突然へし折れてそのまま横転、炎上。2人は帰らぬ人となった。 スヴェンソン機の2名は重傷で当分前線復帰不可能。結局ほんのわずかな判断ミスで8名が戦死・・・いや、事故死した。 帰還機は3機だけ。なんともさびしい帰還だ。 「シーハリアーに助けられたようなものですね。それと・・・あの07の反撃、見事でした。」 ジュネットが言っているのはあのF-5E。Mig-21ランサーを上手く格闘戦で撃墜したのだ。 「・・・見てられん。ナガセ!あんな飛び方していたら死ぬぞ!」 「死にません。」 実戦のせいで、彼女の顔はかなり青ざめているように見えた。 一方で・・・このバートレット大尉も、シーハリアーのパイロットも平然と行動している。 とりあえず、ジュネットはこの3人と機体を写真に収め注釈を軽く書いている。 「ウィンド01と名乗るパイロット。撃墜数18機。この辺境でかなりの腕前を持っている・・・と。」 一応、ベルカ戦争の時の映像を見ているせいでジュネットは空戦についてもなかなか詳しい。 ベルカ空軍のエースをブレッド・トンプソンと見ているうちにある程度詳しくなったのだ。 「本当か?虫も殺せませんって面してるな。」 バートレットはそういい残して去っていく。 その後・・・不当に空戦シーンの写真を没収されてしまったのだが。 ランダース岬 1307時 「こいつにも慣れたな。」 「ああ・・・」 訓練飛行中の2機の機体、F-22AラプターとF-23Aグレイゴースト。 共に強力なステルス戦闘機であり、F-23Aの方はF-22Aと変わらないほどの武装を施している。 F-23A搭乗のクラウス中尉とF-22Aに搭乗しているカーシェ少尉。共にフェザー隊を編成するパイロット2人だ。 「だけど、あいつらは反則だろ。10G耐えれるって本当か?部隊全員が?」 「ありえる話だ・・・」 この2人はスーデントール出身のベルカ系移民で、「もう二度とあんな惨劇は見せない」ということでオーシア空軍に入隊している。 親友でもあり・・・出撃の時以外は普通に話せる相手だ。 「・・・とんでもない相手だ。二度とやりたくない。」 「さ、そろそろ作戦空域だ。」 作戦空域といっても、ここでDACTをやるだけなのだが。 現在17戦9勝でクラウスが1歩リード。ほぼ互角だ。 「こちらAWCASウィングアイ。方位280より敵機です。第6邀撃航空隊、迎撃願います!」 「何!?」 今朝の事件を聞きつけて、ヒューバードのAWCASウィングアイが哨戒を続けていた。 機体はMig-21ランサーが6機。こちらは外付けパイロンに模擬弾を搭載しているためステルス性が全くない。 「IFFは・・・敵です。迎撃してください!」 「了解!」 このウィングアイ・・・実は結構大胆な指示を出す管制官として知られている。 国籍不明機が来たら普通は「撃つな」とか言うが、こいつはすぐに交戦許可を出す。 「よし、迎撃するぞ。フェザー01、エンゲージ!」 「フェザー02、エンゲージ!」 F-23Aは早速ウェポン・ベイを開きAIM-120を発射。 敵機はすぐに回避行動を取るが、逃げ遅れて1機が墜落する。 「国籍マーク不明!こいつらどこの奴だ!?」 「オーシアではMig-21ランサーなんて無い。迎撃するしかないだろ!」 クラウスのF-23Aが果敢にMig-21ランサーに接近。 背後を取るとM61A2を発射、無数の金属音を立てて敵機は撃墜される。 「メイデイメイデイメイデイ!機体大破、脱出する!」 「やばいぞ!敵はエースだ!」 「ジルファルコンか!?」 F-22Aが続けざまにAIM-9を発射。ミサイルはMig-21ランサーを追尾する。 急激な旋回にも喰らいつき、直撃・・・パイロットはベイルアウトしたようだ。 「残りは1機・・・隊長、俺が貰いますよ!」 「好きにしろ。」 背面を見せてMig-21ランサーは旋回、F-22Aも同じ向きに旋回する。 TVC最大角度。尾翼も最大までまげて追撃。レティクルをあわせて射撃。 火花が飛び散って敵機は爆発、きりもみを起こしながら落ちていく。 「スプラッシュ!」 「腕を上げたな、カーシェ。」 国籍不明機消失・・・まぁ、機体性能に差がありすぎた。 ステルス性が少なくても、この2機は機動性能で充分な性能を持っている。 「終わったか・・・」 が、何かクラウスはすっきりしない。普通はこんなことないはずだが。 『敵機がまだいるわ。方位240。」 「何?誰の・・・まぁいい、カーシェ。来い。」 「了解。」 声を頼りに飛行を続けるが・・・敵機はいない。 「・・・やっぱり、幻聴をあてにした俺が間違えたかな。」 その途端、ウィングアイから通信が入る。 「敵機影確認!S-47!」 「何!?」 ステルス性を備えた戦闘機、それ以外の詳細は全く不明の新鋭機だ。 全身翼だが無尾翼・・・逆デルタ翼と言ってもいいかもしれない。 それにカナードをつけた双発の大型戦闘機だ。 ユークトバニア空軍所属のはずだが・・・ 「来たな・・・機影4機。攻撃を開始する!AIM-120は使うな。ステルスだから射程が短い。」 「わかってますよ!」 機動性能がかなり良く、なかなか照準に収められない。 前進翼のVTOL機とは、また厄介な相手を見せてくれたものだ。 「もらった・・!?」 後を取った瞬間、敵機はリフトファンを展開してVTOLを開始・・・オーバーシュートさせてしまう。 途端にGSh-30-1を喰らってしまい、風防に穴があいたようだ。 「VTOLか・・・!」 甘く見すぎた・・・クラウスは後悔する。 風防に穴があき、機内の気圧がかなり下がっている。 「まずいぞ・・・」 とっさの判断で低空に退避。少しでも酸素をいきわたらせるため推力を落とす。 が・・・それでもまずい状況に変わりは無い。 『あらあら。意外とCoolなNice guyのようね。』 「何・・・?」 幻聴にしてはやけにリアルだ・・・先ほどの声と同じ。 「誰だ・・・?」 『It is the show time!私がカバーするわ!』 途端にF-23Aがjクラウスのコントロールを離れ、素早く上昇するとS-47の後方に喰らいつく。 これほど鮮やかに後ろに回れるのは久しぶりだ。 「・・・距離1500、バルカンでしとめるか。」 機首左のバルカンがオープン。トリガーを引くと同時に敵機に銃弾が命中。 敵機は爆発を起こしながら、きりもみの状態で墜落していく。 それと同時にいきなりAIM-9が発射、S-47に喰らいつき撃破したようだ。 『Attention!全機撃墜したわ。』 「・・・けど、俺のほうがやばいんだが。酸素が・・・」 無理な起動ばかりするから、もう酸素がいきわたらないようだ。 しかも敵編隊が接近中・・・ 『It can't be helped。離脱よ。』 暴言ばかり吐きまくる・・・クラウスははぁとため息をつきながらも撤退する。 「離脱って・・・カーシェは大丈夫か!?」 『そろそろ覚醒する頃だから大丈夫よ。ちなみに、私はフェメナ。』 「MCって奴か・・・?俺もある程度の予備知識くらいはある。」 イメージの中で彼女がうなずく・・・おそらく大丈夫だろう。 「ウィングアイよりフェザー02、離脱を許可します!」 「そんな事言われても無理だ・・・!」 3機のS-47から集中攻撃を受け、F-22Aはだいぶ損傷している。 TVC動作不調。主翼にも穴があいている。 『わたくしの助けが必要かしら?』 「・・・この際誰でもいい、助けてくれ!」 クラウス機は戦闘不能で離脱。増援が来るまで15分はかかる。 カーシェは、もう誰でもいいから助けを求めたかった。 『わかりましたわ。ユーク軍機ごときがわたくしの前では無力ということを思い知らせてさしあげましょう。』 途端に包囲網の隙を突きF-22Aは急激に加速、一端離脱する。 距離を置いて急激に反転、AIM-120を発射する。 ミサイルに驚いたS-47が散開、そのうちの1機にAIM-9を発射しもう1機を追撃する。 「・・・いける。もっといける・・・」 M61A2を敵に発射、エンジンに命中し敵機が爆発する。 最後の敵機に喰らいついたが、リフトファンを開いてVTOLに移行しようとしている。 「隊長はその手を食ったが、俺は・・・!」 AIM-9を発射。すかさず右旋回して射線から身をかわす。 敵機にミサイルが命中、爆発しながら落ちていった。 「・・・終わった。」 『軽い相手ですわね、マスター。』 よくよく考えたら、この声は誰だろうか・・・カーシェは何気なく聞いてみる。 「ところで・・・誰なんだ?あんたは。」 『この機体そのものですわ。名前はエイリ。』 これが、「覚醒」と言うもの・・・カーシェはようやく理解できた。 何度説明を受けても、この部分だけはわからなかったのだ。 「出撃するごとに、毎回出会うのか?」 『ええ。』 「宜しく頼む、エイリ。」 カーシェはうなずくと、そのまま機首を基地に向ける。 帰還するまでの間、彼女の話し相手になるのも悪くないだろう・・・ が、彼らは空戦のことばかり考えてあるミスをしていた。 S-47の母艦が近くにいた・・・それを見つけ出せば、また運命は違ったものになっただろう。 搭乗員待機室 1600時 「・・・少なくなったな、ずいぶんと・・・」 辛辣な表情であのシーハリアーのパイロットがつぶやいたが、本当にそうだ。 あれだけ騒がしかった搭乗員待機室も、今は救助用チヌークの搭乗員と数名のパイロットしかいないのだ。 「・・・文句の山ほどもあろうが、人手が足りん。明日から新米ともどもスクランブル配置だ。」 いつもは明るいチヌークの搭乗員達も、ジョークを飛ばすことはない・・・ しっかりとジュネットはテレビカメラにこの様子を収めている。 「やれやれだ・・・」 ベルカ戦争のドキュメンタリーを取り終え、フリーのジャーナリストとして活躍していたジュネット。 ここにきたのは、ユニークな人物が隊長をやっていると聴いたからだが・・・ よく考えたら、それは2人居るようだ。あの口の悪い教官と国境警備のシーハリアーを使うエース。 口が悪く、底意地のいい古強者・・・彼に鍛えらればいかなる新米もエースに育つ。 はずが・・・国籍不明機の侵入で消えてしまった。 「特にナガセ!お前は俺の2番機だ。目を付けてねぇとなに仕出かすか判らん。」 「・・・了解です、隊長。」 「あとウェイン!4番機で待機しておけ。一応ウィンド隊だろうが・・・新入り2機が何するかわからん。シーハリアーをあっためとけ。」 「わかりました・・・ったく、4番機ってのが一番辛いんだがな。」 愚痴をこぼしつつもウェインは命令に従う。 あのシーハリアーのパイロット・・・まぁ、4番機は編隊を見る重要な役目。彼の言うことももっともだ。 「・・・アルヴィン・H・ダヴェンポート少尉、どこだ?」 「はいよ。」 「お前は3番機だ。俺とウェインでしっかりとはさんでやる。」 編成を終えたが、ここにあるのはF-5EとF-4E、シーハリアーFA2だけ。 旧式機だけでMig-21ランサーやSu-22と戦う、辛い状況だ。 あとがき さっそくACE5の第1章を・・・各方面で発生したできごとです。 アルベール・ジュネットはACE0を調査した記者、ブレッド・トンプソンの相棒という設定にしました。 だから空軍について詳しくなり、ここの噂を聞きつけてきた・・・と。 オーシア→米空軍、米海軍。ユーク→ソ連、ロシア空軍および海軍という設定で進めます。 つまり、軍機は全部この国籍にします。オーシアでタイフーンとかラファールがあるのは・・・数が足りないので輸入してます。 イントロはベルカ戦争にあわせて変えました。 そして、早速エイリとフェメナが覚醒です・・・ では。次回はミッション1です。 |
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2006/09/28:あくてぃぶF-15さんから頂きました。
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