ACE COMBAT5 The unsung war〜謀略の破壊者・ラーズグリーズ〜 | ||||||
ACE COMBAT5 The unsung war〜謀略の破壊者・ラーズグリーズ〜 第22章 影すら消えた戦い〜シルム廃坑奇襲〜 12/11 CVN-01ヒューバード飛行甲板 0750時 「あー・・・・寒い。傷に響く・・・」 さすがにこの極北とも言える土地だと雪が降る・・・クラウスは一応ベルカ出身で雪も経験しているが、やはり久しぶりに体感すると寒い。 オーシアじゃ殆ど雪が降らず、大雪という経験もない・・・カタパルトにはF-23AとF-22Aがセット。そして途中までレーダーを妨害するためのE/A-18Gが2機。後は護衛用のF-35C、F-35Eが7機ずつ甲板で待機している。。 「だから座ってるの?室内に入ればいいじゃない。」 「・・・・せめてお前の羽であったまりた・・・・いたっ!」 「Shut up!いくらマスターでもそれは許せ無いわ。自重なさい。」 羽で叩かれクラウスは少々へこんだが、まぁいいかと思い座る・・・これ以上熱くすると作業員にとっては熱すぎる。このくらいがちょうどいいのだろう。 横に見えるのはCVN-05ケストレル、そして巡洋艦改タイコンデロガ級、イージス駆逐艦改アーレイ・バーグ級。そして隣には戦艦改サウスダコタ級。 ISAF艦隊は5日後に合流する・・・それまではこの戦力が全てだ。大事に使わないと・・・少なくとも正面きって戦える戦力ではない。 ヒューバード搭載機は新鋭ステルス機のF-35Eライトニングホーク、F-35CライトニングUなどが多く今回の作戦には使える。搭乗員の戦意も充分だが・・・ケストレルは艦載機のパイロットが居ない上に機体も無いため旗艦以外の役目が果たせない。 まぁラーズグリーズとかリュートが発進しているんだから役目はあるが・・・ すると、ようやく警報が鳴る・・・B-2部隊が発進するらしい。ランデブー空域に急ぐ時間だ。 「急ごうか、後で話そう。」 「当然よ。急ぎなさい。」 すぐにクラウスが機体に乗り込み、フェメナも同化。作戦目標はシルム廃坑の核弾頭を封印すること。そのためのB-2部隊であり廃坑真上の岩盤を崩落させることだ。 先日のUAVの調査で目標の位置は把握したが、既に運び出されている可能性もある・・・いや、それよりも今は目の前の核弾頭を封印することが第一だ。 作戦空域 0900時 「ブラックレイヴンより各機へ、護衛を頼む。」 「お前達か・・・あの時の。」 サンド島に配備されていたはずの爆撃機部隊がここにきたらしい・・・彼らもこの戦争の裏に気づいたというのか。 B-2Dの4機編隊は目標に向かい直線的に飛行する・・・護衛機の全てがステルス機。理論上レーダーに映ることは無いはずだ。 このまま上手く奇襲が進めばいいのだろうが・・・ 『・・・お久しぶり・・・皆様・・・・・』 『相変わらず消え入りそうね。大丈夫なのかしら?』 『・・・・・何とか。』 エイリが気遣うが、どうやら大丈夫だ・・・慣れないとこれは不安になりそうだが、まぁ上手く行くだろう。 すると、早速フェメナが何かを感知する・・・敵編隊?数は6機だ。 『敵機数6機、ライトニングホーク・・・気づかれたわ!』 「ライトニングホーク?オーシアの・・・一体何が?」 途端に敵機F-35Eが上昇を仕掛けてくる・・・それと同時に友軍機のF-35CライトニングUが散会、AIM-120を発射し応戦する。 「クラウス、前方からも敵機・・・オーシア空軍機、F-22の新鋭機だ!」 「オーシアの!?何をやっているんだ・・・こっちも友軍機だと気づいてるはずだろう、なのに何故!?」 「判るか!とりあえず応戦するしかない。ロックオンかけてきやがった!」 オーシア軍機がこちらに無線も要れずに発砲するとは一体何が起こったのか・・・クラウスは首を振る。核弾頭を守っているのは何もベルカだけじゃない。オーシア上層部が連中の手に落ちていればこいつらも同じように・・・ 『後ろに敵よ!』 「・・・許せ!ランツェ、エンゲージ!」 後ろに付いたF-22に対しすかさず機首を落とす・・・それとほぼ同時にエアブレーキをかけてオーバーシュート。 その敵機めがけ20mmバルカンをエンジンめがけ発射。爆発しパイロットは脱出する。 「メイデイメイデイメイデイ!こちらバルチャー9、所属不明機に攻撃を受けた!」 「オーシアのカラーリングとマーキングだと!?くっ、誰が味方で誰が敵だ!?」 敵も混乱している・・・一体ベルカは何のつもりだ。自前の戦力をすり減らすのが惜しくてオーシア空軍にぶつけさせたとでも言うのか。 だとしたら敵の幹部は相当悪趣味な奴だ。オーシアメインの逃亡艦隊と言うことを知ってわざとこんな真似をするのだから。 「・・・ったく、やる気が出ないな・・・!」 『ロックオン、距離5400。』 「愚痴っても始まらないか・・・フォックス・ツー!」 AIM-9Xが目の前を通過しようとしたF-35Eを追尾、直撃しウェポン・ベイ内部から一気にはじけ飛ぶ。 何とか脱出には成功したようだが・・・F-35E使用部隊ということはかなりの精鋭だ。 「本土には雑魚しか居ないのか?」 『・・・そのようね。前線送りで精鋭のパイロットは皆ユーク送り。』 そう思うのも無理は無いが、実際は違う・・・2人の実力がかなり高いだけのこと。精鋭部隊でも軽く叩き落せるだけの技量になったまで・・・特にフェメナがクラウスを助けて飛行した後からは。 反応速度や的確な機動はもう中堅のパイロットではなくエースそのものだ。 「クラウス・・・やるな。」 「お前は大丈夫だろうな?先に落ちるヘマはするな。」 「判ってるっての!行くか!」 カーシェが軽口交えてブレイク、すかさずB-2Dを追撃するF-35Eにロックオンをかけて引き離す。 ほぼ同時にレーダーに敵の増援部隊が映る。こいつらはステルス機じゃないようだが・・・ 『敵増援よ。F-16XLが4機。』 「何だってまた・・・」 気づいた友軍のF-35Eが一部旋回、機首を向ける・・・同時にクラウスもロックオンをかけてAIM-120Cを発射。 2機のライトニングホークにグレイゴースト1機、計6発のアムラームが放たれるがチャフをばら撒いてF-16XLが回避行動を取る。そして同時にAIM-120IRを発射。すかさずフレアーを発射し回避。 IRアムラームとはまた珍しいものを発射してくるが・・・旋回しヘッドオンに持ち込む、数は4機。 『敵機接近、距離4700。』 「ガンレンジまで持ち込んで1機を確実に撃破する。行くぞ!」 「俺も混ぜろ!隊長の危機見逃せる副官がいるかってんだ!」 カーシェのF-22Aもほぼ同時に接近、そしてすれ違う寸前にバルカンが発射されF-16XLが1機撃墜される。いや・・・2機だ。 ほぼ同時に撃墜された・・・が、何か黒いイメージを真上から感じる。どこの敵部隊だ? 『・・・彼らは囮ですわ!真上にYF-23!』 『Jesus!急ぎなさい!』 エイリとフェメナが気づいた・・・すかさず上昇すると急降下でYF-23が接近してくる。敵のカラーリングは・・・解散したはずのウィザード隊だ。 同時にIRアムラームを発射。目標はB-2D部隊・・・すぐ迎撃をしなければ。 「ったく!何だってこいつらが!」 「・・・躊躇はいらない!散れ!」 カーシェがAIM-120Cを6発全弾発射、同時にクラウスも上昇を仕掛けYF-23の編隊に接近する。 が、1発すり抜けてB-2Dに接近、1機のエンジンに直撃し爆発を起こす! 「しまった・・・っ!!くっ、こちらレイヴン04、脱出する!」 「・・・せめて残りは守ってくれ!爆撃機じゃどうしようもない!」 脱出に成功したのはいいが、とにかく敵エース部隊のウィザード隊を切り抜けないことにはB-2D部隊は安全といえない。 エース部隊の迎撃が優先だ。ロックオンをかけてクラウスがAIM-9Xを発射。それと同時にウィザード隊がブレイクをかける。目標をこちらに指定し、攻撃を仕掛けてくるようだ。 放たれたミサイルに対し敵機は増槽らしいものを切り離す・・・それが一瞬で破裂、金属球を放出しミサイルにぶつかり一瞬で爆発させてしまう。 「オーシアのエース・・・MLS部隊か。多少は楽しませてくれるだろうな?15年前のように。」 「ジョシュア・ブリストー・・・貴様なのか!?」 「俺ごときの名前を覚えていてくれて光栄だね。でももう覚えなくてもいい・・・影すら残さずに消してやる。」 急降下するYF-23をクラウスは捕捉している・・・IRシーカーの捕捉した鉄器がクラウスの脳内に流れ込む。 すると敵僚機が隙だらけと見たかAIM-9Xを発射・・・クラウスは限界までミサイルを引き寄せる。後方約240にいる。 フレアーをばら撒き、すかさず操縦桿を引き絞る・・・ラダーベータが可変し急激な旋回を交えた上昇に切り替わり、ミサイルは大幅に引き離されてしまう。 「試作機と完成された機体か。だが勝敗は技量が全て、機体で決まるなら人は必要としない。」 「及ぶか・・・場数も思いも性能すら違う。それに俺にフェメナがいるからな。」 ジョシュア機の後ろを取った・・・IRシーカーが敵機をロックオンし、ウェポン・ベイが開く。クラウスが今何をやりたいかフェメナが一番わかっている。 「交わしてみろ・・・フォックス・ツー!」 機首付近のウェポン・ベイからAIM-9Xが発射、するとYF-23が雲の中に紛れ込む。IRシーカーを妨害するつもりか。 途端に爆発音が聞こえる・・・何のつもりだ。あの程度で撃墜されたはずが無いだろう・・・来てみろ、ジョシュア。 『・・・反応が残ってるわ。あの中よ。』 「ならこっちから突っ込んでやる。」 スロットルを最大速度にあわせ、クラウスが雲の中に突入する・・・視界は効かない。ならば感覚と思念だけで探すか。 その時、一瞬だけ目の前を光が通過した・・・アフターバーナーか? 「貰う・・・最大加速でご丁寧に突っ込もうとしやがって!」 雲の中から抜けると真正面にYF-23ジョシュア機が。ロックオンをかけるとすぐにAIM-9Xを発射。 もとから囮だ・・・最大速度で振り切れるほどミサイルは遅くない。急激に旋回すれば距離を詰められる。 するとジョシュアはフレアーをばら撒き、また積雲の中に逃げ込む・・・次こそ逃さない。クラウスはアフターバーナーをかけてそのまま突入する。 レーダーが全く利かない・・・IRシーカーすら無理だ。まぁ判っていることだがバルカンで撃破するしかない。 「同胞を殺した気分はどうだ?」 「同胞だと?」 「元はお前もオーシア空軍・・・核兵器だ何だとそのために突破したとしても・・・変わらないぞ。貴様が殺した事実は。」 「ふざけるな・・・貴様らの情報操作で戦わせるように仕組んだのだろう。オーシア内部にも補佐官などの名目でベルカ側の人間がもぐりこんでいるようだからな・・・」 それに核兵器を隠している・・・もしそれを知っていてこの出撃をしたのなら核を運んだ奴らと同罪だ。知らなかったとしても駆り立てた連中が悪い。 「何の話だろうな?情報操作などと。」 「貴様らが戦争を起こした引き金だろう・・・数多くの奴を殺し、それ以上の奴らに悲しみを振りまいた。違うか?」 「ふん、それは戦勝国の言い分だな。貴様らの起こした戦争が無ければ火種も何も起きなかった・・・」 クラウスはジョシュアを発見した・・・がYF-23が急激に減速、高迎え角でエアブレーキを書けるつもりだ。 すかさず旋回、ロールも交えて距離を稼ぐとYF-23が急降下をかける。 「過去に何があったかはわかるが・・・それ以上の悲劇を増やしたくは無い。」 「貴様もベルカ国民か?・・・売国奴が!!」 「何とでも言え。核弾頭を使わせて両大国やISAF、エルジアを消すことよりは数段マシだと思っている!」 急降下からシャンデルに移ろうとしている・・・そう読んだクラウスはその頂点へと機首をめぐらせる・・・が、ジョシュアはフェイントをかけたらしい。 やはりその位置にはいない。だとすればフェイントをかけて最大限の攻撃力を発揮できる場所を探せばいい・・・真上か? 『真上にYF-23!』 「やはりな・・・!」 高迎え角でそのまま垂直に機首を向ける・・・そして同時に20mmバルカンを発射。突然の銃撃に面食らったのかYF-23は積雲から離脱する。 機首を戻しクラウスも積雲から脱出、そのまま急激な戦闘機動に入ったジョシュアを追撃する。 「追ってくるとは、それほど俺が憎いか?」 「どうだかな。ただ消したくないだけだ・・・わかるな?」 「わかんねぇな。ま、落としてみろ!」 ほぼ同等のスピードでYF-23が旋回、クラウスもそれに追随し急降下をかける。 『Stop is!マスター、やめておきなさい。話してたら時間が無くなるわ。』 「B-2Dか。そういえば連中は・・・」 友軍のF-35Eはウィザードと接戦を繰り広げているが、カーシェが加勢しても押され気味だ。 B-2Dに被害は出ていないが、いつ出てもおかしくない。 『・・・あ、また1機・・・・ちょっと、まずい・・・・』 「爆撃機を狙うとはいい度胸だな。先に落としてやる・・・フォックス・ツー!」 AIM-9Xがウェポン・ベイから放たれる・・・目標はYF-23。フレアーをばら撒くが交わしきれずに直撃・・・爆散する。 以前のミサイルよりも使い勝手は抜群。機動力、フレアー回避率・・・そして射程距離。どれをとってもAIM-9よりすぐれている。AAM-5の技術を応用したらしいが。 「俺をほうっておくつもりか?それこそ・・・」 「貴様こそ後ろががら空きだ。」 「何?」 その途端にジョシュア搭乗機YF-23が回避行動を取る・・・F-22Aが背後にいる。 思念波でそうするようにコンタクトを取っておいた・・・ジョシュアは空戦に集中していたため聴こえなかったようだ。 『助けてあげますわ。ここでライバルが退場なんて退屈ですもの。』 「まぁ遅れて悪かった。ジョシュアは俺が何とかするから護衛頼む!」 「任せろ、カーシェ。」 少々不安だが、クラウスはとりあえずカーシェにジョシュアを任せAIM-120IRの残弾2発をF-35Eに発射。 F-35Eがフレアーをばら撒くと同時にアフターバーナーを最大速度にしてクラウスが接近、一気に接近戦の距離にまで持ち込む。 『ガンレンジ、距離1240。』 「落ちろ・・・核を持ち出されるわけには行かない!」 20mmバルカンが発射、エンジン部分を破損させる・・・搭乗員はベイルアウト。機体は炎を吹きながらきりもみを起こし地面へと落ちていく。 すぐに次の目標を見つける・・・ウィザード隊のYF-23を確認。爆撃機の目標到達まで残り1分。ここからが残り半分だ。 するとF-35Eの放ったAIM-9XをYF-23が回避しようとする。それがちょうど目の前だ。 「貰っておくか・・・爆撃機への脅威は排除させてもらう。」 M61A6が20mm銃弾を発射、敵機に風穴を開けて爆発させる。ベイルアウトはしたようだが・・・さすがはベルカ戦争を生き抜いたエースというところか。 『ナイスキル!最初の頃より上達したわね。』 「まぁな・・・連中よりは上なんだろうけど。」 爆撃機部隊の進路が確保できた・・・それと同時に残りのオーシア空軍機が一斉に撤退を開始する。 防衛しきれないと思っての撤退なのだろうか。まぁ仕方ない話だ。 「この借りはいずれ返させてもらうぞ、フェザー隊・・・・!」 「いつでも来い。次に落とすのは貴様だ。」 かろうじてジョシュアも撤退したらしい・・・クラウスは目標となる爆撃機をじっと見つめている。 すると爆撃機部隊が1列に並びウェポン・ベイを開く・・・そして大量の誘導爆弾が投下される。カウントしきれない・・・それが一斉に鉱山へと向かっていく。 「敵爆撃機襲来!搬送作業停止!繰り返す、搬送作業停・・・・」 一斉に爆弾が直撃・・・鉱山入り口や周辺のトラック、対空砲などまで巻き込み一斉に破壊していく。敵も航空隊に自信があったか、あるいはレーダーに移らないせいで気づかなかったのか。 どちらにせよ、大量の残留思念が届いてくる・・・廃坑から核兵器を運び出そうとした人たちや周辺の警備部隊。死んだものや苦しんでいる意思だ。 このシステムは理解不能だ。だがそれが戦局を大きく左右する。突如円卓周辺に出現した謎の輸送船・・・そのほかにも各地に座礁したり地下から発見されたりと所属不明の輸送船がほぼ同時期に各地で発見されている。 ウスティオ独立直前の1987年近くに・・・そしてウスティオ共和国がMLSを開発、多少遅れてベルカ、中央ユージアと続きオーシア、ユークもようやく実験を始めたという程度。 『Attention!マスター、目標の完全な破壊を確認したわ。』 「っと、そうだな・・・」 鉱山は見る影もなく破壊されている。これではどうやっても核兵器を運び出すなんて不可能だろう。 よっぽどの作業でもしなければここは使えない。二度と開くことはないだろう。 『一安心しましたわ。これでもう核兵器は持ち出せないでしょうね。』 「・・・だといいんだけどな。」 カーシェは懸念を隠せない・・・既に核兵器の一部が持ち出されたんじゃないかと思うとさすがに不安だ。 そんなことはありえないのかもしれないが・・・それにしては警備があまりにも手薄すぎる。オヴニルやグラーバクのような敵がいたら確実に負けていたのに、出てこなかったのは・・・ 「今は帰還するぞ。やるべきことは全てやった。」 「・・・・そうだな。」 F-35Eが4機とB-2Dを1機失った・・・だが核兵器封印に成功したのだから戦果は上々。これで充分だ。 あとは持ち出されたのを封印するのを期待するしかない。そのための任務もいずれこなすだろう・・・ 1710時 ユークトバニア領内クルスク海軍基地 「昔のコネ使えって、冗談じゃねぇ・・・ったく。」 かつてハゲタカとも呼ばれ恐れられたエースパイロット・・・ドミニクは久しぶりにこの海軍基地を訪れた。 10年前に親友が基地司令に就任し、その時のパーティに呼ばれてからずっと来ていない・・・別に行きたくも無いところだが、やらなければならない用件と言うのもある。 第4埠頭のとある潜水艦前で待ち合わせをするということになっている。早速来て見ると確かに潜水艦が1隻だけ停泊している。 「久しぶりだな、ドミニク・・・」 「互いにな。」 基地司令のマカロフ少将が埠頭で待っていたので、早速手近な椅子に2人が座る。 「一体何があったんだ?」 「俺は長ったらしい話は嫌いだ。単刀直入に言わせて貰うとステルスの魚雷艇か潜水艦が欲しい。」 「なるほど。レジスタンスの活動に必要なのか?」 「そんなところだ。今の雇い主は連中だからな・・・」 さっそくドミニクが持ってきた地図を開く。ヴェリア渓谷の詳細な地図であり水深や輸送船通過不可能な海域まで記されている。 ナスターシャという情報局員から渡されたものだ。貯蔵庫にいたるまでのルートも書かれている。 「ふむ・・・だが潜行状態で原潜の通過は不可能だぞ?」 「だからあんたに頼んでんだ。旧型の小型潜水艦とか特殊部隊専用のなら通れる。誰がこんな狭い場所に原潜突っ込んで道をふさげと言った。」 「確かにな。」 原潜でも一応通過は出来るが水深が浅い。だから完全に潜行すると海底に接触する危険性が高い・・・それでは無理だと言いたいのだ。 だからといって下手なディーゼル潜水艦だと浮上航行のときに発見される公算が大きい。 「小型の原潜ってのは?」 「無理だな。」 「だったらエルジアが使ってた無人フリゲートくらいはあんだろうよ。ミサイルボックスとか・・・艦内アクセス通路に兵員を押し込めてここから遠隔操作できねぇのか?」 「それがあったら早速貸し出してるさ。」 やはりこれも無理か・・・半ばドミニクが諦めかけた時、マカロフ司令が何か思い出したようだ。 「そうだ、ベルカから鹵獲したあれがある。XVIII型潜水艦・・・あれならワルター航行だから普通に潜行状態で突破できる。高速も出せるから突破には最適だろう。後ろのこれだ。」 「U-796だったか?前の戦争で分捕ったあれを・・・けどマニュアルとか大丈夫なのか?」 「私は何でも捨てないで取っておく性格だ。君が一番知っているだろう?」 「あぁ、そうだったなぁ・・・」 ドミニクはうなずく・・・やっぱり幸運というのはどこかに落ちているらしい。 旧ベルカ海軍のワルタータービン潜水艦。魚雷発射管6門に対空30mm連装機銃を搭載した潜水艦を見て彼は納得する。これなら行けると。 「で、動くんだろなぁ?当然。」 「無論だ。実戦装備は欠かしていないし魚雷も積み込んでいる。機銃も弾薬はいつでも調達できる。」 「じゃ、そうしてくれよ?請求書はユークの情報部にまわしときゃあいい。」 「感謝する。」 2人とも笑いながら握手を交わすと、そのまま分かれる・・・とりあえず作戦は成功だ。 「っと、待った。」 「何だ?」 「乗員は機関士と航海士以外は大丈夫だろうな?」 「・・・当然だろ?」 そう、レジスタンスと実働部隊の混成部隊で既に20名近くの志願兵を募っている。それにバートレットとか言うオーシアのパイロットも同行するとか聞いた。 爆破解体のプロはいないが電子工学をやったメンバーが数名いる。彼らに解体を任せれば何とかなりそうだ。 最近ではレジスタンスが各地で活動、そして毎日のようにデモ行進が続けられユークも士気が下がっている。 裏に気づき始めたと言うことだろう。ユーク情報部もオーシアに大量のラジオ放送を流しているがこれが国内でもかなり好評だと言う。 逆にオーシアのラジオ放送にハーリング大統領が出ていて停戦を呼びかける放送をしているらしい。自分も聞いたがあれは間違いなく本人の声だ。オーシア国内でも反戦ムードが高まっているのか。 「よかった。一線の人員は抜けないがとりあえず2人は確保しておく。任せておけ。」 「頼むぜ?」 ようやく2人も別れ、ドミニクは外に止めていたバイクに乗る・・・当分アイツと会うことは無いだろうが、久しぶりに話してみると悪くない感じだった。 まぁ、生きていれば会えるだろう。そんなことを思いながら郊外へと走らせる。ナスターシャとか言うやつに報告をしなければならないだろう・・・ 1840時 CV-04スフィルナ(セレス海北) F-15Irを先頭にメビウス隊が着艦、さっそくフィンが下りてレナも実体化すると機体がエレベーターにまで運ばれていく。 久しぶりのスフィルナ・・・少々甲板のサイズが小さかったが難なく着艦できた。確かこの艦船はオーシアが原子力空母を主力艦とするときに解体する計画が持ち上がったのを中央ユージアが買い取り主力艦に仕立てたらしい。 建造するよりも随分安上がりな値段で買取、そこに最新鋭技術を盛り込み15.5cm主砲なども搭載。現在の戦闘にも耐えうる空母として生まれ変わった。 同じような経緯にオーシアのニミッツ級原子力空母もあるのだが・・・もうあれは完成時の原型などとどめていない。 こちらも艦橋基部近くに15.5cm連装砲を追加しCIWSと対空砲の数が増えている。それに対艦ミサイルのVLSを増やすなどかなりオリジナルと変わっているが。 「久しぶりのISAF空母は落ち着くよ、本当。」 「我が家じゃないの?フィンにとっては。」 「ほとんどそうなんだけど。」 メビウス隊がオペレーション・カティーナの時に使ったのもこの空母。いっそ海軍所属にしてしまえという発言もあったのだがさすがにそれは承認されなかったらしい。 「ところで・・・何でわざわざISAF空母に移されたのかな?」 「・・・難しいよ、レナ。しいて言うならあれかな・・・」 冬にしては珍しく晴れた空、そこから薄っすらと見える白い大きな鳥をフィンは見上げる。 鳥は鳥・・・だが、アークバードという今では暴走寸前の戦略兵器。レーザーをシンファクシにぶっ放した後、コントロールを失い今ではただの浮かんでいるだけの鳥でしかない。 「アークバードだっけ?宇宙ステーションなんだよね。」 「うん・・・戦争の兵器じゃないのにわざわざ無理に使ったんだ。まぁ酔狂な平和活動家が爆破工作でもしたかユークがミサイルで機能を落としたか、どちらかだろうけどね。」 実際はどちらでもなく、ベルカに占領されていたのだが・・・そんなことは誰も知らない。 「・・・悲しい運命さ。誰も届かない場所にいてあんな武装を搭載できるから・・・元は平和のために作られた鳥。それがこんな形で戦争に運用されるなんてね。」 「昔からあったじゃない。客船改造空母とか、輸送船を空母や巡洋艦にしたり・・・」 「そうだけど・・・アークバードにブルーレインが搭載されていたら何を思うだろうね。」 もし搭載されていたら悲しむか、あるいは戦いを受け入れているのか・・・まぁ、元々意思を持つことは無い。レナやミラ、レンなどは特殊なケースとしか言いようが無い。 意思を持たないものに意思を持たせる・・・蒼晶石とは不思議なものだ。 「逃げたいって思ってるんじゃないかな?私たちみたいな宿命に縛られてないんだし。」 「どちらにせよ、望んでいない・・・」 ため息が出る思いだ・・・すると、また1機のイーグルが着艦してくる。どうもISAF機とは違うようだ。 「フィン、あれISAF機じゃない。」 「え?」 「ウスティオ空軍機のF-15F/25みたい・・・」 そのF-15F/25は慣れた様子で夜間の着艦を成功させると、甲板要員が梯子をかけて早速搭乗員が降りてくる。 ライトに照らされ、F-15F/25のカラーリングがはっきりと見える・・・このカラーリングは確か・・・ 「メビウス隊の隊長・・・それに相棒ね。」 「君は?」 女性パイロットか・・・彼女がこちらに近づいてくる。ヘルメットを脱ぐとフィンに話しかけてくる。 「始めまして。リボンつきの2人。私はマール・レヴァンス・・・階級は少佐。よろしく。」 いきなり右手を差し出してきた・・・フィンもがっちりと握り返す。今日ウスティオから補充要員が一時スフィルナを使うと聞いていたが彼女のことだったか。 「フィン・リタルダント・・・階級は同じく。こっちは相棒のレナ。」 「よろしく・・・・けど始めて出会った気がしないね。いつもフィンが貴方のことを語ってたから。」 「・・・そっか。レイシスの・・・」 何かマールも納得した表情だが、フィンもあえて話さない・・・初対面だが、2人ともどこか通じるものがあるようだ。 「ユージアにはいずれ行こうって思ってた。貴方の顔を見たかったから・・・本当にレイシスにそっくりね。」 「よく言われる。技量は及ばないけどね。」 「謙遜する必要ないってば。私から見ればもう追いついてるよ?」 「ずっと超えられない存在。僕の中ではそれでいいんだ・・・」 複雑な表情でフィンは答えている・・・そうだ。超えられない存在でいいのだろう。 少なくとも、フィンの中でレイシスは自分より上ということだ。自分の理想にレイシスを重ねている。 「あはは・・・そうだね。さ、夕飯食べに行こう?」 「あ、そろそろね。」 レナもようやく気づくと、早速マールが食堂に向う・・・がフィンがマールの手を引っ張る。 どうやら方向を間違えていたらしい。マールは照れくさそうに頭をかきながらフィンに案内を頼む。 続く あとがき 何となく「ステルス機対ステルス機」の空戦を描いてみたかった+セラフィナに出番をということで任務の形式を変更。ステルス爆撃機でのシルム廃坑攻撃に変更しました。 レーダーに頼りきりなので逆にレーダーをかなり無効化できるステルス機で。そしてオーシアのステルス機部隊が防衛している設定にして「見えない戦い」を。 実際は下から見えるでしょうし本当に消えるわけでもないんですが、ステルス戦闘機同士の空戦を見たかったのもあります。 次はガルム隊VSオヴニル・・・では。 |
||||||
2007/10/17あくてぃぶF-15さんから頂きました。
第21章へ 第23章へ 戻る トップ |