ACE COMBAT5 The unsung war〜謀略の破壊者・ラーズグリーズ〜




ACE COMBAT5 The unsung war〜謀略の破壊者・ラーズグリーズ〜
第25章 反逆者たちの賛歌

ユークトバニア領内 ラスヴィエット空軍基地 12/22 1700時
「また真実放送でありますね。」
「本当。お姉ちゃん、これ聞き飽きたよ。」
休憩室でジェラとチェカはじっくりとラジオを聴いている。テレビもあまり面白いのが放送していないので音楽だけでも、と思ったらあちこちの周波数に情報局がオーバーライドして真実放送なるものをかけている。
戦争は間違っているとハーリング大統領の肉声で語っているが謀略だとか何とかで中央政府は黙殺している。オーシアはといえばこちらも同じ様なものらしい。
聞いているのはレジスタンス程度であり、住民もこれに感化されレジスタンスに加わったりデモ活動を行っている。前線の部隊も幾らか撤退をしているのがあり、無駄ではないようだ。
前線から少々離れたラスヴィエット空軍基地にセルゲイ達が派遣され、何度も前線に出向きオーシア軍に爆撃したりと戦線を押し上げる原動力になっていたのだ。
「それで、あれは何?」
「BMP-3でありますね。でも何故?」
戦車にも似た外見を持つ装甲車が何故かこのラスヴィエット基地に到着する。後ろに続いているのはトラックでありAN94を持った兵士が司令部へと向かっていく。
「嫌な予感がするであります。」
「私も、とにかく同志に知らせないと・・・」
チェカは直ちに格納庫で待っているヴィクトールとリェースに知らせるために向かい、ジェラは個室に居るセルゲイとkザラエフに伝えに行く。
ニカノール首相の救出作戦を指示され、今頃準備しているはず。ジェラが思わず廊下を駆け出すがいきなりユーク陸軍の兵士に囲まれてしまう。
「動くな。この基地にいる反逆者を捕らえに来た。」
「ま、まずいのであります・・・」
AN94を突きつけられ、ジェラは立ち止まるしかなかった。さすがにこの窮地を脱するだけの実力は自分にないことはわかっている。

「収容所だと!?何をふざけた真似を!」
「おとなしく従ってもらうぞ、同志大尉。手荒な真似はしたくない。」
セルゲイがAN94を突きつけられ、そのまま個室から外に出て行く。この完全武装の兵士相手でまともに打ち合っても勝てる様子がない。
「・・・隊長。」
「ジェラとカラエフ・・・お前たちもか。」
部下まで人質に取られてはやむなくセルゲイもつれられていくしかない。基地の外に出ると装甲車が待ち構えているがトラックはない。これから来るのだろう。
「申し訳ないであります・・・少し前に気づいたのでありますが。」
「今更だ。こうなったら仕方ないことだ。」
そっとセルゲイがジェラの肩に手を置いて慰める。が、すぐに手錠がかけられてしまう。プラスチック製の手錠でありなかなかはずせそうにない。
近くには基地の守備兵も拘束されている。彼らは空軍所属の陸戦隊のためこのことを全く知らされていなかったのだろう。

「そういうわけで、大変なことになってるの!」
『嘘!?お姉ちゃん達が!?』
「基地守備兵まで・・・か。」
ヴィクトールは冷静だがリェースは機体に同化したままあわてている。すると、ヴィクトールが椅子の脇からサブマシンガンを取り出す。敵地に投げ出されたときの自衛火器でマガジンも2つほどある。
「チェカ、格納庫扉から外の様子は見えるか?」
「ちょっと待ってて。えっと、兵員輸送用のトラック2台とBMP-3が1台。建物の前に止まってる。」
「わかった。チェカは自分の機体から銃を取り出して来るんだ。座席に付属してるが取り外しできる。」
ヴィクトールはサブマシンガンであるPP-2000を構え、セーフティをはずす。その間にチェカはMig-29の操縦席に入ると銃を取ってくる。
「取ってきたけど、次は?」
「格納庫の扉を開けてほしい。扉の脇にスイッチがある。リェースはロックオンをかけて欲しい。目標はBMP-3とトラック1台だ。」
『うん、やるよ!』
といってもあるのは赤外線感知式のAA-11のみ。空戦主体の装備をMig-31に施しているためアーチャーは多めに装備されている。
これで装甲車を撃破できるかどうかは微妙だが、以前やった空戦のゲームでも出来たから大丈夫だろうとヴィクトールは決意を固める・・・もっとも短距離AAMが70発とか搭載できるゲームだったが。
すると、格納庫の扉が開く。武装をAA-11にあわせてロックオンをかける。問題なく仕掛けられることを確認すると、ヴィクトールはスイッチに手をかける。
『ロックオン完了、いいよ!』
「フォックス・ツー!!」

「・・・何?」
「お、おい何だ・・・!?」
いきなり格納庫の扉が開くと、Mig-31が出てきてミサイルを発射する。そして砲口を基地に向けていたBMP-3に直撃すると砲塔が吹き飛ぶほどの大爆発を起こす。
もう1発は乗ってきたトラックに放たれ、命中すると一気に爆発をする。あの機体はヴィクトールのだろう。セルゲイは微笑する。
「な、何でここに来た?食い止めろ!」
陸軍の兵士がAN94を発射するが5.45mm弾では戦闘機に対してあまりにも非力すぎて太刀打ちできず詰め寄ってくる戦闘機に巻き込まれないように逃げるのが精一杯だ。
Mig-31がセルゲイとカラエフ、ジェラの近くに来るとヴィクトールがキャノピーをあけてPP-2000を発射。アーマーピアシング弾がボディアーマーを貫き陸軍兵が倒れこむ。
「リェース、実体化してセルゲイ達の拘束を解いてくれ。」
『うん!』
リェースが実体化するとヴィクトールはユーク正式採用のハンドガンであるPMMを投げてよこす。それをリェースが受け取ると、すぐにセルゲイ達の拘束を解く。
「悪いな、助かった。」
「隊長とジェラ、カラエフはすぐ格納庫へ!俺はすぐに離陸して食い止める!」
ヴィクトールがPP-2000をセルゲイに投げてよこすとリェースはそのまま機体と同化。タキシングを開始する。まだ陸軍の兵士は気づいていないようだ。
空軍陸戦部隊はすぐに基地司令部へと向かい陸軍と一戦交えるらしい。セルゲイ達もすぐに格納庫に向かうが陸軍部隊も格納庫を制圧しようとしていたのだ。
「なっ!?何故ここに!?」
「こっちが聞きたいくらいだ、貴様ら!」
セルゲイがPP-2000を発砲し先頭の兵士めがけ発砲。倒れた後すぐにSu-27の近くにあるドラム缶へと隠れる。カラエフは先ほど敵兵から奪ったAN94で応戦しているようだ。
「結構多いであります・・・」
ジェラが周囲を見渡しながらつぶやくと、無線機から空軍陸戦部隊の声が聞こえてくる。
『今武装を整えた。格納庫へと向かう!』
「助かるであります!」
『気にするな、首相をとっとと救い出して来い!』
空軍陸戦部隊には今回の作戦が特例として知らされている。万一この基地に妨害が入る可能性もあり、その時は協力してもらったほうがいいという司令部の判断だ。
数分もすると陸戦部隊が到着。AN94を連射し陸軍部隊と交戦している。すると兵士が昇降用の梯子を持ってくるとSu-27に立てかける。
「早く乗りな!俺たちが食い止める!」
「助かる!ジェラ、行くぞ!」
「了解であります。同志軍曹、感謝であります!」
「かわいい姫様に礼とはうれしい限りだ、早く行け!」
梯子をあがりきり、セルゲイがキャノピーをわずかに開けるとその隙間から機内に入りすぐに閉ざす。するとジェラも同化しMLSが稼動。機体がそのまま格納庫から出て行く。
少し遅れてMig-29もついてくる。何とか離陸だけはできそうだ。すでにMig-31は空中で待機している。燃料のほうは十分あるため作戦開始には影響はない。
『ラスヴィエット・コンロールよりジェラーヴリク隊、離陸を許可する。首相を救い出してくれ!』
「何度も言われてるが了解。必ずやってやる。」
軽く無線に答え、セルゲイはSu-27を加速させ離陸する。遅れてMig-29も離陸し何とか空に逃げ切れた。
さすがに陸軍部隊も追ってくることはできず、セルゲイは一安心すると予定通り作戦行動に移る。
『GRUより通信であります、同志。』
「何?」
セルゲイが無線をつなぐと、ナスターシャの声が聞こえる。銃撃音も聞こえるがどうやら予定通り進行中というところか。
『首相確保に成功したわ。そちらは?』
「今向かっている。補給予定の空港は?」
『こちらの実働部隊が確保したと先ほど連絡が・・・輸送機もYak-44を確保できたわ。急いで。』
「準備万端、か。では予定通り作戦を実行する。それとラスヴィエットに陸軍部隊が入ってきた。二度と入らないように手を打ってもらいたい。」
『もちろんよ。』
ナスターシャに念を入れてもらい、セルゲイは部隊を率いてそのまま作戦空域へと向かう。
『おっかなかったぁ・・・ボク、寿命が縮まるかと思ったよ・・・』
『大丈夫よ、リェース。もう空にいるんだから。』
チェカが始めての陸戦で怖かったというリェースを慰める。さすがにMCといっても銃弾が直撃すればただではすまない。まして5.45mmのようなストッピングパワーの大きい銃弾を受ければなおさらだ。

同時刻 CVケストレル艦橋
「では、そろそろ行かなくては、な。」
「本気ですか?それは・・・」
ハーリング大統領が数名の部下と秘書をつれて首都に乗り込むという提案にジュネットはびっくりした様子で答える。
だが、ブライトヒルに大統領がいなければ発言に効力は出てこない。彼が無事であるということを知らせれば大統領になびく者も出てくるだろう。
「あぁ、艦長。それとジュネット君。ありがとう。ではそろそろ・・・」
「待ってください!」
艦橋にマールが飛び込んでくる。クルー2名が必死に抑えているが、マールは振り払うと大統領の前にたち自分の思っていることを打ち明ける。
「大統領、この後のベルカの処遇を聞いておきたいんです。」
「何?」
「この戦いは本当にベルカのためと思って戦ってる人もいるんです!あの時オーシアに騙し取られ、南北分断までされた領土をなんとしても取り返したいと思ってる人も。」
ジュネットは驚いてメモにペンを走らせる。ウスティオの青い鳥、大統領に直訴とタイトルに書くと筆記体ですばやくメモを取る。
「それで?」
「終戦後でいいんです。戦後処理が終わってからでも、五大湖周辺の領土とノースオーシアをベルカに返還できませんか?」
「なるほど。しかし何故?」
大統領が尋ねると、マールは確信に満ちた声で大統領に意見を述べる。
「後世に禍根を残す後始末では本当の終戦なんていえません!利権とかがあって難しいのもわかってます。でも、どうしてもいつかやらなくてはいけないことなんです!しなければ、第二第三の計画が・・・」
わかった、と大統領はうなずいてみせる。元からそういうことを念頭に入れていたのだがここまではっきり言われ、決意を固めたようだ。
「このことは次の国際会議に出すことを約束する。ただ、1つだけ聞かせてほしい。君はウスティオの人間だが、何故ベルカのことを気にかける?」
「隣国だからこそ、他人事と思えないんです。あの時戦ったエース達にもそれぞれの思いがあり、到底悪人と信じることはできなかった。そうなるように仕向けたのは何か、そう考えたら行き着いたのは・・・オーシアへの恨みでした。」
参ったな、と大統領がつぶやくとマールの言葉にうなずいてみせる。するとSPがそろそろ時間ですと知らせてくる。
「では。それとマール少佐だったかな?君の意見は必ず発表しよう。」
「ほ、本当に!?」
まさかここでそんな発言を聞くとはマール自身も思わなかったらしい。ただ言いたいことだけは本人の前で言うためにわざわざケストレルに乗り込んできたが聞き入れてくれることは想像できなかったようだ。
「もちろん。では、行くぞ!」
「はっ!」
数名のSPを引き連れてハーリング大統領は艦橋を降りると、待機しているCH-53Eに乗り込む。これから首都に向かい、主戦派を黙らせる仕事が待っているのだ。

「で、何で一緒なんですか。」
「仕方ないわよ。」
休憩室でウェインとリュートが待っていろと言ったためリズとマリエルは同じ部屋で待っている。いったい何のために待たせるのかと思っている。
テレビのニュースからはオーシア軍が橋頭堡に立てこもり必死の抵抗を続けていると報道が入っている。ユーク放送に切り替えると総書記が戦果を誇らしげに宣伝し自軍の優勢を伝えている。
「・・・そういえば、さっきクルーが館内放送をかけるように奔走してたわね。」
「何です?それ。」
「さぁね。」
そっけなくマリエルが答えると、いきなりスピーカーのハウリングとともに声が聞こえてくる。
「俺だ!耳かっぽじって良く聞け、幽閉されていたユーク ニカノール首相の身柄を救い出した。この戦争は彼の意思じゃねえ!」
いきなりの大声に2人は一瞬びっくりしたが、はっと気づくと顔を見合わせてほぼ同時に誰もいないのに叫んでしまう。
「「一体誰なの!?」」
「どうせ新手の詐欺じゃない?艦隊相手のオレオレ詐欺。」
フェメナもやることがなかったのか入ってくると暇そうに冗談を言い始める。確かに今の口調では誰が誰かわかりそうにない。
不運なことにこの声を知っているのはウェインとナガセしかいない。グリムはあまりよく覚えていないしリュートはまったくといって良いほど聞いていないのだ。
しかもリズはバートレットの思い出をウェインが嫌がっていることを感じてまったく見ていない。わかるはずがないのだ。
「ああいう詐欺をやる方もやるほうです。でも何のため?」
「罠に引っ掛けて多数で迎撃じゃない?どうせ。」
「望むところです。一対多数なんてマスターの敵でもないです。」
リズが自身ありげにこぶしを手のひらにたたきつけながら言う。マリエルもそれは同感らしくそっとうなずいてみせる。
「Fantastic!では早速準備でもする?仲良く。」
「「誰がこいつなんかと!」」
ほぼ同時にまた叫び、マリエルとリズは顔を背ける。フェメナは羽で笑いを隠すと自動販売機で紅茶でも買ってクラウスのところに戻る。
「・・・調子狂うです。」
「同感ね。私もよ。いっそここでオブジェになる?」
「その前に殴り飛ばすです。このケストレルの壁を突き破ってでもぶっ飛ばすです。」
いきなり険悪なムードになったところにちょうどよくウェインが戻ってくる。そこでリズは早速先の声の人が誰なのかを訪ねる。
「先の大声で怒鳴った詐欺師は誰ですの?」
「・・・前の隊長だ。4日程度の隊長だがなぜかナガセが慕っている。個人的には誤射に見せかけて死んだほうがよかったが。」
「それほどにくいのか。」
「憎いというか何と言うか、だ。」
そりが合わない、そんな程度だとウェインが答える。操縦技量はかなりありF-4Eを使っているが新鋭機に乗ればエースでも軽く相手できるくらいだと感じている。
もっともその技量を示す前に艦艇に搭載されたAA-11のSAMタイプに撃墜されてしまった。収容所はおそらく脱走してしまったのだろう。
「・・・行くぞ、マリエル。時間だ。」
「わかった。」
リュートにマリエルが静かについていく。ウェインも時計を見てそろそろだと思うと飛行甲板へとリズを連れて向かう。すでにタイフーンは甲板に出ているためそのままウェインは乗り込む。
補給物資がISAF製しか届かず、AAM-4やAAM-5を搭載しクラスター爆弾も積み込んでいる。何が出てくるかさっぱりわからないと言うためとりあえず重武装にしておこうという判断だ。
いざとなればクラスター爆弾はどこかにばら撒いてしまえばいい。後々抗議がくるかもしれないがそれは後で何とかすればいい話だ。

2100時 グラーニニ・ゴルキー
『・・・俺だ 。なんとかここまでたどり着いて今草むらの中に車を隠してるが・・・そこいらにゃレジスタンスの連中も潜んでるんだがな。どうもいやな予感がする。』
「・・・ちょっと良いか、レジスタンス。」
セルゲイがあきれた様子で無線の相手に答える。大体誰かはっきりとわかるわけがないのだ。
「レーダーが使えないか何か知らないがそれでは新手の詐欺にしか思えんぞ。ナスターシャ、誰か説明してくれ。」
『ミスターBよ。』
「了解、聞いた感じオーシアの連中だが罠ではないだろうな?というよりさっきから黙ったぞ。」
『人見知りの癖があるのよ。間違えたらなおさら。』
そうかとセルゲイが笑ってしまう。ラーズグリーズ宛の無線だったらしいが戦闘機が来たと聞いて早速間違えたらしい。
『気が早すぎるであります。でもその無線はラーズグリーズに向けたものでありますか?』
『えぇ。』
『まさか、とは思うのでありますが・・・』
『お姉ちゃん、何?誰と共同作戦?』
リェースが肩を乗り出して話題に入ってくると、ナスターシャの方で無線を受け取ったのか答えを返す。
『お出ましよ。ラーズグリーズの。あぁ、IFFはこちらのコードを伝達しておいたから誤射の心配はないわ。』
「感謝する。だが誰だ?」
『味方機4機を感知。MLS機は2機ね。』
チェカが状況を報告するとセルゲイ達の脳内に大体の友軍機のイメージが見える。それを見てあぁ、とセルゲイは納得した様子だ。
かつて戦ったウィンド隊。セルゲイはそれでこそラーズグリーズの異名をとるにふさわしいと考えている・・・というより、一時期消息を絶っていた彼らにはふさわしいと。
「英雄としてよみがえる、か・・・待っていたぞ、本物の英雄。」
『お前は・・・!』
「思い出してくれて光栄だ。ウィンド隊。作戦は成功したも同然だな?今回は友軍だ、安心しろ。」
バストーク半島で一騎打ちを挑んだり僚機を撃墜したりとウィンド隊と何度か交戦している。彼らにいい思い出がないのはわかっているが今は友軍、一緒に戦うしかない。
『1つだけ聞かせて、2番機。』
『何・・・かな?』
相手の2番機がカラエフに通信を入れる。どうやらこの前3番機を落とされたことについて聞きたいらしい。
『チョッパー・・・ウィンド隊の3番機はどうだったの?強かった?』
『・・・あぁ、かなり。今まで戦ったエースの中では最も強かった。だが、俺が落としたことに変わりはないよな・・・』
『気にしないで。脱出装置に細工した人がいてそのせいで死んだ・・・貴方は原因を作ったことはあっても、チョッパーを殺した人ではないから。』
『・・・救われようとは思っていないけど、了解。』
『ナガセ・・・さんだっけ?ありがとう。』
チェカが2番機・・・ナガセというらしいが彼女にお礼を言う。カラエフは結構その事で悩んでいたことが一時期あり今もどこか思い出してしまうところがあったのだ。
『とりあえず状況を説明させてください。私達は現在近くまでたどり着きましたが突破ルートにベルカ軍が防衛ラインを敷いているんです。あまり使わない空港の防衛ラインを固めたところを見ると私達の妨害だと思います。潜伏中のレジスタンスには連絡できず、あの空港の守備隊相手なら制圧できる兵力だったんですがベルカ正規軍が加わった状態では10分も持たないでしょう。作戦開始時刻は6分後、それまでに私達を空港まで連れて行ってください。』
レジスタンスが簡潔に詳細を報告すると、了解とセルゲイが連絡をいれラーズグリーズや僚機も一様にうなずく。するとE-3Cがいきなりどこからともなく飛んでくる。
『こちらサンダーヘッド、今回の作戦の指揮をする。』
『久しぶりです、石頭管制官。』
『相変わらずだな、リズ少尉。では作戦を開始せよ。』
オーシア軍のE-3Cがわざわざ本土から飛んできたらしい。するとデータリンクでこちらにも情報が入ってくる。トーチカや検問などが大量にあるようだ。
『ウィンド01よりジェラーヴリク、こちらにはクラスター爆弾がある。近道で突破させるから空を頼む。』
「了解だ。」
セルゲイが空を警戒しているとやはり敵機が飛来する。ベルカ空軍機のトーネードFX、無人機の集団だが攻撃機の意味合いが強い。
『無人機・・・確認したのであります。』
「行くぞ。」
武装は小型弾頭ディスペンサー。これをばら撒いて装甲車を粉砕してしまおうという魂胆だろう。生産して即戦力に加えられ、本部の承認だけで躊躇せずに的確な攻撃を出来る無人機は今のベルカにはぴったりだろう。
だが、セルゲイは無人機の戦闘は嫌でもあった。人が無人機械に殺されるのも嫌だが、テロリストでも横流ししたのが運用されたらたまったものでもない。
ユークトバニアはまだ治安がいいとはいえない。無人機をテロリストが手に入れ大量に配備したら正規軍など歯も立たなくなる。滑走路と整備機構、管制塔さえあれば簡単に使えるのだから。
『数は4機ね。』
「だったら確実にヘッドオンで叩きのめすか。無人機だが所詮は攻撃機、遅れを取るな。心ある者が心無い機械に負けるなよ。」
IRIS-Tは装備してるが攻撃が主な目標だろう。するとラーズグリーズのF-25Aが無人機にAAM-4を発射する。さすがに最初のミサイルは回避するらしくチャフをばら撒いてブレイクするが1機逃げ遅れ爆発。
残り3機が編隊を戻そうとするが、その隙にセルゲイは速度の落ちたトーネードFXの背後に回りこむ。
『ロックオンであります。』
「フォックス・ツー!」
AA-11が発射、すぐにトーネードFXが回避行動をとるが間に合わずに直撃、爆発する。無人機でいいのは罪悪感を感じないことと残留思念がこないことくらいだ。
左を見るとMig-31がGsh-23Lで操縦席付近をぶち抜いて撃墜、ほぼ同時にMig-29がAA-11を発射しトーネードFXを撃墜したのを感じた。
『ユークの連中もこうしてみるとやるもんだな。聞こえてるか!?いいじゃねぇか!』
「褒めてもらえるのはうれしい限りだ。ミスターBとやら。」
EFタイフーンからクラスター爆弾が投下され、それぞれがトーチカや検問を粉々に吹き飛ばしていく。敵地上戦力もあんなものを真上からばら撒かれてはひとたまりもないだろう。
『時間がありません、近道を突っ切ります!』
『あー、了解だ。頼むぜ、グレビッチ。』
『了解!』
先頭にいるBMP-3が装甲車にあるまじき速度で突っ走っていく。搭載した10cm砲を妨害する地上部隊めがけぶっ放しながら進撃し後方からGRUがレジスタンスに貸し出したBTR-90が追いかける。
その後ろからユーク軍のBMP-3が追いかけてくるという形だ。
『突っ走りすぎだ!まったく・・・!』
『またミスターBか。困ったものだ。』
おそらく「またミスターBか」のところはスペースを1文字毎に入れたんだろうとセルゲイは思いつつ、向かってくるKa-50の対処をする。

『装甲車、撃破なのです。』
「よし、いけそうだな。」
対戦車バルカンでBMP-3を撃破、ウェインは快調だと感じつつEFタイフーンを上昇させ次の目標を探し当てる。
護衛のFX-10Aが飛んでくるが、鮮やかにナガセのF-25Aがヘッドオンで撃墜してしまう。そして爆発の中を突っ切ると急上昇、装甲車を狙い急降下しようとしたトーネードFXに20mmバルカンをぶち込み撃破する。
『ナガセ。あんな飛び方してて死なねえ。 たいした奴だ!』
『ありがとうございます!』
さすがに少々無謀すぎるとウェインは思ったが、どこか隊長の前ゆえにいいところを見せたいと思っているらしくナガセはいつも以上に奮起している。
そこにFX-10Bが飛来する。狙いは対地支援を行うEFタイフーンだがその後ろにF-25Aが喰らいつく。グリムの機体だ。
「グリム、後ろを頼む。お前なら振り払えるはずだ!」
『了解です、隊長!』
アフターバーナーをかけてガンキルに持ち込むとFX-10Aに認識させる。当然FX-10Aは速度を上げつつ旋回するがそこにグリムがAAM-5を発射。
白煙がなびき、回避行動をとる前のFX-10Bに直撃。爆発を起こし無人機がレーダーから消滅する。
『グリムか?お前のことは次の推薦で 実戦機に上げるつもりだったんだ。』
『あ、ありがとうございます!大尉!』
『ほらほら、次の獲物・・・細切れがいい?それとも真っ二つ?』
追撃してくる敵のBTR-90にDEFA30mm機銃を掃射、ラファールが装甲車を破壊すると上昇する。目標はトーネードFX。制空装備を搭載しているタイプだ。
『無人機風情が・・・マリエル、遠慮なく切り裂け。』
『当然。』
IRIS-TをマジックAAMで撃墜、ヘッドオンでDEFA30mm機銃をリュートが発射するが回避されてしまう。リュートは舌打ちするとすぐに旋回させて追撃。
急上昇を仕掛けたトーネードFXめがけリュートがマジックAAMを発射、急激に旋回させてナガセのF-25Aを狙うトーネードFXにMICAを発射。
すると目の前からKa-50が向かってくる。狙いは装甲車らしい・・・すぐにリュートはDEFA30mmを発射し操縦席をぶち抜く。パイロットは即死だろう。
『無人機も撃墜。細切れね。』
『海軍航空隊のリュート大尉か?挨拶が遅れてすまん。 俺は人見知りの癖があってな。』
『嘘をつくな。バートレット。まぁお前の期待に沿うくらいは活躍してやるとする。』
『えぇ。敵はすべて切り裂いてあげるわね・・・』
怪しげにマリエルが笑い、リュートは平然と飛来する敵機の処理にかかる。ウェインは対戦車バルカンで検問所を粉々に破壊すると、空港が見えてきた。
「空港まであと少しか・・・リズ、行くぞ!」
『軽くぶっ飛ばしてやるのです!』
ベルカ軍の配備したスーパーレオパルドが砲口をBMP-3に向け発砲しているが、ウェインは真上からクラスター爆弾を投下。
大量の小型爆弾が戦車の天蓋を貫いて爆発。いっせいに爆発を引き起こす。やはり人は乗っていないようだ。
『そしてあなたのいちばんの秘蔵っ子は・・・?』
『ブー・・・いや、ウェイン!てめぇも隊長らしくなってきて安心したぜ。これなら俺がいなくてもやっていけそうだな!』
「・・・あぁ!」
ブービーと嫌がっていたことを覚えていたのにウェインはふっと微笑する。ようやく一人前と認めたか、あるいはどういう意図かわかるはずもないが。
『こちら空港部隊、支援を頼む・・・・案外数は多いが、装甲車の支援さえあればいけそうだ!航空部隊は目立つ重火器を制圧してくれ!』
「あぁ。あれか・・・」
基地にすえつけられた対空機銃が基地めがけ発砲している。人には十分すぎる威力、早急に排除するべきだとウェインは判断する。
『ガンレンジ、です。ぶん殴ってやるです!』
「よし・・・!」
トリガーを引き対空機銃めがけマウザー27mmが発射、直撃すると爆発し沈黙する。すると地上に装甲車が到着。BMP-3が対空ミサイルや機銃に10cm砲をぶっ放し沈黙させる。
『感謝するぜ、ウェイン。みんな仲良く最高のドライブだった。そんじゃあ脱出だ!』
『大尉、輸送機は大丈夫なんですか?それにブランクが・・・』
『無駄口は関心しねぇな、グリム。ほれ、行くぞ!』
装甲車が格納庫内部へと入っていく。内部で激しい銃撃戦が行われているようだがおおむね優勢に進んでいるらしい。レジスタンスやGRUが何とか押しているようだ。

『Yak-44か。まぁいけそうだな。どうせ輸送機だ。細かいところは頼むぜ?』
『もちろんよ。』
ナスターシャの声がすると同時にYak-44がタキシング。首相やレジスタンスなどもほぼ全員乗り込みそのまま離陸を開始する。
だが、同時にジェラが敵意を捕らえる。オーシア軍のF-15S/MTD、それもEFLS搭載機だ。いっせいにこちらへと向かってくる。
『この憎悪・・・貴方達でありますか!8492!』
『ご名答。グラーバクより各機、首相を逃すな。』
グラーバク航空隊がいっせいに追撃しようとするが、セルゲイは数を見て微笑する。たった4機。この程度なら何とか食い止められる。
「ラーズグリーズ、首相を護衛しろ。グラーバク程度俺たちで片付ける。」
『何!?それは・・・!』
「首相を逃すのが先決だ。それとも、俺達にケストレルへの招待状でもくれるつもりか?」
ウェインがようやく判断したらしく、了解と答えるとセルゲイもそのままグラーバクに正面から突撃する。Mig-29とMig-31も随伴してくる。
『後は頼む。グラーバクとはいつか決着をつけたいが・・・』
「任せておけ。さて、待たせたな。ベルカンエース達。俺達が相手をする。」
ラーズグリーズ隊はYak-44を護衛、グラーバクのF-15S/MTDも彼らを優先的に排除すべき目標と認識したらしい。
『ジェラーヴリク隊だ。数は少ないがラーズグリーズと同等の戦力を持つ、油断は絶対にするな。』
「同等ではないな。それ以上だ。訂正させてやろうか?」
ヘッドオンでSu-27がミーティアAAMをチャフで回避、F-15S/MTDにGSh-30-1を発射するがグラーバク機も簡単に回避してしまう。
やはりベルカンエース。腕前に関しては侮れないものを持っている。そしてさらに気にかかるのがジェラの気分だ。
『う・・・ぞ、憎悪はかなりきついであります・・・!』
『この憎悪を何だと思っている?今まで貴様らが殺してきたベルカの民の憎悪だ!』
喰らいついているのは2機、ジェラが少し調子が悪いながらもセルゲイははっきりと感じ取る。隊長機と4番機らしい。
『殺セ!憎悪ニ巻キ込マレロ!』
『嫌であります!何なのでありますかこの声・・・!』
EFLSがかなりの憎悪を喰らい、MLSに干渉するほどにまで声を出している。ジェラは時折意味のわからない叫び声やうめき声なども感じている。
だが、それらはすべてマスターに届かないように遮断している。そうしなければここで散ってしまう。チェカやリェースをおいていく真似は絶対に出来ないのだ。
「ベルカの民だと・・・」
『お前達が不当に苦しめたベルカは今こそ報復を果たす!ユークのエース、覚悟しろ!』
「出来るならやってみろ。憎悪で勝てるというのであればな!」
F-15S/MTDは確実に距離を詰めている。セルゲイは読みどおりだと思うと急激に減速、そのまま機首を90度真上に持ち上げる。
『・・・っ!』
「真似できるならやってみろ・・・!」
追撃を恐れ、そのままF-15S/MTD2機が急降下。そのままセルゲイはSu-27の機首を落とすと逆にF-15S/MTDを追撃する。4番機のようだ。
『な・・・追われてる!?フランカーなのに速いぞ、こいつは!』
「教えてやる・・・フォックス・ツー!」
AA-11が発射されるが、すぐにグラーバク4番機がフレアーをばら撒くと高空に退避。するとグラーバクリーダー機がAA-11にも似たミサイルを発射する。
『ミサイル・・・だ、ダメであります・・・何でありますか、この憎悪は・・・!』
「何・・・」
ブルーレイン搭載型AAMだ。連中は憎悪の感情だけは人一倍強い、だからブルーレインのミサイルに憎悪を乗せて飛ばすなどたやすいことだ。
確実に思念を追跡してくる。フレアーやチャフなど効かない上に追尾性能もAA-11と同等かそれ以上ある。セルゲイは舌打ちすると急降下、そのまま送電線の近くに降下する。
ブルーレイン搭載型のAAMも追撃してくるが、電線に絡まり爆発する。ジェラは頭痛がするらしいがまだ大丈夫だ。
「・・・大丈夫か、ジェラ。」
『大丈夫であります・・・ですが、リェースとチェカも苦戦してるであります・・・』
リェースやチェカはまだ精神年齢的にも幼い。あのAAMに追い回されたら気絶してしまうのではないだろうか。技量はあるが、彼女たちが消えて精神が乱れたら?
そんな考えは一瞬で消える。今度は高空から4番機が向かってくる。発射してきたのは例によってブルーレイン搭載型のAAMだ。
『うぅ、まずいであります・・・!』
「またこいつか・・・ジェラを苦しめやがって・・・!」
かといって対処方法はない。そしてAIM-9ほどのサイズ、イーグルなら8本以上は搭載できる。現にあのMTDには12本ずつ搭載しているのだ。
電線に絡める方法は使えない。ならば無理にでも迎撃するしかない。後方レーダーでAA-11をロックオンさせると無理やり発射。AA-11がFXBR-1に向かっていく。
「ジェラは休んでいろ。1機落としたら何とかなる。」
『お願いであります・・・』
高迎え角でエアブレーキをかけつつ強引に反転、F-15S/MTDめがけヘッドオンでセルゲイがAA-11を発射する。ミサイルを回避しきれず追撃していた4番機は爆発。
とたんにミサイルも自爆する。だが寸前でパイロットは脱出していたらしい。
「スプラッシュ!さて次だ・・・お前だな。グラーバク。」
『そうでなくては面白くない。こうしていると久しぶりに空を飛んでいる気分になる・・・さて、騎士の戦いはフェアにやらなくてはな?』
いきなりグラーバクリーダーのアシュレイがEFLSを切ってしまう。それと同時にジェラを苦しめていた憎悪がかなり薄まっていることに気づく。
『な、何のつもりでありますか・・・?』
『全力の貴様らと戦う余裕くらいあってもいいだろう。こんな方法で勝ったらミヒャエルに笑われるのでな。今はまだ余裕がある。その間に貴様らの全力を確かめさせてもらおうか・・・!』
「・・・さすがはベルカンエース、誇りを大事にするわけか。まぁいいだろう。」
どっちにせよ生き残るのは自分だ。セルゲイは確信に満ちた表情でヘッドオンを挑む。だが互いにミサイルを発射するわけでもなく接近していく。
互いにエース、ミサイルは回避できる。機銃で決着をつけるしかないのだ。急激にSu-27とF-15S/MTDが距離を詰める。
「だが・・・何故貴様が核を落とすことに加担する?」
『かつて貴様らは偽善で領土を奪い力で跳ね除けた。ならばそれ以上の力で押し切るほか無いだろう?』
ほぼ同時に機銃を発射し、すぐにロールしつつ操縦桿を引き上げセルゲイが回避。アシュレイはそのまま突っ切る形で弾幕を突破するとすぐにセルゲイがそのままエアブレーキを展開し最小角度で反転する。
それと同時にAA-11を発射、この距離からなら当てられる可能性はある。
『R-73、ロックオンであります。』
「よし。フォックス・ツー!」
AA-11が放たれるが急激な機動でアシュレイが低空まで急降下し回避しようとする。だがセルゲイもそれをただ黙ってみているわけではない。
地表近くでアーチャーを振り切ろうとしたところに急激に接近、真上を取ると容赦なくGSh-30-1の銃弾が浴びせられる。
『・・・やるようだな。さすがだ・・・』
脱出装置が稼動し、パイロットが脱出。同時にF-15S/MTDにAA-11が直撃し爆発を起こす。セルゲイが周囲を確認するとすでに憎悪は消え去っている。撃墜したようだ。
『撃墜しました、隊長。ですがリーダー機と俺の撃墜した機体から脱出を確認しました。』
『ある意味パイロットの鏡ね。』
チェカがそんなことをつぶやく。
すでにYak-44は作戦空域から脱出を果たしたためもう護衛の必要性は無い。レジスタンスもうまく逃亡したようだ。
すると、長距離無線で報告が入ってくる。ナスターシャからだ。
『終わったかしら?私はこのままケストレルに行くわね。』
「基地のほうは大丈夫か?陸軍の部隊が・・・」
『大丈夫よ。』
「よし、全機ラスヴィエットに帰還するぞ。RTB。」
本当に大丈夫かという不安はあったが、帰れる場所もそこしかないためセルゲイは基地へと機首を向ける。空軍司令部も協力的だからほぼ大丈夫だとは思いたい。
それでも多少の不安はある。すでに制圧されているか、あるいは戦闘が行われているか。何にしても帰る場所はラスヴィエットしかない。

CVケストレル艦橋 2100時
「・・・なるほど。」
「そういうことだ。今回の戦争の直前に私は幽閉された。ベルカ残党と手を組んだクーデター軍。主にスペツナズや強硬派が上手く仕組んで行動したのだ。」
ニカノールがジュネットに対し取材を続けている。その一方ではバートレットとウェインを間に挟みラーズグリーズ隊のメンバーがどちらを隊長にすえるか話し合うために集まっていた・・・のだが。
「やっぱり、てめぇが隊長をやれ。ウェイン。」
「・・・いいのか?」
「あぁ、ウィンドと部隊名を変えたときからお前が隊長だ。風の噂で数度聞いてたぜ?」
こんな調子であっさりと決まってしまった。バートレットはかすかに笑うとウェインの肩を何度もたたいてニカノールに紹介する。
「こいつが俺の教え子でかなり優秀な奴だ。ウェインっつー、ちょっと気難しいがいい奴なんでな。」
「君の噂は聞いているよ。まぁほとんど看守の愚痴に近いがね。」
悪いな、とウェインも頭をかいてみせる。やはりかつての敵軍の首相と出会うのはウェインも少し複雑な気分でもあった。
が、ニカノールは首を振ると手を差し伸べてくる・・・ウェインもそれを握り返すと、がっちりとした感触が伝わってくる。
「君がいるというのは心強い限りだ。頼むよ。」
「・・・あ、あぁ。」
首相からも頼まれ、ウェインは少々戸惑ってしまうがリュートがひじで小突く。
「いつもどおりでかまわないだろうが・・・・」
「緊張しないのか?お前は?」
「いや?だが・・・頼れる雰囲気はあるな。」
ニカノールは一礼すると、この後の方針をアンダーセン艦長と話し合う。ウェインはふぅと緊張をほぐすように一息つく。
「あの、それで貴方は?」
ナガセがはじめて艦橋を見て回っている女性に気づく。まったく見覚えも無くユークの見慣れない制服をつけている。階級はどうやら少佐らしい。
「私?ふふ、謎の女1号よ。」
「はぁ・・・」
難だとナガセは思ったがリュートは大体彼女の素性はわかった。わざとぼかした名前を言うのは諜報員。おそらくはGRUの将校といったところだろう。
どうやらあるディスクを艦橋に渡すために艦橋まで来たらしい・・・するとクルーが頭を抱えて答える。
「ダメだ・・・すみません、ディスクの内容をヒューバードに送信します。」
「ええ、そうして。」
ケストレルの情報要員が頭を抱えて机をたたく。やはりヒューバードのクルーに劣っているのがどこかで悔しいらしい。
「でも、ディスクの内容はある程度わかるわね。「灰色のエースたち」って知ってるかしら?」
「灰色のエース?」
ほぼ全員が首をかしげる。聴きなれない言葉であり一体この事件と何のかかわりがあるのかすらわからない。
「こう言い直すべきかしら?「国境なき世界」、と。」
「国境なき世界・・・まさか15年前のテロリスト達!?」
グリムがようやくわかった様子で声を上げる。15年前、アヴァロンダムを制圧しV2を発射するぞと脅したあの集団だ。
「あいつら!?」
廊下で待っていたマールが国境なき世界と聞きつけ、そのまま扉を開けて入ってくる。相変わらずのアグレッシブさに全員が声も出せないがマールは咳払いをする。
「それで、そいつらがどうしたの?」
「マスドライバーが先日、テロリストに占拠されたと私たちの情報網で明らかになったの。テロリストは1週間の期日を出して武装占拠を行い現金を要求している。出さなければ人質を殺すって。両国でもまだ明らかになってないけど・・・」
マスドライバーをテロリストが、それも戦時中に占拠して一体どうなると言うのだろう。マールがそのことをたずねるとナスターシャが空を見上げて言う。
「ベルカ戦争時、インディゴ隊がASM-135を発射した記述があったの。この情報はベルカ戦史にも載っていない極秘の内部資料。このミサイルの目標に送り込んでるのよ。」
「何かオーシアが早期終戦の根拠にしてた衛星砲だっけ?確か雑誌で見たけど・・・なんたっけ。確か・・・」
「SOLGですよ、少佐。俺もそのときいろいろ見てたんです。」
グリムが補足し、マールがあぁとうなずいてみせる。衛星軌道上に作られた大型戦略砲台でありベルカをこれで灰燼に帰してやると当時のオーシア国防長官が演説していたのだ。
もっともこれから発射しようというときにベルカに軌道を読まれ、インディゴ隊がASM-135を衛星めがけ発射。機能停止に追い込んでしまったのだが。
「でも、アークバードだけの修理機材にしては多すぎる。おそらく専用の宇宙ステーションを接続してSOLGを乗っ取ったとみて間違いないわね。」
「そこで修理を行われてる・・・って、やばいじゃない?弾頭は?」
「運び込まれた物資はBLSW弾。ブルーレインを使用する衝撃弾とV2核弾頭。SOLGは巨大なレールガンだからある程度の軌道は読めても攻撃位置は予測不能。迎撃はほぼ不可能ね。」
打たれたら終わりの強力な兵器。こんなものが衛星軌道上に浮遊している時点で危険すぎるがベルカがそれを修理して使うという最悪の行動に出てきた。
「とりあえず、ディスクの解析を急いで対策も練って置くわね。それまで待ってて。」
今はナスターシャを信じるしかなかった。艦橋から全員が退出し、それぞれの場所で次の戦いへと備え始める。

ラスヴィエット基地 同時刻
「憎悪まみれの敵、疲れたであります。」
「お姉ちゃん・・・」
疲れ果てた様子でリェースがジェラに抱きついてくる。優しくジェラも抱きとめるとリェースの頭をなでながらグラーバクのことを考え始める。
あの敵は尋常ではなかった。機動力もなかなかだが何より抱いている憎悪が生半可ではない。反乱軍のEFLS搭載機とは何度も戦ったがあれほどの憎悪をジェラは感じたことが無い。
そしてあのAAM、FXBR-1シックル・・・あれは迎撃以外の防衛手段をかいくぐり自分たちすら障害を与えてくる。あんなものを連射されたら勝ち目は無かったと思うとジェラはぞっとしてしまう。
「あ、リェースばかりずるい!」
「ここはボクがもらったよ。チェカは他の場所。」
「私だって一緒にいたいのに、もう・・・」
いつもなら微笑むチェカとリェースの会話も今のジェラには耳に入っていなかった。あの敵が来たら次はどうすればいいのだろう。耐えて何とかするか撤退を具申するか。それとも・・・
「お姉ちゃん?」
「リェース、何でありますか?」
「何か今日のお姉ちゃん、恐いね・・・」
そういわれてジェラははっと気づく。今だけはリェースやチェカの為に落ち着いていなければならない。恐がらせていては上手くいかないのだ。
「そ、そんなこと無いであります!可愛いですね、リェース。」
「わぁ。」
「わ、私もー!」
チェカもジェラにすりより、リェースはジェラのひざの上で満足げに頬を摺り寄せている。この瞬間も幸福であり、それを壊させないために戦う。そしてそのために生き残る、まずはそれだけを考えていればいい。
そう言い聞かせ、ジェラはこの時間を満喫する。

続く

あとがき
ようやくここまで書けた、と。一息つけます。
次は艦隊決戦です。これがたまりません。未配備の艦艇を大量に出します。ウリヤノフスクとか。
しかしYak-44に行き着くまでがすさまじく大変でした。輸送機。普通の輸送機で着艦できないので。
では。



 2009/07/02:スフィルナ(あくてぃぶF-15)さんから頂きました。
秋元 「 ま た ミ ス タ ー B か ! 」
アリス 「……何せミスターBですから」
「え、ちょっと、何それ」

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