ACE COMBAT04 Shatterd skies〜メビウスの記憶〜




ACE COMBAT04 Shatterd skies〜メビウスの記憶〜
第4章 100万バレルの生命線〜石油精製施設襲撃〜

11/19 CV-47スフィルナ 0540時

「・・・なるほどね。僕にF-15ACTIVEを。」
「ああ。」
フィンが聞いた話だと、ISAFにSu-37フランカーE改を超える機体が無いらしい。
その実験データを取るのと、MLS搭載の高性能機を給与するためにF-15ACTIVEを使わせたいようだ。
CVスフィルナ艦長のミュラーが、フィンに了解を取っている。
「・・・それなら、お願いします。ミュラー艦長。」
「ああ。おそらくだが機体名はF-15Irになるだろう。だが、改造に結構手間取るから次の出撃からだな。」
「改造?」
「ASM-2を搭載する改造だ。コンベース襲撃には役に立つ。」
実験機の原型はF-15Eだから対地攻撃能力のみ。これに対艦攻撃能力も付けようと言うのか。
そうなるとF-15F/25をも超えるマルチロール機になってしまう。オーシアの横槍から開放するいい機会だろう。
フィンは笑みを浮かべると、ミュラー艦長に頭を下げる。
「・・・礼には及ばない。レイシスに何もできなかった私ができる唯一のことだ。そろそろブリーフィングだ、急いだほうがいい。」
「あ、はい!」
フィンは階段を駆け下りて、ブリーフィングルームに駆け込む。


「エイギル艦隊が停泊するコンベース港は、燃料の補給を1つの石油化学コンビナートに頼っている。このコンビナートは沿岸の石油精製・備蓄施設と、洋上の油田採掘施設によって構成されておりこのどちらか、あるいは両方を攻撃して、生産能力を20%以下に低下させることが作戦の目的だ。コンベース港への燃料供給を断てば侵攻作戦の実施を遅らせるとともに、エイギル艦隊の機動力を奪うことができるであろう。」
「了解!」
搭乗員はそれぞれの持ち場に入り、フィンはF-15Jに乗り込む。
この愛機が今は頼みの綱。自分が大好きなイーグルならどんな相手にも勝てるつもりだ。
ミラやレン、ルシアのような頼れる相棒がいなくても・・・絶対にいける。
「メビウス1、発艦を許可する。」
「了解!」
兵装は中型爆弾8個とAAM-3を8本。格闘戦、対地攻撃重視の機体だ。
これだけあれば十分。フィンは笑みを浮かべ離陸する。


石油精製施設 0620時
「作戦開始。二手に分かれ、目標を攻撃せよ。
可能なかぎりダメージを与え、施設の機能を低下させろ。」
「了解。メビウス2と3は陸上の石油備蓄施設を。僕が海上油田をやる。」
F-15Jが編隊から離れ、目標の海上油田に向かう。
敵戦闘機が哨戒している・・・F-4KおよびTSR-2、JA-37だ。
「メビウス1、エンゲージ。」
近くにはレイピア隊も随伴している。作戦行動を共同で行えば十分な戦果が期待できそうだ。
まずは邪魔な敵機を排除するのが先決。フィンは爆弾を搭載したままTSR-2を狙う。
挙動が鈍い。攻撃機だから仕方ないだろうが・・・
「すぐうしろだ、うしろを見ろ!」
「フォックス・ツー!」
AAM-3が発射、TSR-2のエンジンを捕捉し喰らいつく。
「くっ、ここまでか・・・!!」
「スプラッシュ!撃墜!」
TSR-2が炎を吹きながら緩やかに降下していく。
それをF-15Jが追い越し、海上油田を爆撃目標に捉える。
「メビウス1、投下!」
中型爆弾が油田に命中、爆発を引き起こす。
所詮は民間施設、中型爆弾1個で1区画が炎上してしまっている。
「油田が炎上している!消火してくれ!」
「援軍を呼べ。」
『大混乱みたいね。この調子なら・・・』
F-4Aが急降下爆撃で大型爆弾を投下、油田を吹き飛ばす。
民間施設だからどれだけの民間人がいるだろうとも思ったが・・・こうしなければユージア大陸の人がどうにもできない。
許しは請わない。戦争だから・・・やるしかない。
『・・・フィンさん、後ろ・・・』
「え・・・あ!やばそう!」
JA-37ビゲンが後ろにつくと、AIM-9を発射する。
シルヴィアに言われてフィンは気づき、すぐにフレアーを射出する。
それから急激に反転、ガンレンジに入ると同時にヘッドオンでM61A2でぶち抜く。
「白2が敵機に撃墜された!」
「なんて早さだ・・・って、白7、真正面だ!」
JA-37の真正面からフィンが突っ込むと、AAM-3を発射。
敵機はAIM-9のロックオンをかけるまもなく撃墜されてしまう。
「僚機がやられた!」
「あなたは、私が落としますよ。」
F-4AにJA-37が追撃されると、あっさりとガンキルされてしまう。
MLS機だから当然だろうか・・・やっぱりヴィエラは上手い。

「・・・さすがはフィン、か。それとヴィエラ・・・上手いな。」
かつてのレイシスの面影を重ねながら、フォルクはF-15Cを操る。
目の前にF-4K。逃すわけには行かない。
『・・・ロックオンです。マスター。』
「フォックス・ツー!」
AAM-3がパイロンからはずれ、F-4Kを追撃。
旧式戦闘機の旋回性能では振り切れず、近接爆発を喰らい落ちていく。
「メイデイメイデイメイデイ!ミサイルにやられた!脱出する!」
「味方がやられたぞ!」
これくらい軽い。すぐにフォルクは油田に向かうと水平爆撃で爆弾を投下。
施設が爆発を引き起こし、炎上している。
「・・・辛いか?」
『いえ・・・離れるよりは』
残留思念のことを気にかけている・・・これだけの爆撃、当然シルヴィアも辛いはず。
だが、彼女はまだ大丈夫のようだ。
対空機銃の射線を交わし、そこにM61A2を連射・・・撃破する。
「海上油田は制圧完了です。お見事です〜。」
「引き続き油田生成施設の撃破を頼む。」
スカイアイと粉雪の指示に従い、F-15Cは西に機首を向ける。


「こちらメビウス1、制圧を完了。」
「コンビナートは活動を停止。作戦は成功した。」
作戦は終了。こんなところだろう。
犠牲になった航空隊もいない。今回は幸運だったのだろうか・・・フィンはそんなことを考える。
「・・・?敵機です。北から5機編成。」
「粉雪・・・これは!?」
スカイアイが驚いたのも無理はない。
翼端が黄色のSu-37フランカーE改。その5機編成が迫ってくる。
「敵機を視認、黄色い機体が5機!」
「なんてこった!」
「全機、会敵せず帰還せよ。全速で南へ向かえ。」
が・・・逃げても無理な相手なのはヴィクセンとルウはよく知っている。
敵機の最高時速はM3.2・・・桁外れの速度で向かってくる。
フィンも・・・それを知ってかしらずか向かっていく。
「こちらメビウス1、くいとめるよ。」
「・・・やれやれだ。仕方ない、行くぞ!」
ミラージュ2000CとF-12DがF-15Jに随伴、黄色中隊に突撃を敢行する。
『・・・叩きのめしてやる。』
『やるしかなさそうね・・・本気で。』
メビウス隊3機が黄色中隊を捕捉。無駄な爆弾を投棄するとヘッドオンを挑む。
「メビウス隊、何を・・・!?」
「時間稼ぎさ!こいつらの出撃基地はサンサルパシオン・・・さほど戦闘時間は長くできないはず!」
いくら黄色仕様Su-37と言えども、そう長い時間の戦闘はできない。
フィンはそんな考えで先頭に当たる。
「向かってくるだと・・・?まだ、ISAFにも腕利きはいたようだな。黄色13より各機へ。目標は3機のISAF軍機だ。うち、2機はシステム機。気を抜くなよ。」
「了解!」
途端に敵機はAA-13を発射。フィンはチャフをばら撒いてかわす。
すかさずヘッドオンでAAM-3を発射。が・・・敵機はAA-11を発射する。
ミサイル同士で迎撃する高度なテクニックだろう。フィンもレイシスに教えてもらった。
ミサイルが消滅、ガンレンジ、バルカンを発射。
銃弾が交差するが命中なし。2機は高速ですれ違う。
「なかなか早いな。だが・・・いつまで続くか?」
「君を撃ち落すまでさ。」
「・・・なるほど。貴様がレイシスの弟か。そのリボンのエンブレム・・・貴様も兄の所に送ってやる。」
「悪いけどね、君をレイシスのところに行かせるのが先さ。」
あの機体・・・機体ナンバーも間違いなく黄色の13だ。
僕の負っている敵機。兄を殺した・・・憎むべき、そして絶対に撃墜しなければならない相手。
「・・・そうかな?この機体にはかないはしない。」
「JFSなら何度も落としたよ。それが?」
「甘いな・・・ISAF連中は知るまいが、この機体はそれを1歩進めたEFLシステムを搭載している。残留思念や憎悪を喰らい、さらに機体を強くする・・・戦うためにつくられた洗練された道具だ。レイシスの乗っていた欠陥品とは違ってだ。」
「・・・MLSは欠陥品じゃない!憎悪を喰らう君の装置こそ欠陥品だ!」
さすがにF-15Jではきつすぎる。レイシスが苦戦したのも良くわかる機動だ。
旋回性能だけでも格段の違いがある・・・フィンだと解ったときからエーリッヒはリミッターを切ったようだ。
「・・・どうかな?レンやミラ・・・吹雪を戦場に出すことが残酷じゃないと言い切れるのか?シルヴィアや粉雪を・・・そいつらを。戦いに余計な感情を持ち込んで・・・勝てるのか?」
「・・・!」
今更ながらフィンは気づいた・・・確かに、負の残留思念のフィルターにしている。
それが辛いのはよく聞いている・・・本当に間違い・・・?
「後ろを見ろ、フィン!後ろだ!」
「あ・・・!」
ミサイルアラート、後ろのSu-37がAA-11を発射してきた。
フレアーを射出、急旋回して回避に成功。黄色の13には逃げられたようだ・・・
「くっ・・・!メイデイメイデイメイデイ!」
F-12DがAA-11の追撃を受けている。フレアーを発射しても間に合わなかったようだ。
すぐにフィンは機首を向ける・・・F-12Dを狙うAA-11に向かっていく。
ミサイルはもうない。だったら・・・
『後ろにフィンが!』
「な・・・!?」
F-15Jは吸い込まれるようにミサイルに体当たりをして爆発・・・パラシュートが開く。
F-12Dは間一髪でミサイルを回避に成功したのだ。
「・・・フィン!応答しろ!フィン!!」
「こちらメビウス1、脱出したよ。」
パラシュートでゆっくりと降下しながら、フィンは無線を入れている。
「・・・何したのかわかっているのか、フィン!貴様・・・!」
「妹と一緒に心中なんて嫌じゃない?僕の機体は消耗品だしね。無線の電池はビーコンに使いたいからここできるよ。メビウス1、通信終了。」
黄色中隊はメビウス撃墜に気を良くしたのか、撤退を始めている。
すぐに救助ヘリが来る。フィンの落ちた海域はかなり冷えてこそいるが大丈夫だ。
ボートが展開されていれば、死ぬ前に到着できる。


「・・・あいつ、なんてことしやがったんだ・・・」
「まったくだが・・・俺が逆の立場でもそうしたな。」
ヴィクセンはまだ自分が助かったのを信じられなかったが・・・同じことはすると言う。
MLSのことをよく知っていたから・・・レンを殺させないために、自分の機体を犠牲にしたのだろう。
『・・・フィン、すごかったね・・・』
『あれくらいできるパイロットも、すごいけどね・・・』
吹雪とレンがフィンについて話しているが・・・あれくらいできるとやはりすごいのだろうか。
ミサイルの盾になって、それでいて上手く脱出するなど・・・
「・・・俺は一生あいつを超えられないのかもしれない。あんなことやってまだ生き残る奴を俺は始めてみた。」
『そうね・・・』
黄色中隊じゃなくても、ああいうシーンは時々あることだが大体死んでいる。
それで生き残る奴などそう多くいないだろう・・・
救助ヘリとすれ違ってから、ようやくヴィクセンは一息つく。
「・・・あいつに迷惑かけないようにするか・・・俺のミスが原因で死なれたらな・・・」
が、その途端に緊急の通信が入る・・・スカイアイからだ。
「敵巡航ミサイルが第2艦隊に向かっている。数は6本、迎撃せよ。」
「ちっ・・・了解!」
残りの武装はAAM-3が4本。ルウはマジックAAM2本が残っている。
これをロックオンして発射すれば、防げるだろう・・・あとはヴィエラとフォルクに任せればいい。
「フォックス・ツー!」
ヘッドオンで短射程AAMをぶち込むが・・・巡航ミサイルは奇妙な動きをした。
『巡航ミサイル1機先行・・・あっ!』
「何!?」
先行したミサイルが自爆、AAMを吹き飛ばしてしまう。
のこり5本・・・食い止めるならガンレンジに入ったところでヘッドオンでの銃撃。これしかない。
「巡航ミサイルとヘッドオンする。上手く機動の真正面に入れないか?」
『そんなの軽いよ。やってみるね。』
F-12DのHUDの巡航ミサイルが・・・すさまじい速さで向かってくる。
接近にかかわらずバルカンを乱射、巡航ミサイルの信管を射抜くと爆発を起こす。
その前にF-12Dはミサイルの後ろに出たが・・・もう、食い止めるのは艦船の防空火器しかない。
「のこり3本が艦隊に接近!」
「了解。第2艦隊護衛艦は巡航ミサイルの迎撃に移る。」
SAM-4とシースパローが発射、巡航ミサイルを数に任せて葬っていく。
飽和攻撃には対処しようがないということか。
「巡航ミサイルの迎撃に成功。全機帰還せよ。」
「了解。」
すべて終わった・・・これでようやく艦隊に戻れる。
ヴィクセンはもう一度息を吐くと、CV-47に帰還する。


1400時 CV-47スフィルナ
「犠牲者7名、うち黄色中隊の犠牲者4名か・・・機体10機未帰還。パイロット3名の生存を確認。と。」
とりあえず隊長の代行としてヴィクセンが報告書を提出。
フィンは1時間前に帰還・・・無論、1回殴ったのだが。
「・・・やれやれだな。多すぎる・・・あまりにも。」
今のISAFでは7機の損害でも多いくらいだ・・・黄色中隊が来たからだろうが。
相手も本腰を入れ始めたらしい。今までよりも慎重に作戦を立てないとやばそうだ。
「・・・フィン。無茶するなよ。今度から二度と。」
「あ・・・わかった。」
報告書の写しにフィンが目を通しているが・・・それにヴィクセンが言う。
明日か2日後にはフィンのアクティブイーグルが来る・・・確かフィンがレイシスと一緒に乗っていた機体だったはずだ。
それから高機動実験、MLS実験に使われたがMLS実験のときにパイロットは戦死・・・だからそのまま送られてくる。
武装は施したし強度も十分。リミッターまでつけるほどの高機動性能・・・Su-37フランカーE改と比べても遜色ない性能と言える。
「・・・今のISAFじゃブルーレインさえ貴重品だ。それに・・・お前も誰かわからないが、MCと共に出撃だ。名前は決めたのか?」
「まぁね。レナ・・・F-15Ir・レナ。」
「良いじゃないか・・・お前にしては。今日のような真似は二度とするな。俺も・・・ミスはしない。」
MLS機ごと自爆されたのではレイシスの二の舞だろう。それだけは避けておきたい。
ましてや・・・フィンは隊長以前に親友だ。そして可愛い後輩でもある。
「・・・わかった。ヴィクセン・・・信じてるから。」
「俺もそれだけの戦果を上げてみせる。さ・・・今日は休憩だ。」
犠牲は確かに大きいが、それに見合う戦果は得た・・・エルジアの燃料はこれで底をつき、タンカーも撃沈されたからかなりの燃料を消耗してしまったはず。
エイギル艦隊は無論出航不可能。2ヶ月は足止めを喰らうはずだ・・・油田生成施設はここ以外にはロスカナスなど大陸東部にはない。

1日25万バレルの原油採掘能力と500万バレルの備蓄を失い、エイギル艦隊は足止めを食らうことになった。しかし残念ながら我々も、多数の航空戦力を失ってしまった。戦力の低下は、錬度でカバーしてほしい。
――11/19 デブリーフィング

続く

あとがき
なんとなくフィンをああいう役回りだとかっこいいかなと思って・・・F-15Jを撃破。
脱出するのは・・・させなかったら04編と5編が繋がりませんし。
で、次回からフィンの機体をF-15ACTIVE・・・もといF-15Irに。
私のお気に入りの機体だったりします。けど、性能は圧倒的に改善させてます。
では。次回はコンベース港襲撃で。



 2006/01/19:あくてぃぶF-15さんから頂きました。
秋元 「MLSつんだまま体当たりしたら、MCも確実に巻き込みますからね」
アリス 「……実体化には多少の時間が必要です」
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