ACE COMBAT04 Shatterd skies〜メビウスの記憶〜




ACE COMBAT04 Shatterd skies〜メビウスの記憶〜
第6章 シャッタードスカイ〜コモナ諸島制空戦〜

12/30 CVスフィルナ(コモナ諸島近海) 1700時
「・・・いよいよ、ってわけか。」
大量のミサイルがスフィルナに着艦した輸送機JE-1Cマリン・ボックスから大量の空対空ミサイルが搬出される。
AAM-5が殆ど。明日の空戦に備えてのことのようだ。
「本気でやるつもりなの?ISAFは・・・このリスクの大きい空戦を。」
「らしいな・・・」
レンの言うとおり、確かにリスクは大きい・・・ISAFはコモナ諸島のロケット打ち上げをあえてラジオで公開するという作戦に出てきたのだ。
それが明日。だがこれは罠で大量の戦闘機や空母艦隊などを待機させエルジア空軍をまとめて叩いてしまおうというのだ。
エルジアはISAFの質のいい空軍に対抗するため、黄色中隊などを含む航空隊を大量に投入するつもりだ。
空軍の質はISAFが一枚上手。だからここで殲滅してしまえと言うことらしい。
ISAF空軍は大分再建できている・・・開戦時とほぼ同等のレベルに達していると言ってもいい。
足りない分はアンバー共和国軍の空軍で補っている・・・シュペルミラージュやラファールW、ミラージュ2000-5などが隣の空母「シャルル・ド・ゴール」に乗っている。
訓練を終えて、ISAF海軍第2艦隊に参加することになったようだ。
「・・・まぁ、勝算はあるんだろう。MLS機はこっちの方が数で勝る。JFS機はエルジアもさほど多く配備していない。EFLSは黄色中隊しか使っていない・・・どうなるかな。」
「ひっくり返せるはずよね?」
「当然だ。」
ヴィクセンは自身ありげに言う。目の前のミサイルもまた彼の自信につながっている。
AAM-5。現時点ではAA-11クラスの性能を持つ高性能なミサイル・・・AAM-3よりも性能は数段上だ。
不安要素と言えば敵の無人機・・・FX-11B。だがこいつは量産が効かないから出現しても1機か2機だろう。
それはレイピア隊に任せておけばいいのだが・・・黄色中隊がどこまで食い下がるか、そして敵がどの程度無人機を持ってくるかだ。
FX-10Aなどを持ってこられると厄介だ・・・あの無人機は操縦席を容赦なく狙ってくる。パイロットの損害も増える。
が、対抗できないわけでもない。ISAF空軍は世界最強・・・それこそDACTの相手にFX-10Aを使って相当な技量を持ち合わせている。
勝てるはずだ。この空戦が後の戦いに与える影響は計り知れない。
「・・・細かいこと考えても始まらない。さ、明日のために休むか。」
「そうね、どうせ無駄だし。」
とりあえず、なるようになれとしか今はいえない。細かいことは後でどうにかなる。
ヴィクセンはレンをつれて甲板から降りていき、夕飯を食べることにする。

「・・・よし、これで・・・!」
フィンはF-15IrのコンソールでFX-11A、それもエルヴィン搭乗バージョンで模擬空戦を行っている。
さすがに手ごわい。格闘戦にもつれ込んで何度も負けている・・・衝突でドローが何度か。
2回ほどAAM-5搭載でぶっ飛ばしたが・・・FX-11AがAIM-132を発射、フレアーでかわし急激にひねりこむ・・・
半径を狭め敵機がガンキルを狙うところを急降下で回避、クルビットを決めて反転、銃撃・・・爆破。
「ふぅ・・・」
ダメージは主翼部分と垂直尾翼破損。これじゃダメだ。こっちもきりもみを起こして墜落。
明日の空戦で上手くいくわけが無い・・・フィンははぁとため息をつく。
フィンがやっているのは訓練プログラムの改良バージョンと言うべきものでもあり、格闘戦のデータもしっかり入っている。むろん、先に索敵をしてミサイルをぶち込めばいいのだが・・・
相手も戦闘のプロ。しかもフィンの狙いは黄色中隊。初撃のミサイルなどかわせて当然の相手だ。それゆえにか最近のISAF機には接近戦のデータもこいつに突っ込んでいる。
フィンに言わせればゲームだ。撃墜されても死なないし、相手も何度でも復活する。それにMLSなんてシステムもきかない。だいぶやりつくしたところもある。だから暇なら遊びみたいな感じでやっているのだが。
最初はBVRだけだがISAFパイロットにとっては「訓練どころか遊びでもない。ただの作業だ」と言われた技術者が格闘戦のデータなどいろいろ盛り込んでこうしたらしい。まぁ、息抜きにはなるが。
熟練パイロットの多いISAFは格闘戦の技量が高い。先制攻撃のミサイルでも確実によけられるやつが殆どだ。
「そういえば、新しいデータ入れたとか言ってたけど・・・Bule bird?」
先日フィンがつまらないと愚痴っていると技術者が新しいデータが入ったから入れると言っていた。多分これだろう。
フィンはこれを選ぶ・・・機体はF-15F/25。1対1で空域はCVスフィルナ上空、支援射撃なし。
「上等じゃない・・・」
傑作機F-15がオーシアに回されて派生したのがF-15F/25。ISAFで改良されたのがF-15Ir(F-15ACTIVE)。性能はほぼ同等。こっちは3次元TVC装備ミサイルは同等。
武装はAAM-5が8本・・・増槽無しでAAM-4が6本。敵機も同じだ。
天候は快晴、時間は現在時間。そして該当海域は外洋。
まずは敵機の索敵。どこにいるのか・・・
「・・・上空にとりあえずJE-1セントラル。敵AWCASはE-2C改ホークアイ。多分見つかったかな・・・?」
敵機方位110に確認。F-15F/25、こちらのレーダー照射を受けて気づく。
AAM-4を発射。狙うのは敵AEWおよびF-15F/25。
同時に敵機がAAM-4を発射。全部迎撃してこっちに向かう・・・ヘッドオンでもぶち込むつもりだろうか。
AAM-5をセット、ロックオンし発射、敵機も迎撃・・・接近、どうじに敵機がM61A2を発射。
こっちもM61A3を発射・・・外す。そして・・・
「嘘!?これ・・・」
敵機がロールで回避、同時にエンジン部分に20mmをぶち込んでいる。出力低下、損傷箇所の被害甚大。
ヘッドオンでぶち込まれた。完全に敗北だ・・・しかし強すぎる。
「こいつ、何・・・って、良くみたらあれじゃん。円卓の鬼神・・・マール・レヴァンス機じゃない!」
どうりでヘッドオンでこれだけ無茶苦茶なことやってぶち込んでくれるわけだ。
ウスティオの青い鳥だからブルーバード。確かに相当強い。ヘッドオンに関しては神業とさえ言われているほどだ。
「道理でね・・・なるほど。」
敵機編成はホークアイ。確かに会ってたが F-15F/25が後ろ向きに2本AAMをセットしている。
ヘッドオンですれ違ってもぶち込まれて終わり。ひどすぎる。こんなものを何で入れるんだろう。
データを見ると他にもエルジアにアンバー共和国、オーシア、ユークがあるが・・・ウスティオ空軍とサビン空軍が今回の追加分らしい。
とりあえず空軍で目立つほど強い連中や大国などはデータに追加している。サビンのエスパーダ隊も入っているが・・・
まぁ、所詮はゲームだ。それに合同演習でもあるわけだから・・・「自分達の技量を磨くのに貴方達の国が適切だ」と言われれば悪い気もしないはずだ。ISAF空軍は世界各国のデータベースに入っているらしいが。
ちなみにこれを少々操縦性を良くしたのがゲームで販売されているらしい。画面も相当リアルみたいだ。
「ってか・・・どうなるかな、明日の空戦。これじゃ本調子なんていえないし。」
「がんばれば?とりあえず。」
バイザーを上げるとレナが経っている・・・フィンは電源を切るとすぐにレナに向かう。
「がんばって、生き抜けばどうなの?あれこれ言う前に。」
「レナ・・・そうだね。明日は明日の風が吹くわけだし。」
難しいことを考えていても始まらない。確かにそうだ・・・どんな状況下もわからない。
それを気にしていては落ち着かないのも当然だ。落ち着けば力もしっかりと発揮できる。
今日出来ることは、英気を養い明日に備えることだけだ・・・


12/31 CV-47スフィルナ甲板 1150時
「・・・・始まるのかな。」
フィンは階段を上がりブリーフィングルームに駆け込む・・・時間はぎりぎりだが、充分間に合う。
さっそく椅子に座り、一息つく・・・まだ緊張が収まらない。こんなミッションは始めてだからだろうか。
他のメンバーは・・・緊張している。間違いなく。ベテランしか経験したことのない大空戦。円卓をはるかに超える混戦が始まろうというのだから。
飛行長がブリーフィングルームに入ると、プロジェクターが稼動し地図が現れる。
「大陸での作戦を支援する偵察衛星を、コモナ諸島のロケット発射基地より打ち上げる。それを察知したエルジア軍が、打ち上げを阻止するため多数の制空戦闘機を送り込んできた。大規模な空戦になることが予想される。この空の戦いに打ち勝ち、制空権を守り抜く。打ち上げのチャンスは今しかない。1機でも多くの戦闘機を撃墜し、ロケット発射基地を防衛せよ。」
敵エルジア空軍機は早期警戒レーダーの報告によると250を超えているという・・・すさまじい数で来たものだ。
対するISAF空軍機は約180機程度。無人戦闘機まで集めてこれまでの数にした。失敗は許されない。
ただ、2倍にも満たないなら勝機はある。質ならばこちらが上でしかも陸上部隊を展開できるというアドバンテージもあるのだから・・・勝てる可能性は高い。
問題は敵エース部隊だが、黄色中隊を確認したという。
「・・・フィン、怖いの?」
「怖くないよ、レナ。けど・・・心が震えてる。」
兄の仇でもある黄色中隊。いや・・・自分たちで相手をしなければ友軍機に被害が及ぶ。機体は新鋭、負けるわけには行かない。
「敵討ちのつもりなの?黄色中隊と戦いたいのは。」
「・・・・その感情を抜きにしても、対抗できるエースは僕達しかいない。望む望まないに関わらず相手をしなきゃいけないと思う。だったら・・・」
「やると言うわけね。わかった・・・私も全力でがんばる。だから生きてよ?」
「兄さんのためにも・・・ね。」
すると、ブリーフィングが終わったらしい・・・フィンは早速格納庫へと駆け込んでいく。
機体の調子は万全というべき。武装も空戦装備をフルに積み込んだ・・・M61A3バルカン、カナード全てに異常なし。
「黄色中隊・・・僕が必ず倒す。」
『行こう、フィン。』
うなずくと、フィンは計器を再度確認する・・・何も以上は無い。負ける要素は無いはずだ・・・


コモナ諸島上空 1335時
「第7航空団より各機へ。敵の数が多い!」
「くそっ!増援はまだなのか!?」
ISAF空軍先遣隊とエルジア空軍の間で戦闘が開始。EFタイフーン、JAS-39CグリペンやF-35A、F/A-18I。中にはSu-37フランカーEの姿も見える。
対するISAF空軍はF-4Aストームウィンド、F-15JイーグルやF/A-18EJ。F-22Jやミラージュ2000-5、シュペルミラージュやラファールなど。両軍あわせ400は超える戦闘機だ。
ISAFやエルジアの無人機同士も争い、次々に落ちていく・・・まるで円卓だ。
「メビウス各機へ。味方を支援する!!」
「よし、待ってろよ!今行くぜ!!」
ルウのミラージュ2000CにはMICAを4本とマジックAAM6本。ヴィクセンの機体はAAM-4が4本とAAM-5が8本ずつ。
「コモナベースより作戦遂行中の全機へ。
打ち上げのチャンスは今しかない。ロケット発射まで制空権を守ってくれ!」
個別管制はさすがのスカイアイでも不可能。こうなったら各個の判断で動くしかない。
「AAM-4セット。目標3機。」
『了解・・・いける。』
「よし・・・メビウス1、フォックス・スリー!!」
AAM-4が発射。実験では非常に命中精度の高かったミサイルが放たれる。
目標になったのはEFタイフーン2機とグリペン1機。残り3本はAWCASや給油機にめがけてぶち込むつもりだ。
チャフを回避しミサイルが直撃。タイフーン撃墜、グリペンは損傷し領域離脱。
「メイデイメイデイメイデイ!ミサイルにやられた!脱出する!!」
「僚機がやられた!」
ベイルアウトには成功。次の目標は前方を飛行中のF-35Aだ。
「くそ、敵に狙われてる!」
「逃さない!」
急降下でF-35Aは逃げようとするが、真正面にルウのミラージュ2000Cが待ち構えている。
「じゃあな。運が悪かったと思ってあきらめな。」
「後ろは任せて!」
後ろにグリペンが・・・フィンはロックオンをかける。
正面のF-35AがDEFA30mmをぶち込まれて撃墜、ルウが交わしたところにフィンはAAM-5を発射。
真正面からグリペンに直撃、爆発を起こす。
「やられた!脱出する!脱出す・・・」
脱出前に爆発。残留思念が響いてくる・・・まぁ、撃墜されたら死ぬこともあるわけだ。
急激に旋回しフィンは後ろにいるEFタイフーンを回避。逆にループで背後に着く。
「誰か、助けてくれ!メビウスだ!!」
「ごめん、終わって。」
20mmバルカンを喰らいEFタイフーンが炎上。脱出したようだ。
「ちくしょう!やられた!煙で見えない!!」
「ヴァイパー3が黄色にやられた!」
黄色中隊はまだ見えない・・・こんな混戦状態で見分けろというのも無理だが。
それにしても衝突でぶっ飛んだりする敵味方も多い。それだけ混戦状態ということだろうが。
「見つけた・・・!」
Su-37フランカーE改。黄色中隊専用機でありウィングレットを装備、電子機器やエンジンなどを交換し大幅に性能を向上させた機体だ。
今度こそ負けない。こっちはF-15Ir。フランカーに対抗できる。
「黄色4、後ろだ!!」
「な・・・!!」
油断していたのか後ろは取れる。あとはここから撃墜まで持っていけるかどうかだ。
「くっ、メビウスリボンか・・・気をつけろ!MLSだ!」
「了解!」
AAM-5、残り7本。AAM-4は3本・・・この程度の重量なら格闘戦でも勝てるような気がする。
ISAFだってただ手をこまねいてSu-37フランカーE改の活躍を見ていたわけではない。廃案になりかけたF-15ACTIVE案を大幅に改良している。
TVC角度はフィン機仕様で45度。通常タイプでも30度は可変可能。オリジナルの2倍以上は進んでいる。Su-37フランカーE改に対抗するために極限まで設計を切り詰めた。
「悪いな。俺が貰う。」
『後ろにMLS機!黄色6!』
フィンはとっさに気づき急激に旋回、黄色4をあきらめ後ろの敵機を狙う。
同じMLS・・・ほぼ互角か。
『・・・恨みはありません。けど・・・ISAFのエース、私の仲間のために落ちてください。』
『出来ない注文ね。怪我をする前に逃げたら?』
すかさず上昇、こうなったら力任せに振り切るしかない。
TVCとカナード最大角度、一気に加速させSu-37フランカーE改を振り切る。
「ちっ・・・!」
あわててAA-11を発射していたようだが、目標を見失いISAF側のFX-10Bに直撃し爆発する。
ISAFは拠点防衛のためにFX-10Bなどの無人機を使っている。無人機で人を殺すことはさすがに批判されると思ったためなのか。
防衛戦力の4割は無人機頼み。だが、ISAFは緒戦でパイロットを失ったから仕方ないだろう。
高速でフィンがループを行う・・・そして後ろを取る。黄色中隊並みの動きを出来る機体を見たことが無さそうだ。
同時にベルナード機がループ、追撃するフィンを見て上昇を仕掛ける・・・
『・・・上昇・・?』
「減速さ。行くよ!」
エアブレーキ、TVCを同時に稼動させて減速、思ったとおりベルナードは高迎え角でのエアブレーキに入る。
それを見越した・・・フィンはエンジン部分に20mmバルカンを発射。掠めたが寸前で交わされてしまう。
「・・・読まれたか!」
一瞬の躊躇が銃弾を狂わせた。MLS機撃墜の負担がどれほどか想像も付かないから。
チャフをばら撒きブレイク。こんな状況・・・混戦状態ではミサイルも効果的にぶち込めない。最終的には格闘戦でどちらか勝てるか。それだけだ。
最近では拠点に強力なジャマーなどを配置するからレーダーの感度も落ちやすい。故に機動力を限界まで高めた機体があちこちに出回っている・・・F-15F/25やSu-37などがその一例だろう。
『フィン、右に敵機!』
「3時方向・・・!」
TVCを傾けて急激に旋回、ヘッドオンで決着をつけてやった方がいい。
旋回し、敵機の銃撃をロールで交わす・・・同時に機首を僅かに落としM61A3を発射。
仮想敵機のマールが見せてくれた機動でSu-37のエンジンに致命傷を与える。
「ちくしょう・・・・!!」
「無理するな、ベルナード!離脱だ!」
「・・・悪いな。すまない!」
Su-37、1機離脱。残りは4機・・・いや、護衛に1機回った。残り3機だ。
その途端にまた1機離脱。F-15Cと交戦し離脱した・・・あれはピクシー機だ。
「黄色もそれほどでもないな。悪いが貰っておいた。」
「・・・離脱だ!」
黄色中隊、完全に戦闘領域を離脱。追撃するにもこれ以上深追いしては危険だ。
とりあえずはISAF軍機への被害は抑えられたということだろう。
「邪魔だったか?」
「そんなことはない。ありがと。」
黄色中隊との決着は後に持ち越すべきだろう。ここで撃墜してもレナが耐え切れたかどうかわからない。
だからエンジンだけを狙っていた。操縦席だとレナへの負担も大きすぎる・・・MLS機を撃墜したらかなりの負担が来ることは間違いないのだから。
「おいおい、空戦中に黙って何やってんだ!?」
「新鋭機!?」
急降下してきたのは良くわからない機体・・・4発エンジンの新鋭機だ。
すぐに上昇、同時にループで交わし追撃するが・・・どこかであの気体を見たことがある。
『コンドル隊のメンバーみたい。ラーレイ・トンプソン。けど機体は・・・』
「こいつは・・・!?」
すると、スカイアイから情報が送られてくる。
可変翼を持つ制空戦闘機。名称はXFA-27。能力は一切不明だがどうやら高機動メインの機体らしい。
おまけにブルーレイン搭載機。JFS機だ・・・EFLじゃないのは憎悪を殆ど感じないからだ。
ブルーレインの波動だが、まっさらで何も穢れも意思すらも無い。MLSなら何らかの思念を感じる。
「・・・エースか。だったら不足は無い!」
急激にXFA-27が旋回、それにF-15Irも引っ付いていくが相当なスピードだ。
明らかに性能は敵機が上。TVC角度45度はこちらと同じだが空力設計などが段違いにいい・・・
いや、埋められるといったら・・・レナと一緒にいることくらいか。
「よし、それでいい・・・!俺と張り合える奴が欲しくてな!」
「・・・なるほどね。けど・・・」
急激に旋回、ループ・・・そのフィンの心にはいっぺんの曇りも無い。
ただ純粋に格闘戦を楽しみ、相手への敬意を払うために全力を出し切る・・・それだけだ。
「終わりだよ。エースには・・・少し及ばなかった。」
「何・・・!?」
ラダーをけるようにして操作、相手の予想進路上にバルカンをぶち込む。
危うくXFA-27は直撃を免れたが、右翼を破損・・・だが戦闘不能ではない。
逃げる意思が無い限り、徹底的に追い詰めて撃墜しなければ味方に犠牲が出る・・・撃墜の必要がありそうだ。
『レナ、そいつはもらっとくけどいいか?』
『ご自由に。じゃ、お願い。』
「何を・・・!?」
XFA-27の背面からミラージュ2000Cが突撃、DEFA30mm機銃を発射する。
機体を刺し貫かれ、すかさずラーレイは脱出・・・危なかった。後一歩遅れていたら爆発に巻き込まれていただろう。
「く・・・セイル、後を頼む!」
「隊長・・・!」
XFA-27が海面に墜落。フィンはようやく思い出した・・・ISAF空軍がF-15Irとともに作っていた試作戦闘機だ。
たぶん試験飛行をかねた実践テストなのだろう。だが・・・不運にもメビウスに会い撃墜された。
「黄色もコンドルもいない!?俺たちはどうなるんだ!!?」
「落ち着け!」
敵部隊のメンバーが何とか落ち着かせようとしているが・・・それは無理だろう。
エースがいなければ、7割くらい勝敗は決したようなものだから。

「さすがに多いです。これでは・・・」
『がんばってよ!ね!?』
ヴィエラの狙いはF-35A・・・だが、かなり疲労がたまってきた。
ストームウィンドは元が支援戦闘機だけにAAMの搭載量はやけに多い・・・AAM-4を8本にAAM-5を6本。
そして大出力のエンジンで無理やり動かしている。最近じゃそれでも不満でTVCを引っ付ける計画まであるらしい。
「私も疲れているんです!そう簡単には・・・」
『愚痴る前に動く!さ、行けぇ!!』
「・・・わかりましたよ。レイピア4、フォックス・ツー!」
AAM-5を発射。目の前のF-35AライトニングUは回避するが仕切れずに爆発。
「だめだ、早く逃げろ!」
「白2が敵機に撃墜された!」
何とか撃墜・・・だが、まだかなりの数のエルジア空軍機がいる。
後続が次々に到着するがISAF空軍機に叩き落されていく。質が圧倒的に違っているから仕方ないのだが。
ベルカ戦争のときも「最大級の戦力」だとか言われ激戦区に大量投入され、そのくせ他の戦線の軍よりも損耗率が低かったという伝説まである。
それだけでもエルジア軍機には大きなプレッシャーになる。おまけにリボンが復活しているのだからなおさらだ。
「赤7がリボンに落とされた!!」
「くそっ、こっちの撃墜率が40%を超えた!!」
「味方が1機食われた!レイピアのエンブレムだ!!」
前方にEFタイフーン・・・F-4Aストームウィンドにそっくりだが全くの別物だ。
いきなり真上からAIM-9を発射。だがフレアーで交わし反転、急上昇。M61A3を発射する。
ヘッドオンで喰らい爆発を起こす・・・残留思念を完治。敵兵戦死か。
『・・・変ね、マスター。何で基地を攻撃しないの?』
「そういえばそうですね。彼らの目的はコモナ諸島のロケット発射基地の破壊のはずですが・・・」
『まさか・・・粉雪、爆撃機感じられる?』
『・・・方位270にB-2編隊です。撃墜願います。』
なるほど、ステルス爆撃機を持ってきて一気に爆撃をして破壊するつもりだろうか。
囮とはいえ、破壊されると面倒だ。ヴィエラはすぐに爆撃機の撃墜に向かう。
「こちらスカイアイ。西からB-2爆撃機が接近中。発射基地へ到達する前に撃墜せよ。」
「ネガティブコンタクト。こっちのレーダーには映っていないぞ。」
「B-2はステルスだ。レーダーに映りにくい。よくさがせ!」
ならば、MLS機がやるしかない。ヴィエラは急激に加速させ方位270に向かう。
後ろにはフォルクのF-15Cが。どうやら援護してくれるらしい。
「やるか?相棒。B-2狩りだ。」
「そうですね・・・行きましょう。」
一旦高空に向かう・・・そして低空飛行しているB-2に真上からAAM-4をぶち込んでやろうというわけだ。
『真下に思念・・・B-2編隊と護衛機にF-16F/36。それとF/A-18I。』
「新鋭機ですね・・・さすがに私たちを警戒してます。」
メビウス、レイピア両隊の行動を警戒してのことだろうか。まぁ、それはどうでもいい。
ホーネットADVと新型ファルコンが相手なら不足は無い。B-2にロックオンを仕掛ける。
「あったな、こんな光景どこかで・・・円卓か。」
『・・・あの時と、近いはずです。状況は・・・』
フォルクとヴィエラが一斉にAAM-4を発射。計10本・・・同時にF/A-18IがミーティアAAMで迎撃に入る。
ミーティアがAAM-4を2本ほど撃墜。残りは一斉に降下しB-2編隊を食いちぎる。
「やってくれたな・・・!」
「貴方達の相手は私です。覚悟願います。」
F-15Cが残りのF-16F/36を相手にしている間、ヴィエラはF/A-18Iの相手をする。
殺気を目いっぱい放つまがまがしい機体。EFLシステム搭載機・・・エンブレムはグリフォンだ。
「レイピアか・・・ちょうどいい獲物だ。俺の相手をしてもらおう!」
『グリフォン隊隊長ジャンジット!?やばいよマスター・・・!』
北部方面戦線で大活躍をしているグリフォン隊・・・この戦線に回されてきたのだろう。
武装はAAM-5を4本搭載だけ。少々使いすぎたか。
「貴方が・・・エースならば好都合です、落とします。」
「それでいい。MLシステムの力を見せろ!」
どうやら相手もこちらのシステムをわかっているらしい。敵機は負の思念などを吸い込んで強化されるシステム。黄色中隊メンバーの一部が搭載している。
「さて・・・お前から喰らいつくしてもっと強くなってやるか!人を殺して強くなる・・・お前と同じようにな!」
「あなたのような殺人狂とは違います・・・私は。」
「どう違う?過程と結果は同じだ。殺して強くなること、同じだな・・・文句があるなら落として、殺してみろ!」
「救えません。吹雪があなたの放つ負の思念で迷惑しています・・・退場願いましょう。」
その間にF/A-18Iが後ろに回り込もうとする・・・ヴィエラは微笑し、すかさずエアブレーキを展開。
オーバーシュートをぎりぎりで防いだF/A-18Iをヴィエラが追う・・・負けるわけには行かない。
「向かって来い!どれだけころした?どれだけ強くなった!?さぞかし俺より多いんだろうなぁ・・・?」
「・・・軽く考えすぎです、貴方は・・・!!」
ストーンヘンジで散ったレイシスや隊長、そして同僚の顔がはっきりと見えた・・・ヴィエラは敵機を追撃する。
彼だけは許しておけない。叩き落す・・・そのシステムごと。
「貴方の飛ぶ空と、私は違う・・・違うんです!!」
「ピクシーよりレイピア4、敵機を相当した。」
「・・・消えてください!!」
急激な機動にも難なくF-4Aを追尾させ、ヴィエラはジャンジットを狙っている・・・あと少しだ。
「落ち着け、相棒!!アラートだ、後ろ!!」
「あ・・・!」
フレアーをばら撒いてすぐに離脱・・・だが、敵機はいない。
良く見ると敵機がミサイルを後ろ向きにセットしている・・・危なかった。
『マスター・・・危ないって・・・・』
「すみません・・・落ち着いていれば・・・」
自分らしくも無い。こんなことで取り乱してどうするというのだ。
これではまるで目の前のジャンジットと同じだ。一旦深呼吸し、レイピア隊隊長の遺品であるお守りを握り締める。
大丈夫だ。落ち着ける。しっかりと回りも見える。
「どうした?後ろががら空きだぞ?」
今度こそ後ろに敵機。フォルクがいなければ落ち着かなかった・・・
緩やかに曲線を描きミサイルを撃てない位置に回る。敵はこの機動に乗っている・・・
「よし、もらった・・・!!」
F/A-18I特有の高軌道で発射位置についた・・・つもりのようだ。
だが・・・彼の照準に入っているのはF-4Aではなくただの虚空・・・そして ヴィエラは狙いを定め尾翼めがけM61A3を発射。
垂直尾翼破損。後部レーダーおよびエンジン大破。離脱しか手段は無い。
「く・・・ちきしょう!あとちょっとで・・・・!!」
「申し訳ありませんね。私が強すぎて。いえ・・・彼女のおかげでもありますけどね。吹雪の・・・」
敵機の動きははっきりとわかっている。だから興奮して周囲が見えなくなっていたF/A-18Iの後ろを軽く取れたのだ。
興奮しているほど緩やかな機動に耐え切れなくなり何か仕掛けてくる。そこを付けば勝てるからだ。
「・・・次を楽しみにしていろ!必ず叩きのめしてやる!」
F/A-18Iが撤収。何とか助かったようだ・・・何とか生き延びた。
「叩きのめすのは私ですから・・・貴方では無理です。」
『さ、任務の続きに行くよ!まだミサイル使ってないし、バルカンも残ってるから!』
「・・・解りましたよ。」
やれやれとヴィエラはいい、そのまま目の前を掠めていったEFタイフーンを追撃に向かう。
「最終チェック完了。発射30秒前。」

「雑魚ばかり集めたって、事態は好転しない・・・わかっているのか?」
ヴィクセンはつぶやきをかき消すように最大出力で敵機に突っ込んでいく・・・真正面にF-35C、狙いはつけた・・・ミサイルをロックオン、発射。
ミサイルの射程限界ぎりぎりの発射に対処しきれず、F-35Cが爆散。破片を交わしヴィクセンは次の獲物を狙い始める。
「僚機がやられた!」
「生憎だったな。黒い翼は獲物を逃すつもりは無い。」
動揺している隙にヴィクセンは右旋回、真正面に敵機を捕らえる・・・距離1600、ガンレンジ突入・・・敵機は側面を向いている。
僅かに機首を傾けてレティクルに機体を収める・・・撃てる。トリガーを退いて銃弾を発射。
『ナイスキル、やったよ。』
「脱出成功か。運がいい奴。」
EFタイフーンはきりもみを起こしながら墜落。ベイルアウトを確認・・・パイロットを撃つことは無い。
どうせ捕虜になるし、銃弾の無駄だ。ヴィクセンは周辺を警戒しながら旋回する。大分エルジア空軍機の数は減っているようだが・・・
「発射15秒前。すべてのISAF機は安全なエリアへ退避せよ。10、9、8、7、6、点火開始。」
いよいよ発射だ。ヴィクセンは発射施設を見る・・・エルジア空軍機も妨害しようとしているが、対空砲火に阻まれ近づけないでいる。発射は確実だ。
「3、2、1、点火!」
白煙を盛大に吹き上げながらロケットは飛翔、そのままISAFやエルジア軍機の傍を掠めて高空へとすさまじい速さで上昇していく。
ブラックバードよりも速い。かなうはずは無いだろうが・・・一応比べてみたかった。
『何思ってるのさ?マスター。』
「何でもない。レン、エルジア軍機は?」
『ロケット発射と共に撤収してる。追撃する?』
「やめておこう。」
戦意を失った敵を叩く必要は無い。ヴィクセンはそう判断すると周囲を旋回して空域にとどまる。
するとコモナ宇宙基地から通信が入る。他のパイロットの歓声で聞こえにくいのでそちらに周波数を合わせる。
「ロケットは高度40000フィートに到達した。もう手を出せないだろう。君たちのおかげで発射は無事成功した!」
「作戦成功だ。全機帰還せよ・・・・よくやってくれた!」
スカイアイからも賞賛の言葉を受け取り、意気揚々とISAF空軍機は引き上げる・・・伝統のエース空軍が数に勝るエルジア空軍を打ち破ったのだ。


サンサルパシオン領内「スカイ・キッド」 1940時
「・・・ラーレイは?」
悲しげなセイルの顔・・・私は気づいてしまった。今日の大空戦で戦果を流すラジオが聞こえてくる。
奥の部屋から、ISAFの大戦果を上げる音が。敵機を100機以上撃墜、残りにも少なからず傷を負わせたらしい。
「堕ちた・・・脱出はしたらしいが、もう・・・」
帰ってこない、そういいたいのだろう。悲しげな顔でバーボンを煽ると、グラスを強く叩きつける。
「俺のせいだ・・・!俺がもっとメビウスを警戒してれば・・・!」
今日のラジオで聞こえたメビウスの名前。彼は撃墜されたが、弟が戦っているらしい。
彼をそこまで戦いに駆り立てるものは・・・黄色中隊への恨み。私と同じような感情。
一方でその敵の中に安住の場所を見つけ、一方で真正面からぶつかり合おうとして戦空に身を投じている。
彼はISAFの旗頭として真正面の戦場に赴き、常に死線を潜り抜けている・・・でも、彼にラーレイが撃墜された。
「・・・」
黄色中隊も入ってきたが、今日はいつものように撃墜を発表する雰囲気でもなく、沈んでいる。
今日の大空戦・・・通称シャッタードスカイでエルジア空軍機が大敗した。黄色中隊、コンドル隊の両隊が早々に撤退してしまい、エースを支えきれなくなったようだ。
「・・・隊長、俺のせいで・・・」
「過ぎたことはもういい。奴が強すぎた・・・それだけだ。MLSに第5世代の高機動戦闘機、甘く見たら勝てない相手だろう。それに片羽もいた。」
片羽・・・彼もエースだ。ベルカ戦争の時蒼い鳥・・・円卓の鬼神の僚機を勤めていたエース。
それほどのエースがISAFにいる。黄色とまともに張り合えるエースが、たった1人で支えているようだ。
「気にしないでください、マスター。全力を出したんですから・・・」
「・・・」
ベルナードは悔やんでいる・・・軽いつもりで当たった敵機が今日のエースだったのだから。
もういいと彼女・・・「4」がベルナードの肩を叩く。
「全力を尽くして、次戦えばいい。また戦えるから。」
「・・・・ああ。忘れるか。」
もう1杯ベルナードが飲む・・・嫌なことを全部押し流したいのだろうか。
私もハーモニカを吹き、元の仕事を続ける・・・以前言っていた幸運は、確実にあの機体に注がれている。

いつか、合間見えるのだろう。そのときは何が起こるのか。
私にもそれはわからない。きっといつかわかるはずだが・・・・

続く

あとがき
間をおいて、何とかソラノカケラを描き終えました。
いや、このミッション大好きなのでエースとの連戦にさせました。燃えますよかなり。
個人的には名作のミッションだとおもいますね。5の04編音楽も4そのままで・・・(無理。
サイドストーリーもオリジナルを描くと楽しいです、ええ。
では。次は取りあえず上陸作戦で。



 2007/09/18:あくてぃぶF-15さんから頂きました。
秋元 「ジャンジット、現る! そしてやっぱ逃げる(笑 負け犬ジャンジット! 弱虫ジャンジット!」
アリス 「……マスター、落ち着いてください」
秋元 「──おっとスマン」

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