ACE COMBAT04 Shatterd skies〜メビウスの記憶〜




ACE COMBAT04 Shatterd skies〜メビウスの記憶〜
第7章 殲滅者〜バンカーショット揚陸作戦〜

2005年1/24 CV-47スフィルナ格納庫 1400時
「何だこれ・・・?」
ミラが格納庫で昨日運ばれてきたミサイルを見つける。先日JE-1Cが輸送してきた物資の中に入っていたものだ。
先端にCCDカメラが搭載され、切り離し式ロケットモーターを後ろに搭載している・・・ミサイル本体に塗られている黒い塗装はステルス塗料か。
しかしエアインテークやショックコーンがついている・・・先端だけ見れば最新鋭戦闘機の機首と間違うかもしれない。
「昨日の荷物で送られてきた物って聞いたけど・・・レン、何か知ってる?」
「解らない。でも先端に蒼晶石がはめ込まれてる。」
「何でだろ?」
レナは少し考えてみるが全然わからない。しかし重そうなミサイルだ・・・イーグルに搭載できるんだろうか?
これだけ大きいと破壊力は相当なものになる・・・相当残留思念が流れ込んでくることも覚悟しなければならない。
「・・・この高威力ミサイル、使うとしたらバンカーショット揚陸作戦ね。今日決行されるはずの。」
「何でまた・・・」
「まず揚陸地点は堅固な防衛ラインが張られている。次に民間人はあの区域に居ない。周辺に集落はないから犠牲は出ることはない・・・あとはこのミサイルがどれだけの威力を持つか試したい。そんなところ。」
巻き添えが出るといっても出したくないのがISAFの本音だろう。そして新兵器がちょうどよくあり、このように揚陸部隊に対して効果的な防衛ラインを張っている。
ノースポイントから弾道ミサイルを撃てば必然的にストーンヘンジ射程内を弾道ミサイルが飛ぶことになる。それに並みの巡航ミサイルなら致命的な一撃は与えられない。
艦船搭載用のトマホークも迎撃されるだろうし、新鋭のグレイトアックスと呼ばれる巡航ミサイルも数が少ない。リシュリュー級に4発しかまだ搭載していない。
しかもこの揚陸作戦には参加できないという・・・別方面でエルジア艦隊が牽制のため出撃。リシュリュー、ストラスブールの2隻はその方面に借り出され、残っているのは巡洋艦数隻と駆逐艦7隻程度だ。
となれば、やはり実験もかねて高威力のこのミサイルで葬るしかないのだろう。
すると、ブリーフィングを終えたフィン達が入ってくる・・・そして整備員が慌しく働き始めF-15Irの大型パイロンに大型のミサイルがセットされる。
「フィン、どうなったの?作戦の方は・・・」
「君にも協力してもらうことになったんだ・・・レナ。よく聞いて。」
真剣な表情にレナは少し嫌な予感がしたのだが、その思いを振り払いフィンの話に集中する。
「僕の意識の一部をこのミサイルに移して、操作する・・・それで敵意のある場所に向けて放ち、着弾させる。そういうミサイルなんだ、これは。」
「出来ないことは無いけど・・・負担は大きいよ?かなりこの場合だと・・・ISAF上層部もよく承認したよね。こんなの。」
「それほどきついんだ・・・仕方ない。」
なりふりかまわず、ってところだろうか。さすがにこんなものをミラージュ2000Cには搭載できない。攻撃はレイピア隊のヴィエラ、フォルクとメビウス隊のフィン、ヴィクセンだけに限定されている。
そして、巡航ミサイルがF-15Irのハードポイントに搭載されるのがはっきりと見えた。


作戦空域 1635時
『すごく重いんだけど・・・・!』
「文句言わない、レナ。」
自衛用のAAM-3を2本搭載。それ以外は巡航ミサイルの重さのため搭載できない。一応ルウは護衛の為に制空装備で随伴している。
残りはMLM-1巡航ミサイルを搭載。レナですら重いと愚痴るほど、相当な重量なのだろう。
接敵を控えるため高高度を飛行中。大体15400、速度はM2.5・・・これくらい高高度ならば敵も気づかない。この豪雨では幻想的な風景など望むべくも無いが。
本来ならもっと高高度をさらに高速で行くべきだが、何せF-4AとF-12AはとにかくフォルクのF-15Cのためあまり高高度も高速も出すわけには行かない。
「嫌な予感がする場所じゃねぇか・・・考えてみろ。ここを敵に襲われたらどうすんだよ?」
「お前が囮になれ、ルウ。」
「冗談だろ!?ったく、何だってまた・・・」
ヴィクセンは冷静にそういうしかなかった。この高度と速度では発見される可能性もある。だからいざという時は護衛機を囮にして真っ先に作戦目標を叩くしかないのだ。
念のためかなり後方からレイピア隊が随伴しているが・・・大丈夫だろうか。
『・・・レナ、言っておくけどこれ残留思念とかかなり食うよ?対艦攻撃でも結構辛いんだから。』
『え?』
いきなり吹雪から思念波通信を受けてレナは困惑しているが・・・そのまま吹雪は伝える。かなり大事なことだから・・・か。
『今回は対艦攻撃の比じゃない。敵守備隊の大半を消し飛ばすんだから・・・受け止めてあげてよ?』
『フィンの為に・・・?』
『そういうこと。さ、張り切って行くよー!!』
何故そこまで明るく出来るのか。レナはふとマスターであるフィンの顔を覗いてみる・・・彼もかなり悩んでいるようだ。
やはりフィンも苦しい思念が見え隠れしている。敵守備隊の大半の命を握っていると思えば辛いのは当然か。
『フィン、悩んでる?』
「・・・当然さ。」
この作戦で何も考えずに撃てる人はフォルクくらいか・・・さすがに今の自分では落ち着かない。
けど、敵への情けは味方への偽善だ。少なくとも今はそう割り切ってトリガーを引くしか・・・方法は無い。元々こういうのが嫌なら軍何かに入らない方が良かったんだ。
『敵機・・・?今何か思念を感じた。』
「敵機?どんな思念?」
『かなり濃い負の思念・・・向ってくる!』
「こちらレイピア5、敵機を確認・・・こちらを狙っている!交戦する!」
負の思念が向ってくると同時にレイピア隊が敵機と交戦を開始、かなり後方で戦っているようだ。
敵機はF-35BライトニングU。おそらく近隣の野戦滑走路から発進したのだろう・・・しかし何故このタイミングで、しかもレイピア隊を狙って?
『どういうこと・・・?どーしてわざわざレイピアの連中にF-35Bをぶつける?』
『・・・嫌な予感ね。』
レンがも何かを感じ取った・・・途端に何かが移りこむ。レーダーに・・・ミサイル反応!?
すかさずルウが機首を上げる。さらに高高度からの襲撃・・・数1機、ミサイルはADM-8ナイフエッジが6発だ。
「メビウス2より各機・・・ミサイルだ!迎撃するからかわせ!!」
「嘘!?」
「本気だ、フィン!早く突っ切れ!!」
ナイフエッジにMICAをロックオン、残り2発にマジックAAMをロックオンし発射、残弾はマジックが4発のみ・・・この状況での空戦はかなりきつい。
『冗談じゃねぇ・・・!メビウス2、エンゲージ!!』
「ナイフエッジが抜けた・・・フォルク、狙われてるぞ!」
「焦るな。これくらいかわせる。」
ぎりぎりまでミサイルをおびき寄せ、フレアーをばら撒くと急激にF-15Cが旋回。間一髪でナイフエッジを回避すると空域を最大速力で離脱する。
すぐにルウは敵機を探す・・・いた、真上だ。あれは確かヴィクセンが出会った敵機に間違いない。
『やはり来たか・・・目的は最初からお前だけだ。』
『気味悪ぃ思念飛ばしやがって・・・!!』
ミラが一瞬でFX-11Aに敵意を向ける・・・エルヴィン搭乗機のFX-11AEFM「ヴィクトリアス・ランサー」だ。
『思念を隠すのが下手だな。まぁ巡航ミサイルの結果などどうでもいい、貴様と戦う方が先だ。』
「光栄だな・・・が、ただの世代遅れの戦闘機と見ると痛い目にあうぞ。」
元々戦闘機は軽い方が旋回性能が高い。単発、小型のミラージュ2000は現在の制空戦闘機の中ではかなり軽い部類に入る。
さすがに最新鋭のMig-29とは比較にならないかも知れないが、軽い挙動を生かせば勝てないことも無い。
敵機が急降下状態でヘッドオンを仕掛けてくる・・・ルウもアフターバーナーを最大にして上昇、真正面に敵機を捕捉する。
ヘッドオン・・・互いにミサイルが無駄だと知っている。ならばバルカンで初撃を当てるしかない。
すると敵機がいきなりAIM-132を発射。すぐにルウはフレアーをばら撒いて回避。急激に旋回し突っ切ろうとしたFX-11Aを追撃する。
さらに上昇を続け敵機を追い詰める・・・距離約240。同時にFX-11Aにアフターバーナーが入る。
「無人機だったか・・・そうだよな!」
今更のようにルウが思い出す・・・こいつは人の思念を感じるが本体は無い。機械も同然だ。
通常の人ならレッドアウトでもしかねないほどの高機動で逃れようと必死に逃げる。速度を落とし、旋回半径をほぼ同等にして追撃を続行。
『無人機め・・・あの機動力・・・・!』
「従来型の無人機はいくら戦ってもプログラム、どうやっても機体の全力を引き出す事なんて不可能なんだけどな・・・こいつは紛れも無いエースじゃねぇか。無人機の性能の限界や動かし方を知り的確に動かしてやがる・・・!」
機体の癖や機動力などを知らなければ全てを生かしきることは出来ない。無人機ではいずれ限界が来る・・・量産コストは確かにいいし即戦力になる。
だが、結局プログラムも隙を突かれると終わりだ。その無人機に組み込まれたプログラムは無人機を扱いこなした人が組んだものじゃないから。
機体を扱いこなせば、ハリアーでSu-37を撃破することも不可能じゃない。自分の機体をどれだけ扱いこなせるか、それがエースなら無人機にエースは生まれない。
無人機は一時しのぎ、所詮最後に決着を付けるのは人間しかいない。奴の無人機も、人がいてこそ動いている。
「けど、ふざけんじゃねぇ・・・無人機は俺が狩ってやるよ!」
レッドアウト寸前の機動についていかない。というよりミラに負担はかけられないしついていけない。
それに気づいたエルヴィン機が上昇を仕掛ける・・・機首を持ち上げる機動だ。どう来る?オーバーシュートか上昇か?何をやってどう攻める?
「・・・無駄弾でもぶっ放すか!」
トリガーを引きDEFA30mmを発射、オーバーシュートを狙う機動なら粉砕できる・・・が、FX-11Aの取った行動は急上昇、当てが外れたか。
『真上、ぼやっとすんな!』
「ちっ!」
尾部を滑らせるような挙動でこちらに機首を向ける・・・狙いはあきらかに操縦席後ろのブラックボックス。
ロールをかけてすかさず交わすが尾翼に銃弾が直撃、ヨーイングが効き難い・・・垂直尾翼に直撃したようだ。
すかさず急降下するであろうFX-11Aめがけ急激にロール、機首を落とし降下させる。高機動格闘戦はISAFの十八番。眩暈を抑えこの程度と自分に言い聞かせると無理矢理付いていく。
目の前にFX-11A、無理した甲斐があった・・・距離表示3100。マジックAAMで狙うならこのくらいがちょうどいい。
「ロートルなんか・・・すっこんでろよ!フォックス・ツー!!」
マジックAAMが放たれる・・・するとほぼ同時にFX-11Aが外付けのポッドから何かを射出する。同時にマジックAAMがそちらに吸い寄せられる。
すかさず煙を通り抜けてるが・・・レーダー、IRシーカーが異常値を示している。
『ったく、何もかもエラーだ・・・どうしたんだよ!』
「敵機はどこだ?」
本気で勘を信じろと言うのか。いや確かに一瞬の判断で動かなけれればならない事態もあるが、ここは良く考えないと危険だ。
レーダーどころかEFLでもこちらを既に見つけているだろう。どこに行く、どこのポジションを取る。
1つのミスでも命を奪えるほどのエースだ。失敗したらそれこそ目も当てられない。
『真下、距離6100!』
「そこか!」
アフターバーナー稼動、同時にデルタ翼のフラップが最大角度で折れ曲がり機首が下を向く。
一瞬だけFX-11Aが見える・・・その前に既にDEFA30mmを発射。同時に金属音が聞こえ互いにすれ違う。ヴィクトリアス・ランサーが機首を真上に向け、ミラージュ2000C・ミラが真下へと。
『敵機、炎上!ざまあみろってんだ・・・!』
FX-11Aが炎上、そして数秒後に大爆発を起こした・・・予備燃料とミサイルに引火したのだろう。
あの不愉快な思念も消えた・・・やれやれだとミラが一息つくが、どんどんミラージュ2000Cが高度を落としていく。
『マスター、とっとと機首を上げろ!マス・・・・』
状況に気づいたミラがすかさず機首を上げるが、目の前に揚陸艦がいる。ISAF揚陸艦「マジノ・ライン」だ。
『マジかよ!まだ・・・!』
急激に旋回を交えながら上昇、飛行甲板ぎりぎりを掠め去り何とか交わしきる・・・危なかった。
ようやくミラが一息つくと、機内カメラでルウの様子を見る・・・酷い怪我だ。
『嘘・・・死ぬんじゃねぇ!死ぬんじゃ・・・・っ!』
フラップも調子が悪いし、エンジンも酷い損傷だ・・・これでさっきの高機動が出来たと言うこと自体が奇跡だろう。
低空まで高度を落とし、CVスフィルナに帰還させる。これしか手段は無い。
『銃弾は・・・ほぼ全部に食い込んでやがる・・・機体を真上から一気に銃撃した感じだ。左腕と右脚にかなりの怪我・・・大きくかすったか・・・酸素マスクにも穴が・・・』
これでは与圧も効かない・・・高度は落としておいて正解だ。ヘルメットのバイザーも跳弾によりぶっ飛んでいる。そのために額を切られている。
生きられ無いほどの怪我じゃない。けど出血多量になれば死ぬことは目に見えている。
「スカイアイよりメビウス2、聴こえるか!?」
『マスターは怪我した・・・今こっちは帰還する。大至急救護班準備しとけ!』
「・・・わかった。頼むぞ。僚機は無事だ。それとレイピア隊も敵を撃退したようだ。帰還を許可する。」
これ以上の追撃も無くてよかった・・・ミラは一安心すると、何故か涙が溢れてきた。だがそれをすぐにぬぐいさり、スフィルナへと機首を向けて飛ぶ。

「そろそろ発射空域、準備願いますよ。」
「わかってる、ヴィエラ・・・レナ、発射準備。カウントと一緒に意識を移して。」
『・・・』
すると一斉に海上艦からハープーンやASM-2が発射される・・・目くらましの為に大量に発射するつもりだ。
フィンはレナからの返事が無いことに気づく・・・どうしたのだろうか?
「レナ?」
『・・・この一発が、どれだけの命を消すのかな・・・?撃たなかったら・・・』
「もっと多くの人が死ぬ・・・もう、やめよう?」
『え?』
一筋の涙をフィンは流すと、レナに覚悟を決めて言う。この任務に参加していた時にもう覚悟は決めている。
いや、ISAFの志願兵としてCVスフィルナに乗り込んだときから・・・どれだけ敵機を落としても、人を殺してでも止めなければならないって・・・
「僕達が終わらせなかったら、他の人がやることになる。結局同じことが何度も繰り返される・・・それが僕達が見る見ないじゃない。誰かがやって、誰かがこの苦しさを見なければ終わらないんだ。」
『誰かが・・・でも、フィンだってこんな作戦望んでない!なのになんで・・・』
「一瞬の敵の犠牲で、多くの人が助かるならそれを選ぶ・・・片方しか生き残れないなら、せめて僕達が生き残る道を選ぶよ。それが戦場だというなら・・・」
レナは何を言っても無駄だと思った・・・相変わらず意志が強いと言うか頑固というべきか。
仕方ないなと思い、準備する・・・フィンの意識をMLM-1に移す準備だ。
『・・・フィン、まったくもう・・・何でそんなにまで・・・いいよ、やってあげる。けど私じゃ耐え切れないかもしれないからそこは気をつけてくれる?』
「負の残留思念・・・だね。」
『うん・・・全力で止めてみるけど、無理だったらごめん・・・』
「大丈夫。来たらきたで何とかするし、君はそれほど弱くないって信じてる・・・」
フィンは思わず肩を叩こうとして・・・そういえばここにレナがいない事に気づく。そうだった。ここじゃ実体化できないということをすっかり忘れていた。
すぐ振り向けば、そこにでもいそうな雰囲気なのに。
『わかった・・・がんばってよ?やることはしっかりやるんだから。』
「リリース5秒前、発射態勢に移行してください。」
ヴィエラの言葉に従い、フィンはリリースボタンに手をかける。機首の方角に間違いはない。思念をたどり、そこにぶつければいいのだ。
「よし、MLM-1、リリース!」
リリースボタンを押すと同時に急激に意識が遠のきそうになった・・・いや、物理的に遠のいてる。パイロンから放たれた巡航ミサイルの視界を自分で感じられる。
不思議な感覚だ。今の自分はここにいるのに、巡航ミサイルはどんどん敵へと向っていく。
『だ、大丈夫?』
「うん・・・ぎりぎりでね。」
挙動が不安定なのがレナには解ったらしい。ヴィエラはヴィエラで水平飛行のまま。どうやらオートパイロットを入れたままにしたらしい。
「今、ハープーンとASM-2が突っ込んだ・・・」
遅れてMLM-1がカランダビーチ中央に向う。対艦ミサイルとは言え炸裂弾頭装備、破壊力は抜群に高い。
次々に防空車両CV90が弾幕を張り、ミサイルを叩き落す。ASM-2が対空車両や通常戦車を集中砲火し残留思念を吸い込んでいく。
『やられた!くそっ、このままじゃ・・・!!』
『逃げろ!俺は死にたくない!』
『どけぇぇっ!!』
『撃て!撃てーっ!!』
そんな思念まで吸い込み、眼前で思念が消滅する光景を見ながらMLM-1が着弾。
いままで吸い込み続けた思念を喰らい、爆風を大幅に増加させながら周辺を巻き込んでいく。
「許してとは言わない。せめて苦しまずに逝って・・・!」
周辺の人は一瞬で消し飛んだだろう。高温の前に蒸発し2kmくらい離れた人にまで吹き飛ばす。揚陸地点は間違いなく壊滅状態だ。
が、ほぼ同時に負の残留思念が一斉になだれ込んでくる・・・

『今何があったんだ!?』
『俺たちは戦車の中だ!きっと大丈夫だ!』
『な、無い!どうしたんだ!?俺達どこにいるんだ!?』

『・・・あれ、フィン・・・?』
フィンが先ほど一瞬で倒れてしまってから、全然反応しない・・・気絶してしまっている。
『ちょい、レナ。フィンがどうかした?』
『全然起きないの!ヴィエラは?』
『んー・・・マスターなら無事。』
じゃあフィンだけがぶっ倒れたらしい。どうして?レナは自分に出来る全部のことをしたと思っている。
一体どうして倒れた?いきなり残留思念を大量に感じ取ったから?張り詰めていた精神に、負の残留思念はさすがに辛い一撃になったのか。
受け止められなかった?張り詰めていた?自分が最大限のことをしていたのだろうか・・・全部受け止められるほどにまで自分が何とかできたら?張り詰めた空気を和ませられたら・・・
『こんなことにならなかった・・・どうして・・・』
『まいったねー・・・きっとショックが強すぎたんだよ。まぁちょっとすれば治るとはおもうけど、記憶が一度に全部吹き飛んだ被験者もいたらしいし・・・』
『え・・・!?』
ヴィエラがそんなことはまず無いと言うが、レナは気が気ではなかった・・・自分のせいで消えたらどうしようとか、そんなことばかり考えてしまう。
いや、信じよう。そして今からでも遅くない。フィンをレナが見つめる・・・案外寝顔は可愛い。最も今は気絶しているが・・・少なくとも、起きている時の鋭い視線は消えている。
『・・・とにかく、運ばないと。』
フィンは起きる気配が無い・・・とりあえず、一刻も早くスフィルナに届け様子を見せることしか方法は無い。


CV-47スフィルナ第2医務室 1750時
「だ、大丈夫なのかな・・・?」
先ほどMLS技術者から「とりあえず、記憶が飛んでいなければ普段どおりで大丈夫」といわれたがやはり眼が開かないとどうしても不安だ。
医療チームが検査しても悪いところは無かった・・・だったら、後は本人次第か。レナはぎゅっとフィンの手を握ってみる・・・残留思念が大量に流れてくる。
これを受け止めていたのだろうか・・・膨大な量の残留思念を。これが自分が処理できなかっただけの・・・自分のミスなのだろうか?
すると、いきなり扉が開いて担架で誰かが担ぎこまれてくる。
「生きてるか!?」
「ああ、後は任せろ!」
ミラが医務室の前で座り込む・・・となれば、今運び込まれてきたのはマスターのルウだろうか。
顔を一瞬だけ見た・・・間違いなくそうだ。FX-11Aと激しい戦いを繰り広げてここまで何とか帰還、そしてようやくスフィルナに着艦したというところか。
救護班が大急ぎで傷口をふさぎ、処置を施す・・・一方では精神的にやられて寝ていて、一方は大怪我を負いここまで戻ってきた。
「あの、ルウは助かりそう?」
何となくレナは救護班のメンバーに訊ねる・・・すると1人が振り向き、親指をぐっと立てる。
「安心しろ、助けてやるさ。失血量が多いが回復の見込みが高い。」
ようやく安心できた・・・一旦気持ちを落ち着かせると、レナはフィンを見つめる。まだ彼は寝たまま、ずっと目を覚まそうともしない。
「・・・フィン、しっかりするかな・・・?」
ぎゅっと手を握り締め、また残留思念を吸い取り始める・・・嫌な感じだが、もう慣れた。
そしてようやくなくなると・・・不意に何かフィンの精神と自分が同調し始めた・・・自分の意識が吸い寄せられていくのを感じる。
「な・・・何があったの?」
恐怖よりも純粋な戸惑い。レナはフィンの記憶の中に入り込んでいく・・・同時にレナは意識を手放し、フィンの上半身に覆いかぶさる・・・


1992年 1/24 1757時 中央ユージア首都セントアーク公園
『ここって・・・?』
フィンの記憶の中・・・レナは何となくそんな気がした。何て中に入ってしまったのかはわからない。
目の前で2人が遊んでいる・・・1人は誰だろう?もう1人は何となくフィンだと解る。
「な?よく飛ぶだろ?」
「さすがだね、レイシス兄ちゃんはいっつもすごいなぁ。」
「おいおい、照れることは辞めてくれって・・・」
フィンが語っているレイシスその人だ。こういう人だったのかと今更ながら思う・・・割と風貌は似ているが、何か落ち着きと言うか、余裕のようなものが見える。
紙飛行機を飛ばす単純な遊びだが、レイシスはかなり得意らしい。この当時のレイシスはまだ士官学校に通っている・・・空軍パイロットになる前だ。
その途端に警報が・・・この当時ユージア大陸はクーデター軍との戦争の渦中にあった。スカーフェイス隊などを主力としたユージア正規軍とクーデター軍との戦闘だ。
「あ、空襲・・・」
「逃げろ!ここに・・・!」
飛来したのはクーデター軍の主力機体ともいえるF-4Eファントム。数、約20機・・・爆撃装備だ。しかも護衛機体はF-14Dトムキャット・・・これはきついだろう。
『スカイアイより各機へ、敵機は30機を超える編隊だ。首都防空軍は出来る限り時間を稼げ。』
『了解。数が多いな・・・』
『びびるんじゃねぇ!無敵のISAF航空隊を見せてやれ!』
『世代遅れの旧式機ごときに引けは取らない。数が何だ!』
『戦闘は機体と腕前を比べた時点で決まってるんだぜ!』
ほぼ同時に近隣滑走路からF-15JFなどが向う・・・数は14機。さすがに首都だけあってそれなりの防衛体制が敷かれている上に、近隣からも航空隊が時間差で来るはずだ。
巡航ミサイルは港湾施設に設置されたパトリオットなどで全て迎撃。この事件なら覚えている・・・フィンが調べた記憶にある。
「おい、あれって気化爆弾だろ・・・!?何だってあんなもん積んでやがる!」
「どうなるの、レイシス兄ちゃん!?」
「伏せろ!」
ふとレイシスが見つけたF-4Eには気化爆弾が搭載されていた・・・しかもそれをクーデター軍が投下。
住宅密集地付近に対空防衛ラインを敷き、近づけまいとした行動が裏目に出た・・・気化爆弾でまとめて一掃するつもりでいたのだ。
『ダメ!やめて・・・っ!!』
非情にも爆弾は投下され、緩やかに降下しながら気化燃料を撒き散らしていく。
『やめろ!マジかよ・・・!!』
「嘘・・・!やめてよーっ!!」
『いやあぁっー!!』
イーグルのパイロットと、フィンとレナの叫びが重なった・・・気化爆弾が一瞬で巨大な炎を作り上げ、周辺の住宅街ごと炎上させたのだ。
そして上昇反転しようとしたF-4EめがけF-15JFがAAM-3を発射。フレアーを回避して誘導しファントムを撃墜・・・ベイルアウトしたパイロット2人めがけ制空装備のF-2Aが20mmバルカンをぶっ放し搭乗員を射殺する。
『ちくしょう!ちくしょう・・・っ!!』
『思い知ったか!ったくよ・・・・!』
ほぼ同時に当時の新鋭機ともいえるF/A-18EJが飛来、首都防空軍を救援し激しい空戦を繰り広げる。
「燃えたか・・・もう・・・・・」
悲しげな様子でレイシスが炎上する住宅街を見る・・・そこにフィン達の一家が暮らしていたのだ。
もう両親は戻ってこない・・・途端に上空でF-15JFがF-14DのフェニックスAAMを喰らい爆発、住宅街に落ちていく。
「・・・避難、したよね?きっと皆ね?」
「だといいけどな・・・親父、生きてるのか・・・?」
炎上した市街地を見ながら、フィンとレイシスは涙を流している。逃げ切れないことくらい知っている。あんな気化爆弾をぶち込まれたら、間違いなく・・・
ひとかけらの可能性すらない悲しさ・・・その真っ只中に2人がいた。そして炎が市街地を焼き尽くしていく・・・


2005年1/24 CV-47スフィルナ第4医務室 1800時
「・・・あれ?」
目を覚ますと、フィンの上にもたれかかって寝ていた・・・レナは起き上がると、フィンの様子をじっと見詰める。
すると彼も目を覚ます・・・数度瞬きすると、目をこすって起き上がる。先ほどまで微動だにしなかったのに・・・
「レナ?そこに・・・」
「フィン、よかった・・・っ!」
ゆっくりと起き上がったフィンにレナが抱きつく・・・少々困惑しながらもフィンはレナを抱きとめる。
少々落ち着くと、フィンは倒れた時のことからゆっくりと話し始める。どうやら記憶は吹っ飛んでいない・・・レナはようやく安心できたようだ。
「倒れた後・・・夢を見てた。僕が光を持ってて・・・それがいきなりひびが入って壊れそうになった。けど君がしっかり抑えててくれた夢。不思議だよね・・・なんだってこんな夢見るんだろ。」
「そんな夢を・・・私も何か見た。フィンのずっと前の記憶・・・ちょうど13年前のことでしょ?この日・・・この時間で・・・」
「・・・うん、2人とも死んだ。後でわかったことだけど・・・僕の友達の少女も家で待ってたところをやられたんだって・・・本当に悲しかった。」
悲しげな瞳を見せてフィンは語る・・・だまってレナはそれを聞く。そして・・・フィンは外に出ると言い出しそのまま起き上がると外に出る。
通路を歩き、格納庫に出る・・・ここならば誰も気づかないだろう。F-15Irのそばまで来るとレナがまたフィンに訊ねる。
「パイロットになったのも、それから?」
「兄さんに憧れてたのが一番の理由だけど・・・その事も入ってる。だから兄さんは戦いを繰り返したんだ。クーデター軍残党討伐に一切の情け容赦をかけなかった。常に最前線に行くことを望んで・・・皮肉なことに、それがエースと呼ばれるようになった理由なんだ。」
「ISAF空軍に彼ありと言われたレイシスが、そんな過去を・・・」
「同じ場所を見てきた僕とルシア意外には語らなかった・・・こんな事もいってたんだ。『俺はエースなんて望んでいない。一番してはいけないことをして、そう呼ばれるようになっただけ』だって。」
黙ってレナはその話を聞き入っていた・・・憧れていたからこそ、冷静に欠点なども言えるのだろうか。
そんな話は誰からも聞けなかった。フィンを信頼していたからレイシスも話したのだろう・・・いや、唯一の家族ともいえる存在だからだろうか。
「・・・でも僕はそこが好きだったんだ。どんな場所でも生きて人間らしくあろうとしてた。だから・・・」
「ずっと慕える。そう言いたいんだ?」
「自分でも矛盾してるのはわかってる。けど・・・自分の生き方を貫ける人だから・・・僕は尊敬できる。ずっとね。」
すると・・・フィンがいきなりレナの髪を撫で始める。どうしたのだろうかとレナは思ってしまうが、フィンはもう少しこうさせて欲しいという。
「・・・フィン、怒ってないんだ。私が記憶に入り込んで。」
「いつか言おうって思ってたんだ。君が・・・誰よりも失いたくない存在だから。戦いとかそんなことは関係ない・・・君が居なければどうにもならない。よく君と意見がぶつかって・・・口喧嘩ばかりだけど、大事なんだ。」
「本当?」
「・・・本当。」
少しフィンが表情を崩す・・・それに安心したのか、レナも笑顔を見せる。
「今の顔、かなり可愛いよ。」
「そうかな・・・僕はちょっとかっこよくないと思うけど。」
「フィンはそれでいいと思う。少なくとも、私は嫌いじゃないよ。」
鋭い視線が消えて、少し可愛い表情になった・・・レナはそう思い、フィンに抱きついてくる。
突き放そうとせず、フィンもレナを抱きとめる。もう二度と離さないつもり。ずっと・・・何があっても守り通す。


2113時 第2医務室
「くっ・・・俺は・・・・・?」
ルウが目を覚ます・・・今まで見ていたのは夢だったのだろうか?だが実際に傷の痛さを感じている。
ミラージュで30mm機銃をあの無人機にぶち込んで、それから意識が途絶えている・・・撃たれたのだろうか。だが幸いなことにまだ意識がある。
「・・・起きた?マスター・・・」
「ミラ、悪ぃな・・・ってお前何やってんだ!?服が・・・」
「あぁ、これは別に・・・」
機体が傷つけば彼女達も傷を負う。それは当然のこと・・・機体と一体化しているのだ。血が流れ出ていることがあっても仕方ないのだろうか。
だがルウはそう思えない。自分が未熟すぎた。あんなロートル風情にまで傷を負わせられてしまうなど・・・
「無理するな。俺は大丈夫・・・」
「どっちが無茶だよ!?こっちの傷なんてすぐ治る、けどマスターは大怪我負ってるじゃねぇの・・・」
「まぁそうだな・・・ゆっくり寝させてもらう。」
そういったが、全然ルウは寝付けない・・・そういえばなんか疲れた。夕飯をまだ食べてないことに気づくがこの身体では取りに行くことなど到底無理。ミラにも無理はさせられない。
ふと見ると、誰も居ない・・・医務室に誰も居ないと思ったが、それはミラが意図を察して答えてくれた。
「隣のレイピア2が大怪我で大手術らしい、だから全員そっちに向ったとさ。」
「ったく。無茶しやがって・・・」
倍の数を誇るライトニングU相手に5機で立ち向かい、隊長無しで何とか全機撃墜に成功したんだからたいした連中だ。
ISAF空軍の質はかなり高いが・・・医療チームに関しては人員不足らしい。まぁ即戦力を整えるためにやむをえないとはいえ、さすがにこれは少なすぎるんじゃないか。
だが、ルウもミラもそんなことは口に出さない。苦しいのは搭乗員だけじゃない。他の病院から引き抜くわけにも行かないのだろう。
むしろ、こうして2人きりで話せるのだから逆に良かったのかもしれない。
「・・・腹へったな、マスター。」
「といってもこの状況じゃどうしようもないな・・・お?」
ルウが見つけたのは艦内電話だ。早速フィンの部屋にでもかけてみる。出前など待ちきれない、だったら直接すぐ運んでもらおう。
「メビウス2よりメビウス1へ・・・糧食が尽きた・・・補給頼む・・・・・」
あえて苦しげな声でルウがフィンに電話をかけるが、そっけなくフィンが返す。
『現在メビウス1は相棒と交戦中。なので応答不可能・・・レナ!だから何で戸棚勝手に開けてバラバラにするのさ!』
『ちゃんと整理してないフィンが悪いの!』
何やってるんだとルウは思い・・・当てにならないと知りもう切ってしまう。ダメだ、あの2人の喧嘩だと1時間はざらに続く。あれはあれで仲がいいのだろうが。
技術者に聞いたところ「かなり珍しいケースですね」と。それだけというのもまた変な話だ。
「食事だ・・・って、何やってるんだ!?」
「あ・・・」
医療班の1人が食事を持ってきたが・・・電話を戻そうとしているところを見られてしまったようだ。
「・・・まぁ今回限りは見逃すから、次からあんまり迷惑かけないで欲しいな。」
「悪ぃな。ところで隣のあいつは助かりそうか?」
「何とかなりそうだ。じゃあ、何かあったら俺に言って置いてくれ。」
彼はそういって椅子に座る・・・やれやれと言うとルウはミラと顔を見合わせる。
「隣で寝たいけど・・・いい?」
「隣で?」
いきなりのミラの言葉にルウは少しだけ驚いたが・・・まぁいいかと思い布団を開けておく。しかし枕が狭い・・・
すると、先ほどの彼が枕を差し出してくれた。
「使ってくれ、これ以上怪我人は運ばれてこないだろうし。」
「悪いな。」
早速枕を受け取り、2人は一緒に眠る・・・互いに身を寄せ合って。
なんだかんだ言ってやはりミラが好きだ・・・口調が変わろうと別に関係は無い。

続く

あとがき
もはや原作の面影が全く無い・・・まぁいいか。
MLM-1を一度使わせてみたかったというのはありましたし、使うなら揚陸作戦が一番かと。
これでベルツ中尉は狙撃主に打たれなくて済みました。揚陸も簡単でしょうし。
では。次は民間機護衛ミッションです。



 2007/11/05:あくてぃぶF-15さんから頂きました。
秋元 「MLM-1、ぶっ放しましたね。非核弾頭巡航ミサイルなのに、核っぽい兵器。MCと被験者への負担がすんごく強いんです」
アリス 「……戦後、条約に引っかかったりとかは?」
秋元 「それは大丈夫だったようだな。核ではないし、使われた側のU.S.A.J.にも同じような兵器あったし」
「んまぁ戦後の米としても、ブルーレイン弾頭兵器を放棄したくなかった、てのがあるようだけどネ。外機の世界では燃料気化爆弾、クラスター爆弾ともに条約外だから、その一種って感じカナ。破壊半径は燃料気化爆弾に及ばないからネ。範囲内は完全にぶっ飛ぶけど」

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