ACE COMBAT04 Shatterd skies〜メビウスの記憶〜




ACE COMBAT04 Shatterd skies〜メビウスの記憶〜
第9章 鉄槌への道標〜ロスカナス開放戦〜

3/31 CV-04スフィルナ飛行甲板 1540時
既に大多数の航空機が飛行甲板に集結し、今か今かと出撃の時を待っている。E-2C、F-3A、F-4AなどのISAFが誇る最大の航空隊。僚艦シャルル・ド・ゴールやジョッフルなどにも航空隊が集結。
任務は「ストーンヘンジ攻撃の橋頭堡構築のためロスカナス空軍基地の対空火力を撃滅する」と言うごく簡単なもの・・・だが、どうみてもストーンヘンジの射程距離内部だ。
ISAFから各種の航空隊がかき集められ、数で何とか押し切ろうというらしい・・・部隊占拠のための陸上部隊も進撃しているため、そう時間はかけられないとのことだ。

「こうしてみると圧巻、かな?」
レナが甲板にゴチャゴチャ集まっている戦闘機を見て言う・・・F-15JやF/A-18J、F-4AやF-3Aなど戦いが進むごとにかつての威容が戻っていくようにレナは感じたのだろう。
「あ、レン。どうだった?」
F-12Dから降りてきたヴィクセンとレンを見て、レナはさっそく今日の偵察結果をレンから聞こうとしている・・・ヴィクセンは後だといい報告のために艦橋へと向う。
レンも同じくヴィクセンに引っ付いていく・・・不機嫌そうにレナは頬を膨らませると話し相手にするためにフィンを探す。
「ねぇねぇ、フィン。」
「何?」
F-15Irの近くで何か考え事をしていたらしいが、フィンは顔を上げるといつもの様子でレナに答える。
「この前の偵察機の報告、聞いた?」
「ISAFの列車兵器が丸ごとエルジアに鹵獲されたって話?聞いたよ、レナ。」
中央ユージアはユージア大陸の線路網を生かし列車兵器を数多く製作しているが、初戦のエルジア軍による電撃戦で破壊もままならず鹵獲されたのも多い。そしてここにも線路がしかれている。
おそらく列車砲を使うのだろうか。それともストーンヘンジでまとめて殲滅・・・いや、こんなことは考えたくも無い。
「列車搭載用の精密射撃レーダーかもしれないけどね。ストーンヘンジを誘導するための・・・あのあたりは地形の起伏が激しいし、ストーンヘンジ砲弾も山脈に激突する可能性もある。」
「レーダー?何でそんなの必要なの?」
「レールガンの弾道は真っ直ぐなんだ。だから山脈を越えて射撃するのは難しいし現地に射撃用レーダーでも無い限り正確な射撃は望めない。」
山脈の間を縫うようなコントロールが求められる・・・平地続きならその空域めがけ発砲すればいいのだが間に複雑な地形があるなら射撃位置を正確に計測し、遮蔽物を回避できるような射撃を行わなければならない。
航空機を狙うのであれば出来るだけ低空で炸裂させたほうがいい。だがストーンヘンジは対隕石用に作られているため周辺地形のことはあまり考えられていない。
だから、射撃するためにいろいろな下準備が必要だと言う。フィンもストーンヘンジ圏内で作戦行動をすることが多くなるだろうと言うことで情報を提供されたようだ。
「それなら、レーダーさえぶっ潰せば簡単ね〜。」
「ミラ?まぁいいけど・・・」
いきなり話しに入ってきたミラをフィンは一瞥し、話を続ける。
「そういう事になるけど、敵だって強固な防空システムをレーダーの周りに配備するし周辺はVTOL機体で固めてるよ。こっちもF-3BやVFAハリアーで列車周辺を固めてるんだ。F-35BやシーハリアーFA2とかで防御してると思うけど。」
「防空システム?」
「T.O.L.S.編成見たいな形でレーダーを護衛してる。きっと。」
T.O.L.S.編成とは軍用列車編成の1つであり、拠点防空用の対空編成のことを差す。レーダーの両脇にCIWS車両を編成して防空とレーダー護衛を行うと言ったもの。
おそらくISAFで最近開発されたオーディン・ロジック・システムとか言うのを搭載しているはずだ。ECM影響下でも光学センサーと熱源感知システムで射撃できる上に初速も向上している。
さらにRAMランチャーまで同時に設置されているためかなり防御体勢が硬いと言わざるを得ない。2基のCIWSとは言え侮ることは出来ない。
「あんなので大丈夫かな?」
「・・・きっつい相手じゃねぇの。ぶっとばさねぇとな・・・」
ミラが何かいつもと口調が違うようだが、フィンはあえて突っ込まずどう対応するか説明も始めている。
「ミサイルに目をむかせている間に爆弾で破壊・・・これしかないと思うね。」
「かったりぃ・・・っと、スマイル、スマイル☆」
どうもここ最近のミラは疲れているのだろうか。地の部分がかなり出ているようにフィンは感じてしまう。
いや・・・逆に何もなくて退屈で気が緩んでいるのだろうか?ここに来て、民間機へのスクランブル以外これと言った任務もこなしていない。
「時間だ・・・そろそろ行くよ。」
「は〜い。フィンも頑張って?」
そっとフィンはミラに頷くと、階段を上がりF-15Irへと乗り込む・・・遅れてレナも機体と同化し、風防を閉める。
この空軍がどれだけ生き残れるか。それは自分たちの活躍にかかっているのかも知れない。



ロスカナス空軍基地上空 1655時
「スカイアイより各機、ストーンヘンジ射程圏内に入ったようだ。敵の砲撃に留意せよ。」
「了解。」
作戦空域は曇り空だが作戦になんら支障は無い。ここに黄色中隊が出撃したと言う情報も無い・・・あとはストーンヘンジの砲撃を止めるために集中するしかない。
F/A-18JとF-15EJが敵基地へと向っていく・・・大量の爆弾やAGMを搭載。その間にフィンは敵のレーダーを探す。
「敵機、スクランブル!来るぞ!」
EFタイフーンが離陸、数は4機・・・ルウが報告するとすかさずフィンが機首を下げてAAM-4をロックオンする、
目標は離陸直前のタイフーン2機だ。今離陸されては厄介な事になりかねない・・・搭乗員には悪いが地上で撃破させてもらう。
『AAM-4,ロックオン。行けるよ。』
「フォックス・スリー!」
パイロンからAAM-4が投下、ブースターに点火しEFタイフーンを狙う・・・ミサイルを確認したのかEFタイフーンから座席が射出。途端にミサイルが直撃し爆発を引き起こす。
炎上した目標をフィンは目標から外す・・・するとスカイアイから新たな目標発見との報告が入る。敵機はJAS-39Cグリペン。数は4機。
「小出しに航空機を出してくる?どういう神経してるんだかわからねぇけど叩きのめしておくか!」
「マーベリック各機は攻撃開始!レイピアとメビウスに獲物を取られるなよ!」
F-15Jとミラージュ2000-5の航空隊が一斉にJAS-39Cへと襲い掛かる。もう、彼らの運命は半ば決したようなものだ。
『スカイアイより各機へ、敵の増援です。』
『小出しにして増援?どういう事・・・?』
順次この空域に航空隊が到着しているのかも知れないが、それにしても勝算の無い戦いだ・・・何かの時間稼ぎに航空隊を使っていると考えたほうがいい。
だが、この航空隊を放置するのは自殺行為に等しい・・・重武装のヴァイパー・ゼロやストームウィンドが基地対空砲火を精密誘導爆弾やAGMで破壊している。彼らに危険が及ぶといけない。
「レイピア7よりレイピア・リーダーへ。敵車両確認!エルジア製の対空列車だ!」
「ブリーフィング時に確認したレーダー車両は!?」
「確認できません、攻撃に移ります!」
レイピア隊の半数は爆撃装備で敵地上目標を破壊することが主な任務になっている・・・早速フォルクに率いられた対地攻撃部隊が対空列車へと襲い掛かる。
形状からしてエルジア製の列車兵器らしい。ゴールキーパーにRAMランチャーを取り付けたT.O.L.S.編成のエルジア兵器バージョンと言うべきものだ。少々小回りは効かないが破壊力はかなり高めだ。
だが、目標であるレーダー車両ではなく12.7cm速射砲搭載の対空車両を間に挟んでいる形だ。
「レーダー車両はどこだ!?」
「ハンガーにそれらしき物は無い・・・逃げたのか?」
攻撃部隊であるグレイヴ隊、スピアー隊からもレーダー車両は発見できないと言う。ISAF空軍もかなり焦っている・・・あの車両を発見しなければ、ストーンヘンジの脅威は拭い去れない。
『おい、スカイアイ・・・そろそろぶっ飛ばしたいんだが。』
「許可できない。メビウス隊は空戦のみに専念してもらいたい。」
『じゃあ何のための対地兵装なんだっての・・・ったくよ!』
ブラックバードやアクティブイーグルならとにかく、ミラージュに重武装はかなり答えるらしい。ミラがスカイアイに毒を吐いているがスカイアイは軽く受け流している。
「こちらグレイヴ3!対地兵装が尽きた・・・帰還する!」
「スピアー4、こっちも兵器がなくなった。基地の防空システムはあらかた破壊したが・・・」
そういいかけた途端に基地南西からレーダー波を確認・・・途端にスカイアイから無線通信が入る。
「こちらスカイアイ。ストーンヘンジ発射を確認した。高度4000以下に機体を落せ。」
「了解・・・な、何だ!?地上からミサイル発射!」
ストーンヘンジの対処法は知っているが、いきなりのミサイル発射にグレイヴ隊が驚く・・・ミサイルを発射したのは地上に展開している携行対空ミサイル発射部隊だ。
1発程度なら攻撃機でも耐えられるし、交わしやすいのだが・・・攻撃機にとってミサイルアラートの音は恐怖心を煽ってしまう。
「ダメだ・・・高度が上がらない!スピアー6、墜落する!」
「くっ・・・ここまでか・・・!!」
高度を落し損ねたストライクイーグル4機とストームウィンドが2機撃墜。それと同時に対空車両も出てくる。
「また出てきたぞ!早く破壊しろ!」
「了解、何とかする!」
待機していた攻撃隊が次々に対空車両に襲い掛かる。だが、そこにもレーダー車両は見当たらない。
「スカイアイよりメビウス隊、方位180にレーダー波を放つ車両を確認・・・直ちに撃破せよ。」
「了解・・・ストーンヘンジは?」
「射角を調整して高度3000以上も危険になっている。注意してくれ。」
そうなると地表すれすれまで対空炸裂弾の射程に収まるのは時間の問題だろう。フィンは機種を巡らせレーダー車両に向う。
「メビウス隊全機に継ぐ、レーダー車両に対地兵装をぶち込んで!」
「了解・・・ミラがうずうずしてたからな。行くぜ!」
『よーやくぶっ飛ばせるのか、これ。遠慮なくやってやるよ!』
メビウス隊背後からF-3Aの編隊が合流。AGM-88を搭載し追随する。フィンとヴィクセンの機体にも同じのを2本搭載している。ミラージュにはARFを搭載しているから何とか成るだろう。
「吹き飛ばすよ!目標、レーダー車両!」
『了解・・・ロックオン!』
レナがそういうか言わないかの瞬間にフィンがスイッチを押しAGM-88を2本発射。ほぼ同時に後続のF-3Aからも発射される。数は10発。
すかさずブレイクするが・・・4発が対空車両を狙っている。後続機体の発射したAGM-88だ。
『上手く行きそう!?』
『ダメね。このコースだと全発撃墜ってところかしら?』
レンの言ったとおり、ほぼ全てが打ち落とされていく・・・だが、2発抜けた。1発がCIWS車両に突っ込み爆発を起こすがもう1発は寸前で撃墜される。
CIWS車両がなくなっただけでもまだマシ・・・近距離で対地ミサイルをぶち込めば何とか撃破も出来るだろう。搭載しているのはAS-14ケージ。ISAFが短距離の空対地ミサイルが必要になったためエルジアから輸入したものだ。
だが、それを妨害するかのように航空機が迫ってくる。
機体は新型のX-02・・・急降下して真上から襲い掛かる。部隊はEFタイフーンを率いているようだ。
「隊長の仇は取らせてもらう、リボンつき!」
「うわ、こんな時に厄介なのが!」
セイルが逆落としにF-15Irに突っ込んでくる・・・フィンは初撃として放たれたAIM-132をフレアーで回避。
「隊長の敵・・・あの時コモナ諸島で打ち落とされたからな!」
「そういう理由だと凄く迷惑なんだけど・・・今はこっちに構ってられないと言うのに!」
『フィン、どっち狙うの!?レーダー、それとも敵機!?』
レナは空戦主体のフィンがどっちを狙うか迷っていることを知って、早く決めるように促す。フィンならば空戦の方を優先してしまうことも多い。
すると、またストーンヘンジが炸裂・・・ストライクイーグルが何機か叩き落される。スフィルナ所属のスーパーホーネットまで撃墜されたらしい。
「・・・レーダーを狙う!後ろのパイロット・・・僕は君にかまっている暇はない!」
「何!?貴様・・・!」
アフターバーナーをかけてフィンはレーダーに目標を定める・・・セイルがなおも食い下がろうとすると、レイピア隊の制空部隊が追撃してくる。
「申し訳ありませんが、ここから先は私達が相手をしましょう。」
『マスターの言うとーり。あんたらはちょっと黙っててちょーだい?』
ヴィエラのF-4AがサイドからX-02へと襲い掛かり、AAM-5を発射。セイルが素早く回避行動をとりAAM-5を交わすが、フィンとは引き離されてしまう。
「逃げるか・・・!!」
「逃げるわけじゃない・・・仲間を助ける。君だけのときなら相手にするけど。」
「すでに眼中にないのか・・・くっ!」
ヴィエラと交戦している間にフィンはX-02を引き離す。今は構っている暇などない・・・あのレーダー車両を叩き潰さないとストーンヘンジの餌食にされてしまう。
再びストーンヘンジの砲撃が炸裂し機体が大きく振動する・・・このままだと高度2000以下も危険だ。ロックオンを仕掛けフィンはスイッチを押す。
『AGM-2、発射・・・誘導しておくね?』
「お願い。こっちはこっちでやることがあるし・・・!」
レナにミサイルの誘導をまかせフィンは急激に機体を旋回、タイミングを合わせストライクイーグルやストームウィンドもケージを発射する。
CIWS車両が1機に減ったため防空火力も激減し、その車両も自身に来るミサイルの迎撃をメインにしている・・・レーダー車両めがけケージが直撃。
1発が直撃したところに続けざまに2発、3発と命中し爆発を起こす・・・そして炎上した車体が横転。CIWS車両も弾薬に引火し爆発を起こしたようだ。
「スカイアイより各機へ。ストーンヘンジが砲撃を停止した。空母に帰還せよ。」
「ストーンヘンジめ、待ってろよ!今日散った分もまとめて後で返してやる!」
「あと少しだ。ストーンヘンジは・・・」
ISAF空軍の安堵や喚起の声を聴きながらフィンは機首を巡らせる・・・地上部隊の90式戦車が次々に展開、地上基地へと迫り敵地上部隊と交戦する。
勝敗は明白だ・・・数分もしない間に敵軍は降伏するだろう。破壊された航空基地の戦力など高が知れている。
90式戦車が乗り込む直前に、ロスカナス空軍基地司令部から無線連絡が入る。前周波数で呼びかけをしているようだ。
「こちらエルジア所属ロスカナス空軍基地。我々は降伏する。これ以上の犠牲は無意味かつ無駄でありどうあっても勝ち目はない。我等の命を保障して欲しい。」
「ISAF陸上部隊第4連隊よりロスカナス基地へ。降伏を受諾する。ついては滑走路に兵士をかき集め武装解除を願う。貴官の判断を賞賛する・・・聞いてのとおりだ。全軍攻撃停止!」
90式戦車の隊列が止まり、航空部隊も一斉に帰還する。たいした犠牲も出さずに降伏させられたのだからよかったと言うべきだろう。
ハンガーや必要最低限の修理が終わったら直ちに輸送機や作戦機をかき集めこの空軍基地に移送されることになっている。
「スカイアイより各機へ。攻撃の停止を確認。帰還してくれ。」
「了解。ISAFの厚意に感謝する。」
無線から司令部の声が聞こえる・・・それと同時に基地からの敵意もほとんど消えてしまったようだ。
『・・・フィン、さっきの敵機はこの前の空戦で落したXFA-27の部下みたい。』
「生きてるんだけどね・・・それよりさっきの機体もブルーレインを?」
『らしいね?私はどっちでも構わないけど・・・落せば同じ、でしょ?』
そのとおりだとフィンも頷く。強敵でも落してしまえば同じこと・・・先ほどの敵機もかなりいい動きをしていたが、いずれ会い見えることになるだろう。
その時を楽しみにしようかとも思い、フィンは機首を巡らせ空母へと向う・・・そろそろ帰還しないと燃料も尽きてしまう。


1940時 サンサルパシオン領内「スカイ・キッド」
彼・・・セイルはいつにも増して不機嫌そうな顔で戻ってきた。おそらく人目がなければ周囲のものに当り散らしていたであろう、そんな雰囲気すら感じられる。
「リボン・・・俺のことなど眼中に無いだと・・・!?」
ISAFのエースであるリボンに戦いを挑もうとしたが、無視されたのが悔しかったのだろう。ラーレイを落した仇でもあり、憎い気持ちは判らないでもない。
優しくしてくれた彼を失った悲しさは、彼にも刻み込まれていたのだろう。
「・・・あまり飲みすぎると良くないよ・・・?」
「解ってる。だが・・・今は飲ませてくれ。」
セイルとも互いに話し、だいぶ打ち解けてきたように思う・・・だが、敵である彼と打ち解けてどうするのだろうか。
いや・・・自分の敵は黄色の13だ。エルジア軍もあるが・・・少なくともセイルを憎む対象とは思えない。
「セイル、どうしたんだ?」
黄色の13が、酒を浴びるように飲んでいるセイルを気遣うかのように言う。
「お前はいいさ。ただ・・・な。敵と狙って、軽くあしらわれるってのは悲しいものだ。」
「それでも、向っていかないのか?」
「航空支援が当てにならない以上・・・難しい。少なくとも黄色やエース部隊だからって退くような連中ではないはずだ。ISAF航空隊は・・・」
相手が乗ってこないと一騎打ちは確かに出来ない。それにISAF空軍はエースでも見ようものなら我こそはと追撃し空戦を仕掛けてくる。
個人の技量がかなり高く、振り払うのも難しい・・・それを軽々と振り払えるエーリッヒを見てセイルは力の差を感じてしまう。
「わかった。もし・・・欠員が出たら黄色中隊に招待する。」
「いいのか?」
「別に構わない。5機揃ってこそだ。」
エーリッヒがそんなことを聞いて副隊長である彼女・・・黄色の4が不安げに尋ねる。
「隊長、弱音を吐いてもらっては困ります。この戦争を全員で生き残る・・・そう決めたでしょう?」
「そうだったな。だが・・・今ではそれも難しいと思ってしまう。リボンの技量は確実に向上している上に敵にもエースは多い。が・・・生き残る。必ず。」
エーリッヒがそういうと、ベルナードもああと頷く。
「無論だ・・・ルーチェもいる、それに仲間がいる。黄色中隊の誰かにかけてもらっては困る。」
「当然ですよ。この中隊ならば誰でも勝てます!」
頼もしいなとエーリッヒは頷きルーチェの頭を撫でる。ベルナードはまぁいいかと思いつつもセイルの方を向く・・・彼はまだ落ち込んでいる。
酔いつぶれたセイルにベルナードがそっと上着をかけると、椅子に座り私のほうを見る。
「・・・いつもエーリッヒばかり見ているが、どうした?」
「なんでもない・・・それに、いえる事情でもないから・・・」
「・・・わかった。」
訊いた俺が悪かったと言い、ベルナードはウイスキーを1杯飲み干す。私の言葉を聞いたらどんな反応をするだろうか・・・だが、言うわけには行かない。
仮にも彼の隊長を殺すとは私には言えるはずもない。言ったところで止められるだろうし、下手をしたら彼らから追い出される・・・それだけは嫌だった。
一体、私は何を求めているのだろうか・・・目の前にいる人物は、本当に仇なのだろうか?そんな事ばかり頭を駆け巡る。
黄色中隊のメンバーを恨むことはしたくない。たとえ彼らが仇であろうと、ISAFの敵でも・・・まして、レジスタンスの彼らが憎むべき敵であっても。

同時刻 CV-04スフィルナ艦内/談話室
「ようやく・・・ね。」
「何が?」
レンが地図を見て呟く。レナは何のことだかわからない様子でレンに訊ねるが・・・赤い×印から直線が引かれ白い丸にに通じている。
「今日、攻略したロスカナス空軍基地。ここからストーンヘンジまでの距離・・・よ。」
「ストーンヘンジ・・・あ、行ける!」
そう。今日攻略したロスカナス空軍基地を起点にすればストライクイーグルの行動半径に入る。護衛戦闘機も充分付いていける距離だ。
今回の作戦はストーンヘンジ破壊の前哨戦だったのだろう・・・それにエルジアは気づくのだろうか?
「当分、艦ともお別れね・・・スフィルナとは。」
「そういう事になるのかな・・・」
少しレナは寂しい気もした・・・開戦からずっとこの空母で戦ってきた。もうここが自分の家、そんな雰囲気すら感じてしまう。
良く考えたらレナは空母から外に下りたことはあまりない。事態が事態だけに仕方なかったが、陸に行くと少し落ち着かないことも多い。
「陸上基地でグッスリ眠れるかな?私。」
「さぁね。私も今ひとつよくわからない。私も外泊はあまりないから。」
艦船の上からあまり出たことがない人が、いきなり陸上の家で寝ることになったらどうなるのだろうか?そんなことを思っていると部屋にヴィクセンが入ってくる。
「マスター、偵察でも?」
「いや、特に任務はない。時々でいいから顔は見たいだけだ。」
「顔、ね・・・飽きるほど見てるのに?」
「お前の顔ならずっと見てても飽きないが・・・」
軽い調子で「嬉しい事を言ってくれるのね」とレンは答える。どこかで素直になっていないようだが、やはり妹扱いがずーっと響いてるのだろうか。
「・・・レン、1ついいか?」
「何?」
「妹みたいに見てるのは止めて欲しいのか?」
無論よ、とレンが言う。イメージとして重なってしまうかも知れないが、それでもヴィクセンにはそう見て欲しくなかったらしい。
レナは何度もレンがそのことで愚痴ってきたのを覚えている。「私は妹じゃないと何度言ったらわかるのかな」と。
「過去に何があったのかわからないけど・・・私とマスターの妹は別人なの。それを・・・もう受け入れたらどうなの?この戦争で・・・それも初期に死んだのであれば。」
「・・・・」
そのままヴィクセンは黙ってしまう。受け入れることは出来ない・・・いや、そんなことを言われてもなかなか受け入れることは出来ないだろう。
「何があったの?レン・・・ヴィクセン、かなり落ち込んでるけど。」
「・・・開戦初期の頃、マスターは偵察機のパイロットだった。ISAF戦略空軍所属のブラックバード・・・あれは複座で、マスターは妹とコンビを組んで偵察活動をしていた。彼女の名前も・・・レンって名前。」
当時からかなり仲が良く、ヴィクセン本人も「妹じゃなかったら結婚相手にしたかもしれない」と言っていたほどだ。妹の方でも少々シスコンに手は焼いていたが嫌いではなかったらしい。
「けど、エルジアが宣戦布告したときにISAF軍事衛星を撃墜し、偵察活動を停止させるために戦略空軍基地を爆撃した。」
「フィンから戦争の経過を聞いたときに覚えたけど・・・そこにヴィクセンも配属されてたのも知ってる。それが何を?」
一瞬悲しげな顔をした後、レンは話し始める・・・ヴィクセンは相変わらず黙ったままだ。
「爆撃の時・・・妹はSR-71の中にあったデータを引き出そうとして格納庫に戻っていった。けど・・・その時に爆弾がハンガーに直撃し機体は爆散。妹さんは死体すら出てこなかった・・・」
そんな過去があったとは・・・おそらくフィンすら知らないはずだ。レナはその壮絶さに言葉を失ってしまう。
「その後、マスターは落ち込んで・・・あの時爆撃した戦略爆撃機の部隊を恨んでいた。パイロット不足による機種転換の申し出を受けて・・・ブラックバードを一回り小型化したF-12Dに乗って今に至る。そんなところ。」
「ブラックバードに、レンって名づけたのはどうして?」
「多分何からも抜け出せなかったと思う・・・戦略空軍からも、妹のことからも・・・・」
何からも抜け出せていない。きっとレンはそんなヴィクセンを見守って、少しでも傷がいえる手助けをしてやりたいのだろう。だが彼女が素直になれず、少しギクシャクしているところもあるが。
「・・・レナ、ちょっと出て。」
「・・・え?うん。」
レナを外に追い出すと、レンはそっとヴィクセンへと話しかける。
「レン・・・残酷な選択だ。」
「そうやって過去に縛られてる姿は嫌いなの。もう踏ん切りつけて?ストーンヘンジ攻略は間近なのに、こんなことでわだかまりが出来ている場合でもない。違う?」
ストーンヘンジは間近・・・暗に覚悟を決めて置けと言うのだろうか。ヴィクセンは何となくレンが覚悟を決めろといっているようにも聞こえた。
「・・・ストーンヘンジを壊したら、話し合おうか。」
「ダメ。せめて今・・・そういって、破壊し終わった後も話し合わないつもりね?」
ヴィクセンはレンを見つめる・・・互いに見つめあい、少しだけ長い時間が流れていく。
「・・・過去との決着を付けるには、あの戦略爆撃機の連中を撃破してやらないと無理だ。あのTu-160、せめて連中を撃墜してからではないと。」
「・・・そう。」
少し失望したような表情をレンが見せる・・・が、ヴィクセンはその表情を見て首をふる。
「誤解するな・・・妹は死んだ。目の前にいるのは、俺にとって最も大事な人だ。
「え・・・!?」
「レン、好きって気持ちを抱いたらダメなのか?」
相棒・・・嫌、それ以上の感覚をヴィクセンはレンに抱いていた。F-12Dと言う存在に対しての愛情ではない・・・彼女が彼女であることに対して。
「好きだったら・・・必ず生き残って?ストーンヘンジから必ず帰って・・・終戦を2人で祝う、それでいいよね?」
「当然だ。レン、名前・・・よんでくれるか?」
「2人きりなら・・・いつでも。ヴィクセン。」
そっとヴィクセンはレンに微笑みかけ、強くレンを抱きとめる・・・そっとレンが翼でヴィクセンを包み込み、2人きりの時間が過ぎていく。


「・・・アツアツじゃない。」
「見てて気分悪ぃ・・・」
「あー、私も甘えたいなぁー・・・」
レナとミラ、吹雪の3人がそっと扉の隙間から様子を伺っていた・・・どうやら何をするか察したレナが2人を呼んできたらしい。
「まさかあんな形で発展するなんてね?以外。」
「本当のハッテン場ですねぇー。」
「違ぇよ。どう考えてもありえねぇだろ・・・おい、誰か来る。」
ミラは人の気配がして咄嗟に扉を閉めると何事もなかったかのように振舞う。歩いてきたのはスフィルナのクルーらしく微笑みかけるとそのまま歩いていく。
「何だ今のキザったらしい笑顔・・・」
通り過ぎた後からミラが毒づくが、レナはそのへんにしとけばとたしなめる。ルウのことで少しいらついてたり、焦ってたりするのだろうか。
「割と、ルウはミラのこと大事にしてるって思うけどねー?」
「そうなんだけどよ・・・何か割り切れねぇ。」
吹雪に言われてもミラは納得がいかないらしい。確かに気が合うし、割と乗りやすいのだが何かがかけているような気がする。
何かが足りない。いや・・・好きだという感情が果たして恋愛から着ているものなのか。
「じゃあさ、今度何かプレゼントでもしてみる?」
「プレゼント?」
「例えば・・・ルウの場合カツ丼好きだったじゃない。それとか。」
ミラは少し思いなおしてみる・・・そういえば1週間ほどカツ丼続きで食堂に止められた日はカツカレーだの何だのを頼んでいた。よほど好きらしい。
作ってみるのも、悪くはないかもしれない。ミラはそんな事を思い食堂へと突撃を開始する。よほどのカツ好きだ、手作りと知れば喜んでくれるかも知れない。
「マスターも、確かカツカレー大好きだったなー・・・じゃ、レナも一緒に作ろうよー!」
「あ・・・うん、いいかもね。」
フィンも気に入ってくれるかも知れないと思い、吹雪に引っ張られてレナも一緒に向かっていく。ここから食堂はそう遠くないはずだ。後片付けもしているし調理員に事情を説明すれば協力してくれるかもしれない。
が、いきなり吹雪が食堂手前で急停止する。ミラはがっくりと肩を落しているようだ。
「何?」
「えーと・・・「想定外の超小型陸上兵器大量出現により一時閉鎖する。復旧予定日未定」・・・どういうこと?」
「・・・あれなんて・・・嘘。」
ミラが強く食堂の扉を叩くが、そんなことでへこんだり空いたりするはずもない。そういえば1ヶ月前も同じような張り紙で一時食堂が閉鎖された。
「・・・害虫なんてやだー・・・ゴキブリなんてさー、間が悪いって・・・・」
「まーた入ってたんだ・・・」
レナもため息をついてしまう。補給物資に何度も紛れ込んでいるためレナやミラもその姿を見かけている。ちなみに吹雪は虫全般が苦手であり大声を出しまくって逃げ回っていた事もあった。
今でこそある程度和らいだが、それでも恐いらしい。レナもあまりいい気分はしないが見たり捕まえたりするのは大丈夫だ。
「フィン、凄く苦手だったなぁ。殺虫剤の狙いとかはかなり正確だったんだけど、その後つかんでゴミ箱に捨てるのが出来なくて。凄く恐がってた。」
「あんなもん、どうってことねぇだろ?」
「まったくね・・・吹雪、震えてる?」
話を聞いただけで震えるほどだ。見たら絶叫して逃げてしまうだろう・・・レナとミラは思わず苦笑してしまう。
シャッター内部で怒号が聞こえまくっているところを見ると、掃討完了まで時間はかかるだろう。今日は諦めようかなと思いレナは震えている吹雪を引っ張って自室へと戻っていく。


続く

あとがき
ストーンヘンジ攻略前哨戦。ロスカナス空戦をオリジナルミッションとして挿入しました。
列車兵器は本当にロマンが溢れます。ISAFは自衛隊に外機の日本をミックスした設定なので優勢になると列車兵器の出てくる可能性が高くなるはず。
まぁ敵として使ったほうが印象が残るのでエルジアにも数機鹵獲させました。
それでは。次回はストーンヘンジ攻略戦です。



 2008/05/24:あくてぃぶF-15さんから頂きました。
秋元 「ちょwwwハッテン場wwww わからない人は、『やらないか くそみそ』でググると素敵なことになるよ。責任は持たんが」
アリス 「……カレー作りは心です」

第8章へ  第10章へ
戻る  トップ