ACE COMBAT04 Shatterd skies〜メビウスの記憶〜




ACE COMBAT04 Shatterd skies〜メビウスの記憶〜
第12章 解放へと

7/9 1100時 CVスフィルナ休憩室
「ねぇ、レン。」
「ん?」
レナが何となく一緒に居るレンに話しかける。休憩室にはベンチがあり、隅のほうに円形の椅子があるのだがそこが彼女たちメビウス隊のお気に入りだ。
「何かさ、こう・・・フィン達変わってない?戦争当初より、ちょっとずつ。」
「まぁね。最近私を妹に重ねなくなったのはわかる。レナはどう?レイシスを落とされたフィンのこと。」
「最初よりどす黒い思念が薄くなってるから嬉しいかな。私の負担になるから押さえてるのもあるけど・・・どこかであの13を認めてると思うの。勿論本人に言ったら「絶対に叩き落すんだ!」と言ってたけど。」
それでも飛行中にリンクすれば多少のことはわかる。黒い思念が薄れていくのをみてレナは少し安心しているようだ。
「何話してんだ?」
「みーんな楽しそうにしちゃって、もう。混ぜてよ?」
ミラと吹雪が清涼飲料水「インフィニティ」を持ってくる。カロリーを少し控えめにしているが軽く甘さがあり美味しいと評判の清涼飲料水だ。ISAFでは10年前くらいからある。
「どーぞ。」
「ありがとう、もらっておくよ。」
レンが缶を開けて一気に飲み始めると、レナがあることに気づく。この缶に描かれているマークは∞マーク。つまりメビウスの輪だ。
「今気づいたけど、これ・・・メビウス?」
「あー、本当だ!こんなところに発見!」
「本当じゃねぇか。これ。俺たちでも広告にしたらもっと売れるんじゃね?」
ミラの言葉に、あははと吹雪も笑ってみせる。メビウス隊を宣伝に使えば確かにもっと売れそうな気配がする。
きっと終戦後にそんなオファーが来るんじゃないかと吹雪は思い、3人に言う。
「それじゃ、終戦後に取材に来たら私も混ぜて!」
「あぁ、いいぜ?」
「うん。」
ミラとレナが答え、レンもうなずいてみせ、絶対に吹雪もそのときの取材に加えてあげようという約束で合意する。
すると、いきなりフィンが入ってきて手招きする。ブリーフィングルームに招集がかかったようだ。
「行くよ?サンサルパシオン解放だから準備して。」
「了解!」
それぞれが返事を返し、すぐにブリーフィングルームへと向かう。彼女たちが入ったところで部屋が暗くなり、プロジェクターが起動し飛行長が状況を説明する。
「開戦とともに踏みにじられた中立都市サンサルバシオンをエルジア軍から開放する。敵の主な抵抗拠点は戦車部隊がいる旧市街地国道7号線付近、ならびに対戦車ヘリがいる新市街地の行政官庁街である。また、味方に対する航空攻撃を防ぐため、後方にある空港とそこから発進する航空機も叩かねばならない。灯火管制はレジスタンスが解除する。抵抗拠点を排除し、都市制圧を支援せよ。作戦時刻は0000時、以上。」
指示を受け取り、ISAF航空隊の面々はそれぞれの持ち場に戻り準備を始める。この戦いに勝利すれば、エルジアを完璧に押し返すことに成功するのだ。

同時刻 サンサルパシオン野戦滑走路
私は、黄色の13にどう話したらいいかもわからずただ遠くから見守っている事か出来なかった。
いまだに銃を向けた、あの時の感覚が残っている。すると13が私に気づいたのかこっちに向かってくる。
「久しぶりだな。」
「・・・うん。」
あの時のことは忘れた様子で、彼は空を見上げて私へと話しかける。何か決意を固めているようだ。
「・・・撃墜されるかもしれない。その時は・・・」
ハンカチを取り出すと、13は私に渡す。かすかに香水の甘い匂いが残っているハンカチは彼の思い出ともいえるものだ。
「これを、4の墓に一緒に入れて欲しい。場所は首都のファーバンティが見渡せる場所だ。」
「でも、僕に・・・?」
「部下も死ぬ可能性がある。整備員も捕虜になり取り上げられる可能性がある。そうなれば、お前しか居ない。民間人で唯一の友達、確実に届けられるのはお前くらいだ。」
私は素直にうなずいてみせる。両親を殺した人、そう思えなくなっていたし彼に頼まれた以上、断れなくなっていた。
「もし、生き残ったら?」
「ファーバンティで飛ぶことになる。俺が居てもこの戦いは負ける・・・だとしたら今日でお別れだ。」
「お別れ・・・」
「そうだ。後はお前が判断して生きろ。今のお前なら出来るだろう。」
そっと私はうなずいて見せると、先ほど聞いてきたあることを無性に言いたくなった。それはレジスタンスの裏切りかもしれないが、言わなくてはいけないことのように感じたのだ。
「・・・灯火管制がISAF機の到来と共に解除されるんだ。レジスタンスがそうする・・・」
「何故それを知らせる?大して影響は無いが・・・MPに知らせると思わないのか?」
「知らせない。君だからきっと。」
参ったな、と13が苦笑するとその手で私をなでて、そっと手を出す。
「・・・約束だ、俺も絶対にいうつもりは無い。むしろ機体の識別がしやすくて好都合だ。あのリボンを引き寄せれば多少こっち側の犠牲が減る。」
「約束、してくれるの?」
「当たり前だ。」
私も手を出すと、13ががっちりと握り締める。初めてで、そして最後であろう彼の感覚を私はしっかりと胸に刻み込んだ。

「信用しすぎだろう、普通に考えて・・・」
「いいじゃないか、ベルナード。友情に水をはさむなよ?」
あくまでも冷静なベルナードに対し、オルベルトがかすかに笑いながら言う。あの少年に対し、少々複雑な気分もあるようだが。
「・・・友情、か。」
「気にするな。俺達は俺たちの仕事をするまで。黄色中隊もここで最後の仕事だ。まぁ何だ、お前はルーチェのために生き残れよ?」
「・・・解っている。殉ずるつもりは無い。」
「結構だ。んじゃあ死なない程度に頑張れよ。死ぬ程度まで頑張るのは俺たちで十分だ。」
オルベルトはそれだけ言うと愛機に戻っていく。どうやらエンジンの調子が悪いので整備員に文句を言いに行ったらしい。
「生き残れ、か。」
ベルナードはしっかりとその言葉をかみ締める。機体にはルーチェが居る。最悪胴体着陸で修復可能まで持って生きたいところだ。

サンサルパシオン上空 0000時
「レイピア2より各機、爆撃目標が見えますか?」
『無理だ、全然見えない。航空支援は難しそうだぞ?』
F/A-18EJとF-4Aの混成部隊であるレイピア隊がサンサルパシオンへと接近しているが、今だ目標が見えてこない。
ISAF空軍の主力部隊が翼を並べ綺麗に編隊を組んでいる。開戦前とほぼ同じ陣容にまで回復したといっても過言ではないようだ。
『ねー、レジスタンスって当てになるのかなー?』
「吹雪、何とかなりますよ・・・点きましたね。」
一斉にサンサルパシオン市街地の明かりがともり、HUDにのみ表示されていた敵がくっきりと見えるようになった。市街地にヘリや戦車を展開。屋根の上に機銃も設置されているようだ。
『ちょっと難しいかな、これ・・・』
「メビウス1、貴方は制空をお願いしますよ。レイピア隊各機は各自の判断で行動。新市街地を強襲します!」
ヴィエラが指示を出すと、ワンテンポ遅れてスカイアイが指示を出す。彼の指揮はメビウス隊にとって久しぶりらしい。
『たった今、灯火管制がレジスタンスによって解除された。作戦開始。旧市街、新市街、ならびに空港の敵を掃討せよ。』
「解りました。」
『了解、メビウス隊は空港周辺を掃討するよ。』
メビウス1に部下の2機も続き、レイピア隊は新市街地へと向かっていく。
『爆発音と戦闘機の爆音が聞こえます・・・街の光が、一斉につきました。ユージア中央部標準時、午前0時5分、日の出を待たずして、戦闘が開始されました。』
混戦しているのかサンサルパシオンのラジオ放送も入ってくる。どうやら市街地に残りこの戦闘の様子をどこからか中継しているようだ。
危なっかしいが、彼らには当たらないで欲しいとヴィエラは思ってしまう。武装は投下型爆弾ではなくAGM-65マーベリックを使う。さすがに市街地を巻き込む爆弾を使えばレジスタンスの犠牲も大きくなる。
「モードはトップアタックです。直線ではまずあたりませんから。」
『はーい。モード設定完了、目標は?』
「市街地の戦車です。カメラの方は大丈夫ですか?」
『だいじょーぶ、ちゃんとロックオンしてる。』
わかりました、とヴィエラが言う。レイピア隊のF-4Aはペイロードを最大まで生かし20発のマーベリックと45kgの小型誘導爆弾を10発搭載。ハードポイントと燃料が許せばもっと搭載できるがさすがに機体スペースの都合上難しい。
制空戦闘もついでに行おうとしてAAM-5を8本搭載しているためこれで限界でもある。とりあえずマーベリックを手近な目標にぶち込むことをヴィエラは考えている。
「あれを狙いますか。」
『りょうかーい。』
早速発見したのはロケットランチャー車両MLRS。サンサルパシオンの新市街地めがけ一斉攻撃を行おうとしているようだ。
AGM-65を敵車両にロックオン。ヴィエラが狙いを定める。周囲に戦闘機やSAMの類は無く、攻撃を邪魔するものは無い。
目標は5両程度の車両、そこにAGM-65が5発発射され目標上空で方向転換。真上から襲い掛かり沈黙させていく。
「楽勝ですね。これで多少は楽になりますよ。」
『そうだね。で、新市街地は?』
「そちらも支援しましょう。行きますよ、吹雪。」
『りょうかーい。』
ヴィエラがすばやく機首をめぐらせ新市街地の方を見るとレイピア隊がマーベリックを発射して次々に戦車を撃破していく。地上軍の主力はチャレンジャー2が殆どだが数は比較的多い。
航空支援がやりにくいのをいいことに大部隊を展開させている。ビルの合間にUHティーガー戦闘ヘリも見えるがやはり航空機から身を隠すためだろう。
『うわ、これは・・・』
「出来る限り撃ち尽くしたいですね。対空機銃、ミサイルなどもついでにロックオンできます?」
『うん、何とかやってみる!』
機体を旋回させ、新市街地中央の終結地点に狙いを定める。機銃車両、SAM車両はこちらを向いている様子も無い。絶好のチャンスだろう。
「もらいますよ。」
『ロックオン完了、いける!』
吹雪の連絡を受けると同時にヴィエラはマーベリックを発射。FCSの限度である12目標にロックオンをかけて発射。ついでといわんばかりに誘導爆弾も一気に投下する。
一度にミサイルや爆弾を切り離し身軽になったF-4Aを旋回、上昇させヴィエラは戦果を確認する。機銃でいくらか迎撃されたものの誘導爆弾やミサイルはほぼ正確に命中していた。
『新市街地の戦車部隊が・・・!』
『何をしていたのだ!ええい、新市街地に戦力を集中させろ!このまま突破されたら大変なことになるぞ!』
まとめて15台くらい吹き飛ばされたのに司令官が驚いて、直ちに増援を要請させる。エルジアの制空部隊はISAF空軍の制空部隊に押さえられ対地攻撃機を追い払うことすら出来ていない。

「メビウス1、投下!」
F-15Irから投下された気化燃料爆弾が空港に展開するミサイル車両や戦車をまとめて吹き飛ばしていく。空港には守備隊は少ないものの航空機は割りと多く飛んでいる。
『フィン、黄色も混じってるが俺がひきつけるか?』
「何機いる?」
『1機だけだ。挙動も切れが無い。すぐに撃墜できそうだ。』
「撃墜して。僕達は対地支援を行ってから向かう。」
了解、とヴィクセンが応答する。黄色中隊の新入りメンバーだろうか。それならメビウス隊で簡単に撃破できると考えフィンはそのままでいいと指示を出す。
『歴史上、幾度となく戦場となってきたこの都市で・・・サンサルバシオンが再び戦火に包まれています・・・この放送は検閲され・・・』
ラジオ放送を耳にしつつ、フィンは最後の気化燃料爆弾を投下。巨大な炎が離陸寸前の輸送機を破壊し爆発を引き起こす。
『リボンが真上だと!?黄色中隊、追い払ってくれ!』
『空港守備隊は壊滅状態!ISAF陸軍の部隊が来た・・・ダメだ、我々は降伏する!』
『よし、トラックを搬入させろ!サンプロフェッタ空港を制圧した!直ちに弾薬を運び込み補給に備えさせろ!』
少々手荒いが補給の手間を省くためと迅速に制圧するためにサンプロフェッタ空港を出来る限り無傷で占拠、そのまま補給基地として使おうという作戦だ。
トラックが何台も格納庫に入り込み、燃料やミサイルの準備をしていく。戦車や航空機の残骸などは榴弾で吹き飛ばした後、すばやくブルドーザーで片付けていく。
『何か地上も凄いね。もう補給基地として使おうなんて・・・』
「まぁね・・・」
フィンがそんなことをつぶやいていると、スカイアイが緊急の報告を出す。
『緊急事態だ。サンプロフェッタ空港を奪還しようと列車砲が接近している。到達前に直ちに撃破せよ!』
「列車砲・・・確かにすぐ撃破しないとね。」
ISAFも列車砲を数多く有しているがエルジアもそれは同じらしく、クーデターの教訓を生かし迅速に展開できる車両が必要だと考えたようだ。
ユージア全土に広がっている鉄道網を利用しないては無い。しかもCIWSやミサイルなどを搭載し強力な武装を整えている。
『こちらヘイロー4、任せとけ。こんな奴・・・な、何だあの桁外れの列車砲は!?』
『ちょっと待て、こちらを・・・』
いきなりヘイロー隊からの通信が途絶え、フィンはスカイアイに確認を取る。黄色中隊は旧市街地付近に固まっているがこちらの制空部隊で何とか押さえ込んでいるはずだ。
「何があったの!?」
『敵が新型の列車砲を備えているようだ。斜線に入ったらなるべく低空を取れ。対空攻撃能力が非常に高いぞ。』
『ちょっと待て、何だってそんな物があんだよ!?スカイアイ、事前にそういうことは言っとけ!』
ルウが怒鳴っているが、そのとたんにまた列車砲が発射される。今度は上空を飛んでいたエルジアのFX-10Bを巻き込みISAF航空隊を撃破してしまう。
『ヘイロー10がやられた!』
『メイデイメイデイメイデイ!こちらオメガ11、脱出する!』
F-15EJが2機爆発する。パラシュートは1個だけ開いた様子・・・すると列車砲が新市街地へと砲口を向ける。
『エルジアの奴、市街地を巻き込むつもりか!?』
『ふざけんじゃねぇっ!なんてまね・・・!』
ミラが言葉を続けようとした瞬間、列車砲が新市街地めがけ発砲する。どうやら敵は無差別に砲撃を加えるらしい。そして列車砲は3基ありもう1基がサンプロフェッタ空港めがけ発砲している。
『無茶苦茶じゃない、こんなの!』
『エルジアの連中、民間施設めがけ砲撃だと!?何をやってやがる!』
『ただいま巨大な砲弾が隣のビルに直撃、爆発を起こしました!住民はすでに避難していますがビルが崩れかけています!』
ラジオからも切羽詰った声で放送している。もはやエルジアは自棄をおこし何があってもISAF軍を叩き潰すという衝動に駆られているらしい。
『敵列車砲の詳細が判明した、やはりレールガンだ!炸裂弾に気をつけろ!』
『了解、スカイアイ!こちらの地上装備が足りない。地上部隊を頼む!』
『了解した。』
スカイアイが他の航空部隊に連絡を取ると同時に敵列車砲のデータが入ってくる。レールガン搭載車両が3台あるが対地支援用15.5cm遠距離榴弾砲、対空機銃やSAMランチャーも備えている。
これを攻略するのは難しい。フィンが思案に暮れているとレナが報告する。敵機の増援らしい。
『敵機確認・・・F-35Bが護衛してる!』
「やっぱり・・・先に護衛部隊だけでも追い払おう!」
『了解・・・ってまずい!黄色がこっちに来てる!!』
「嘘!?」
メビウス隊と交戦するために黄色中隊が急激に接近してきている。間違いなく真正面に居るのは黄色の13、他2機は副官とMLSのエースだろうか。機体番号が同じだ。
『リボンつき、相手をさせてもらうぞ。』
「黄色の13・・・今それどころじゃない!」
すぐにフィンが操縦桿を握り締め、ヘッドオンでAAM-4を発射するが3機とも回避する。F-35Bを追い払いたいのに一番厄介な連中が来てしまった。
『どういうことだ?お前は落としたくて仕方ないのではなかったのか?』
「状況が状況だ。君と戦うのは後回しにしたい・・・」
『そんな理論が通用すると思ってるのか?』
「するよ。君もあれを見れば。」
フィンが機首を向けて列車砲を突っ切る・・・エーリッヒも後ろから追撃するが、列車砲を見て驚愕してしまう。市街地に向けて何発も発射しているようだ。
『・・・なんて真似をする!エルジアが・・・!』
「解ったら邪魔しないで。後で決着はつける・・・君もこういうことを望むの?」
一瞬だけ黄色の13が戦闘機動を取らずにサンプロフェッタ空港上空を旋回する。何か思い悩んでいるらしいがその合田にフィンはF-35Bを相手にする。
TVCを水平に戻しF-35Bは臨戦態勢に入ろうとするが、1機がF-12Dの機銃弾で真っ二つに引き裂かれ爆発する。残りは5機、黄色の妨害さえなければ簡単に片付けられる。
『隊長、どうするんだ?このまま放置か?』
『妨害はやめたほうがいいです、隊長!あんな連中のために戦ってるのが私達じゃないんです!』
『リボンを落とす好機だぞ、ルーチェ。このまま放置しろというのか?』
『マスター、それはやめてください!幾らなんでも・・・!』
ベルナード機のSu-37がふらついた挙動でF-15Irに向かっていく。どうやらMCとマスターの間で内輪もめを起こしているらしいがあっさりとミラージュ2000-5に張り付かれる。
『とろいんだよ、てめぇは・・・このまま打ち落とすか?マスター。』
『あぁ、撃墜だ。狙っているようだからな・・・覚悟しな!』
『ちっ!』
発射されたマジックAAMをSu-37が何とか回避、そのままルウのミラージュ2000-5がSu-37を追撃する。もともとの重量がそれほどでもないため挙動が軽く、格闘戦ならぎりぎりだが互角で戦える。
「悪いね、ルウ!」
『ぼーっとしてねぇで護衛を掃討しろ!』
「はいはい・・・じゃあもらうよ。」
急旋回でF-35Bが振り切ろうとするがF-15Irを振り払えず、急旋回のために減速し一気に振り切ろうとするがフィンもそれについていく。
『ガンレンジ、いける!』
「悪いけど、こいつらを護衛してる以上狙わないとね。」
トリガーを引き機銃弾がエンジン部分に吸い込まれ、爆発を引き起こす。パイロットは脱出しF-35Bは撃墜。フィンはすぐに真っ向から別のF-35BにF-15Irを向かわせる。
『リボン?ダメだ、速すぎる!』
『あいにくだが手加減は出来ない。吹っ飛ばすぞ。』
『フォックス・ツー!』
レンが発射コールを叫びF-12DからAAM-5が発射、空港の明かりを切り裂くようにミサイルが駆け抜けていく。
F-35Bが放ったフレアーを無視しAAM-5が直撃、後部を破壊された敵機はそのまま地面に墜落して爆発する。
『・・・戻ったほうがいいんじゃないか、エーリッヒ。お偉いさんはサンサルパシオンを奪われるくらいなら焼き尽くせと命令してきた。ここでリボンを落としてもこの町を焦土とするのは俺は嫌だね。勝っても目覚めが悪い。』
『命令違反だぞ、オルベルト。』
『命令違反どころの問題でもないだろう?民間人を殺す軍隊に俺は入ったんじゃない。エーリッヒ、あんたも同じだろう?』
黄色中隊内部で内輪もめも起こっている。やはり誇りを大事にするエースであり、このような暴挙を前にして命令をただ受け取ることは出来ないのだろう。
その間にフィンはAAM-5を発射。F-35Bはそのまま火に包まれて落ちていく。するとスカイアイが状況を知らせる。
『攻撃部隊が到着した。彼らが列車砲を破壊してくれるはずだ。』
「わかったけど、僕達も近くを飛んでる。対空火器をひきつければそれだけ楽になるはずだから。」
列車砲は早い発射ペースで市街地や空港に猛烈な砲撃を加えている。F-35Bの増援は来る気配は無い。先ほど撃墜したので全てだろう。
レーダーを確認すると友軍機が映る。F-15EJ、F-4Aの混成部隊らしくミサイルにAGM-1を搭載している。ASM-2を改造した対大型目標、レーダー用ミサイルだ。
「さて、手出しして撃墜される?それとも帰る?黄色中隊。」
『・・・悔しいといいたいが、むしろお前達に任せる。サンサルパシオンを焼いたら許さんぞ。黄色中隊、撤退だ!』
Su-37の編隊がいきなり他の空軍基地へと向かっていく。交戦意思が無いためフィンも撃つつもりは無い。むしろ攻撃部隊の攻撃を見届けなくてはならない。
AGM-1が無数に投下され、そのまま地面すれすれを飛翔し列車砲に向かう。するとミラージュ2000-5が真上から誘導爆弾を投下する。小型の対戦車誘導爆弾であり目標以外に影響を及ぼさないために開発されたものだ。
上下2つの目標に連結されたCIWSは何とか対応しようとするが迎撃しきれず、列車砲にAGM-1が直撃。装填中だったのか予備弾薬に引火し爆発を起こす。
『・・・終わった。早く他のところも支援しよう?』
『レンに同感、急がないと。』
レナに促され、フィンもうなずくとメビウス隊はすぐに旧市街地へと向かう。地上部隊もいくらか被害は出たが、甚大なダメージというほどでもなく補給基地に使うには十分なようだ。

『くっ、仲間が・・・!』
『ミサイル無しに倒すだと!?ふざけやがって!』
AGMを打ちつくし、ヴィエラは全体の指揮を取っているがエースらしい敵機が居ると聞いてそちらのほうに向かう。どうやら砲撃で電気系列が故障したビルにISAF軍の戦闘機が突き刺さっている。
マニューバーキル、要するに戦闘機動でやられてしまったのだろうとヴィエラが思うとあの不快な思念と声が聞こえてくる。あの敵機だ。F/A-18Iを駆るあの敵機、ジャンジットだ。
『レイピアの生意気な奴はどこだ・・・!?こんな雑魚、落としてもどうって事ない!』
「相変わらずうっとうしい上に暑苦しく、精神衛生上良くありませんね。吹雪のために落ちてもらいます。」
『了解、マスター。それじゃー、いってみよー!』
相変わらず明るい吹雪の声でヴィエラは冷静さを取り戻している。彼女の空気に同調していれば黒い思念が生み出されることは無い。先に散った仲間のために落とすべきだ。
『えっと、AAM-5が6発残ってる。いけるよ!』
「銃弾も確認しました。あとは・・・」
この距離でミーティアでもぶち込まれないことを祈るだけ。だがヴィエラはそれはありえないと感じている。AIM-132ばかり搭載しているF/A-18Iを見てもそれは無いとはっきりわかる。
今まで敵機を格闘戦だけで撃墜してきたのだろう。ただ性能の劣るF-4Aに接近戦で負けた借りを返すためだけに。
「まずはヘッドオンですね。敵機は?」
『AIM-132を大量に積み込んでる。後ろ向きは無いみたい。本当に真っ向勝負を挑むつもりね・・・』
「戦争では命取りですよ。」
ヴィエラは失笑してしまう。生死をかけた戦いに卑怯も何も無い。勝ってしまえばそれで終わりだというのに。
だからこそ早急にこの敵機は撃墜しなければならない。AIM-132のロックオンを仕掛けてくるがこちらもAAM-5をロックオンし、出方をうかがう、
だが撃つつもりは無い。ただガンレティクルの目安にロックオンをかけているだけらしい。
「残念です。では先にもらいますよ。フォックス・ツー。」
『な!?』
ジャンジットが驚いた様子だが、すぐにAIM-132で迎撃すると2発発射してくる。フレアーを仕掛けてそのまま急激に上昇。F/A-18Iも追撃してくる。ミサイルはフレアーに吸い寄せられたようだ。
「ふふ、見事に追ってきます。」
『でもどうするの?』
「まぁ、見ててください。」
旋回してヴィエラがとりあえず射線をそらすと、急激にロールを仕掛け旋回する。ジャンジットのF/A-18Iも追撃してくるが急旋回で振り切るものと考えそのまま急激に旋回する。
『取った・・・!?』
「甘いんですよ。」
旋回しつついきなりF-4Aがエアブレーキを展開し、F/A-18Iをオーバーシュートさせる。ストールしかねないほどの挙動だがぎりぎりで制御し、後ろに張り付く。
『なっ!?』
「甘かったですね。では一撃浴びせますか。」
トリガーを引くが回避される。勿論それくらいの腕前はある相手でもある。敵機は戦闘攻撃機であるF-4Aより数段軽くTVC持ち、加速して距離を引き離していく。
牽制にAAM-5をぶっ放しても無駄。F-4Aは素直にアフターバーナーを最大出力にしてまで追撃する。
「吹雪、ちょっと痛みますよ。いいですか?」
『もちろん!マスターがそういうなら!』
急激にF-4Aが加速し降下するF/A-18Iを追撃。が、何機か敵機が集まってくる。無人機はさすがに空気を読んでくれることは無いらしい。
「・・・まったく。」
F/A-18Iに追撃される可能性もある。ヴィエラがそれを危惧するとF/A-18EJがグリフォンを追撃する。同じレイピア隊のエンブレムが垂直尾翼に描かれている。番号は08だ。
『レイピア8より隊長機、あの敵機を追撃したいのですがいいですか?』
「構いません、危なくなったらすぐに離脱してください。」
『ちっ、うっとうしい連中が・・・後回しだ!』
律儀に追ってくるつもりは無いらしい。ヴィエラはふぅと安心すると周囲に集まってきたFX-10Bの対処をする。この空気の読めない無人機は叩き壊しておかなければならない。

『旧市街地は頑強に抵抗中だが、何とかなりそうだ。』
『ブラボー1より各機、新市街地を制圧した!ビルの損壊が酷いが崩落の危険性は無い!』
ISAF軍優勢という戦局は覆ることなく、順調に旧市街地を残し各部隊がエルジア軍を駆逐していく。議事堂などがある旧市街地は大部隊が展開し頑強に抵抗しているが、航空支援もあり制圧は時間の問題だろう。
『楽勝じゃねぇか。ストーンヘンジよりな。』
「あんなのより難しい任務なんてまったくないよ。」
ルウの言うとおり、ストーンヘンジ攻撃より随分楽だ。エルジア軍の必死さも無く、いとも簡単に撃破できる・・・だが、スカイアイがエルジア軍の報告を伝えてくる。
『敵航空基地よりTu-160が出撃、狙いはサンサルパシオン新市街地だ!直ちに撃墜せよ!』
『あんのエルジアのファシスト、焦土作戦かよ!!』
ミラが大声で怒鳴りつける。レーダーにTu-160が超音速で接近しサンサルパシオン市街地へと向かってきている。
それだけならまだしも、レナはTu-160から出てくるブルーレインの波長を感じ取り全員に知らせる。
『あ・・・まずいよ、ブルーレインの投下型爆弾を!』
『それは本当、レナ!?』
『うん、何となくそれっぽい!急いで撃破しないと!』
そんなものを使われたらサンサルパシオンは灰燼に帰してしまう。エルジアは本気で焦土作戦を行うつもりのようだ。
『・・・戦闘機の姿は見えませんが、エンジン音が聞こえます・・・時折、軍用無線が・・・・・・あのリボンのエンブレムの戦闘機が、この中にいるのでしょうか?』
ラジオはこちらの様子を正確に把握していない。フィンは真上にいるとレジスタンスに知らせたかったがラジオの周波数を知らず無理だと判断する。
それよりもTu-160を早急に撃墜しなければ市街地が全て吹き飛ばされる。操縦桿を握り、爆撃機が飛来したサンサルパシオン北西部へとフィンが向かう。
「メビウス隊各機、最優先目標は敵爆撃機の撃墜!市街地到達前にヘッドオンで破壊すること!」
『了解。』
『解ったぜ、メビウス1!ミラ、ぶっ飛ばすぞ!』
メビウス隊が真っ先にTu-160の飛来した方角へ向かい、ISAF航空隊も戦闘爆撃機、戦闘機を問わず戦略爆撃機の撃墜に向かう。
Tu-160の運命は殆ど決まった物と言ってもいい。逆に世界各国からバッシングを受ける羽目になり表立った軍事物資の支援を絶ってしまう。エルジアは自分で自分の首を締める格好になるわけだ。

「フォックス・ツー!」
背後からAAM-5が直撃しFX-10Aが爆発。格闘戦であっさりとヴィエラが無人機を葬り去る。後はジャンジットを即撃墜するのみだ。
『スプラッシュ!でも・・・ミサイル使い切っちゃった・・・』
「何、あいつの相手はガンキルで十分です。」
軽く余裕をヴィエラは見せている。こんなことで負けるはずが無い。あのジャンジット相手ならM61A3だけでも軽く撃破出来るはずだと思っている。
が、レイピア8はそうも行かない。余裕に満ちた空気を引き裂くようにレイピア8が切羽詰った様子で無線を入れてくる。
『ダメです、振り切れません!援護を・・・!』
『捉えたぞ!グリフォン、フォックス・ツー!』
だいぶ距離が離れた状態でF/A-18IがAIM-132を発射。急激にレイピア8のF/A-18EJが旋回するがフレアーを無視してAIM-132が向かってくる。
状況は最悪。ジャンジットは回避されてもいいようにミサイルの後を追ってレイピア8を追撃する。彼の技量ではあのAIM-132で撃墜されかねない。だが武装は機銃のみ。
「・・・吹雪、ヘッドオンできますか?レイピア8に。」
『・・・解ってるよ、マスター・・・気にしないから、こーいうこと。部下を・・・救いたいんだよねー?』
「えぇ。」
どこか悲しげに2人が答えると急激に旋回しレイピア8の真正面に回る。ちょうど急降下してすれ違う形だ。
『な、何をするつもりだ?』
「私には守りたいものが多すぎましてね。それが厄介なんですよ。」
傍目からみればF-4Aがそのままミサイルに特攻するようにも見えるだろう。だがヴィエラはそんなことを最初から考えているわけでもない。
ジャンジットもそれを知っている。だからこそ混乱してヴィエラの意図を察することが全く出来ていない。
『隊長、やめてください!』
「すれ違いますよ、レイピア8!私が隊長である以上、貴方達を死なせるわけには行きません!!」
F/A-18EJとF-4Aがほぼ同時にすれ違い、ミサイルが真正面に小さく見える。ヴィエラは微笑すると、吹雪にそっと指示を出す。
「ミサイルにレティクルが来るよう機体を補正してください。行きます。」
『マスター・・・お願い、生き残って!』
「貴方こそ・・・!!」
ミサイルをぎりぎりまで引き寄せ、ヴィエラがすかさずトリガーを引く。ガンレンジだがヘッドオンで爆風に突入すれば損傷は免れない。死ぬ可能性もある。
だが、ヴィエラは躊躇など出来なかった。目の前に部下が居て、助けを求めていては引くことなど全く出来なかった。
『自分からミサイルに突っ込むだと!?』
「貴方と私の違いはここですよ、ジャンジット・・・!!」
ミサイルが銃弾に射抜かれ予定より早く爆発、爆発破片が金属棒の形を生成し容赦なくF-4Aを傷つけていくがヴィエラはトリガーだけは手放さなかった。
目の前にジャンジットが居る。奴だけは片付けなければ多くの人が死ぬ。あのマニューバーキルされたパイロットも含めた多くの仲間が。
『な・・・っ!?』
「もらいました・・・よ・・・・!!」
ほぼ真っ向からF/A-18IにF-4Aが突撃、エンジンから火を噴き防弾ガラスにも穴が開いているがそれでもM61A3を直撃させ、まっこうから突き破る。
おそらく驚いた一瞬の言葉が最後で即死しただろう。あの邪悪な思念も散った。だがこちらの被害もかなり酷い。
「無傷なんて・・・いきませんね・・ふぶ・・き・・・・大丈夫・・・ですか?」
『だ・・・だいじょーぶ・・・・』
吹雪も苦しげな声を上げている。挙動が少々不安定で着陸は難しい。するとISAF航空隊の歓声が聞こえてくる。遠くで無数のブルーレインが散った気配もした。
『Tu-160を撃墜!軽いもんだ!』
『メビウス1よりスカイアイ、爆撃機の殲滅を完了した!市街地爆撃の阻止に成功したよ!』
『こちらでも確認した、よくやったな!』
どうやら市街地爆撃を行おうとした敵機を掃討したらしい。ヴィエラがふぅと一息つこうとして激痛を感じる。パイロットスーツに金属片が突き刺さっているようだ。
抜くのは後でいい。ここで抜けば失血死の恐れもある。ヴィエラは操縦桿を握り締め、そのままサンプロフェッタ空港へ向かう。
「レイピア2より・・・各機。作戦終了、RTB・・・なお、重傷に付き・・・指揮権を移します・・・」
『大丈夫か?相棒。』
「フォルク・・・お願いします。こちらは・・・サンプロフェッタ空港に・・緊急着陸します・・・・」
了解、と言って無線が切れる。それだけ伝えれば十分だしフォルクはちゃんと伝えてくれるだろう。問題は生還できるかどうかだ。
気が遠くなりそうなのを必死に押さえる。吹雪もかなりの怪我を負っている状態・・・操縦席後ろのブラックボックスに金属片が突き刺さっている。機体制御だけで必死のはずだ。
『マスター・・・だ、大丈夫・・・?』
「吹雪、無理しないでください・・・私は・・・大丈夫・・です・・・・」
『そ、そう・・・』
「車輪・・・でますか?」
早速吹雪が出そうとするが、エラーが出る。油圧系列すらやられ車輪も出ない。胴体着陸をするしか方法は無いようだ。
無茶苦茶だがどちらも助かる道はこれしかない。
『ごめん・・・』
「無理しなくていいです・・・私を、誰だと・・・思ってるんですか?レイピア隊の・・・隊長です・・・胴体着陸くらい・・・」
『でも・・・その、傷・・・』
「貴方こそ・・・無理しないでください・・・・胴体着陸しか、方法が・・・」
息を吸うごとに痛い。だが、伝えなければならない言葉は多すぎる。ヴィエラは慎重に操縦桿を握りサンプロフェッタ飛行場までたどり着く。あと少しだ。
『・・・マスター・・・』
「何ですか・・・?」
『・・・消えても・・・文句、言わないよ・・・ヴィエラの・・・せいじゃ、ないから・・・』
「ダメです、不吉な言葉は・・・・後にしてください・・・・」
空港のライトがはっきりと見える。着陸の要領はいつもと同じ。水平にして着陸するだけでいい。ただ衝撃は生半可なものではないだろうが。
『ううん・・・もう、ダメっぽいや・・・マスター・・・一緒で、よかった・・・』
「吹雪・・・!?ダメ、です・・・!まだ・・・!」
ディスプレイに[ML-System LOST]と表示が出る。吹雪の思念が唐突に消え、機体制御が不安定になるがヴィエラはかまわず機体を強引に水平にする。
そのまま着陸・・・強い衝撃と共に嫌な金属音が響く。この火花が燃料に引火すればもう何もかもが終わりだが、幸いにもディスプレイには燃料漏れの表示は無い。
すぐにエアブレーキを踏み、急激にF-4Aが減速する。あちこちから警報が鳴っているがヴィエラには関係の無いことだった。

『地上部隊よりレイピア隊へ、現在搭乗員と機体を収容する。機体はボロボロだが・・・パイロットは生きている!』
ふぅ、と一安心した様子でフィンは一息つく。他の部隊からも歓声が上がっているようだ。一瞬吹雪の思念が消えた時はびっくりしたが、ヴィエラが生きていると聞いて安心したようだ。
なかなか収まらない歓声の中、サンサルパシオンのラジオ放送が聞こえてくる。BGMにはサンサルパシオン市民の歓声も混じっているようだ。
『・・・爆撃機を撃墜した戦闘機が、上空を通過していきます。放送を検閲していた将校もさりました。今、私たちは声を大にして言えます。「勝利した」と。共同放送、アンドレイ・ペチェルスキィがお伝えしました。』


7/12 1100時 サンプロフェッタ臨時航空基地
「・・・ん?」
唐突にヴィエラは目を覚まし、真っ白な天井と明かりを見て医務室らしいと判断すると起き上がる。突き刺さっていた金属片のあった辺りには包帯が巻かれている。
上半身だけ起こすと、フォルクとシルヴィアに加え見慣れない人物が居る。ISAF空軍技術管理部という聞きなれない名札をつけているようだ。
「生きてるな、相棒。」
「吹雪は・・・?」
ヴィエラが真っ先に気にしたのは彼女のことだ。途中で消えてしまった彼女はどこだと思い見渡すが書類を書いている医療関係者と彼ら以外には人は居ない。
「一体吹雪はどこです!?まさか・・・」
「お話しするしかありませんな。」
50台くらいのISAF空軍技術管理部の人が椅子に座ると、フォルクが研究者に大丈夫かとたずねる。
「いいのか?話して。」
「いずれ解ることだ・・・彼女・・・吹雪は厳密には生きている。だが・・・」
「何なんです?」
不安げに見つめるヴィエラに対し、技術管理部の人は咳払いをすると状況を説明し始める。
「だが、ブラックボックスへの損傷が酷く金属棒が直撃しブルーレインに皹が入っている。」
「皹ですか・・・!?」
「おそらくそれが原因で吹雪は現在も昏睡状態にある。覚醒するきっかけは何かさっぱりわからないというのが現在の見解だ。かといって思念の宿ったブルーレインごと交換するわけにも行くまい。あと、機体はエンジンとキャノピーの交換、損傷箇所の修復で十分飛べる。」
研究者が冷静に結論を述べると、ヴィエラはふぅとため息をつく。やはり眠ったままの状態というのは苦しいらしい。
「それで・・・対応方法とかはありますか?」
「あるとすれば、時々接続することくらいだ。システムの刺激を受ければ彼女も起き上がる可能性がある。あくまでも仮説だが。」
ヴィエラはただうなずくしかできなかった。いきなり目覚め、いろいろ言われ・・・大体のことはつかめたが、吹雪のいない喪失感だけは埋められそうにない。
「・・・出て行ってくれますか?少し・・・」
「あ、あぁ。」
研究者が出て行き、フォルクとシルヴィアも意図を察したのかそのまま出て行く。そして、ヴィエラはマクラに抱きつき顔をうずめるとそのままなき始める。
一体誰が悪かったのか。あの判断は最良だったのか。どっちにしても吹雪は今、ここに出てくることはない。
「・・・吹雪・・・っ!!」
マクラがぐしょぐしょになるまでヴィエラはなき続け、吹雪を抱きしめるかのようにマクラをがっちりと抱きしめていた。

同時刻 サンサルパシオン市街地
「大喜びだね、みんな。」
「本当ね。お祭り騒ぎじゃない。」
フィンとレナはお忍びでサンサルパシオン市街地へと出歩いていた。メビウス隊の面々にも内緒で市街地をとりあえず見たかったのだ。
列車砲の損害はあったがビルは倒壊する様子も無く、どうやらあの時直撃したように思ったのは炸裂弾であり戦車の残骸が残っている。ISAFの90式戦車や10式戦車もあるが大半はチャレンジャー2.それも無人仕様が8割を占めている。
町は不発弾など気にしない様子でお祭り騒ぎが行われ紙ふぶきの紙くずやビンなどがあちこちに落ちていて、歓声も上がっている。市民があちらこちらで祝杯を挙げているようだ。
「・・・あ。」
「何?」
ふとした声にフィンが気づき、振り向くとそこに1人の少年が居る。サンサルパシオンの市民だろうか。だがどこか不思議な雰囲気を感じ取る。
「君・・・だよね?リボン。」
「大当たり。」
フィンが笑顔で答える。20cmくらい身長は低いであろう・・・ちょうどレナと同じくらいの身長であり年齢もそれくらいに見える。
「・・・いきなりで悪いけど、黄色とリボンってどんな関係?」
「どう?」
唐突な質問にフィンは考え込んでしまう。レナはいぶかしげに見て警戒しているがフィンは大丈夫さと答える。この少年から敵意を感じることは無い。
「そうだな、お互いに大事なものを奪われたのかもしれない。僕は黄色の13に兄さんを落とされ、逆に黄色の4を落とした。今頃彼も憎んでると思うな・・・不調の機体にAAM-4をぶち込んだわけだから。」
しばらく少年も黙り込むと、いきなり首を降り始める。どうやら違うらしい。
「違う?」
「黄色の13は君を憎んでいない。君を敵としてみてるけど、認めてる。」
「認めてる?」
「技術の限りを尽くして戦わなくてはいけない、その上で落とされても恨みは無い。そう、以前言ってたんだ。」
その言葉にフィンは何かに気づかされた気がした。憎しみだけで勝てる相手だけではない。かつて思い描いていたレイシスのように超えなくてはいけない壁だ。
「本当なの?その言葉。」
「じかに聞いたんだ。いつも・・・近くに居たから。」
少年は周囲を見渡すと、遠くにトラックを見つけた。エルジアの敗残兵が乗り込んでいるトラックだ。エンジンをかけていないところを見ると発進するつもりは無いらしい。
「そろそろいかなきゃ・・・エルジアに行くんだ。これから。」
「もし黄色の13に出会ったら言っておいて。「憎しみは抜きだ」って・・・僕も、次出合った時は兄さんを落とした相手ということは忘れさせてもらう。」
「わかった・・・じゃあね。」
少年はそのままトラックの方に走っていく。フィンはふぅとため息をつくと、レナが隣から肩に手を置いてくる。
「フィン、いいの?本当に・・・」
「兄さんのことは忘れられないけど、いずれはどこかで決着をつけなくてはいけないんだ。」
悲しげに目を閉じてから、フィンは空を見上げる。一瞬だけ彼のラプターが空を駆け抜けた、そんな気がしたのだ。
無論レイシスのラプターはとっくに失われ、空中で爆発したため破片すら残っていない。それでも2人には一瞬だけ見えた気がした。


続く

あとがき
サンサルパシオン解放も終了。列車砲はエルジアだって作ってると思っただけです。陸続きだと列車砲がありそうなイメージが。
しかしMLSの設定に反してないかどうかちょっと不安なところもあります。ブルーレイン損傷で昏睡状態とかありかな、と。
さて次回はウィスキー回廊。地上部隊が密集して展開しているとなればあれを使うのがぴったりのような気がします。
それでは。


 2009/07/02:スフィルナ(あくてぃぶF-15)さんから頂きました。
秋元 「同化中は蒼晶石の中に居る訳ですから、それが損傷すれば、何らかの影響はでますね」
アリス 「……ありですね」

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