ACE COMBAT04 Shatterd skies〜メビウスの記憶〜




ACE COMBAT04 Shatterd skies〜メビウスの記憶〜
第13章 無数の瞳

8/15 0715時ブルーフェート空軍基地 格納庫
「・・・さて、今回の作戦はやばそうだから言っておくよ。」
「やばそう?」
「ん?」
いきなりフィンが格納庫にルウとヴィクセン、そしてミラとレンを呼び集める。ブリーフィングルームではないのは何か理由がありそうだ。
後ろにある凸形のミサイルというべきか、アンバー共和国が使っているスタンドオフディスペンサーに近い武装をフィンがたたいてみせる。
「何、それ。」
「エルジア軍が使おうとした広域殲滅兵器。これを使ってくれという通達が来たんだ。何でも黄色中隊のEFLSとフランカーに合わせる形で作られたって。」
フィンの説明にレンがうなずいてみせる。なるほど、フランカーの中央部分にあるパイロンにぴったりと治まりそうな形だ。
「イーグル用に改造してハードポイントを複数使い重量を拡散するように出来ている。ミラージュも短距離AAMをはずして何とか使えるようにしてるんだけど。それと複合素材の使用で威力を限界まで抑えている。」
さすがにフランカーでハードポイントを4つも使うものをそのままイーグルに搭載するのは難しい。いろいろ工夫をしているようだ。
ちなみにコンベース港を制圧したときにこの原型といえる兵器が鹵獲され、大幅な設計変更を行わずに軽量化とハードポイント用フックの開発だけで何とか実戦投入までこぎつけたようだ。
発射試験はまだ行われていない。だが分離システムなどの実験は行われそれなりにいい成果を出したため実戦投入されることになった。
「どういう兵器だ、フィン。」
ヴィクセンがたずねると、フィンはメモを取り出してその内容を読む。さすがに覚えるのは辛かったらしい。
「正式名称はMLM-2ミリオンアイ。45個の爆弾をばら撒いて本体は大型のミサイルとして突撃させるスタンドオフディスペンサーから発展させた戦術兵器。45個の小型弾頭にすべてブルーレインを搭載し、目標に誘導する。ちなみにIRシーカーとカメラの複合。」
「・・・生半可なもんじゃねぇな。負担。」
ミラがそんなことをつぶやく。46個すべてに意識を移したらそれだけ彼女達の負担が大きくなる。その失った精神をマスターから奪い取るから結果的に操縦者への負担は相当なものだ。
おまけに負の思念もすさまじいものになる。以前フィンが意識不明になったMLM-1と同等程度の負担が来ることは間違いない。
「だから今こうしてるんだ。僕が責任を持つからこの作戦を拒否するなら言って。」
「何?」
「生半可な負担ではない。撃墜されたりする可能性もある。もしかしたら精神をこれに殺されるかもしれない。そんな危険な作戦に強制させて挑ませるなんて出来ないから。」
真剣な表情でフィンが目の前にいる4人に話しかける。するとレンがふっと微笑してみせる。
「初めてね、あんたが隊長らしいこと言ったのは。」
「え・・・?」
戸惑った様子でフィンがレンを見つめるとヴィクセンは仕方ないなとぼやくように返答する。
「・・・味方の犠牲を少しでも減らせるなら協力する。ウィスキー回廊には防衛部隊が展開している、突破は至難の業らしいからな。」
最終防衛ラインとしてエルジア軍はウィスキー回廊に全戦力を集中。両脇の海岸沿いなどを無人コルベットで固め地雷を大量にばら撒くなど進軍を遅らせるように布陣している。
逆に言えば、この防衛ラインを突破できれば軽くファーバンティへの道が開けるのだ。敵は無人戦車がほとんど。負の思念もあのときよりは減っているはずだ。
「しゃーねぇな。ったくこいつに殺されるのだけは勘弁だが俺もミラもやられるわけねぇよ。」
「ま、確かに。」
ルウとミラもうなずいてみせると、レナがやれやれといってみせる。こんな無謀な作戦、普通の人間なら逃げ出すが彼らはそれに挑もうというのだ。
「レナ・・・協力してくれる?」
「今更ね。フィンが行くといってるのに行かないわけ無い。」
「わかった・・・いいよ、皆。これを取り付けて。」
決定、とフィンが言うと早速整備員を呼びつけ、ミサイルのセットを始めさせる。ミラージュのペイロードでは限界ぎりぎりのため銃弾も半分しか搭載できない。
銃弾の搭載量を減らし、異形の大型ミサイルを搭載する。一瞬だけミラージュ2000-5が沈み込んだが何とか離陸は出来そうだ。
「・・・まー、付き合うといったからしゃーねぇな。」
重いミサイルを見てミラが離陸できるかどうか不安げに見ていたが、やるといったらやるしかないと考え直す。
とりあえずこのミサイルを発射した後、作戦続行可能であればそのまま対地支援を行うのだが無理ならそのまま帰還することになる。
「そういえばヴィエラは?以前から落ち込んでたけど・・・」
「私がどうしたんですか?」
何か吹っ切れた様子でヴィエラが入ってくる。吹雪がいなくなってからメビウス隊と一緒に行動することは無く単身で訓練や残存部隊掃討などをこなしていたようだ。
「ヴィエラ?もう大丈夫なの?」
「飛ぶことでしか彼女を目覚めさせることは出来ない。だから・・・飛び続けるしかありませんよ。MLM-2は発射できませんが護衛機としてサポートします。」
「ありがと。」
フィンが軽くお礼を言うとヴィエラもうなずいてみせる。すると、レナが早速書類をまとめてどこかへ行こうとする。
「どこに行くの?」
「全員参加すると司令官に伝えてこないといけないの。作戦開始時刻にまた。」
手を振ると、レナはそのまま司令室へと向かっていく。レナにはもう作戦を伝えたと思うとフィンはそのまま状況を部隊のメンバーに説明し始める。
「今、ここに友軍がいるんだけど・・・ちょうどいいや。このウィスキー回廊を東から西に突破しなくてはいけない。」
「あぁ。」
フィンが手近にあった1/700スケールの陸上戦車模型を出し、ウィスキー回廊の地図を取り出すとエルジア軍のいる場所においてみせる。
「中央にチャレンジャー3型無人戦車が展開している。こいつらが主力で南の防衛陣地クラブハンマーとも呼ばれるエルジア製レールガン砲台が設置。北にゴールドバーグクレーターをはさんで市街地があり、ここに地上部隊が布陣している。例のクラブハンマーも設置されてるんだ。」
「で・・・作戦は?」
「中央は僕が担当する。ルウとヴィクセンはクラブハンマーのある防衛陣地をたたいて。このMLM-2でも市街地を巻き込みやすいし、陸軍部隊に任せたほうがいいと思う。終わったら中央を抜けて敵司令部をたたく。」
F-15Irの模型を宿舎の模型がある場所まで進め、フィンは机を軽くたたく。司令部にダメージを与えれば相手も効果的な動きは出来なくなってしまう。
「私達は中央突破後、全力で司令部付近のレールガン砲台を無力化します。ところで、フィン大尉。」
「何?」
「それ・・・私の部下の模型なんですけど。たたいた衝撃でどこか行ったんですが・・・」
「あ・・・ごめん、探して?」
フィンが懐中電灯を持ってくるとすぐに照らし、落ちていった模型を調べる。大体何故こんな場所にあるんだと突っ込みたくもなったが。
「ただいま。ねぇ、何・・・」
レナが入ってきたと単にプラスチックが折れたような不協和音が聞こえてくる。何と思って足を上げてみると折れてしまったMLM-2の模型が見える。
「・・・え?わ、私何かまずいことでも・・・」
「わ、私の今日作ったMLM-2が・・・!」
「落ち着いてください、レイピア3。私の不注意だったんです。」
レイピア3が取り乱している。彼女が模型を作っていたらしいがレナはごめんなさいと一生懸命誤っている。するとミラがそのまま折れたMLM-2の模型に布を被せる。
「何してんだ?」
「まぁまぁ見てて。こうして布切れを被せて・・・はい!」
布を取り払うと、いつの間にか元通りになっている模型がミラの手に乗っている。レイピア3はそれを見てほっと一息つく。
「あ、ありがとうございます。」
「別に気にしなくていいってば。」
軽くミラが笑って見せると、小道具をしまってMLM-2らしき模型をレイピア3に渡す。それを見てルウが疑問符を浮かべてみせる。
「何やったんだ?」
「種明かしたらマジックじゃねぇだろ?」
ミラが微笑んでみせる。その言葉にルウは苦笑してこれ以上訊く事も出来なかった。以前彼女にも同じようなことを言われていたのだから。

作戦空域 1105時
『重いなぁ・・・』
「文句を言わない、レナ。すぐぶっ放すんだから。」
レイピア隊、そしてISAF空軍の制空隊に護衛されメビウス隊は作戦空域へと向かう。どうもハードポイント設置のフックがきしんでいるようにも感じられる。
さすがに搭載に無理があったんじゃないだろうか。大体こんな器具を何度検査したのかとフィンがぼやきたくなったがやるしかない。
『散開するぞ。』
『解りました。レイピア隊はF-15Irを護衛してください。ヘイロー隊、オメガ隊はメビウス2、メビウス3のミラージュ2000とF-12Dを護衛してください。』
ヴィエラが指示を出すと部隊がその通りに散開する。するとレイピア隊の後ろから他の部隊もついてくる。
『ホーク01よりメビウスへ、護衛する。』
「ありがとう。じゃあ行くよ。」
F-15Irの後ろにF-3AとF/A-18E、F-4Aの混成部隊が続きそのまま投下空域を目指す。ミラージュとF-12DにはF-2AとF-15FJが続いて作戦空域に向かう。
目標が見えた。フィンはHUDで戦車部隊を確認する。チャレンジャー3と対空車両がほとんど。制空戦闘機ゆえにあまり地上の思念は感知しにくい。距離は結構あるがここから発射すれば良い。
『・・・フィン、私は今度こそがんばるから。貴方に余計な負担はかけさせない。』
「信用してるよ。いい・・・よね。」
そろそろリリース。フィンはレナがいると思われる後部座席の後ろにあるブラックボックスを振り返る。
『もちろん・・・一番大好きな人まで失わせるわけには行かない。』
「行くよ、レナ・・・1つ言って置くけど・・・」
リリースボタンに手を書け、フィンはしHUDを見る。レナの指示でディスプレイにカウントダウン表記が出ているがレナがちゃんと思念で伝えてくれている。
今伝えなければ後悔するかもしれない。フィンは深呼吸をして覚悟を決めるとはっきりとした声でレナに告げる。
「・・・愛してる。」
『い、今言うの!?で・・・でも私も!』
戸惑いつつも、レナもうれしげな様子で答えてくれる。少しだけ機体のバランスが崩れた気がしたが、すぐに元に戻る。カウントダウンはディスプレイでちゃんと確認しつつ、フィンはレナの声を聞く。
通信を早めに切っておいてよかったとフィンは思う。おそらく他の機には聞こえていないはずだ。こんな状況で告白したのが味方機にばれたら大変なことになる。
「じゃあ・・・行くよ。」
『投下時刻あと少し。5・・4・・・・』
レナがカウントダウンを切り詰め、その間にフィンの意識がMLM-2へと移される。いつやってもこの痛みはなれないが、このあとの苦しさからすればまだ軽いほうだ。
「メビウス1、リリース!」
カウントダウンが0になったところでフィンがリリースボタンを押すとハードポイントフックが同時にはじけとび、MLM-2が解き放たれる。
安定翼が開くとはっきりとフィンはブルーレインつきの戦車を感じた。おそらくFX-10Aと同じようにブルーレインで指揮を執っているのだろう。
攻撃するべきだ。フィンがそう思うといきなりMLM-2のハッチが開き5個の小型爆弾が投下される。それにもフィンとレナの意識が移される。
ブースターに点火し、ミサイルは目標を追い続ける。だが精神への負担は相当なものだ。MLM-1など比較になるわけが無い。
「く・・・ぅ・・・!」
『だめ、かなり辛い・・・!』
レナも辛いらしく残留思念が流れ込んでくる。彼女が思念を防ぎきれなくなったのだろう。だが攻撃を止めるわけにはいかないしレナも必死で耐えている。
フィンは反射的に敵に思念を向けて、それがMLM-2につながり大量に小型爆弾をばら撒いていく。小型爆弾にはブースターもつきミサイルといった感じだが破壊力は50kg誘導爆弾をはるかに超えている。
そうしている間に最初の爆弾がチャレンジャー3に命中、対空車両も迎撃するが1発を迎撃した程度で爆弾が直撃する。
『あとちょっとだよ、フィン!』
「解ってる・・・!」
爆弾が直撃、すぐに思念を向けての繰り返しでいつの間にか最後の1個になっていた。MLM-2の本体であり巨大なミサイルだ。これを対空火器で固めている指揮車両へ向ける。
「・・・自分の不運をのろって。悪いけど・・・!」
大型のミサイルが指揮車両めがけ飛翔、ピンポイントで直撃すると一瞬で周囲の護衛車両を吹き飛ばし爆発を引き起こす。
一瞬で数多くの残留思念が届くが、何とかフィンは意識を保っていた・・・レナもはっきりと思念を感じる。少々弱弱しい声だが大丈夫のようだ。
「・・・生きてる?」
『生きてる・・・当たり前よ。敵に打ち落とされる前にこんなもので死んでどうするの。遺言が告白なんて勘弁よ。』
水平飛行に戻し、すぐに味方基地方面に向けてF-15Irが旋回する。護衛機はヴィエラのF-4Aだけになったが上手く旋回すると無線を入れてくる。
『やりましたね。』
「うん、何とかね。」
『よかったですね、告白して死ななくて。』
まさか訊かれてたというのか。2人が驚いた様子でどう答えるか迷っているとヴィエラが笑ってみせる。
「聞いてたなんて酷い!」
『いえ、ほんのかすかにしか聞こえないんですけどね。ブルーレインとリンクはしてますから通信程度は読めますよ。もっとも・・・』
吹雪がいないため本来の感知範囲という面ではまったく無理であり、当分は「普通のF-4A」程度の機能で動かすしかない。
『でも、前よりちょっとだけ吹雪のイメージはつかめてきた。治るよ、きっと。』
『本当ですか?』
『眠ってるイメージがあるから、いつか起きるよ。』
レナが外から思念を読んで大体のイメージをつかむ。今にも起き上がりそうな気配だがやはり目覚める気配は無く眠っている。
『これでもだいぶイメージが出てきたんです。思念などにさらされ何とか形を形成してきたんですが・・・』
『あと少しかもね。がんばって。』
『そうしますよ。』
ヴィエラがしっかりと随伴しているのを確認してフィンは安心する。何かの希望を見つければ今眠っているという状態も、不利な状況も乗り越えられるのだろう。
今乗り切ったのも、これで戦争が終結に近づき仲間が助かるという希望だろうか?フィンはそうではないと思う。やはりレナが一緒だからだ。
「それより、レナ。今出られる?」
『何?』
オートパイロットにしてフィンがヘルメットを脱ぐと、レナが出現する。そこにフィンが飛びつくと、軽くキスを交わす。
『・・・作戦中じゃない。今。』
「いいよね?好きなんだから。」
頬を染めて、レナが消えるとフィンもヘルメットを付け直し、そのまま前線基地へと戻っていく。とりあえず、ほんの少しだけ前に進めたようだ。
戦果は上々だが、彼らにはそんなことより互いに信頼できると再確認できたほうが大きかったようだ。レナがフィンの精神をゆっくりとケアしつつ、フィンはそのまま前線基地へと帰還していく。

一方のメビウス別働隊もまた、投下ポイントへと入っていく。制空戦闘機は飛んでくるが護衛機がしっかりと撃退しメビウス隊に危険を寄せ付けない。
投下ポイントに到達し、ミラがカウントダウンを開始すると同時にルウはリリースボタンを押すがとたんに機体が傾いてしまう。
「・・・ぁあ!?何があったんだ!?」
『不良品じゃねーか!なんだこりゃ!マスター、フックが外れてねぇぞ!やばい、バランスが・・・!』
ミサイルのブースターがいきなり点火したがパイロンから外れる気配が無い。おそらくパイロンとフックは急造型のために故障したらしい。
『メビウス3、リリース・・・どうした?』
『ハッチが開かない・・・何これ!?』
ヴィクセンの方はMLM-2の爆弾ハッチが開いていない。整備不良か離陸時に故障を起こしたかわからないがとにかく開く気配が無い。
複雑な機構ゆえにどこかで製造工程のミスが生じている。やはり鹵獲品をちょっと改良して使うだけではいいことはなさそうだ。
「・・・ちっ、強制パージだ!そいつは出来るだろ!パイロンごと捨てるぞ!」
『誘導どうすんだよ!?思念が入りきってねぇっての!』
「真上からぶつければ良い!上昇するぞ!分離システムとか何とか言っている場合でもねぇ!」
エンジン出力をおとしそのままミラージュ2000Cが上昇する。勝手にブースターのエンジンが入りミラージュのエンジンに加算して一気に加速。音速を超えている。
そこから多少無理にピッチを上げ機首を真下に向けるがブースターはまだ動き続けている。
「よし、リリース!」
『解ってる!パージだな!』
パイロンごとMLM-2がはずれ、ミラージュ2000Cはそのまま駐屯地から離れていく。F-12Dもすぐに駐屯地から逃げるように離脱すると後ろで巨大な爆発が起こる。
爆発し損ねたブルーレインの小型弾頭が連鎖反応を引き起こし、MLM-1をしのぐ規模の爆発を起こしたようだ。無論、残留思念もそれ以上に届いてくる。
ルウにとっては初めてではある。だがミラがきっちりと押さえ込み負担を最小限に抑えこみ彼にもそれほどの負荷は届いていない。
「・・・ちっ・・・酷いもんだな。」
それでも残留思念が見せる凄惨な光景だけは届いてしまう。濃密故に声だけではなく光景までイメージとして入ってきてしまうのだ。
焼け焦げたり黒焦げになった兵器に混ざり人もいくらか見える。歩兵がいるのは当然であり犠牲になっても仕方ない。だが、生々しく見せ付けられるとやはり気にせずにはいられない。
『大丈夫か?ルウ。』
「気にすんじゃねぇよ。一旦帰還するぞ。対地兵器をたっぷりそろえて司令部を落とさねぇとな。」
ヴィクセンの気遣いもルウは気にするなとはねつけるが、そっと後ろを振り向くとミラに話しかける。
「悪ぃな。こんなもんにつき合わせて・・・」
『うー・・・ま、気にしなくていいって。フィンのほうがやばいから。』
先ほど無線でMLM-2を無事発射し終えたとスカイアイから報告が入ってきた。ルウとヴィクセンはそのときMLM-2の対処に手間取っていたため聞き忘れていたが、あぁと思い返す。
『無事よね?フィンは。』
「大丈夫だろうよ。墜落したなんて情報は入ってきてねぇさ。リボンが墜落したら大騒ぎじゃねぇか。」
それもそうだとヴィクセンがうなずくと、そのまま翼を並べて帰還する。少々挙動が不安定だがミラの精神もそれなりに消費し残留思念を耐え切ったのだから仕方ない。
それくらいは大目に見てやろうとルウが操縦桿を握り、少しぼーっとするのも構わず前線基地へと戻る。補給してすぐ作戦をしなければISAFに犠牲が出る可能性もある。

ブルーフェート空軍基地 1200時
「あー、疲れた・・・」
「本当。でももう二度と使われないと思うな。私。」
フィンはキャノピーをあけて操縦席に風を送り込む。砂漠の上に夏、暑いのは間違いないが操縦している間は気圧の関係などで多少は冷える。
だが、やはり空軍基地にもどれば暑い。整備員も汗を拭きながらAAM-5と大型爆弾、45kg小型誘導爆弾を搭載していく。
「え?どうして使われないの?」
「さっきルウとヴィクセンの通信を聞いたけどMLM-2にエラーが出て分離しなかったり、中身が出なかったりするなどの不具合が出たって。フィンの負担とかを考えても、これ以降の作戦には使えなさそう。」
フィンの負担はとにかく、ルウとヴィクセンの無線にあったMLM-2のエラーは上層部にきっちりと報告する必要がある。そうすればこの兵器を使うことはなくなる。
こちらが劣勢というならその封印をとかれるかもしれないが、少なくとも普通の作戦で使われることは無いだろう。MLM-1とてつらいものがあるが、これに比べれば数段マシだ。
「じゃあ、念入りに僕達のケースも書いてちょっと誇張しておこう。危なっかしい兵器だから使えなくなるような兵器にね。」
「そうね。」
「よし、終わったぞ!」
整備員が外から声をかけるとフィンはキャノピーを閉じる。そして出撃しようとするとレナがいきなり肩をたたいてくる。
「何?レナ・・・!?」
「んっ・・・」
振り向いた途端にレナがキスをする。やはりあのままされっぱなしというような彼女でもないらしい。
「お返し。さっきのね?じゃあ張り切ってゆこう?」
「解ったよ、もう・・・」
フィンがヘルメットをつけると、そのまま滑走路に入る。ちょうどルウとヴィクセン達が着陸して入れ違いになる形だ。

作戦空域 1340時
『進軍しろ!敵司令部を叩きのめせ!』
『無人戦車風情が、俺達の新型にかなうかよ!』
40式高速戦車が先陣きって突撃しチャレンジャー3型を次々に撃破していく。その後ろから10式戦車、90式戦車といったISAFの主力が続き砲撃を加えていく。
後方から自走砲や列車砲が支援射撃を加えるが司令部は頑強に抵抗する・・・やはり後ろにあるレールガン砲台、クラブハンマーが原因だろう。
拡散弾を発射し、意気揚々と進軍してきたトールハンマーの出鼻をくじく。やはり一筋縄で降伏してくれる相手でもない。
『ダメだ、レールガンか!?』
『リボンにレールガンをやらせろ!ストーンヘンジより簡単だろう!?』
『いいぞ、敵が引いている。航空支援を密にしろ。』
ちょうど良くフィンが戦車部隊上空に差し掛かる。FX-10Aなども上空を旋回しているがISAFの制空部隊もいる。彼らに無人機を相手にさせて置けばいい。
『レイピア2よりメビウス1、私達でレールガンをたたきましょう。準備はいいですか?』
「もちろん。攻撃に参加しないなら遠巻きにしてて!巻き込まれる!」
フィンが友軍機に要請を出すと遠距離から友軍のF-15JがAAM-4をFX-10Aに発射する。こちらにおびき寄せておくだけでいい。
敵のクラブハンマーは単に自立誘導で動いている。ブルーレインなどは無いただのレールガン砲台。だが砂漠ゆえに隠れる場所は無い。とにかくやられる前にやるしかないのだ。
『おい、やばくないのか?ちょっと待て・・・!?』
レールガンが射撃。空気を切り裂くような甲高い音が聞こえる。アフターバーナーをかけてフィンとヴィエラの機体が突っ切り、レイピア隊も何とか殲滅範囲から逃れる。
逃げ遅れたF/A-18EJが1機、そしてF-3Aが3機撃墜される。幸いにも1基しか砲台が無い。発射間隔はそう短くは無いはずだ。
『ヴァイパー7がやられた!』
『散開してください。分散すれば狙いがつけにくいはずです。』
『低空なら破片は少ない!突っ切れ!』
そんな無線が飛び交う間に2発目が発射。だがあっさりと回避され逆にレイピア隊からAGM-1が発射される。フィンはすかさず上昇し燃料気化爆弾をセットする。目標は敵司令部だ。
AGM-1はクラブハンマーに直撃、爆発を起こしていく。周辺の迎撃火器はクラブハンマーに向かうAGM-1を叩き落したが自身に向かうものを対処しきれず、沈黙する。
「さて、今のうちに・・・!」
司令部に燃料気化爆弾を投下して一気に吹き飛ばす。フィンは一瞬だけ眼をつぶるとトリガーに手をかける。
『FAEBセット。ピパーイン。』
「メビウス1、リリース!」
白い大型の爆弾が紺色のイーグルから投下され、対空火器をすり抜けつつ白い煙を噴出し落ちていく。
司令部に爆弾本体が直撃すると燃料に引火、周辺の人員を一瞬で酸欠にした後焼き尽くしてしまう。その光景がはっきりと見えた。
「・・・さて。」
この程度で躊躇しているわけにも行かない。フィンは一瞬黙祷するとそのまま上昇させ戦況を見渡す。司令部が破壊され軍の統制が取れなくなっている。
『司令部からの通信が途絶えたぞ!』
『おい、あれを見ろ・・・やばいぞ、あんなもんで攻撃されたくねぇよ!』
敵陸上部隊が驚くのも無理は無い。JC-2AGが2機も向かってくる。あんなガンシップで吹っ飛ばされたらひとたまりも無いだろう。
『フィン、名物が見られますよ。』
「名物?」
ISAF国内で4機製造された機体だが今回2機が出撃してきた。戦車を乗り捨てて逃げる兵員もいるが、このガンシップの破壊力はイスタス要塞でも示された。
敵地上部隊の大半を一瞬でふっ飛ばし、そこに空挺降下を行うと迅速に制圧してしまったのだ。今回は司令部に敵勢力が残っているが、そいつらの掃討もかねているのだろう。
『これよりISAF陸軍名物の「ハヤブサ大量落下傘」を見せてやる。何?ネーミングセンスが無いという文句は受け付けないぞ!15式を先頭にして降下だ、続け!』
『行くぜ!俺達は降下してこそ価値があるんだ!』
『一泡吹かせてやにょ、エルジアの!』
『第1小隊、降下開始!』
T-X計画で製作された軽量型の戦車である10式戦車をベースにJC-1やJC-2から投下できるように設計されたのが15式戦車。出来るだけ複合素材で軽量化して空挺投下用のパーツも取り付け、何とか装甲の軽量化を最小限にとどめたものだ。
『あ、空挺部隊からモールス。「コチラ第1空挺部隊。名物、ハヤブサ大量落下傘ヲタップリト堪能シテクレ」だって。』
「気が利くね。じゃあ見させてもらおうかな。」
敵の制空隊はISAF空軍に押されほぼ制空権を確保しているといってもいい。クラブハンマーはいない、大丈夫だ。
「レナ、返せる?」
『何を返すつもり?』
「えっと、「これからCCDカメラで録画して、仲間で見る。」って。」
『えぇ、了解。』
一斉に空挺戦車が投下され、パラシュートを開き降りていく。気化爆弾で吹っ飛ばされた司令部へ突入すると空挺部隊は周辺の歩兵を掃討し、エルジア軍とISAF軍の無線で呼びかける。
『こちらISAF空挺第1部隊。エルジア軍に告ぐ、司令部を占拠した!直ちに降伏せよ。これ以上の犠牲を誰も望んでいない!繰り返す、司令部を占拠した!直ちに降伏せよ!』
司令部が制圧されたと知り、エルジア軍は次々に降伏していく。無人戦車は空挺部隊がハッキングしそのまま無力化したようだ。無人機はファーバンティに温存するためかそのまま撤退する。
『よし、よくやったぞ!』
『クラブハンマーは私達が沈黙させたんですからね。いいですね?』
『航空支援に感謝だ!おまえら、ファーバンティまで後一息だぞ!』
無線から歓声が聞こえ、喜びの思念が一気に伝わってくる。フィンは逆にその意識に押しつぶされそうになったがレナが受け止めてくれている。負の残留思念も強いが、こっちも十分強力だ。
『・・・終わってんのかよ。まったく。』
「ちょっとごめんね。先取りしちゃって。」
少々遅れてミラージュ2000CとF-12Dも到着するがもう降伏宣言が出され、武装解除をしている。メビウス隊の出番はあるはずも無い。
敵の殲滅はメビウス隊だが武装解除は陸軍の部隊にしか出来ないことだ。次々にエルジアの部隊が降伏し、捕虜にされていく。
「じゃあ、僕達も帰還するよ。任務完了。」
『了解だ。』
メビウス隊は機首をめぐらせブルーフェートへと帰還する。いつの間にか後ろには多くの味方がついてきている。そう考えるとISAFもずいぶん立て直したと実感している。
あとはファーバンティに乗り込み決着をつけるだけ。そうそう簡単に終わらないだろうが、この戦争はなんとしても終わらせなくてはならない。犠牲者や苦しむ人をこれ以上増やしてはいけないのだ。

ファーバンティ空軍基地 1540時
「落とされたか。」
「最終防衛ラインもたった1日で陥落・・・先が見えた戦争だ。」
ベルナードが半分あきらめたようにつぶやく。ISAF軍の精鋭部隊にあっさりと出し抜かれてしまってはもうどうしようもないのではないだろうか。
エルジアはもう終わったようなもの。ベルナードはふぅとため息をつく。出来ることならルーチェを無事に国外に脱出させたいところではある。
「どうする、ベルナード。」
「何?」
「お前は・・・その、ルーチェがいるだろう?俺達だけ撃墜されれば良いが・・・降伏して武装解除とかしたらどうするつもりだ?」
そうなったらルーチェと引き離されてしまう。ベルナードはその事で悩んでしまう。一体どうやって脱出すれば良いのか・・・そのことについて、ベルナードは悩んでしまう。
「・・・ベルナード、俺の知り合いにユーク空軍の奴がいる。」
「隊長?」
「最低でもアグレッサーくらいには使って貰えるだろう。機体ごと亡命しろ。万一のことがあったらな。お前達も遠慮はいらん。」
エーリッヒが全員にいざとなったら逃げろという。だが誰も立ち上がらずにじっとエーリッヒを見つめている。
「隊長はどうするんですか?」
真っ先にルーチェが口を開くと、エーリッヒは少し悲しげに応える。
「お別れだ。俺はリボンと戦う。」
「リボン・・・なら、私達にもやらせてください。」
ルーチェからそんなことを言われベルナードは面食らった様子だが、すぐに落ち着くと首を振る。
「これ以上失いたくは無い。死ぬ覚悟は俺だけでいい。」
「俺達を誰だと?黄色中隊のメンバーだ、死ぬはずは無い。」
オルベルトが微笑し、自身ありげに応える。リボンを相手に畏怖の念を抱いていないのはこの黄色中隊だけなのだろう。
「一矢報いなければな・・・隊長。亡命は後だ。」
「あの少年にもリボンとの戦いを見せてやら無くてはならない。俺はそう思っている。それも全員で出迎えてやら無くてはな。全力の俺達を落とさなくて、英雄を名乗るなんて許さない。」
ベルナードとセイルもうなずくと、エーリッヒはこぼれてきた涙をぬぐい手を前に差し出す。
「今回ばかりは戦列を離れるものが出てもおかしくは無い。だが目標はリボンだ・・・命を預けてくれ、俺に。」
「了解!」
全員がエーリッヒの上に手を重ね、そのまま力を入れてから解散する。すべてはISAFのメビウス隊に一矢報い、完全に決着をつけるため。
あの時果敢に立ち向かってきた部隊と最後の決戦を挑む・・・誰も緊張などしている様子は無く、どこか嬉しげでもあり「自分達なら負けない」という自身にも満ち溢れていた。

続く

あとがき
この回廊では凄く役立つと思ってMLM-2を。ですがあの形状にISAF軍がする必要も無いので鹵獲兵器を改造したという形に。結果見事故障してくれました。まぁこんな展開も必要だと思ったので。
では。最後はファーバンティ決戦です。ここは物凄く濃く書きたいと思ってます。おそらく市街地攻略と黄色中隊編の前編と後編の形になるかもしれません。では。


 2009/09/29:スフィルナ(あくてぃぶF-15)さんから頂きました。
秋元 「お、MLM-2ですね。リトル・ミサイルの設定が変わってますが、やはりあの形状(正面から見て凸型)だと、搭載できる機体が殆どないですね」
アリス 「……ある意味、フランカー専用ですから」

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