ACE COMBAT The Belkan war 円卓の騎士たちへのレクイエム | ||||
――片翼を赤く塗った戦闘機と、両翼を青く染めた敵戦闘機が立ち尽くす僕の頭上を掠め去った。 まるであざ笑うかのように、悠々とした姿で。 〜ミハエル・コールの手記より〜 ACE COMBAT The Belkan war 円卓の騎士たちへのレクイエム 第5章 フトゥーロ運河突破戦〜戦域攻勢作戦計画4101号・コスナー作戦〜 4/23 ディンズマルク郊外上空 「全機急上昇!行け!」 藍色のラインの入った白いグリペン4機が、大型のミサイル2本を搭載して急上昇していく。 オーシア軍の秘密兵器SOLGを破損させるために、インディゴ隊のグリペンがASM-135を搭載して上昇していく。 『マスター。騎士道に反する兵器を木っ端微塵にします。上昇ルートはこのままで。』 「わかった。上昇だ。20秒後にミサイルを発射する!」 オーシアが秘密兵器SOLGを開発し、宇宙からレールガンを叩き込んでベルカを焦土化させる作戦をすでにベルカ情報部は見抜いていたのだ。 グリューン隊に1人欠員が出たため、急遽インディゴ隊がこの任務を担当することになった。 「発射5秒前!3、2、1、発射!」 「発射!」 8本のミサイルが、虚空に吸い込まれるようにして消えていった。 「任務完了だ。あとは基地に戻って結果を待とう。」 「了解。」 ベルカ藍色の騎士団は、無数の槍を虚空にはなって撤退した。 このミサイルは見事にSOLGを破壊、機能停止させることに成功していた・・・ 4/24 ヴァレー空軍基地 円卓の蒼い鳥と片羽の妖精、この2人は一気にオーシアやサピン、ISAFからも一目置かれる存在となった。 ヴァレー空軍基地はたちまちのうちに連合軍がつどう前線基地へと変貌し、正式にエスパーダ隊もここに来た。 ウスティオ空軍は相変わらず傭兵だけだが、連合軍から「最大の戦力」とまで言われていた。 かなり質のいい傭兵を集められたのも、鉱山資源を使って荒稼ぎしていたからだ。 「・・・マスター。それとマールさん。気になる噂を聞きました。」 「何?」 「オーシアの攻撃衛星SOLGが、ベルカ空軍によって破壊されたと。」 少なからず、マールとフォルクは狼狽した。 衛星を破壊する技術までベルカが持っているなんて聴いたこともないし、考えられなかった。 「・・・本当か?ベルカ、そんな兵器をすでに実用化させていたのか・・・?」 「ええ。」 シルヴィアが答えると、マールも口を挟んだ。 「数年前にオーシアの偵察衛星が破壊されたとか会ったけど、ベルカはそれを標的にしてミサイルを・・・?」 「・・・奴らの考えそうなことだ。」 フォルクはそういうと、2人をつれてブリーフィングルームに入った。 作戦は3段階に分けられている。 先遣隊が制空権を確保し、第2部隊が地上物と巡洋艦ザイドリッツを旗艦とするベルカ第6艦隊を壊滅させる。 そこにCVケストレル、スフィルナを旗艦とした連合艦隊を突入させるのだ。 プロジェクターにはKestrel、Sphyrnaと2隻の艦名が連合艦隊輪形陣の中央に映し出されていた。 戦域攻勢作戦計画4101号と名づけられたこの作戦は、ISAF、オーシア、サピン、ウスティオ4カ国連合で行われる始めての作戦だ。 171号線に続く重要な補給ルートで、ここを確保すればウスティオへの補給ルートが完全に確保される。 CVスフィルナは今回ヴァレー空軍基地にレイピア中隊を下ろすつもりらしい。 「で、相棒・・・一番楽な任務を選んだわけか?」 不確定ながらベルカ空軍が攻めてくる可能性もあるため、ガルム隊はスフィルナ、ケストレル2隻の上空を護衛する任務を担当することになった。 エスパーダ隊も同行する上に、2隻の上空では大量の航空機が飛び交うはずだ。 「そういうこと。この2隻の航空隊の中に突っ込もうと思う奴もいないだろうし。」 「それもそうだな。」 「・・・にしても、新鋭空母を奮発するなんてオーシアもしゃれてるじゃない。」 ま、性能テストと実戦経験をつませたいのもあるだろうがベルカ空軍にもエースが多い。 わざわざそんな危なっかしいところに派遣するとは、ベルカを甘く見ているのかそれとも敬意の表れか。 どっちでもいいと考え、マールは格納庫へ向かった。 「・・・主よ。ご加護を・・・不吉な予感がしますが、それが気のせいであって欲しいものです・・・」 シルヴィアが祈りをささげているのが、マールにははっきりと見えた。 「不吉な予感?」 「なんとなくです、マスター、マールさん。」 連合艦隊上空 「こちらホークアイ。現在敵航空隊は発見できず。ウスティオとサピンが合流しました。」 上空ではE-2Cホークアイが上空警戒に当たっている。 そこに4機の航空機が到着した。 「スフィルナ艦長ミュラーだ。それだけか?」 「ええ。こちらガルム1。円卓の蒼い鳥です。」 「噂は聞いている。活躍に期待しよう。」 そっけなく艦長は答えたが、まだ敵機は来ない。 「こちらケストレル艦長ウィーカーだ。支援に感謝する。円卓の蒼い鳥とサピンのエースを送ってくれるとは・・・気前がいいな。」 「了解。奮戦します。」 護衛しているのはオーシア駆逐艦改スプルアンス級と巡洋艦ヴァージニア級。 ISAF海軍の改シェフィールド級駆逐艦と改シー・レイス級巡洋艦だ。 サピン海軍のイージス艦アルバロ・デ・バザン級まで混ざっている。 「機影発見!数・・・およそ60機!いや、それ以上だ!」 「スクランブル急げ!」 CVスフィルナとケストレルから無数の艦上戦闘機が発進してきた。 イーグルアイがそれだけの数の機影を見て報告したのだ。 「敵編隊多数!カウントしきれない!」 「艦隊は強行突破させる。落伍した艦にかまうな!」 「ミサイル発射準備完了。いつでもいけます。」 艦隊は速度を上げて運河を突破しようと試みる。 敵編隊は恐ろしく早いスピードでこちらに向かってきた。 「ガルム1、エンゲージ!」 真正面の敵編隊にマールはAAM-4を発射した。 ヘッドオンでF-117を撃破、敵編隊の1機に狙いをつける。 「最初からレーゲンがやられやがった!」 「例の円卓の蒼い鳥とやらだ。潰せ!」 「ハルプーネ、エンゲージ!」 F-15EがマールのF-15Cに向かってきた。 ヘッドオンに自信があるのだろうが、マールもその技術では負けていない。 距離800でアラートが響いたが、互いにバルカンも発射しない。 「・・・今!」 距離400でマールがAAM-5を発射、同時に敵機もAAMを発射して回避した。 あとは反転速度だけの問題。コーナー速度でマールはF-15Cを旋回させる。 「・・・もらった!」 重武装のためF-15Eは挙動がF-15Cより鈍い。 機首を向けられる前にバルカンを乱射、撃墜した。 「蒼い鳥とか・・・ナイスキル。」 「・・・誰?」 「ISAF空軍のメビウスだ。あんたに落とされた。」 右を見ると、水色で尾翼にメビウスの輪のエンブレムをつけたF/A-22Aがいた。 「リボンつきね・・・ま、積もる話は後で!」 「了解。敵機撃墜に専念する!」 「相変わらず荒っぽい奴だ。あんな機動、常人でできるか?」 レイシスは、機体にかなり負担をかけているマールの飛び方を見ていた。 イーグルシリーズではできないといわれたほどの機動までやっているようだ。 『JFS機・・・だ。』 「あれが噂の?蒼晶石に頼らずそれくらいの実力を軽く出せるとか・・・」 『機体を障壁無しでパイロットにつなぐ乱暴なやり方だ。危険極まりない・・・』 「確かに危険すぎるな。残留思念までフィルターなしで通すのは辛いだろうさ。」 その途端、真下から突撃してくるF/A-18Cを感じ取った。 レイシスは機体をロールさえてかわし、真上を見る。 「シュテルツェ、そいつがリボンつきだ。落として見ろ!」 「了解。撃墜する!」 声の感じからして大体20歳くらいの女性だろう。 だが、レイシスは手を抜くつもりはまったくなかった。 「来い。全力でな!」 後にF/A-18Cが来て、AIM-9を発射してきた。 すかさずレイシスはTVCと尾翼を動かし、機首を80度くらい上に上げた。 『・・・マスターも無茶な機動だ・・・ラプターでコブラとは。』 「これをやってみたかっただけなんだけどな・・・!」 そのまま反転、バルカンを真上から発射したが相手も素早くかわした。 「フランカーは4機くらい撃墜したから、それくらいわかってる。」 「ま、それは俺も知ってるな。そういう機動だ。」 敵の反応は真上に感じている。 レイシスは機首を下げて急激にエアブレーキをかけた。 その途端に敵戦闘機は真正面へと吸い込まれるようにでてきた。 「・・・っ!」 「悪い、これで終わりだ。」 20mmバルカンが敵機に命中、F/A-18Cはエンジンから出火した。 すかさずパイロットは脱出し、難を逃れたようだ。 「ちきしょう・・・俺が相手だ、リボンつき!」 『フトゥーロの風、フレディ・スタルケ。先ほど戦ったパイロットの兄。ガーベル隊2番機。』 「ああそうかい。ついでだからあんたも落としてやる!」 まっすぐ向かってくるF-5Eに、レイシスは機首を向けた。 そして、ヘッドオンでAIM-9を発射して撃墜した。 「そんなのありかよ・・・っ!!」 断末魔の悲鳴を残し、F-5Eは落ちていった。 「・・・幻聴か?やけにあいつの断末魔がはっきりと聴こえたが。」 『いや。残留思念を感じてそれが流れただけ。私は何とか大丈夫。』 「・・・無理すんな。無理だと思ったら俺に回せ。」 レイシスは操縦桿を握りしめ、次の敵機へとむかった。 「SAM、発射!」 CVケストレルは無数の対空ミサイルとバルカンを発射して敵機をしのいでいる。 上層部からは実戦テストのつもりだろうが、そんな生易しい戦闘でもない。 すでに駆逐艦チャールズ・J・キンメル、巡洋艦サンド・アイランドが合えなく撃沈されている。 CICでは副長のアンダーセン中佐が指揮を執っている。 「戦況は?」 「ベルカ空軍の反抗熾烈。我が軍の損害は14機!」 「友軍全体ではどれくらいだ?」 「20機です。けど・・・」 「けど、何だ?」 アンダーセンがレーダーを見ると、サピン機やウスティオ機、そしてISAFのラプターが敵機を次々と撃墜している。 「我が軍が優勢。サピン、ウスティオおよびISAF機が次々と敵機を撃墜しています。」 「そのようだ。凄腕のエースのようだな。識別番号は・・・」 アンダーセン副長は、艦長に戦況報告をした。 「ガルム隊、エスパーダ隊とレイピア隊が戦況をひっぱっています。状況は我が軍優勢です!」 「艦船でえらそうにしてる奴には、わかんないかなぁ・・・」 マルセラは無線を聞いてそんなことをぼやいていた。 すると、高速で接近してくる機影を確認した。 「・・・あれ、噂の・・・!?」 操縦席に風防と呼べるものが無く、機影こそF-15Cに似ているがそれ以上の旋回性能だ。 間違いなくFX-10B。ベルカ空軍の空軍増産計画LMF(Luftwaffe Massenproduktion Flugzeug。独逸語です。)の一環として設計され、大量生産された戦闘機だ。 ちなみに、FX-10Aは円卓に重点的に配備された蒼晶石搭載タイプだ。 「オモシロそうじゃない。」 マルセラはラファールを例の無人戦闘機に向かわせた。 そして、マジックAAMを発射したがありえないほどの高速旋回でかわされた。 「なるほどね。」 今度はFX-10が後ろに回りこんだが、マルセラは急激にエアブレーキをかけ機首をさげた。 敵機は旋回して離れると、マルセラは加速させてFX-10を真正面に捕らえる。 ちょうど相手も急旋回し、ヘッドオンの状態になる。 「今度こそ・・・エスパーダ2、フォックス・ツー!」 同じタイミングでFX-10もAIM-9を発射、マルセラは限界で交わしたがFX-10にマジックAAMが命中した。 「無人機を撃墜!」 どうやら、こいつが最後の敵機だったらしい。 レーダーにはもう、ベルカ空軍機の姿はどこにも映っていなかった。 「こちらケストレル艦長ウィーカーだ。航空部隊の諸君・・・クルー全員にかわって例を言おう。ありがとう!」 「おわった・・・!」 マルセラがそんなことを言うと、誰かが歓声を上げ始めた。 無線からは音の外れた歓声ばかりが聴こえてくる。 「O'er azure skies And emerald plains Where freedom and justice prevail・・・」 ISAF空軍は国家まで全員で合唱しているようだ。 「こちらイーグルアイ。フトゥーロ運河を確保した!作戦終了、帰還せよ!」 「嬉しそうなイーグルアイの声訊くの、何年ぶりだっけ?」 マールもそんなことを言うと、ガルム隊、エスパーダ隊はレイピア隊を後につけてヴァレー空軍基地へと帰還していった。 翌日 ベルカ領内ヴェルデブルグ基地 「フトゥーロが落とされた!」 フトゥーロ運河が落とされたことは、すでにこの最前線の基地では有名になっていた。 「じゃあ、第6艦隊は壊滅か?」 「残りの第1艦隊、第3艦隊でどうしろってんだ!?」 兵士たちが様々な憶測を言ったりしている。 が・・・その中に入ろうとしない人もまたいた。 「・・・この戦争についてどう思っている?」 「どう・・・ですか?」 「ああ。」 紺色の髪の毛の少女が、デミトリ・ハインリッヒの隣に居た。 「大国の横暴に反抗するための戦い、そう思っています。」 「なるほどな。私は戦いに正しさは求めていない。」 「・・・?」 少女は、彼の言葉に首をかしげた。 「騎士道を厳守し、勝てば正しい理由など後からついてくる。オーシアの空軍力を壊滅させ、陸上部隊を撃退すれば講和する。まぁ、そのような戦い方を誰もがすれば・・・の話だ。」 「ですか。ですけど・・・戦うのに理由は必要です。マスター、あなたは何のために?」 「しいて言うなら騎士としてのプライドだ。ベルカという国家に仕える騎士としての。だが・・・ベルカ自体が歪めば、私は名誉を守るためにベルカを離れたい。」 「・・・?どういうことですか?」 ミストは首をかしげて、デミトリにたずねる。 「核を使って民間人を殺傷するような軍ならば、私は離れようと思う。私の名誉のためにも。」 「ですか・・・」 「騎士道とは自分の信念を貫くことだ。甘さでも妄信でもない・・・違うかな?」 「・・・マスターの意味であっていると思います。私もベルカ騎士団の槍としての任務を果たします。」 生真面目な顔でミストはデミトリに答えた。 「槍ではない。相棒ではないのか?槍には意思はない。だが、君には意思がある。」 「・・・その言葉、ありがたく思います。」 騎士道を貫く・・・デミトリはこの戦いでそう決めていた。 続く あとがき 円卓を過ぎてフトゥーロへ。 デミトリ・ハインリッヒはACE5編でも登場決定。重要な役目です。 後々で歪んでいくベルカを見て、どう思うかも書かなければ。 FX-11はエルジア、ユークトバニアの両国がベルカから持ち帰った資料を基に製作したと言う設定ですのでまだ出ません。 デルフィナスMk1(R-101原型機)あたりでもそろそろ出そうかな。 次回はベルカ藍色の騎士団、インディゴ隊との激戦です。 |
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2006/05/25:あくてぃぶF-15さんから頂きました。
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