ACE COMBAT The Belkan war 円卓の騎士たちへのレクイエム





――だが、騎士道は甘さではない。それは命取りになる。
彼女が生きて終戦を迎えたとしたら、そのルールを全うしたのだろう。

〜2005 10/10 「Indigo heron」デミトリ・ハインリッヒのインタビューより〜




ACE COMBAT The Belkan war 円卓の騎士たちへのレクイエム
第6章 蒼天に舞う希望〜ヴァーシティ作戦〜


ヴァレー空軍基地 5/12

「連合軍優位、東部諸国はISAFが占領しオーシア、サピンの機甲部隊は進撃中、か・・・」
フォルクは新聞の一面を見て、何気なくつぶやいた。
不必要に戦線拡大し続けたベルカが、急激に戦力を縮小させていったのだ。
空軍の散発的な抵抗こそあるが、もう陸軍は壊滅状態らしい。
ウスティオ国内からは、少数の守備隊を残し次々に撤退している。
そして、ウスティオ空軍部隊に下された命令は「ソーリス・オルトゥス地方を解放しディレクタス開放への拠点を作れ」とのことだ。
オーシア、サピンが空挺部隊と護衛機を用意すると言ってきた。
「今回の任務、やけに気前がいいじゃない。」
「ああ。」
マールが、フォルクにそんな事を言ったのも無理はない。
オーシア空軍のソーサラー隊といえば、世界のどの航空隊にも負けないと言われたエースが集う部隊だ。
黒い噂が付きまとって離れないウィザード隊と違い、こちらは国内、国外問わずかなり人気がある。
「さ、出撃しない?今回はガルム隊とソーサラー隊だけだから。」
「ああ。行くか。」
エスパーダ隊、レイピア隊はまた別の任務で今はヴァレー空軍基地を離れている。
ディレクタス近辺の飛行場を破壊し、敵航空隊を近づけないようにさせているらしい。
「出撃、ですか?」
「ああ。行こうか・・・」
フォルクはF-15Cに乗り込み、風防を閉めた。
「・・・主よ、友軍とガルム隊に祝福を・・・」



作戦空域 ソーリス・オルトゥス地方上空

「お前らは何だ!?飛ぶことができなければ意味のない奴等だ!ぐずぐずして居ると置いていくぞ!」
早速、無線で空挺部隊隊長の声が聴こえてきた。
サピン空軍機のC-212とオーシア空軍のC-17が編隊を組んで飛行している。
それを護衛しているのがサピン空軍のF-16Cとオーシア空軍のソーサラー隊だ。
F-15S/MTD8機で編成され、オーシア初のMLS部隊でもある。
「こちらソーサラー1.噂のガルム隊のお出ましか。」
「ええ。こちらガルム1.TACネームはサイファー。」
「よろしく頼む。」
連合軍も空挺部隊だけは失いたくないようだ。
自分の部隊は結局かわいいのか・・・まぁ、そんなところかもしれない。
だが、それだけこの空域が危険なことも事実のようだ。
「中身を空にするまで帰還できない。頼むぞ、空軍の諸君。」
「了解!」
サピン空軍の輸送機から通信が入ると、イーグルアイも通信してきた。
「降下予定地点にある対空火器を殲滅せよ、以上!」
「ソーサラー1よりソーサラー4へ。惜しげなくスタンドオフディスペンサーと気化爆弾を投下しろ。民間施設にはなるべく当てるな。」
「了解。」
ソーサラー隊は2手に別れ、4機は輸送機の護衛に張り付き残りの4機がスタンドオフディスペンサーを投下する。
サピン空軍機も輸送機の護衛に当たっている。
「相棒、俺達は上空の敵をたたくからな。」
「がんばって。私はそれまで対空火器を潰すから。」
マールは低空まで下がると、対空戦車に向けて20mmバルカンを発射した。
次々に命中、敵車両は炎上していく。
「よし、抵抗が止んだぞ!行け、行けーー!!」
「怖いものなんて俺達にあるか!行くぞ!」
空挺戦車や物資をつんだパラシュートが落とされ、次々に兵士たちも降下していく。
「ソーサラー5、右にSAMだ!」
「わかってる!今潰してやる!」
1機のF-15S/MTDが気化爆弾を投下、SAMを使用不能にさせた。
「勇気だけがとりえの奴等だ。俺達がカバーしなきゃな!」
「そういうこと!」
次の地区ではC-212の護衛についているF-16CがマーベリックAGMを発射して支援していた。
マールとフォルクのF-15Cはそこへ突入し、機銃で対空戦車を貫いていった。
「護衛機に感謝!」
「第9旅団はエスパーダだけじゃねぇ、俺達だってやってやる!」
「進め進め!後ろなど振り返るな!」
空挺部隊は次々に進撃していく。
「さすがサピンとオーシアの空挺部隊だ。」
『主よ、勇気ある彼らに加護を・・・』
フォルク機が輸送機の護衛に回っていると、ようやく敵の戦闘機がたどり着いた。
が、ここの戦闘機も旧式でミラージュF1が4機のようだ。
「ガルム2よりB部隊。俺が何とかするから降下させてくれ!」
「了解!早く荷物降ろして基地で飲もうか!」
フォルクのF-15Cが敵機に向かっていくと、マールも対地攻撃をF-15S/MTDに任せ急上昇した。
「荷物で悪かったな、機長!じゃ、空は任せておくか!蒼い鳥と片羽!」
こういう気のいい連中を死なせたくない、そういうのは誰もが同じようだ。
「ソーサラー2と3は輸送機を援護しろ。ソーサラー4は俺に続け!」
ソーサラー隊は輸送機に突撃してくるMig-19を捕捉、攻撃を開始した。
「フォックス・ツー!」
同時に2機はAAMを発射、ミラージュF1をヘッドオンで撃破した。
打ちもらした相手を捕捉するために反転したが、ミラージュF1は銃弾の射線から回避した。
それを先読みし、マールは短い旋回半径で周ると機銃をミラージュF1に発射した。
「撃墜!」
ミラージュF1は四散、粉々になって落ちていく。
「よし、降下地点到達!行け行け行けーーー!!」
B部隊のC-17から大量の兵員が降下、制圧していく。
「空軍の支援はどうした!?」
「レーダーに映った!くるぞ!」
ベルカ空軍の増援が出現、しかもかなり多い上にC-130輸送機まで伴っている。
これで逆に物資を降下させて形勢逆転を狙うつもりだろう。
「警告!高速で接近する機影を捕捉!」
イーグルアイの言うとおり、中央の戦闘機4機が高速で接近してくる。
『・・・マスター、MLS機です。相手は・・・』
「なるほど・・・ガルム1、そいつが本隊だ。たたくぞ!」
「了解。」
マールはフォルクの機体に自分のF-15Cを近づけた。
「インディゴ1より各機へ。目標を確認。攻撃を開始する!」
「了解!行くぞ!」
インディゴ隊は散開する前にミーティアAAMを発射した。
マールは敵の進路を予測して急上昇、ミーティアAAMを交わしたことを確認してから反転した。
「こちらソーサラー1!4機で支援する!」
「輸送機は!?」
「他のメンバーで護衛させた!大丈夫だ!」
ベルカ藍色の騎士団インディゴ隊、それにひかれてきたようだ。



「1対1じゃないか。やはり、そうなるだろうな。」
『・・・やりますか?』
「当然だ。オーシアの魔術師には退場願おう。」
デミトリは薄っすらと笑みを浮かべるとF-15S/MTDを真正面に捕らえた。
回避機動を見せようとしていたが、その前にAIM-9を喰らって落ちていく。
「食らった!ダメだ、火だ!脱出する!」
ソーサラー隊のパイロットがベイルアウト、残る敵機は5機。
次の敵機を補足したが、敵機も素早く回避してなかなか隙を見せてくれない。
「少しはやるようだ・・・」
『マスター、6時に敵機。』
「わかった。インディゴ2、カバーできるか?」
「了解、排除します!」
デミトリの後にもF-15S/MTDがぴったりとくっついてきた。
が、後を見ると2番機の後に例の蒼い鳥が攻撃の隙をうかがっている。
「インディゴ2、真上に円卓の鳥だ!」
「な・・・しまった、喰らった!」
どうやら、気づくのが一瞬遅かったようだ。
無線から激しいほどの金属音が聞こえ、インディゴ2の機体からは煙を吹いている。
そして、目の前を素早くF-15Cが通過していった。
「インディゴ2、離脱しろ!」
「了解!」
「やるじゃないか、円卓の蒼い鳥・・・!」
無線で会話を交わしつつも、常にデミトリは眼前の敵機に集中している。
一瞬の隙を見せたF-15S/MTDにデミトリは27mm機銃を発射した。
甲高い金属音と共に敵のカナードと水平尾翼が吹き飛んだ。
「僚機がやられた!べ・・・ベイルアウトしろ!」
「風防が飛ばない!ダメだ!相棒、脱出しろ!」
「了解!」
後部座席のパイロットだけが脱出、機体は爆発した。
「傭兵や大国主義者とでは、戦う意義が違う。生き残るのは、真意を遂げようとする者だ!」



「ベルカ藍色の騎士団・・・私もかなり手を焼いた相手なの。」
「やばいな・・・」
とりあえず1機は撃墜したがソーサラー隊も2機がやられ1機がカナードをへし折られて離脱した。
相当な残留思念が流れ込んできたが、それにどうこう言っている暇も無い。
「ソーサラー1.残ったのは3機だけか?」
「ええ・・・こうなったら、全員で隊長機を!」
マールが1機のグリペンとすれ違ったが、おそらくあれが隊長だろう。
反転して追撃すると、いきなり目の前にグリペンが迫ってきた。
「・・・っ!こんなところに!?」
スピードをつけて回避したと思ったら、いつの間にかエアブレーキをかけて真正面に出させていたのだ。
「悪いな・・・蒼い鳥、これをうけとって貰おう!」
真正面に出たところで敵機がAIM-9を発射してきた。
すかさずマールは機体を急加速させ、急降下してミサイルを振り切ろうとした。
それから急激に反転、真正面にグリペンを捕捉する。
「・・・ガントレットで受けた屈辱は晴らすから!」
「来い、ウスティオの騎士!」
バルカンを乱射しながらすれ違ったが、たいしたダメージも無い。
すかさずエアブレーキをかけ旋回させると、真上からグリペンが突撃してきた。
「悪いけど、それは2年前から慣れてる!」
すかさず機体を傾け、意義に旋回する。
グリペンが下に降下したところを見計らい、AAM-5を発射した。
「・・・振り切ってやる!」
敵機はそのまま加速すると、急激にピッチを上げて反転、こちらに向かってきた。
互いにヘッドオンでミサイルを発射、それをロールで回避する。
「これで・・・!」
真正面にグリペンを捕捉、F-15Cが20mmバルカンを発射する。
同時に敵機も27mm機銃を発射、金属音があちこちから聞こえてきた。
「くっ・・・さすがだな、蒼い鳥・・・!」
旋回してグリペンの様子を見ると、カナードに穴があき操縦席の後ろにある電子機器にダメージを受けたようだ。
あの様子では、パイロットも重傷だろう。
だが・・・JAS-39Cは平然と飛行を続けて帰還していく。
こちらもあちこちに穴があいているが、何とかなりそうだ。
「隊長!?」
『マスターはやられてる。だから撤退する。』
「ちっ・・・」
良く見ると、輸送機護衛についていたはずのソーサラー隊が離脱するグリペンに攻撃を仕掛けようとしている。
「やむをえない、撤退だ!隊長を守れ!」
JAS-39C2機は隊長を護衛するため戦線離脱、ソーサラー隊と交戦を始めた。
「空挺部隊より入電。制圧を完了したとのことだ。後は降りた奴らの仕事だ。ガルム隊、作戦完了。帰投せよ。」
「ふぅ・・・了解。相棒、帰還しよう?」
「ああ。」
2機のF-15Cは翼を並べてヴァレー空軍基地へと帰還していく。
「・・・気のいい連中を守れてほっとしてるのか?」
「まぁね。死なせたくないから。ディレクタス開放もかなり近づいたし。」
この山脈に守られた陣地を強化すれば、ディレクタスまで一気に突撃できる。
その作戦の日を楽しみにしながら、マールは相棒を連れて帰還していった。




2時間後 軍用病院

「・・・おい、しっかりしろってんだ!おい!」
「マスター・・・」
デミトリは銃弾を喰らって昏睡状態に陥っていた。
とりあえず一命は取り留めたが、いつ目覚めるともわからない。
ベッドの上で、人工呼吸器をつけて倒れている。
「死んでいないはず・・・ですよね?ベルンハルト様・・・」
「様つけるのはよせっての。普通に呼び捨てでかまわない。」
「はい・・・ベルンハルトさん。」
「それより・・・本当に大丈夫か・・・?」
かなりの重傷で、生死の境をさまよっているとのことだ。
「じゃ、俺はいろいろあるんでね・・・目覚めることを祈ってる。」
ベルンヘルトが部屋から出て行くと、ミストはただ1人で病室に座っていた。
「・・マスター・・・私が居ます・・・故に、生きていてください・・・」
デミトリの手を握り、ミストは祈り続けた。


続く

あとがき

デミトリ・ハインリッヒ様は戦後まで目覚めません。(ぇ
・・・敵エースも出番少ないなぁ。MLの出番も少ないし・・・
次回はディレクタス開放です。
そして出てくるのはあのエスケープ・キラー。
もう少しヴァレー空軍基地のシーンを多くしなければ・・・
では。





 2006/06/04:あくてぃぶF-15さんから頂きました。
秋元 「エスケープ・キラーと聞くと88のあれが浮かびます(ぉ AC-ZEROは未プレイなので、まだまだ先が読めません(笑」
アリス 「……早く購入しましょう」

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