ACE COMBAT The Belkan war 円卓の騎士たちへのレクイエム




――あの日のミサイルアラートが、まだ耳に残っている。
沈黙した対空火器の向こうに、彼女の機影があった。

〜2005 9/23 「Cormorant」ライナー・アルトマンのインタビューより〜


ACE COMBAT The Belkan war 円卓の騎士たちへのレクイエム
第8章 ハードリアン線攻略〜ヘルバウンド作戦〜


5/17 ハードリアンライン手前150km空域

「やっぱり、マールの言ったとおりかよ・・・」
「冗談じゃないな・・・」
ウスティオ空軍の空中給油機、KC-135に給油を受けながらレイシスとフォルクは話していた。
ガルム、エスパーダ、レイピアと自由ウスティオ空軍、連合空軍に課せられた任務は「ハードリアンラインを沈黙させろ」と言うものだ。
ベルカはあちこちに強固な防衛ラインを敷いてオーシア陸軍を各地で足止めしているという。
ここを落としてベルカ軍の士気低下を狙い、一気に大攻勢を仕掛けるつもりだろう。
『何故こんなことに・・・?ベルカの解体が目的ではないはず・・・』
『ベルカが多弾頭核爆弾を作ったから・・・だ。シルヴィア。』
精神リンクで2人は話しているようだが、レイシスとフォルクには十分聴こえている。
「けどよ・・・ベルカって何考えてるんだ?本当に。こんなときにそんな口実を与えるようなこと・・・」
「破滅思考の塊だ。オーシアを核で焼き払いたいんだろう。」
なるほどな、とレイシスは相槌をうつと空中給油を開始した。
ブームが操縦席後の給油口に差し込まれ、高圧で一気に燃料を補充していく。
「・・・オーシアの奴ら、足手まといだろ?呼ばないほうがいいんじゃないのか?」
『さすがに、それではオーシアも何もいえなくなります。』
「そうだな、シルヴィア・・・で、全体の指揮はどうするんだ?オーシアの未熟者に指示受けるなんて嫌だからな。」
「聴こえているぞ、ガルム2。こちらセイバー1.報酬を貰っているんだから文句は言うな。」
すると、マールが横から口を挟んできた。
「ベルカのエース1機も落とせない航空隊は黙ってて。こちらガルム1.第6師団および自由ウスティオ空軍の指揮を担当します。まぁ、それは名目だけで各個の隊長の判断にゆだねるけど。後方に弾薬はたくさんあるから、爆弾は惜しげなく投下して。以上。」
今回のような大規模な作戦では、AWCAS以外にも戦場の指揮をゆだねる存在が必要だ。
ウスティオ空軍はサピン、ISAFと合意の上で連合軍の指揮をガルム1にゆだねることに決定した。
「セイバー1よりガルム1!連合軍の指揮権は我らにゆだねられている!勝手なことは・・・」
「あんたなんか黙ってたら?ベルカのエースにすぐ落とされる奴なんか。こういうのは、一番腕前のいいパイロットに任せるのが筋ってもの。文句言うなら私達が相手するよ?もっとも・・・私はガルム1ほどじゃないけど、10秒で落とせるから。」
マールはウスティオ上層部の意思をようやく理解すると、微笑した。
こんな実戦経験の無い奴の巻き添えなんて、誰もが嫌に決まってるはずだ。
「ってわけだ。こちらエスパーダ1.俺は彼女に付くことにする。怖くてかなわないからな。」
「こちらレイピア2。ISAF空軍レイピア中隊の隊長だ。腕前の信頼できる人物に指揮を執ってもらったほうがやりやすい。ま、ガントレットの端役はお呼びじゃないと言うことだ。黙って後から見ていろ。」
ガルム隊を先頭に、各航空隊はハードリアンラインに突入していく。
セイバー隊が遅れて向かってきたが、後方で戦線の監視をするようだ。
ハードリアンラインの城郭が、目の前にはっきりと見えてきた。
「ガルム1、エンゲージ。全機攻撃開始。1つのエリアの対空火器を殲滅してから次のエリアに向かって。」
各航空隊から了解の合図が届き、それぞれバラバラに散開していった。
まずはエリアゲートと呼ばれる空域に突入していく。


「・・・やりすぎじゃないか?おい・・・」
エスパーダ1の通信の通り、エリアゲートは戦闘開始わずか10分で壊滅状態に陥った。
爆弾やスタンドオフディスペンサー、さらには空対艦ミサイルまでぶちこまれて大爆発してしまったのだ。
「私達はエリアキャッスルに向かうから!」
「了解。レイピア隊はエリアキャッスルへと進路を変更せよ!」
「こちら自由ウスティオ空軍第2師団第47航空隊。あんたたちについていく!」
レイピア隊の後に、F-16XLの6機編成がついてきた。
エスパーダ隊は大半の自由ウスティオ空軍と連合空軍をつれて北東に向かった。
「よし、全機攻撃開始!」
「・・・サイファーとピクシーの腕前にあわせられてます、隊長・・・」
「弱音を吐くな!レイピア隊ならできないことはあるまい!」
対空機銃が一斉に攻撃を開始した。
先行したレイピア隊が、AGM-88をSAM射程外から発射した。
次々にSAMが爆発し、ある程度危険が無くなった。
その間にガルム隊は急上昇し、司令部上空から急降下をかけた。
「・・・投下!」
「わかった、投下!」
大型爆弾が、吸い込まれるように司令塔に直撃した。
構造物は大破炎上、対空火器も大半が殲滅された。
「あとは・・・」
密集している対空火器にマールは大型爆弾を投下、沈黙させる。
ピクシーも大型爆弾を投下、発射する前のSAMを破壊した。



「次はどこ?ぶっ飛ばしてあげる。」
ARFAGMを搭載したラファールで、マルセラは次々にSAMを破壊していた。
エリアタワーでは大量の高射砲が熱烈な歓迎をしていた。
おかげでだいぶ航空隊が落とされてしまったが、マルセラはARFAGMで高射砲やSAMを狙い、次々に破壊して言った。
「エスパーダ2、敵機!」
「私はなんでもできるわけ無いの!まったく・・・!」
良く見ると、SF-37ビゲンに友軍機が追い散らされている。
かなり重いはずだがARFAGMを大量に積み込んだラファールよりは軽快だろう。
対地攻撃兵装の多い友軍機では苦戦するのもしかたない。
「サピンのエスパーダだ。屠ってやる。」
「了解。そっちは任せる。」
SF-37は一直線にラファールに向かってくる。
「・・・こいつを撃たなきゃ・・・」
マルセラはエリアタワーの司令部にARFAGMを打ち込むと、それからSF-37に向かっていった。
ヘッドオンで機銃を乱射したが、当たらないですれ違う。
すばやく機体を旋回させて狙いをつけ、マジックAAMを発射した。
「フォックス・ツー!」
交わすまもなくSF-37は炎上、墜落していった。
「僚機がやられた!」
「エスパーダ1よりエスパーダ2、支援するか?」
「いらない。対地攻撃を何とかして。」
「・・・了解。」
どちらが隊長かわからないとよく言われるが、実際マルセラがエスパーダ1に指示を出している。
まぁ、エスパーダ1もそれでいいと思っているようだが。
「エリアタワーが危険だ!救援は!?」
「向かってるが・・・エリアガーデンだ!死守してくれ!」
「何!?」
エリアガーデンに、敵の増援が向かったと言うのだ。
マルセラはまずエリアタワーを全力で沈黙させることにした。




「シーハリアーFA2の大軍ってのも、ぞっとしない話ね。」
「ああ。」
マールとフォルクはエリアガーデン上空の空戦に向かっていた。
補給に戻った間に、僚機は新鋭機シーハリアーFA2と防空火器で苦戦しているようだ。
エリアガーデンに向かう途中、イーグルアイから通信が入った。
「警告、高速で接近する戦闘機2機を確認!」
「ハードリアンラインのエースみたいね・・・相手しなきゃ。」
マールが操縦桿を握りしめ、敵機を確認する。
「ゲルブ1よりゲルブ2。あの蒼い鳥だ。気を抜くな。」
「了解。こちらも2機、好都合だ。」
敵機はSu-37フランカーE。無茶苦茶なほど機動性能のいい戦闘機だ。
格闘戦ならば、間違いなく世界最強だろう。
その途端、Su-37はまっすぐこちらに向かってきた。
「・・・行くよ!」
互いにバルカンを撃ってヘッドオン、すれ違ったがミサイルが飛んできた。
「え・・・!?」
「相棒、そいつのアーチャーAAMは後ろ向きにセットされてる!」
「・・・なるほどね。イーグルでもできそうな芸当じゃない。」
アーチャーAAMを交わしながら、マールは隊長機に狙いをつける。
「隊長、後ろ!俺がカバーします!」
「悪いけどな、相棒には向かわせない。」
ピクシーがもう1機をひきつけている間に、マールは目の前の敵戦闘機をなんとしても始末したかった。
が、Su-37はかなり手ごわい上に敵の技量はもう神業と言っていいレベルまで達している。
JFS機だからこそついていけるような感じで、通常の戦闘機なら多分負けているかもしれない。
幸いにもMLSは覚醒すらさせていないが・・・
「・・・っ!?やばい、相棒!尾翼が吹き飛ばされた!」
「無理しないで離脱して!」
「・・・悪い!」
ピクシーの垂直尾翼が吹き飛ばされ、そのまま離脱していくのが見えた。
そこにSu-37の1機が向かっていく。
「悪いけど、逃すわけには行かないな!」
「・・・相棒はやらせない!」
ピクシーのF-15Cに向かっていく敵機を見て、マールはそれを追撃する。
「フォックス・スリー!」
間に合わせるのはコレしかないと直感し、AAM-4を発射した。
Su-37は素早くターンしてかわしたが、そこにAAM-5を発射する。
急上昇してSu-37はAAM-4を交わそうとしたが、AAM-5が直撃する方が先だった。
「・・・くっ!」
「隊長!?落とされた・・・!?」
「俺はベイルアウトした!後は頼む!」
パイロットがベイルアウト。あとは敵機を撃滅するだけ。
後に回り込むと、アーチャーAAMを発射したが難なくマールはそれをかわす。
逆にAAM-5を発射したが、あっさりとよけられてしまう。
問題はその後だ。
進路を先読みし、マールは20mmバルカンを乱射した。
少ない残弾を全部使い切るつもりで、トリガーをひいた。
「・・・やられたか!脱出する!」
敵機は黒煙を引きながら地面へと落ちていく。
直前でベイルアウト、何とか助かったようだ。
「こちらガルム1。ゲルブ隊を撃墜。これより支援に入る。」
「メビウスよりガルム1へ。もう大丈夫だ。ハードリアンラインは沈黙した。」
ハードリアンラインはエリアガーデンの沈黙を最後に抵抗がなくなったのだ。
「ハードリアンラインは完全に沈黙した。全機帰還せよ。ご苦労だった!」
「了解。」
すると、ちかくにラファールとラプターがよってきた。
「・・・あんたの相棒は?」
「ゲルブ隊にやられて先に戻ったみたい。強かった・・・」
その途端、一瞬だけ空が光ったように見えた。
「・・・遠雷かな?」
「かもな・・・」
その光が、後で重大な意味を持つとは誰も知らなかった。





ヴァレー空軍基地 5/18 0600時

「・・・え?」
昨日進撃したはずのオーシア、サピン連合陸軍の真っ只中にシルヴィアがいた。
夢を見ているのだが・・・
途端、いきなりのように空が光り空から巨大なレーザーが照射された!
「な、何!?」
「う・・・うわあぁぁ!逃げろぉ!!」
かなりひどい状況だ。
一瞬で装甲車が蒸発し、兵士たちが飲み込まれていく。
「何だこいつは!?」
「ありかよ・・・!!誰か助けてくれ!誰か・・・」
シルヴィアは呆然としてしまっていた。
泣きたいのに泣けず、ただ恐怖に震えることしかできない。
目の前の悲鳴から目をそらそうと、目を閉ざした。

目を開けると、もう陸軍の部隊は大半が蒸発してしまっていた。
残るのは焦土と化した地面のみ。黒焦げになった兵士もまた倒れている。
その途端、機体半分を損傷したF-15C2機が墜落してきた。
――まさか・・・?
カラーリングからすぐに誰の機体かわかった。
機体後部が吹き飛んだF-15C、その中で機銃で打ち抜かれ息絶えたマールとフォルク。
空を見ると、エスパーダやレイピアが次々にあのレーザーにやられていく。
――そ、そんな・・・嫌・・・いや・・・


そこで、シルヴィアは目を覚ました。
「・・・大丈夫か・・・?まだ6時だが、何が・・・?」
フォルクとマールが近くに居て、起こしてくれたようだ。
「夢・・・見ました。巨大なレーザーに機甲部隊が飲み込まれた夢を・・・今朝・・・出撃した・・・」
「出撃した機甲部隊・・・!?昨日の消失した1個連隊か!?」
1個連隊が正体不明の攻撃により壊滅したという噂は、ヴァレー空軍基地ではもう知らない人は居なかった。
ということは、その残留思念を感じ取ったのだろうか・・・?
「・・・俺は生きてる。だから・・大丈夫だ。死んで置いていくマネはしない、絶対な・・・」
「マスター・・・」
「私も死んでほしくないなぁ、相棒には。シルヴィア、私も居るから。」
マールに頭をなでられ、シルヴィアはフォルクと共に部屋を出て行った。


続く



あとがき
本来は死ぬはずだった(原作では死んでます)オルベルト・イェーガーを生かしたのは理由があります。
04編でそれは明らかになりますよ、ええ。絶対に。
黄色のフランカーEのパイロットなんですから。
さて、そろそろマールの機体も変えなきゃな・・・
次回は公式サイトにも出てくる巨大兵器、エスクスキャリバーが牙をむきます。
シルヴィアの夢は単なる杞憂か、あるいは正夢か・・・
では。





 2006/06/18:あくてぃぶF-15さんから頂きました。
秋元 「レーザー降ってキタ━━(・∀・)━━!!」
アリス 「……光の早さですから、気づいた時には時既に遅しですね」
「下手すると、気づく前に蒸発してるんじゃないカナ」

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