ACE COMBAT The Belkan war 円卓の騎士たちへのレクイエム | ||||||
――上から見れば、私達パイロットの補充なんてすぐできる。 でも・・・私達は生き延びた。巨人の刃が振りかざされた戦場から。 〜2005 11/14 「Bule bird」マール・レヴァンスへのインタビューにて〜 第9章 空中回廊〜フラッシュバック作戦〜 5/19 ヴァレー空軍基地 格納庫の中から、気持ちいいほどの大きな音が響いてくる。 マールは、何事かと思いマルセラに向かっていった。 「・・・どうしたの?」 出撃前に、マルセラは思いっきりエスパーダ1の顔をたたいてきたようだ。 「国境なき世界に入れといわれたけど、断ってきたの。全て吹き飛べばいいなんて私は思ってないから。」 「・・・そんな物騒なこと考えてるの!?とめなくて・・・」 「あいつは信念を貫く人だし、何言っても聞かないから・・・でも、私は躊躇なく撃ち落す。敵に回ったら・・・」 マールは、マルセラに引っかかってることをたずねた。 「・・・エスパーダ1とはどうなのさ?あいつ。」 「ダメね。ま、一応幼馴染なんだけど・・・整備兵が私とエスパーダ1が深い関係とか噂してるから、気になった?」 「そういうこと。」 2人は思わず笑ってしまった。 そして、ブリーフィングの時間になると2人でブリーフィングルームにはいった。 「南ベルカ中央部のシェーン平原には、ベルカの第二次対空防衛ラインが横たわっている。 2箇所の対空陣地を中心とした この防衛ラインは、我が軍補給部隊の空輸ルートを阻み、その計画自体に遅延を生じさせている。 今作戦は敵地上勢力に攻撃を加える部隊と敵航空勢力に攻撃を加える部隊に分かれ遂行される。以上。」 「了解!」 ハードリアンラインを確保し、ここを拠点にオーシア陸軍は進撃を開始した。 その第二の障壁となるのがこのシェーン平原だ。 大規模な飛行場と対空陣地が進軍ルートを妨害している。 今回はガルム隊、エスパーダ隊とレイピア隊にオーシア空軍が加わって行動するようだ。 ハードリアンラインのようにガルム隊が指示を出すわけではないが、とりあえずは部隊の指示は隊長に一任するらしい。 シェーン平原 1530時 「よう、相棒。良い眺めだ。ここから見ればどの国も大して変わらない。」 「そうね。ウスティオもベルカも、草原の色は同じみたい。」 目指すべきはシェーン航空基地。すると、迎撃戦闘機が上がってきた。 今までの旧式機ではなく、F-14DやF-15Cと言ったそれなりの性能を持つ戦闘機が向かってくる。 「ウスティオの傭兵に持っていかれるのは悔しいからな。交戦だけは先にしてやる!ランス5、エンゲージ!」 「どうかな?相棒、今日のエースは俺が貰う。」 『・・・了解。交戦します。』 フォルクとシルヴィアは、今日の調子がよさそうだ。 マールもそれに負けるつもりなど無かった。 次々にオーシア空軍が地上施設に襲い掛かり、機銃やSAMを沈黙させていく。 「こちらエスパーダ2.地上支援を開始するから。レイピアとガルムで制空をお願い!」 「了解・・・マール。あんたよりあいつの方が頼りになるんじゃないのか?」 レイシスからそんなことを言われたが、マールは気にしていない。 「ま、私は1機で居たことが多いからね。」 さっそく、マールはオーシア軍機の背後に居るF-15Cを狙った。 互いに同じ戦闘機だが、相手はこちらに気づいていない。 ループしてオーシア軍機を追撃しているところに、20mmバルカンを乱射した。 エンジン部分に着弾、煙を吹きながらF-15Cが落ちていく。 「機体に穴があいた!ベイルアウトする!」 敵パイロットの脱出を確認。マールは次の敵機を狙う。 「機甲部隊は防空壕に退避。対空戦車を全部出して撃ち落せ!」 ここの陸上部隊もなかなか手ごわいことをしてくれる。 対空火器を一箇所に集め、その周囲で戦闘機を戦わせているのだ。 しかも、航空部隊の少ない場所にオーシア軍機を誘って弾幕を浴びせると言うまねまでしている。 「アックス5が落ちた!」 オーシア軍のF-16Cが墜落し、対空火器に突っ込んでいくのが見えた。 そこにエスパーダ隊が高速で進入、スタンドオフディスペンサーを発射した。 密集していた防空火器がスタンドオフディスペンサーを撃墜するが、残ったのが爆弾を次々に投下、沈黙させていく。 「上がる前の友軍機がやられた!」 「迎撃部隊はどうしたんだ!?」 ようやく、敵航空部隊の増援が到着した。 「相棒、スコアは稼がせて貰う。」 「ま、お前たちは黙ってろ。今日のエースは俺が貰う。」 そういった途端、真正面の敵機にレイシスはAIM-120を発射した。 敵のF-14D3機編隊は一気に撃墜され、後のF-20Aの編隊が向かってくる。 トリガーに手をかけ、マールは敵機を見据えた。 距離200でトリガーを引いてバルカンを乱射、機首を上げ右に旋回する。 逃した敵機にAAM-5を発射、これも撃破する。 「撃墜確認!ガルム1が2機キル。」 「なかなか早いな。さすがは蒼い鳥だ。」 その間に、フォルクはF-14Dを追撃していた。 『マスター、地上に機銃。』 「わかってる。でも散発的な対空砲火だ。」 オーシア軍機がバラバラに行動し、一撃離脱を繰り返すと対空砲火も弱まってきた。 躊躇せずにフォルクはそれを追撃し、20mmバルカンで可変翼を引きちぎった。 「メイデイメイデイメイデイ!機体大破、脱出する!」 「ガルム2が敵機撃墜!」 ようやく地上の抵抗も弱まり、対空火器も沈黙した。 「こちらエスパーダ2.対空火器は沈黙。意外とやるじゃない、あんな弾幕のなかから生還してるなんて。」 「入ったのはあんただけだからな、エスパーダ2。あんたと一緒じゃ命が100個あっても足りないくらいだ。」 「あれくらいで参ってるの?情けないなぁ・・・」 無線が明るい笑いにつつまれた。 マールはふぅとため息をつくと、敵軍の無線を聞いた。 「よし、もういいだろう。対空火器から撤収しろ!」 敵軍の陣地は沈黙、そして連合軍の輸送機へと向かう。 「ほう、あれが・・・」 C-5ギャラクシー4機とC-17グローブマスターが8機。それに引っ付いてるのはこの前のハードリアンで黙っていたセイバー隊のようだ。 「こちらセイバー1、制空権の確保に感謝する。」 マールはまたため息をつくと、いきなりあちこちから罵声が飛んできた。 「輸送機の護衛に格下げみたいだな。ま、輸送機も可愛そうだ。あんな未熟者と一緒だぞ?」 「あ、あのハードリアンラインに突っ込まなかった臆病者だ。」 「本当か?ウスティオの。聞かせてくれないか?」 すると、輸送機のパイロットまで冗談に乗ってきた。 「こちら輸送機ギャラクシー4。制空権の確保、感謝するよ。前のF-15Cが噂の蒼い鳥か?あと片羽。この未熟者と違って頼りになるな。オーシアの恥とは全く違うなぁ。」 「ありがと。ギャラクシー4。」 マールはそう答えると、まだセイバー隊への文句が続いていた。 「・・・誰かフォローしてやれよ。」 『主よ、哀れなる子羊に安らかな時間を・・・』 シルヴィアがそっとそんなことを言った途端、また空が光った。 その途端に巨大な光の柱が輸送機とセイバー隊の戦闘機を貫き、爆発させた! 「な・・・!?こちらギャラクシー4!遠距離攻撃を受けた!どうした、イーグルアイ!?」 「連合軍司令部より入電!「敵長距離レーザー砲の射程圏内にある、至急脱出せよ」!」 誰もが、その言葉に耳を疑った。 そして、真っ先にアフターバーナーをかけて逃げていく。 が・・・またレーザーが降り注ぎ、こんどはヴァレー空軍基地のメンバーもやられている。 「密集地帯に落ちやがった!10機がまとめて吹っ飛んだぞ!?」 「くっ・・・ギャラクシー4、俺達はここまでみたいだ・・・」 そう、戦闘機は何とか逃げられそうだが、輸送機に関しては無理だろう。 「全機、手近な空軍基地へと進路をとって!それと・・・」 マールは、ベルカ空軍にあえてわかるように通信を入れた。 「こちらガルム1.噂の円卓の蒼い鳥って奴!落とせるものなら落としてみたら!?」 「な・・・何を!?」 円卓の蒼い鳥と聞けば、ベルカも黙っては居ないだろう。 まっさきに攻撃されるのは目に見えている。 イーグルアイが驚いているようだが、マールは微笑していた。 「全機、私から離れて!私がレーザーを引き離す!」 「・・・了解!」 「こちらイーグルアイ。レーザー着弾位置はレーダーに表示する。ガルム1、頼むぞ・・・」 「このくらいじゃ、死なないから・・・ヴァレー空軍基地に帰還します!」 マールは単独でヴァレー空軍基地へと向かっていった。 その進路を先読みして敵はレーザーを照射してくるが、マールは次々に方向を変えて対処していく。 「相棒、行くぞ!」 「フォルク!?何で・・・」 「あのUAVが反射しているようだ。俺がひきつけるから撃墜しろ!」 フォルクのF-15Cが、マールの近くにまで来ていたのだ。 上空の無人機がレーザーを反射、ここに照射しているらしい。 「でも・・・」 「こっちは弾薬切れだ。頼む、相棒。」 「・・・了解!」 マールはすぐに無人機がいる高高度までむかった。 上手くレーザーはフォルクがひきつけているようで、無人機はまだこちらに気づかない。 マールがその機影を確認すると、機体左に大型の鏡を取り付けた輸送機が飛んでいる。 MLSだから無人機と言うことに気づいたのだろう。 通常時は早期警戒機のレドームのように搭載し、攻撃時のみこうするらしい。 「サイファー、フォックス・スリー!」 AAM-4を2発発射、ミサイルは鏡に直撃し鏡を叩き割った。 無人機も撃墜され、レーザーの照射も止んだようだ。 「レーザー照射は中止された。ガルム隊、フトゥーロ基地へと帰還せよ。」 2人は同時に溜め込んでいた息を吐き出した。 『・・・主よ、感謝します・・・生き延びさせてくれたことに・・・』 「ああ・・・よう、相棒。まだ生きてるか?」 「死んだ・・・」 マールは胸をなでおろし、フトゥーロ基地へと戻っていく。 ヴァレー空軍基地 1800時 「・・・みんな、大変だったね・・・」 「ああ・・・」 今日、無事に帰還できたのは全体の6割。 ギャラクシー4が何とか生き延びていたのはよかったが、犠牲も大きすぎた。 ヴァレー空軍基地の傭兵も、数名やられたのだから。 「マール・・・ありがと。」 「マルセラ・・・どうかした?」 「ひきつけてくれたじゃない。あの長距離レーザー砲を。」 「あれ・・・自分でも無我夢中だったの。何とかしなきゃ・・・って思って。」 それで、6割の航空隊が無事に生還できたのだからマールには感謝しなければならないはずだ。 が、マールはそれが出来たのも相棒、フォルクのおかげと言いたかった。 無人機を撃破して、ようやくレーザー照射を終わらせたのだから。 「・・・上層部から見れば、大損害としか思ってないよね。きっと。」 マールは、マルセラにそんなことを言った。 「え・・・?」 「命を懸けてるなんて・・・この恐怖なんてわからない。上層部が恐怖するようなことしなきゃ、オーシアは立ち直れないと思うなぁ。腐敗から・・・」 「それも1つの考え方ね。」 2人はうなずき、生還できた祝杯を挙げることにした。 「奴のいうとおりだ、結局は・・・」 上層部に使い捨てにされる。どうせ腕の良い傭兵でも・・・ フォルクはそんなことを考えながら、1人酒を飲んでいた。 「けど、俺は相棒を・・・見捨てられない。シルヴィアであいつと戦うことはしたくない、絶対・・・」 決心がつかない。かつての故郷を相手にしているせいかもしれない。 「マスター、何か・・・?」 「考え事だ。なんでもない・・・なんでもな。」 間違いなく、国境なき世界に入ればマール、マルセラの2人と敵対する。 そうすれば絶対にシルヴィアは失われてしまう。あの2人が相手では間違いなく。 かといって、置いていくわけにも行かない・・・それでは永遠に別れてしまう。 ならばこのまま終戦を迎える・・・でも、それではオーシアのせいで第2、第3のベルカが生まれるかもしれない。 ――力とは破壊するためにある。ならば力を向ける相手はだまされた哀れな子羊ではなく、悪賢い狐ではないか? ジョシュアの声が、いっそう頭の中に響いてきた。 「・・・そのときじゃないな。まだ、猶予はある。」 「マスター・・・?」 「シルヴィア。迷惑はかけない・・・絶対に。」 「・・・マスター。懺悔してはどうですか?」 「そんな気分でもない・・・けど、ありがとう。いつもそばに居てくれて。」 彼の苦悩は、まだ続きそうだ。 続く あとがき フラッシュバック作戦はオリジナルのコードネームです。 ジョシュアとはあのウィザードのテロリストです。 途中で出てきた無人輸送機は、公式サイトで航空機に搭載された反射鏡と在ったのでつくりました。 ACX-17ブレイドシース。鞘と言う意味の無人機です。原型はC-17輸送機。 エクスキャリバーという剣があるのだから、鞘が無ければ・・・アーサー王伝説でも鞘の方が大事だと言ってましたし。 中尉の小説にあわせ、形式番号のまえにXを入れました。 そして・・・次回はACEシリーズおなじみ(!?)の長距離兵器。 これが年代的には一番最初のエクスキャリバーが登場します。 |
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2006/06/18:あくてぃぶF-15さんから頂きました。
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