ACE COMBAT The Belkan war 円卓の騎士たちへのレクイエム | ||||
――戦場で大切なのは、憎しみを持たぬこと、生き残ること。そして自分のルールを守ることだ。 彼女は、私のもっとも優秀な教え子だった。すべて遵守しつつ、騎士道と言うルールを見つけていた。 〜2005 9/14 「Boss」ディトリッヒ・ケラーマンのインタビューより〜 ACE COMBAT The Belkan war 円卓の騎士たちへのレクイエム 第10章 裁きを受ける刃〜ジャッジメント作戦〜 5/23 ヴァレー空軍基地 「伝説に残るだけの剣、か・・・」 レイシスはそんなことをいいながら、操縦席にに向かって行った。 「ベルカ騎士団の伝説。それを手にしたものが王者たる資格を得る・・・と。」 「なるほどな。って、心強い援軍って何なんだ・・・?」 ガルム、エスパーダ、レイピアの3部隊に下された命令は「長距離レーザー兵器、エクスキャリバーを撃破せよ」とのことだった。 他の部隊は同行を拒否したが、やはり先日のレーザー攻撃を恐れているのだろう。 ただ、援軍が来るので多少は有利になりそうだ。 次々に友軍の戦闘機が離陸し、レイピア6・・・レイシスも出撃する。 タウブルグ丘陵 1400時 「こちら、クロウ隊の3番機PJ!可能な限り援護する!」 F-16Cの3機編隊が、レイピア、ガルム、エスパーダと隊列を組んで巡航している。 「たった数機の戦闘機か。心強い援軍には見えないな。」 「同感。ま、せいぜい囮になるだけいいんじゃない?」 マールがそんなことを言うと、クロウ1がPJに無線を入れた。 「PJ、花束は早めに買って来いよ。じゃないと彼女を撃墜されてしまうぞ。」 「こちらメビウス。花束の前に誕生日プレゼント買ってやれ。それも、お前らしいのを。」 レイシスが軽口をたたくと、それにマールも乗った。 「相談に乗ってあげる。女性っていうのはね、花言葉とかそういうのに弱いの。だから・・・」 「む・・・無駄話してる場合じゃないです!」 「そうね。レーザーがくるから早く離脱しないと・・・」 レーダーに赤いラインが入った。 どうやら、このラインがレーザーの弾道だろう。入ってしまったら即死だ。 「全機、ブレイク、ブレイク!」 加速させながら旋回させ、レーザーの射線から機体をそらした。 が・・・ここまで同行していたKC-135に直撃して墜落してしまう。 「タンカーがやられた!」 「クロウ隊は無事みたいだな。それなりの腕前はありそうだ。」 フォルクはそんなことをいいながら、最大出力でマールの後を追う。 「分散して攻撃!レイピアとエスパーダは真ん中を!」 「了解!ガルムは右を、クロウ隊は左で!」 それぞれの方向に航空隊がわかれ、ジャミング施設を狙う。 「ECM出力を3に上げろ。最大でだ!」 「了解!」 レーダー照射がまともに効かないが、これがその威力なのだろう。 が、完全なジャミングをしないのはレーザー攻撃を続けるつもりらしい。 「・・・・もう少し・・・!よし、発射!」 機銃でジャミング施設を破壊、同時にジャミング施設が2つ破壊された。 クロウ隊、エスパーダ隊が撃破したようだ。 「レイピア隊、まだ何とかできないの!?」 「わかってる!こちらメビウス、少し待ってろ!」 F/A-22Aもバルカンを乱射、ようやくレーダーがクリアになった。 「エクスキャリバーに突入せよ!」 「了解!」 4方向から同時にエクスキャリバーに向かい、その手前で合流する。 途中のレーザーを上手くさけ、エクスキャリバーにたどり着く。 「・・・剣じゃない、これ・・・地面に突き刺さった・・・」 そう形容するのがちょうどいい黒い塔が立っている。 その先端からレーザーが発射されているが、上空は列車砲の発射するレーザーによりふさがれている。 「列車砲を破壊する!続いて!」 マールは搭載していた大型爆弾を列車砲に投下、列車砲とジェネレーターを同時に破壊した。 同時に、エクスキャリバーの先端に集まっていた光がかなり薄くなった。 「ジェネレーターを破壊して、レーザー攻撃を防いで!」 「了解!」 レイピア隊のF/A-18Eが次々にクラスター爆弾を投下、列車砲を沈黙させた。 無数の爆発の中に列車砲とジェネレーターは巻き込まれ、無残な姿をさらしていく。 「・・・あとは・・・」 マールは残りのジェネレーターに機銃を乱射、爆発するまで打ち込んだ。 炎を避けて、一旦エクスキャリバーの周囲を旋回する。 「ジェネレーター破損!メインしか動きません!」 「かまわない!とにかく撃つことだけを考えろ!」 相手もかなり必死らしい。 どうやら、このエクスキャリバーは動かす方もかなり大変らしく、兵士たちは必死で立て直そうとしている。 「手加減はしないけどね。」 最後の爆弾をマールはレーザー砲先端部に投下するが、それでもまだ陥落しない。 すると、レイピア隊がハープーンミサイルを一斉にエクスキャリバーの先端部に発射した! 「何でそんなものもって着たんだ!?」 「これくらいあれば大丈夫、そうじゃないのか!?」 巨大な兵器と聞いて、レイピア隊は対艦ミサイルをクラスターと混ぜて搭載してきたらしい。 次々にレイピア隊がハープーンや90式対艦誘導弾を命中させ、ついに沈黙した。 「エクスキャリバー沈黙、トドメをさせ!」 「了解!」 傾いたエクスキャリバーに、マールはAAM-5を発射した。 無誘導での発射だが、上手くあたっているようだ。 エスパーダがARFAGMを叩き込み、さらに機銃まで浴びせた。 「相棒、トドメをさすぞ!」 「了解!」 『主よ、ご加護を・・・!』 ガルム隊のミサイルを受けて、エクスキャリバーの耐久力はついに限界に達した。 亀裂が中枢部に突入し、ついに爆発した! 「・・・終わったか!?」 エクスキャリバーは途中でへし折れ、ゆっくりと地面に落ちていく。 「ガルム隊がやった!タウブルグの剣を引き抜いたぞ!」 「こちらイーグルアイ、作戦は終了した、全機帰還せよ。」 「了解!」 PJがかなり浮かれているようだが、マールは気にしていなかった。 これで、陸上部隊とシェーン平原に散ったパイロットの敵は取れた・・・ 『マスター・・・やった・・・』 「嬉しいか?」 『当然。ふぅ・・・』 ルシアとレイシスもようやく終わったという顔つきをしている。 「相棒、これで戦争は終わるか・・・?」 「どうだか。まだ円卓が残ってる。ベルカ空軍も。」 これからが辛い戦いになるかもしれない。けど、それで負けるつもりは誰も無かった。 「・・・これで、オーシアもウスティオを見直すはずね、きっと。」 そう、エクスキャリバーを叩きのめしたとなればオーシアも認めざるを得ないだろう。 すると、イーグルアイから通信が入ってきた。 「ガルム隊、複数の機影が接近中!様子が変だ、警戒せよ!」 トライアングルを組んで迫る5機の戦闘機。 その様子から、おそらくはベルカが誇るエース部隊だろう。 「こちらレイピア2。残りはAIM-9のみ。」 「了解。、レイピアとクロウ隊は帰還して。マルセラ、それにフォルクは攻撃。いい?」 「ああ・・・行くか。」 3機だけ残ると、残りの航空隊は一斉にシェーン飛行場へと戻っていった。 「戦線が後退しています。」 「奴らは早い、ついていけ。私の最後の授業だ。」 「了解、ボス。でも、後から友軍機が・・・」 「・・・オヴニル。来たか。」 隊長機が、追いかけてきたSu-47のパイロットに話しかけた。 「ああ。ボスにかっこ悪いところは見せられないからな。」 「わかった・・・全機、攻撃だ。」 「了解!」 その声を聞いた途端、マールは相手が誰かわかってしまった。 マルセラも・・・相手をよく知っている。 「・・・ケラーマン!?何で・・・」 「マール、それにマルセラか・・・師を越えてみろ。それが私の最後の授業だ。」 「そんな・・・!教官・・・」 「敵同士のパイロットに情けはいらない。そうじゃなかったかな?」 2人は、どうも戦うことを躊躇しているようだ。 「・・・相棒、どうした!?」 「かつて、私に空戦を教えてくれた教官なの。ベルカ空軍に居たとき。」 『・・・迷わないでください!相手は躊躇してません・・・』 シルヴィアにまで言われ、マールはうつむいた。 「・・わかった。マール・・・本気でやろうよ。それを望んでるなら。」 「了解・・・ズィルパー隊を撃滅する!」 ズィルパー隊は一斉にブレイク、トライアングルを組んだマールたちも散開した。 「教官・・・」 「落ち込んだ声を出すな、マール。後輩相手に遠慮は無用だ。」 その途端、後にSu-47が喰らいついてきた。 「あんたが・・・蒼い鳥だな。」 「誰?」 「オヴニル・・・とでも名乗っておく。行くぞ!」 機動性の高いSu-47はかなり厄介な相手だ。 彼もケラーマン教室の一員だろうか・・・ 「マール・・・俺も加勢する!」 「レイシス!?何で・・・」 「味方の危機を見捨てられるか!」 レイシスのF/A-22AがオヴニルのSu-47の後方に回り込んだ。 マールはすかさずF-16Cの編隊に突っ込み、機銃を発射して編隊を崩す。 そして、また編隊を組みなおした。 『厄介な相手だ。Su-47のパイロットはミヒャエル・ハイメロート。円卓でスコアを稼いでいるエースだ。あれは間違いなくズィルパー隊、F-16Cの編隊は彼の教え子だろう。』 ルシアが、相手の精神などを読み取ってレイシスに言った。 「・・・厄介だな。」 レイシスがそんなことをつぶやくと、マールは決意したかのように言った。 「マルセラ、Su-47をひきつけて。私達がズィルパーをたたく。」 「了解。」 「・・・教官、本気で行くから・・・!」 マルセラのダッソー・ラファールがSu-47に突っ込んでいった。 その間にマールはF-4Eにヘッドオンを仕掛ける。 「腕を見せてくれ、マール!」 「教官・・・甘く見てると痛い目にあいます!」 互いにバルカンを乱射したが、当たらずにすれ違う。 その後には、F-16Cがしっかりと張り付いていた。 「・・・なかなかね。後輩にしてはやるじゃない。」 一気に急降下の後、素早く旋回してSu-47の後ろにつく。 幸いにもダッソー・ラファールを追撃しているためこちらには気づいていない。 AAM-5を発射、早速敵機を撃墜した。 「やられたか・・・っ!脱出する!」 「ルールを崩すな、奴は本物だ。」 「了解、ボス!」 レイシスのF/A-22Aが真っ先に突っ込み、AAMを発射した。 同時に敵機も発射したが、互いに買わされてしまう。 「相変わらず教え方は一級品ね、教官。」 その途端、フォルクの後ろについていたF-16CがマジックAAMを喰らって爆発した。 まだ実戦経験が浅い、それが彼らの弱点だろう。 「・・・行こう!」 これで数は同数だが、相手もなかなかの腕前だ。 マールは後ろについたF-4Eを振り払うためにロールをとめて急上昇、F-4Eが通過していく。 そこにAAM-4を発射したが、軽く振り切られた。 「教えられたことをしっかりと身につけているようだな。」 「当然・・・何度も泣かされましたから・・・」 一方でマルセラとフォルク、レイシスは完全にF-16Cの編隊を圧倒していた。 同数なら負けない・・・が、マールはかなり不利な状況だ。 互いに何度も攻守が入れ替わったが、撃墜できるような状況にはならない。 が・・・マールは秘策があった。 AAM-5を、1本だけ逆向きにセットしておいたのだ。 ゲルブ隊と戦ったときをヒントにして、そうするように改造していた。 「フォックス・ツー!」 AAM-5を発射したが、F-4Eは急上昇してループを描くようにして後に回ろうとする。 マールは急降下しながら緩やかに旋回していった。急旋回すればガンキルされる。 「・・・いつもそうやって居たな。」 ケラーマンも、ここでミサイルを発射していつも撃破していた。 だが・・・マールは先にAAM-5を発射した。 後ろ向きにセットされたAAM-5は、F-4Eの意表をついた形で爆発した。 「マール・・・私の機動を読みきったか。見事だ・・・」 「教官・・・っ!」 「泣くな。後部座席ともどもベイルアウトできる。最後に教えることがある。憎しみに身をゆだねるな。そして・・・躊躇するな。」 「・・・はい。」 その途端、F-4Eから2人がベイルアウトした。 「ボス・・・!」 「悪いけど・・・やるなら容赦しない。」 マールは急激に機体を反転させ、最後のF-16Cの尾翼を狙って機銃を乱射した。 ヘッドオンでF-16Cは落ちていき、脱出した。 「敵隊長機をマールが撃墜!」 「サイファー、良くやった。任務完了だ。」 ようやく全てが終わり、マールは座席にもたれかかった。 ただ、後ろ向きにセットしたAAM-5で撃墜したのが少し心にひっかかったが。 ゆっくりとフォルクにマルセラ、レイシスが戻ってきて編隊を組みなおす。 「・・・帰還したら。祝杯にしよう。ね?」 その言葉に、部隊全員が歓声をあげた。 例によってレイピア隊はISAF国歌を全員でうたい始め、イーグルアイまで騒ぎ出した。 マルセラまで歌を歌い始め、それにPJが手拍子であわせている。 そんななか、マールは1人F-4Eの墜落した方向に敬礼した。 ヴェルデブルグ基地 1600時 「・・・ついに落ちたんだ、エクスキャリバー・・・」 「ですね・・・」 クーナとミストは、食堂で話をしていた。 この基地は、異常に早く噂話が伝わってくるのだがあまりそういうことは気にしていない。 「次、狙うのは円卓ね。インディゴ隊は活動停止中だけど、私は行くの。」 「そう・・・がんばってください。ベルカの勝利のために。」 「わかってる、弱いオーシア軍機になんか負けはしない。」 クーナははっきりと笑顔で答えた。 先日、グリューン隊の撃墜されたパイロットが戻ってきてまた新たに戦場に赴くことになった。 が・・・インディゴ隊はデミトリが昏睡状態のため結局は出撃する機会が無い。 「・・・円卓、それから始まりそこで因縁が途切れるのかなぁ・・・」 「何か言いました?クーナさん・・・」 「いや、何でも。ただ・・・円卓でこの戦争が終わるのかなって・・・」 クーナは誰とも無くつぶやくと、ベルンハルトの居る格納庫に向かった。 すると、1人の少女が入ってきた。 瞳が金色で赤いコート、白い翼で茶髪の少女だ。 「・・・ルカ、何かありました?」 「何にもないけどさ、暇だから。」 ゴルトリーダー、アントン・カプチェンコの愛機の精神生命体のようだ。 ルカはミストの向かいに座ると、ミストに聞いた。 「・・・残留思念に負けないためにはどうしたらいいの?私、ちょっと辛くて・・・マスターにも負担かけちゃってるの。少しね・・・ミストはどうやって乗り切ってる?」 「・・・自分が正しい、そう思ってます。ある人は強気で乗り切って、またある人は信仰を糧にして・・・ある人はマスターのことを強く考えて。」 「あ、そっか・・・でも、ミスト・・・正しいと思えるの?」 「何か?」 「追い詰められたベルカが、V2を使うことがあっても・・・?」 多弾頭核ミサイル、V2をベルカはすでに開発していた。 弾頭は数多く製造されたV1核弾頭で、これを主要都市のあちこちに投下する。 「・・・さすがに、それは正しくないですね。」 「そのベルカのために戦えと言われたら、戦えるの?」 ミストは、そこで言葉に詰まってしまった。 それはミストが最も懸念していることだからだ。 話につまったのを見て、ルカはちょっと申し訳なさそうに言った。 「・・・難しいこと聞いちゃった?ごめんね。」 「いえ。あなたみたいな純粋な心でいるのも・・・いいと思います。」 「なるほどね。」 2人は一息つくと、他の話題を話し始めた。 続く あとがき 本当にこのエクスキャリバーは疲れるミッションです、ええ。 レーザーを交わすのはストーンヘンジ以上につらい・・・ ズィルパー隊の隊長は教官だったため、マール。マルセラの2人の教官だったという設定を入れました。 オヴニルも登場、でもJFSは無いのですぐ落とされました。 次回は円卓制空戦。大規模な空戦が勃発します。 円卓の王者、緑のフクロウ、赤いツバメなどが出現、どう立ち向かうのか・・・ では。 |
||||
2006/06/18:あくてぃぶF-15さんから頂きました。
第9章へ 第11章へ 戻る トップ |