ACE COMBAT The Belkan war 円卓の騎士たちへのレクイエム




――私の相棒に出会ったら、絶対に伝えて。
「よう、相棒。まだ生きてるか」って。

〜2005 11/14 「Bule bird」マール・レヴァンスのインタビューより〜


ACE COMBAT The Belkan war 円卓の騎士たちへのレクイエム
終章 ZERO〜アヴァロンダム制空戦〜

エスパーダ隊2番機、レーザーにより消滅・・・
眼前に見える禍々しい前進翼の機体が、こちらに矛先を向けている。
「ダメだ!核サイロの再起動を確認!」
「エスパーダ1、ガルム2・・・私がやる。」
マールはHUD表示の向こうに移る不明機を見ながら言う。
「・・・マールさん、私も・・・!」
「これ以上の犠牲は出せない!お願い・・・生きてマスターにあいたかったら言うとおりにして。お願い!」
少し沈黙した後、マルセラはやれやれと言う。
「いっつもそうやってさ・・・ま、それだから好きなんだけど。シルヴィア・・・引いて。」
「・・・わかりました。」
ラファールとF-15Cが戦線を離脱、アヴァロンの上空に残るのはF-15F/25と不明機のみ。
機体上部にレーザー砲塔、両翼パイロンとフランカーシリーズの「トンネル」と呼ばれる場所に大型のミサイル3個、短射程ミサイルはIRIS-Tが6本。
充分危険な相手だが・・・やるしかない。
「相棒・・・やっぱり1人で来たか。」
「シルヴィアまで殺させたくない・・・だから。」
「やっぱり優しすぎるよ、あんたは。」
フォルクの言葉に、マールは静かに首を振る。
「優しくない・・・相棒を落とそうとしてるんだから。」
「それもそうだな。行くか・・・本気でDACTをやってやる。」
正面に敵機、距離4000・・・AAM-5をロックオン。
残弾、AAM-5が6発とミーティアAAM3発。出来ないことはない。
敵機はデッド・ウェイトが多く機動も鈍い可能性がある。そこを着くしかない。
「フォックス・ツー!」
ミサイルを発射しすぐにブレイク、途端に赤いレーザーが虚空を引き裂く。
これにPJもやられている、あたるわけには行かない・・・
急激に旋回、エアブレーキをかけ旋回半径を狭める。
目標、敵機のレーザー砲塔・・・が、かなり硬く銃弾もはじかれている。
その後に敵機・・・旋回性能は完璧にF-15F/25の上を行くようだ。
「相棒、あんたなら交わせるだろ!」
敵機、IRIS-Tを発射。すぐにマールは機体を加速させ急激に旋回。
振り切るとレーザー砲塔真正面から銃撃・・・さすがにレンズ部分はもろく、あっさりと皹を入れた。
「・・・不死身のエースと言うのは、長く戦場にいた奴の幻想だ。」
敵機はレーザーユニットを投棄、マール機から離れる。
「お前のことだよ、相棒。」
パイロンから大型のミサイルが外れて発射・・・マールはミーティアAAMをミサイルにロックオン、発射。
同時にコブラで急激に機首を上げて上昇。ロールさせてミサイルを眺めると一瞬で大爆発を引き起こしていた。
「気化弾頭散弾ミサイル!?」
衝撃波が機体を揺らすもののダメージは無し。塗料が少しこげている。
あんなものを喰らったら酸欠で死ぬか一瞬で蒸発してしまうか・・・
「ご名答。ベルカの使った散弾ミサイルだ。最終兵器として開発していたが遅れてな。」
「私に使うってわけ?相棒・・・F-15Cで私と戦って欲しかったんだけど!」
「確実に殺すためには手段を選ばない。相棒、俺は正規空軍じゃない。あくまでも傭兵だ。」
21世紀の戦争はこんなふうにはなって欲しくない・・・マールはそんなことを思っていた。
が、その搭載量は多くない。散弾ミサイルはトンネルに1発と両翼に2発・・・もう1発使ってしまっている。
高空で旋回、ヘッドオン・・・そろそろつかうはずだろう。
逆向きのAAM-5をセット。これで葬るしかない。
「・・・行くか、相棒!」
高度を変えて散弾ミサイルを2発発射、こうなれば突っ切るしかない。
あえてミーティアで狙わず中央突破。フルスロットルで敵機に接近する。
「何・・・?」
敵機を追い越し、後方警戒レーダーでロックオン。AAM-5を発射。
近接爆発はしたがダメージはかなり少ない・・・敵機はパイロンごと大型ミサイルを投棄した。
そこだけは・・・どうしても防げなかったらしい。
「・・・時間だ。」
「な・・・イーグルアイよりガルム1、核サイロ機動!」
その途端にミサイル発射口が開き弾道ミサイルが発射・・・あれがV2だろう。
ミサイルは高空へと飛び立ち、姿を消す。
「惜しかったなぁ、相棒。歪んだパズルは一度リセットされるべきだ。V2で全て世界を「ゼロ」に戻し、次の世代に未来を託そうか・・・言っておくが、目標はISAFとサピン、ウスティオとオーシアだ。ISAFの・・・第2艦隊停泊地にな。」
「え!?第2艦隊って・・・レイシスの!?」
「ああ。1発はヴァレーに。1発はディレクタスに・・・あとはサピンだ。残りはまとめてオーシアにぶち落としてやる。あの国家は裁きを受けるべきだ。ISAFも、サピンも・・・ウスティオも。」
これ以上聴きたくもない。レイシスも・・・ヴァレーのメンバーも、共に戦ってきた戦友まで殺させはしない。
「マスター・・・なんてことを・・・!!」
「・・・シルヴィア。もう止められないんだ。相棒、道は1つだ。お前はお前の、俺は俺の信念に従って行動する。PJが死んだのもその流れだ。」
ミーティアAAMロックオン、もうマールは怒りが抑えられない。
ここまで平然と言えるフォルクを・・・なんとしても止めたかった。
「ミーティアでもロックオンかけてきたか。そこまで奮い立つか?」
「フォックス・スリー!」
応えはミサイルの発射で・・・デッド・ウェイトのミーティアAAMを使い切るつもりで発射。
が・・・あっさりとフォルクには買わされてしまう。こんな程度ではやられるはずもないか。
「・・・ならば、俺を落として見せろ!守りたかったら・・・お前の大事なものを守りたかったら!」
「だよね・・・守るためだったら鬼神にもなるよ。フォルク・・・躊躇しない。全力で落とす!」
敵機はECM防御を展開している新鋭機ADFX-02モルガン・・・イーグルアイの報告によるとエアインテークを狙えばいいらしい。
それは最も得意とする戦法・・・マールは「了解」と応答すると。AAM-5をセットする。
「今ここで彼を討てるのは君だけだ!ウスティオの蒼い鳥・・・幸運を祈る!」
AWCASのHUD表示に従い、AAM-5をロックオン・・・ヘッドオンで発射。
が、ADFX-02はかすかに機体をずらして回避。こいつはECM防御があるから近接信管が作動しないらしい。
2機は至近距離ですれ違う・・・互いに有効打撃のないまま。
「ここから国境が見えるか?国境は俺達に何をくれた?ただの戦争じゃないか・・・悲劇じゃないか。だからすべてリセットする。」
「・・・戦争をやりたがる奴ほど前線に出ることは無いのは知ってる。だから私達に無茶な任務ばかり・・・」
「それを変えるんだ、相棒。」
「だったら・・・何もここまでしなくても!世界規模の虐殺なんて正当化できない!よりによって・・・私の仲間とかにそいつの矛先むけるんだったら!」
「相棒・・・生ぬるいやり方で実現できると思うか?今いる奴らを殺しても同じこと。どうせ同じような奴が上につく!」
「これから変わっていくよ・・・この戦争が無残なことだとみんなわかった・・・フォルクの理想どおりの世界じゃないかもしれない、けど、絶対に・・・!」
敵機をロックオン、後から銃撃を当てて強制的にでもエンジンを停止させれば勝てる。
F-15F/25がADFX-02に接近、銃撃を浴びせようとした途端敵機は急に機首を上げる・・・コブラ機動だ。
いや、そのまま反転しこちらの後にへばりついている。
形勢逆転・・・のつもりだろうか。
「乗ってあげようか?」
とにかく急激な旋回を交えつつ回避、だがADFX-02もしっかりと追ってくる。
警報はなっているがまだロックオンをかけていない・・・こっちも手はある。
「後方射撃レーダー機動、ロックオン・・・フォックス・ツー!」
AAM-5を逆向きに発射、同時にすばやく自爆させる。
ADFX-02はすぐに回避するが、左のエンジンから煙を吹いている。
「仕切りなおしだ、相棒!」
「・・・いいよ。これで終わらせる!」
距離を置き、旋回・・・ヘッドオンだ。
時間は残り4分・・・少なすぎる。これだとまずいかもしれない。
「終わらせる、何としても!」
真正面から2機が突撃、AAM-5とIRIS-Tが空中で衝突して爆発する。
同時に銃弾が飛び交ったが・・・まだダメージがない。
「やばいよ・・・このままじゃ・・・!」
V2が爆発するまで多少のタイムラグがあると見れば、せいぜい3分くらいしかない。
次第にマールは焦っていく・・・時間を書ければ負けだ。
「時間がないぞ、相棒、どうするつもりだ?」
「・・・あせらないでください、マールさん・・・時間はまだあります!」
シルヴィアの一言で・・・マールはようやく落着いた。
3分と言えば短いが、空戦で3分あれば円卓でFX-10Aを大量に撃墜できた。
後は気持ちの持ちよう・・・フォルクも焦っているかもしれない。
「・・・鏡みたいなものだ、相棒。俺とお前は・・・似てはいる。向かう方向も似ているが・・・正反対だな。」
「やっぱりね・・・でも、手は抜かないよ。」
敵機がIRIS-Tを発射、AAM-5のロックオンをミサイルにかけてマールも発射。
空中でミサイル同士が爆発、至近距離でM61A2を・・・敵機はマウザー27mmを発射。
双方とも敵のカナードに直撃弾、こちらのカナードがはじけとんだ。
「マール、しっかり!蒼い鳥なんでしょ、まだ落ちないで!」
マルセラが、カナードが吹き飛んだのを見て驚いている。
「いえ・・・敵機も損傷を受けました。」
ADFX-02のカナードが動作不良で動かなくなっているようだ。
しかも・・・はじけとんだカナードが機尾に突き刺さっている。
「あ・・・ECMが解除された!」
「これで本気でやれるね・・・相棒!」
もう一度ヘッドオン・・・残弾を使い切るつもりでAAM-5をロックオン、発射。
ミサイルが炸裂するのがはっきりと見え・・・ADFX-02が煙を吹いている。
だが・・・まだ生きている。左エンジンから火を噴いているにもかかわらず・・・だ。
「・・・相棒、そろそろ決着だ。」
最後のヘッドオン・・2機は反転しガンレンジに持ち込もうとしている。
もう、ミサイルは残っていない。後はバルカンだけだ。
「・・・終わりだね。じゃあね・・・」
「何辛気臭いこと言ってるんだよ・・・撃てよ、臆病者!」
トリガーに手をかける。距離1200、これ以上の接近では危険だ。
「撃て!!」
右エンジンを狙いM61A2を乱射。同時にかなりの至近距離ですれ違う。
フォルクは機銃を1発も撃たず・・・そのまま墜落していった。
直後に爆発が・・・時間は残り10秒。どうなったのか・・・?
「ガルム1、V2は大気圏突入前に自爆した!我々の勝利だ!」
「アヴァロンダムは完全制圧!残っていたV2も確保した!」
全ての作戦が終わり・・・全員が歓声を上げていた。
マールは・・・その中でただ1人、疲れた表情でアヴァロンを見つめている。
「・・・マール中佐、どうかしたか?」
「気になることが・・・ちょっと時間を頂いてもいいですか?ガルム2、ついてきて。」
F-15F/25とF-15Cはアヴァロンダムに建設された滑走路に着陸・・・その途端にアヴァロンダムの制圧に向かった兵士が梯子をつけてくれた。
マールは梯子から降りて・・・シルヴィアはいつの間にか後から着いてきた。
落ちていた残骸のADFX-02には、彼の死体はなかった・・・風防が飛んでいる。
「・・・脱出したんだね。相棒・・・」
「私の・・・せいかもしれません。マスターの機体はEFLシステムを使っていたので・・・私が干渉しました。脱出するようにと。」
やれやれ・・・とマールは思ったがとにかく生きているならそれでよかった。
すると・・・目の前に誰かがたっているのが見えた。
「・・・相棒。」
「迷惑ばっかりかけてさ・・・フォルク。」
まだ生きていた・・・正直ほっとしたのがマールの意見だ。
それでよかった・・・V2の影響がないのもあるが彼を憎むつもりにはならなかった。
彼もまた、信念で飛び続けた1人だから。
「これからどうするのさ、相棒。」
「・・・ヴァレーに行けばウスティオに迷惑がかかる。俺は・・・シルヴィアといっしょにユージアに行く。そこでクーデター軍の後始末で雇い口があるからな。当分・・・お別れだ。ISAF空軍としてレイシスとも出会うだろうからな。」
「それが本心なら・・・私は見送るよ。フォルクを・・・こんなこと、もうしないでくれる?」
「・・・ああ。すまないな・・・迷惑ばかりかけて・・俺は・・俺は・・・っ!!」
思わず涙がこぼれてしまったフォルクに・・・マールはそっと涙をぬぐった。
「オーシアがやったことは酷いから・・・私は何もいえない。けど、フォルク・・・本当は私に止めて欲しかったんじゃないの?」
「・・・そんなわけないだろう。どうして・・」
「最後で機銃を撃てば、私は即死してたよ?」
最後の最後で止めて欲しかった・・・フォルクはそんな本心だったのだろう。
「そろそろ行ったら?うるさくならないうちに・・・」
「ああ、解った・・・ありがとう、戦友。またな。」
梯子を上り、F-15Cにフォルクが乗り込む。
「・・・マールさん。半年間・・楽しかったです。」
「こっちこそね。シルヴィア、また会おうよ。」
機体にシルヴィアが同化し・・・F-15Cは遠いユージアまで飛び立っていく。
きっとたどり着くだろう・・・きっと。そしてまたいつかで会える。
かっとなると見境なくなるけど・・・大好きな相棒に。


ノースオーシア州グランダーIG社 同時刻
「所詮この程度の器か・・・」
軍服姿の人物たちは、思い思いの表情でディスプレイを見つめている。
歓喜の表情など誰もしていない。落胆や怒り・・・そんなのばかりだ。
「ジョシュアなどあの程度の器だ。ソーサラー隊すら巻き込めずにやったことだからな。知りすぎた奴らの始末も・・・」
「逆にそれは危険だ・・・もう世界のメディアに知れ渡った以上消すのは危険だ。こうなったら・・・」
「こうなったら?」
「オーシアとユークをあやつろう。それとエルジア・・・戦争で合法的に葬るしか在るまい。エルジアに奴を派遣しておけ。オルベルト・イェーガーを。ユークにはミヒャエルを・・・オーシアにはアシュレイを。ベルカにはブリストーを。」
「じっくりと時間をかけて・・・滅ぼすわけですか。」
議長席に座る人物はうなずくと、指示を出す。
「アップルルース、オーシアを内部から監視しろ。ブラウヴェルトはベルカ空軍を再編するため新政権にもぐりこんでおけ・・・」
「はっ。ヴァルデマー・ラルド議長。」
彼らは部屋から出て行き、それぞれの任務を果しに向かう。
超大国の力こそが世界を動かす・・・ISAFは堅牢だがオーシアは鈍い。だからオーシアをあやつれば世界は簡単に動かせる。
汚点と言えば「ウスティオの蒼い鳥」の存在を消せなかったことだろう・・・ISAFやサピン、そしてベルカやウスティオなどでは英雄伝説化している。
オーシアにこの風潮がないだけでもまだ良かった・・・ラルドはうなずくと、新たな計画を考え始める。


大国には、彼らの物語を知る手がかりなど何一つ残っていなかった。
が・・・ウスティオにはまだ「サイファー」と名乗るパイロットが存在している。
国境なき世界は世界に知られることなく姿を消し、またラリー・フォルクの消息もわからない。
あちこちの小国やISAFで語り継がれるエース、「円卓の鬼神」。
かつてのスカーフェイスのように、彼女の名前もまた語り継がれるだろう。

――この映像はあいつも見るのか?会ったら伝えてくれ。
「よう、相棒。まだ生きてるか?」
〜2005 11/25 「Sold wing」ラリー・フォルクへのインタビューより〜

fin.....

あとがき
何度も加筆修正し、ようやく落着きました・・・このスタイルに。
結末はいろいろ考えてました。フォルクがヴァレー空軍基地残留だったり、ISAFに向かったりと。
でも・・・やはり傭兵でいいかなと思い戻っていきました。
AC5編では後半から活躍します。マールも・・・出します。
次はAC5編を書きます。その伏線をラストに入れておきました。
では。



 2006/09/28:あくてぃぶF-15さんから頂きました。
秋元 「次は05ですね。戦争の後遺症というか、残り香り」
アリス 「……後の世まで連鎖するものです、何事も」

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