第6機動外洋艦隊 -外洋機動艦隊IF-




6話
【休暇】



ハワイ市内、11月4日時刻午前10時20分

su-47Berkut・ELINAの修理と共に溜まっていた実戦試験装備の装備になんと、「鳳仙花」の大掛かりな改修まで行うらしいのでかなりの休暇がもらえたので、折角のハワイ。基地でゴロゴロするよりも買い物などをする方がよっぽどいい。
「渥美~・・・・熱い~、死にそう~」
坂本がふらふらと歩く。ハワイでは駐車スペースが少ないためバスかタクシーが便利だ。
「いっその事、別行動にしません?こんなだらけている男とは歩きたくないもの」
「別にいいけど?じゃあ、そうするか」
ふらふらと海岸沿いを歩く。特に行く当てもない
「マスター、お金はあるんですか?」
「ああ、あるとも。カードに現金が20万ほど」
よくも財布に20万も入ったものだと自分でも感心してしまう
「あの・・・その・・・私の私服などを買いたいのですが・・・・・」
「ん?べつにいいよ。滅多に買い物も出来ないからね」
エリナの顔が輝いた。
・・・・・・・・1時間後、どれほど店を回っただろうか・・・・両手には荷物の山、現金も残り3万・・・・主に下着や日用品が多い
「重・・・・エリナ・・・少し休憩させてくれ」
「あ、はい。私も少し疲れました」
自動販売機でアイスコーヒーを買う・・・・ふと気がつくとこの間、銃撃戦をしていた場所だった。
未だに弾痕が家の壁に残り、舗装された道も少しだけ掘れている。
「エリナ、止るところだが俺の別荘にしないか?」
「別荘があるんですか?」
貧乏な家庭ながら父親が会社で大きな商談に成功し会社の株は大上昇しその礼として贈られた。その会社とはテクノホリノだ。
「荷物をそこにおいておけばいいから。とにかくタクシーを捕まえないと」
タクシーを止めたが、小型車で荷物が膝の上に載っている。
「とりあえず別荘に向かうか」
「は、はい」
別荘の住所を教える。
なぜか後ろのタクシーも同じコースを走る。
5分後、目的の別荘に着いた。後ろのタクシーも・・・・・
「坂本とかに着けられてた。厄介な事になる」
「別にいいじゃないですか。賑やかで」
タクシーを降りるとやっぱり坂本たちだった。
「別荘があるなら早く言えよ~。もう少しでホテルを予約するところだったぜ」
「意外にいい家ね」
「泊まるなといっても泊まるだろうな」
「勿論、当たり前だよ~」
レイナが割り込む。
「荷物があるなら自分で運んでくれ」
小さいながら部屋数は多い。立地条件も悪くない
「もう昼か、昼は皆どうするんだ?」
「外食かな?」
「私達もよ」
折角の休みだ。久々に料理するのも悪くない
「俺が作るよ。和、洋、中のどれでもいい・・・・よほど珍しい物じゃない限りは作れる」
「全てラーメンじゃないわよね?もしもそうなら蹴り倒すわよ?」
「流石にそれはない。普通の料理だ」
11月と言えど今日の最高気温は27度、熱いものは避けるべきだと思った。
「じゃあ、ハワイ料理ね」
素早く、坂本が言う
とりあえず、簡単に出来る物を作っていく
20分後、大体作り終えた。後はデザートが冷えるまでメインを食べるだけだ。
「さて、一つ一つ説明するか。ロミロミサーモン、ロコモコ、ポキ、カルーア・ピッグ・・・以上がメニューだ」
「なんか、魚と豚肉が多いな」
「島だから取れるものも限られるだろうが。ばか」
そう言いながらも皆、料理を小皿に取って食べる。
「以外に美味しいわね。渥美が作るからてっきりまずい物かと思ったわ」
「本当、翼にしては意外な才能」
「まふたぁー、おいふぃでふぅ~」
エリナが口いっぱいに頬張りながら喋る。
「エリナ、口の中のものが無くなってから喋ってね」
ホノカが姉の様に優しく叱る。
「ふぁ~い」
また、頬張ったまま喋るのでホノカがため息をつく
「才能の持ち腐れ?」
レイナが意味不明な言葉を吐く
「才能じゃなくて宝だ。てか、文句言うなら食うなよ」
皆気に入ったのかすぐに料理は無くなった。
「デザートも作っておいた。自由につまんでくれ」
ハウピアと言うココナッツ風味の牛乳プリンだ。
あと、マラサダと言うハワイ版ドーナッツを作っておいた。
マラサダは油で上げたお菓子なので日持ちするが、ハウピアは乳製品を使ってあるのであまり日持ちしない
食器を片付けてソファーに座る。
庭の木々から差す木漏れ日、鳥の囀り、波の音、何もかもが優しくて体を包み込む
つい、うとうとしてしまう。
そして、熟睡する一歩手前で体にに何やら、寄りかかっているのに気が着いた。
ふと、目をあけるとエリナが肩に寄りかかり寝ている。
「まぁ、こういうのもいいか」
そう自分に言い、また目を閉じる。


???????? ?月?日 時刻????
何かに驚いて目を開けるとそこは見覚えのある戦場、昔にいた部隊の戦友達、隣には昔の彩峰・・・・自分はギリースーツに身を包んで戦場に立っていた。
「渥美!何をしている!?早く撃て!」
隊長が叫ぶ。
言われる通りに銃を持ち直して撃つ
隊長が撃たれて倒れた。
「ふぐぅ!・・・・衛生兵!撃たれた、手当てしてくれ!」
足に当たっただけで致命傷ではない
安心して振り返った瞬間、目の前に銃口があった。
銃を握っているのはエリナだった。
一瞬の出来事だった。驚いて声を出そうと口を開いた瞬間に頭に衝撃が走った・・・・・・
「うぁぁぁぁぁ!!!!」
凄い勢いで飛び起きた。
周りを見渡すと何も変わらない、自分の別荘だ。
よく考えると、エリナではなく敵がそこに立っていて今にも頭を落ち抜かれそうだったのを彩峰に救われた経験がある。
どうやら、ソファーに座ったまま寝てしまったようだ。
「ふにぃ?まふたぁ?」
大声で起きてしまったようだ。
「ああ、エリナごめんな」
そう言い、頭を撫でる。
エリナは満足するかのように微笑んだ。
自分が戦争しているなんて嘘のようだった。いつまでもこんな日々が続けばいいと思う・・・・
坂本たちは、出かけたようだ。
テーブルにメモがある。
≪渥美、艦長が御呼びだ。緊急だそうだ。急いで来い・・・・夕飯はホテルでディナーだぜ≫
緊急?また、どうでもいいことだろうと思う

ハワイ、オワフ島真珠湾基地、11月4日時刻午後6時21分
「渥美、遅いぞ」
「すみません」
テーブルの上には、偵察写真が置かれていた。
「厄介だ。この艦隊が何処に向かうかによって今後の作戦に響く」
説明によると、南極の氷河に隠れて敵が総戦力を割き大艦隊を結成しているらしいのだ。
写真にはざっと、空母が1、駆逐艦が5に戦艦クラスが2隻しか写っていない。他の写真には潜水艦のような物も写っているものもある。
「まだ、小規模な艦隊じゃないですか。今のうちに叩けば即解決では?」
「いまは11月だ。氷河が海面を覆っていて下手に進めば船体に穴が開く・・・・あちらも同じだ」
確かに、写真のどの船も氷河に囲まれていて動いていない上に氷河の上に何かを建てている。
「こいつらは放って置いても別に害はない。問題なのはこの写真だ。」
渡されたのは輸送船団だった。その護衛に見たこともない駆逐艦が4隻捕らえていた。
「偵察機は写真のデータを送信後、撃墜された。通信では新型の戦闘機が撃墜したようだ」
今、この船団は偵察機の飛来により場所特定を避けて航路を大幅に変更しているらしい
「今叩くしかないが鳳仙花の改修も急いで明日か明日以降だ。お前達の機体はもう仕上がっている。説明を受けて来い」
基地から飛行場まで車を向かわせるように手配してあるそうだ。

オワフ島真珠湾基地、フォード島飛行場、11月4日時刻午後6時52分
ハンガーに格納され何故か厳重に外は武装した兵士で固められている。トップシークレットなのか入るときに身分証明書の提示を求められた。
「すまない。この装備はあんたらみたいな実験部隊にしか見せられない。上もそんなモノを作らなくても・・・・」
整備士がブツブツと文句を言っている。
見ると外見はそう変わりない。変わったと言えば機体の上下に付いていたグレイプニルが外されキャノピの後ろ辺りにビスシッドが装備されていた。
「外見はあまり変わらないがこいつのエンジンはバケモノ級に凄くなった。長くなるが説明を聞くか?スペック表を見るより分かりやすいぜ?」
「ああ、聞こう」
「コイツは実験用だから正式名称は無いが俺達はコイツの事をスーパーフェニックスと呼んでいる。在りがちな名前だけどな、コイツは今までのエンジンとは違う。エア・ジャパン社の最高傑作と呼んでもいい。ゼロと比較する。ゼロのヤツはフラッシュAJ-26ターボファンエンジン、最高速度はマッハ3.2、巡航速度マッハ0.9、最高が1.4。だがフェニックスはコイツを上回る。最高速度3.6、巡航速度1.2で最高が1.9だ。だが、コイツも試作段階で欠点がある。それは重量の増加と機動性に、一番危険なのが緊急時における対処だ。重量はそう増えない。機動性は少々落ちるぐらいで気にはならない・・・・次だ。コイツは一度止るとエンジン内の熱が一定温度に安定しないと点火しない。だが、つける方法はある。逆に冷却するとシステムが誤作動し作動を開始する。ただし、降下して冷却するから戦闘中には致命傷だ。これはどうにも弄れない・・・・・スペックは夢物語と言われがちだが現にここに存在する。・・・・・・・・・・・・・これくらいか。説明終わり!あ、いい忘れた。被弾時の振動でエンジンが自動で燃料供給をOFFするから手動でONにしないとダメだ。コクピットに専用のスイッチをつけた。俺の特製だぜ、ありがたく受け取ってくれ」
そういい残して整備士がどこかに行った。
「確かにスペックは夢物語だな」
他にはフレアの隣に小型ミサイルを装備する事により、後方に回られても攻撃出来るそうだ。
コクピットに座り、小型端末を期待に刺してデータリンクを行う・・・これで端末で設定を変更できる。
リンクが終了し大量のデータファイルが表示される。それらを手動で確認し変更のある部分は確認して自分に合うように変えていく
「マスター、タイピング早いですね~」
エリナが隣で感心している。気がつけばファイルの70%を終了していた。
「エリナも色々と変わったから確認して」
隣にはJE-1セントラル、F/A-44B ファルコンが並んでいる。
「ちょうど、同じ時に同化するみたいだな。エリナも急いでな」
「は~い」
機体のノーズ部分に触れてその美しい瞳を閉じると同時に、少女達の体から淡い光が現れて少しずつ姿が消えて行く・・・・・・
その場にいた全員が見入ってしまうほど美しい光だ。
「どうだ?いつもと違うか?」
<そうですね・・・・・やっぱりエンジン部分に違和感があります。システムは以上なしで~す>
「もう戻っていいよ。今夜はホテルでご馳走だ」
<ホントですか!?>
エリナが元の姿に戻る。
「ドレスでもあればいいんだけど・・・・欲しい?」
「えっ・・・・そんな、朝にあれだけ買ってもらいましたしマスターには・・・・」
エリナの表情が暗くなる。少し、買いすぎたと思っているようだ。
「大丈夫、あれは手持ちの金額だ。銀行に使い切れないほどあるから」
これは本当だ。普通の部隊と違って実験品を取り扱うから万が一、事故を起こして怪我をしたり死んだりしたら後払いなんて信用できないので装備した時点で銀行に危険度を想定した金額が振り込まれる。一度に多く装備すればそれほど多くの金が入る。
たまに傭兵やアルバイトなどと言われる。だが、基本的な給料は少ない。通常よりも2割少ない
「お~い、渥美。俺も着いて言っていいかぁ?」
コクピットから身を乗り出して聞いてきた。
「別にいいけど早く終わらせないとお前の財布から金抜くぞ~」
「ああ!てめっ、きたねぇマネすんなよ!」
怒りながら急いでキーボードを打つ
「全く、いつも最後なんだから」
美紀が飽きれて大型の工具箱の上に座ると、その隣に端末を抱えたホノカが座る。
2分後、レイナが待ちくたびれて実体化した。
さらに2分後、やっとコクピットから降りてきた。
レイナはミサイルキャリヤーの上で寝転がり、雑誌を読んでいる。整備士が止めてくれと言うと近寄って色気を使う・・・するとたちまち整備士の鼻の下が伸びて言いなり状態に・・・・・・
「はぁ・・・・・引きずり降ろして来る」
そう言い、近寄っていく・・・・
「お・り・ろ!」
キャリヤーを揺すり、落す。
「いたッ!な~にすんのよ」
「あ、口答えするならお前の今日の晩飯は抜きだな」
「う~・・・・・」
むくれながらこっちに歩いてくる。


ハワイ市内、11月4日時刻午後7時22分
「これなんかどう?エリナ」
「その赤い方は?レイナに合ってるよ?」
3人があれこれ選ぶ、美紀も一緒になって試着などをしている。当然、男二人はやる事も無くただ待つだけだ。
10分後、気に入った物が見つかったようだ。
それぞれ支払いを済ませる。
店の外に出るとだいぶ暗くなっている。頭上を轟音と共に哨戒機が飛び去る。
適当にタクシーを捕まえて艦長指定のホテルへと向かう


ホテル個室、同日時刻午後8時12分
「どうですか?」
淡い青色のドレスを着たエリナがご機嫌に回ってみせた。
「うん。似合ってるよ」
ドアをノックする音がする。
ドアを開けると坂本たちがいた。
それからホテルのレストランへと向かった。
当然、女組はドレスに身を包んでいるが、男組は式典用の軍服だ。
「どうしてそんなもの着てくるのよ」
「ラフな服でもいいのか?それこそイヤだろ」
レストランはまばらに人がいるぐらいで、特にこの服装でもよさそうだ。
ただし、ウェイターは顔を少し曇らした。
予約をしてあったのかすぐに通される。
「このメンツでの外出も久しぶりだな」
「確かに。私達は哨戒で暇なときが無いから」
その後、皆で滅多にない休暇を楽しんだ。


乾ドック内、休憩室、11月5日、時刻午前8時42分
上を見上げると天井は所々に亀裂が走っている。
今度のソナーは金属探知機の役割も担っており、どれだけECMやデコイを出そうが一目で居場所が分かる。
そのほか、兵装も一部変更される。
最も驚いたテストがMLシステムを空母に装備させるというものだ。
全MLシステムを用いた戦闘機の様々な統計を取ると興味深い結果が出た。
それは、システムの覚醒までの期間の長さだ。一般的には5ヶ月から6ヶ月の間に覚醒するが稀に、3週間や一番早いもので1週間での覚醒が記録されている。
覚醒が早いペアにはとても深い絆がある。結果的には機体をどれだけ愛してきたかが影響しているらしい
「明日の0200時には完全チェックも終わり、出撃できる。」
技術士が伝えに来た。
「了解した」
テーブルの上にはSu-47の被弾した時のガンカメラの画像が置かれていた。
「艦長・・・・この機体は彼女のでは?・・・でも設計などが漏えいしたとは考えられないですし・・・」
その画像にはSu-47特有の前進翼にカナード翼が写っている。シルウェットはSu-47にそっくりだ。
ひとりで考え込む大木に一言。
「優美な乙女でなければ、あばずれだろう」
そう言い残し、休憩室を出て行った。
一歩外に出ると作業音と声が響いていた。


「鳳仙花」ブリーフィングルーム、同日、時刻午前11時19分
パイロットに戦闘要員が集められた。
「今、南極に敵艦が集結している。今は小規模だが新兵器が確認されている」
新兵器と言う言葉に一同の顔に動揺が見えた。
「今は11月だ。相手もこちらも下手には動けない」
この時期、南極には氷河があるので破砕船無しには進めない
手間取っている間に敵に見つかって攻撃されるのが目に見えている。
そこで一度、横須賀まで戻って部隊を増やして「瑠璃菊」と合流し攻撃力を上げる。
「主力艦隊を裂いて艦隊を作ると言う事は相手の勢力も弱ってきた。終戦も近いだろう・・・・ブリーフィングは以上」
全員が立って敬礼、その後は各自の持ち場へ帰る。
その後は何事も無く、日が過ぎていった。


ハワイ、オワフ島真珠湾基地、11月12日、時刻午前7時23分
今日、アメリカ本土から基地で不足している機体と駆逐艦などを補充する事になっている。
5機と4隻が来る事になっている・・・・だが、写っている影は8機に6隻・・・・
[8機と6隻?レーダー感度の具合じゃないのか?]
「間違いない。明らかに情報と違うぞ、警戒空域に接近している。ドラゴン1、2は直ちに向かえ」
[了解。ドラゴン・ワン]
[ツー]
F-15FFG/25が2機編隊で向かう。
[友軍に告ぐ。貴官らは事前通告のコースを逸脱してい・・・・・]
通信がそこで途切れ、レーダーからドラゴン1、2が消える。
「全機、スクランブル!全機、スクランブル!出撃できる艦隊は直ちに出撃せよ」
その報せは鳳仙花にも届いた。

「鳳仙花」フライトデッキ、11月12日、時刻午前7時26分
[スワロフ、ナイト各機は直ちに発進・・・繰り返す・・・]
「くそっ!」
急いで乗り込み、エンジンスタート。
デッキクルーの誘導で第1カタパルトにセットされる。
隣の第2カタパルトには、スワロフ・ツーが待機している。
シューターが安全を確認し手話で発進して良しのサインを送り、ラフな敬礼をする。
それに答え、それを確認したシューターが発進方向を指差した。新エンジン搭載のsu-47Berkut・ELINAが出力を上げる。
ノーズギアが沈み、機体が打ち出される。
「最悪なエンジンテストだ。」
<マスター、敵機はFX-10だと思われます。艦影は空母が1・・・・後は駆逐艦です>
「分かった」
全機が発進し編隊を組む・・・・・・・


オワフ島沖、11月12日、時刻午前7時36分
先に飛び立ったアメリカ空軍と海軍が相手をしていたが不意を突かれたせいで本来の戦力が発揮できていない
「スワロフ・リーダーから各機へ。敵機を確認後は各自で応戦。」
[了解、ツー]
[スリー、ラジャー]
次々と了解が帰ってくる。
ホワイトナイトは降下し攻撃態勢を取っている。
上空をワイルドキャッツがゼロを率いて飛んでいる。
[艦影捕捉。データライブラリと照合・・・・護衛艦狩りとの戦闘で使用された空母と断定!]
その報せに新しくなったCIC兼艦橋で艦長が焦っていた。
「全艦停止!艦砲射撃用意!砲撃開始!」
全ての艦載砲が火を吹き、海面に落ちる。
「全て外れました!・・・・ホワイトナイトから報告・・・これはECMの一種です!右の小島の陰に空母!」
「殺れ!本艦は停止!他の艦はポイント254に移動し砲撃をしろ!」
急いで指示を出す。その時、頭に痛みが走った。
<私が必要でしょう。私でよければお手伝いします>
「くッ・・・・・」
隣で大木も頭を抱える。見渡せば、司令室の全員が頭を押さえていた。
勇気を出して返事をする。
「ああ、手伝ってくれ・・・・」
そう言うと全ディスプレイに変化があった。
《Give me use authority of an F.C. system. From housenka...》
全ディスプレイに表示された文字に全員が呆然とした。
「ホウセンカ?・・・・・」
「MLシステムなのか?これが・・・・・」
「言うとおりにしろ」
「りょ、了解」
火器管制システムをマニュアルからオートに切り替える・・・・・
また、ホウセンカからメッセージが来た。
《an attack start. I fire anti-ship missile 1~10》
「自動で攻撃目標を確認しただと・・・・・・」
フライトデッキの右端にあるゴッドブレスMk.12 VLSが一斉に火を噴き、目標まで飛んでいく。
またホウセンカからメッセージが来た。今度は日本語で・・・・
《目標の空母は今のミサイルを迎撃し、破壊すると想定されます。直ちにホワイトナイトを誘導します。》
そうディスプレイに表示、だが通信システムにホウセンカらしき声は確認できない


オワフ島沖上空、11月12日、時刻午前8時25分
<ホワイトナイトへ。ポイント659に向かい、敵空母を攻撃せよ>
<どなた?>
レイナが問いかける。
<ホウセンカです。今意識が戻りましたけど大変な状況ですね>
「いや・・・大変な状況なのは見て分かるけど・・・・とにかく、ポイント659に向かえばいいんだな?」
<そうです。空母以外に駆逐艦が2隻いますので注意してください>
「ナイト各機へ、ポイント659に向かう。スリーまでは空母を攻撃。他は周りの艦船を攻撃」
一気にパワーを上げる。
数分後、目視で空母が確認できた。上空には機影が無く、攻撃には最適だった。
「攻撃開始!」
<あの横っ腹に大穴を開けてやるぜ!モスキート2本準備良し!>
「うし!食らいついて来い!」
三機からそれぞれ2発のモスキートが高速で空母の横っ腹を目指す。
そして、着弾。空母から炎が上がる。数秒後、弾薬庫に引火したのかフライトデッキを吹き飛ばして大破した。
周辺の駆逐艦も煙を上げて沈黙している。
[全機、撤収!鳳仙花の防衛に向かう]
その頃、鳳仙花の前方で空中戦が起こっていた。
「くそッ!すばしっこくて目標が捉えられない!」
<マスター!5時の方向に敵機4・・・・あぁ!1機が米軍の駆逐艦に激突!凄い量の爆発物を搭載しているようです!>
急降下して海面擦れ擦れを高速で飛ぶ
「・・・・さて、どれだけ出るか・・・」
<もう少しで目標を捕らえます>
計器を見ると桁違いの速度で飛行していた。なんとマッハ3.8・・・・
「エリナ、特に異常なないか?」
<やはり機体が揺れていますね・・・・ターゲット、インサイト>
ミサイルシーカーが小刻みに電子音と共に目標に重なって行く・・・そして重なった瞬間、長い電子音がなる。
シートにグッと押し付けれられているせいで声が出にくい
ミサイルの使用を示す符丁を言えるほどの余裕がなかった。
数秒後、敵機は回避できずに散る。そのほかの敵機は攻撃を中止し上昇する。



オワフ島沖、11月12日、時刻午前9時05分
「鳳仙花」のレーダーにはまだ空母1、駆逐艦が3隻映っている。
そしてまた、ホウセンカからメッセージが来る。
《増援を確認。攻撃を開始します。》
そう表示し、艦載砲が向きを変える・・・・が、ディスプレイに変化があった。
何かのシステムが一気に表示され目に見えない速さで読み取られていく。
そして50以上ものウィンドウが表示され、すぐに【消失】【LOST】と表示された。
「どうした。ホウセンカ」
《目標をロスト。周辺に艦影無し》
「消えた!?」
その後、謎の艦隊は姿どころかレーダーにも映らず、偵察機を飛ばしても発見できなかった。


ハワイ、オワフ島真珠湾基地、11月12日、時刻午後2時02分
遅い昼食を取る。流石にどの食堂も込んでいる。
3棟のうち、空きがあったのは第3食堂。空きと言ってもほんの少しだった。
無理矢理陣取り、坂本に金と食うメニューを言う。
「俺が食券係りかよ。まったく・・・」
「文句を言わない。さっさと言って来いよ、席を他の奴に譲るぞ?」
そう宣言すると、猛ダッシュで券売機に向かう。
「単純な男だな。お前のマスターは」
リエナが呆れてテーブルに突っ伏す。
「そうなのよ~・・・単純にも程があるよ・・・・・・」
数分後、テーブルにそれぞれの料理が並んだ。
入り口に席に着けなかった人が殺到しているので急いで食べ終わる。


「鳳仙花」自室 11月12日、時刻午後2時34分
「ふう・・・疲れた。仮眠でも取るか」
この前の改修で各部屋に簡易シャワールームが設置された。
そのシャワールームから水の音がする。恐らくエリナが入っているのだろう
気にせずに毛布に包まり、眠る。
数分後、何か柔らかいものが手に当たる。そして、耳に誰かの吐息が当たる。
少し目を開けると、エリナが隣でぐっすりと寝ていた。しかもバスタオル一枚で・・・・
呆然と見ていると運悪く、レイナがノックもなしに侵入、この光景を目の当たりにする。
「あれぇ~?もしや、お楽しみの途中だった?こりゃ、失礼。では、私はこれで」
「あ!こ、これは・・・」
止めようと声を出すが、高速で逃げ出したレイナにはもう、声は届かない


食堂 11月12日、時刻午後2時43分
入って早々、酒井が近づいてきた。
「渥美よ・・・いくらなんでも・・・いや・・・なんでもない」
席の端でぐゃ~とにやけているレイナを発見。速攻で首根っこを掴んで個室へ入る。
「いや・・・・およしになってぇ~」
甘い声を出してわざと頬を染める。
「この変態女がぁ!」
勢い良く、レイナの頭をチョップする。
「イタッ!何すんのよ!変態はあんたでしょ!?」
「俺は寝ていて起きたら隣にエリナがあの姿でいただけだ!」
急につまらなそうな顔をする。
「なんだ。てっきりやったものだと思っちゃった。」
もうレイナなんか無視して、新聞を持って部屋に戻る。

「鳳仙花」自室 11月12日、時刻午後2時49分
「すいませんでした。バスタオル一枚で布団にもぐったりして・・・」
エリナがしゅんとしていた。
「別にいいよ。寝顔も可愛かったしね」
「ふぇ!?潜り込んだことを知っていたんですか!?」
頬を染めて言う。
「うん。しっかりとは覚えてないけど」
頭から蒸気が出そうなほど、エリナの顔は赤くなっていた。
それを半ば無視して戸棚に入ってる一枚のCDを取り出す。
「それは・・・あの曲ですか?」
「ああ、原曲だよ。you Raise Me up」
曲を流しながら新聞を読む
どの記事もクーデターを取り上げている。
いつかは分からないが、終戦に近づいていることは確かだ。
隣を見ると、またエリナが寝ている。
しょうがないので自分もエリナの隣に潜り込み、布団をかぶって眠る。

次回へ続く・・・・・・・



 2008/02/18:アルトマンさんから頂きました。
秋元 「空母にMLSですか。外機では本来、実現不可能となっています。理由は第3外機第20話で」
「でもね、私って本当は雛菊のMCだったのよ。最初期の段階では」
アリス 「……あ、カミングアウト」
秋元 「後半出番なくなるからって、ブラック・レイにしちゃったんだよ(笑)。艦艇MLSについては、まぁ秘密」

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