僕が生まれる1年前、あの世界を巻き込んだ戦争が終わりを告げたとき。僕は故郷を失った。いや僕だけではない、あの時いたすべての日本人は自国の敗戦とともに故郷を失くした。

ドッグファイト 蒼空の戦士達
第1話〔波乱とともに・・・〕


1995年8月10日。アメリカ合衆国・ジパング州・仮設飛行場の格納庫の側で紅に染まる空を眺めながら今はなき故郷を夢見る少年がいた。かざみ風見しゅん隼それが彼の名だ。
「故郷か、いつか自分の目で見てみたいな・・・」
そう誰に言うでもなく呟いた時だった。突然格納庫に設置されている航空機用無線機がコール音を発した。隼は急いで格納庫の中に駆け込み無線機のインカムを手に取った。
「こちら、ジパング州立仮設飛行場、今インカムを取りました。官制名をどうぞ。」
「隼か!?ちょうどよかった!」
その声を聞いて隼は愕然とした。なぜなら、無線の相手は半年前から生活費=全財産とともに雲隠れして行方知れずになっていた自分の実の父親だったからだ。
「父さん!?今までどこに行っていたんだよ!行き先も告げずに半年も雲隠れして!その上生活費も一緒にもって行っちゃてなに考えているのさ、そのせいでこっちは大変だったんだからね!!」
「お?そうだったか!?悪い、悪い!!」
ぜんぜん反省していないのは無線機を通しても十分、分かった。それにあきれつつも隼は尤もなことを無線の相手に尋ねた。
「・・・まあいいや、何事もなくってほっとしたよ。それで、後どのくらいで帰ってこられるの?無線機が使えるって言うことは近くなんでしょ。」
「そうだな、後5分くらいでそっちに着く予定だ。ついでにいい土産も見つけて持ってきたぞ。たぶん、いや見たら絶対にぶったまげるぜ。」
「ぶったまげるって・・・いったいその土産って・・・」
「それは着いてからのお楽しみってやつだ!じゃーな!!」
そういうと一方的に無線を切られてしまった。「あっ、こら!切るな!」そう叫んでも相手に聞こえるはずもなく帰ってくるのはノイズ雑音だけだ。隼は一気に脱力した。
「まぁ、父さんのあの行動も今に始まったことじゃないし、諦めるしかないか・・・」
そう心の中で呟き、隼は管制塔へ走った。
管制塔に着くと隼はすぐに壁にぶら下げてあった双眼鏡を手に取り、辺りの空を見回した。しばらくして東の空に小さな黒点が現れた。
「あれかな・・・?」
その黒点は最初、蠅くらいの大きさだったがすぐに距離を詰めてその体積を増していった。それにより、その機体が何なのか理解したとき隼は驚愕した。
「嘘でしょ・・・」
そういうのも無理はない。なぜな、その機はただの飛行機ではない。二式大型飛行艇、旧日本軍が運用していた大型飛行艇だ。まさかアレを買うために全財産を持ち出したのでは・・・そんなこと流石にありえないよね、ありえないはずだ、うんありえないよ。隼が心のなかでありえないという言葉を何度も呟いているときだった。とつぜん無線機のスピーカーから聞きなれた男の声が聞こえてきた。
「こちら二式大艇、管制塔!誰か聞こえるか?」
その声を聞いてわれに返った隼は無線機のマイクを引っ掴んだ。
「父さん!?」
「おっ!隼か。これからこいつで着陸するからよ、ランウェイ(滑走路)の誘導灯を点けてくれや!!」
「着陸するって、本気で言ってるの!?この空港は仮説空港で滑走路が短いことは知っているでしょう!!そもそも飛行艇じゃ車輪がないでしょうが!車輪が!!」
尤もな意見だ。元来、飛行艇には車輪など存在しない。水の上を滑るように離着陸するために機体の下部が船の様になっているのだ。そのために陸地には着陸できないのである。それは飛行機に詳しいものであったら誰でも知っている常識であった。だがこの常識は次の一言で粉々になった。
「車輪だぁ?そんなもんとっくに付けてあるわい!!」
・・・
「はい?今、なんて?」
何とも間の抜けた問い掛けである。
「何度も言わせるなよ!だから、この二式大艇には車輪を付けてあると言ったんだ!!」
隼はこのとき、父が雲隠れしている間におかしくなってしまったのではないかと本気で思った。だがすぐにこう思い直した。確かにあの人だったらそれくらいやりかねないなと。そう結論付けるが早いかすぐに誘導灯を点灯した。滑走路が明るくなっていく。その様子を眺めながら隼はふと思った。あんな無茶苦茶な父を持つことになるほど僕はそんなに日頃の行いが悪かったのだろうか・・・?・・・いや、考えるのは止そう、疲れてくる。
一人っきりの管制塔の中で隼は深いため息をついた。
息子をからかい、風見鷲は上機嫌で操縦桿を握っている。それを見かねた女性パイロットが鷲の頭をぽかりと一つ叩いた。
「イテ、何すんだよ!?エディ!」
鷲はそういって隣の副操縦席に座っている女性パイロットを睨みつけた。一方、睨まれた方も負けじと言った。
「・・・あんたねぇ、息子なんだからもう少し大事にしてやったらどうなのよ!!奥さんもクサバノカゲで泣いているわよ!!」
「うがー!うるせい!いいじゃねーか、ちゃんと土産もあるんだからよ!」
そういって貨物室の方を顎でしゃくった。大小さまざまな木箱がところせましと詰まれている。
「そういう問題じゃなくて・・・それ以前にアレは土産と言うより拾い物じゃないの・・・」
「・・・なんか言ったか?エディ?」聞こえなかったの?皮肉を込めてそう言いたかったが、エディは今誰が操縦桿を握っているのかを思い出し危うくその言葉を飲み込んだ。「んじゃま、Touching down(着艦)行きますかね!」
「はい、はいっと、滑走路まで後500メートル、風向きは北東から南東へ毎秒二メートル。」
「へっ、目を瞑ってでも着陸できるな、こりゃ。」
そういって計器版に新設されたつまみを捻った。車輪を降ろすためのスイッチだ。
「・・・ねぇ、本当に大丈夫なの?」
普段は海兵隊の屈強な男たちともまともに渡り合えるほど男勝りな女性だが、この時ばかりは顔から血の気が失せていた。
「何が?」
「車輪のことよ。」
「安心しろ、俺の改造はいつでも完璧だ!」
「・・・いや、あんたの改造だからこそ怖いのよ。逆に・・・」
それを聞いて鷲は不適に微笑みかけた。目の前に地面がどんどん近づいてきた。地上まで後400メートル・・・300・・・200・・・100・・・
「・・・そろそろ来るぞ、歯食いしばっとけ!」
次の瞬間、衝撃が身体に伝わってきた。車輪が地面についたのだ。だがここでエディは妙な違和感を覚えた。すぐにその違和感の正体が分かった。機体の速度が速すぎる!このままでは滑走路をオーバーランしてしまう。そう思ったときだった。今までハイスピードで、動いていた機体が突然ストップした。どうして急に止まれたのか?その答えは簡単だった滑走路の表面に着艦用のロープが張り巡らせてありそれに機体後部にあるフックを引っ掛けたからだ。もともとこれは、空母に使われているもので狭い滑走路甲板で着艦する艦上機を止めるためのものだ。だが動いているものを強制的に止めるものだけに衝撃はかなりのものだ。そのうえさっきも説明したようにもともと艦載機のような小さな飛行機を止めるものをこんな大型機に使ったのだ、その時の衝撃は艦載機のそれとは比べ物にならないほど激しいものとなる。エディもその衝撃に眉をしかめた。
「・・・流石に今のは堪えたわ・・・だけどまさか本当に着陸できるとわね・・・」
「当たり前だ。だから言ったろ?俺の改造はいつでも完璧だってよ!!」
さも当然と言い放つ鷲の姿が可笑しくて、エディは笑い出した。

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あとがき

はい、というわけで第1話書かせていただきました。

まず最初に突っ込みどころ多すぎて申し訳ありませんでした!!!

もう自分の文才のなさに涙するばかりであります。

こんな三流小説家でありますが一生懸命やらせていただきますのでどうかよろしくお願いします。



裕之兵曹長



 2007/03/24:裕之兵曹長さんから頂きました。
秋元 「二式大艇ですか!(笑) これまたマニアな親父ですねぇ」
アリス 「……東京にあるうちに見に行きたかったですね」

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