ACE COMBAT ZERO THE BELKAN WAR −全ての始まり−




ACE COMBAT ZERO THE BELKAN WAR
−全ての始まり−

第1話 凍空の猟犬〜鬼神の初陣〜

――あいつらか
――ああ 知っている
――話せば長い
――そう 古い話だ
――知ってるか?
――エースは3つに分けられる
――強さを求める奴
――プライドに生きる奴
――戦況を読める奴
――この3つだ
――あいつらは――――

2005年11月25日
大陸戦争が終結したから約2ヵ月後のユージア大陸ノースポイントのとある場所でブレット=トンプソンはベルカ戦争で「片羽の妖精」と呼ばれたエースパイロットに接触していた
「彼は『片羽の妖精』と呼ばれた傭兵……彼の相棒であり、私が追う『ある人物』の元同僚…」
10年前、世界を巻き込んだ戦争があった
――『ベルカ戦争』
その空に軌跡を描き、歴史から一旦消えた戦闘機乗りがいた
畏怖と敬意の狭間で生きた一人の傭兵…
私は『彼』を追っている
そして、『片羽』の言葉で物語の幕は上がる
「あれは雪の振る寒い日だった…」



1995年4月2日
ユウイチたちは基地司令に呼び出されてブリーフィングルームに集まっていた
「集まったな。偵察に出ていたSR−71から連絡が入った。ベルカ空軍の爆撃機が護衛機を引き連れてこのヴァレー空軍基地に接近中だ。基地の防空機能は脆弱であるため張子の虎も同然だ。任務はヴァレー空軍基地到達前に全ての爆撃機を撃墜することだ」
「「「「「了解!」」」」」
ブリーフィングルームに集められたパイロットは全部で5人
ウスティオ空軍第6航空師団第66戦闘航空隊ガルム小隊に属するユウイチ、ラリー、バートレットの3人と同空軍第7航空師団第1航空隊テュール小隊に所属しているマルス=フォーシアとタクト=シイナである
第7師団はヴァレー空軍基地で実験として配備されテストを行っていたMLシステム機の運用部隊である
現在の編成はJ−35Jドラケン、MIG−21−93フィッシュベットの2機に加えて偵察のために出ているSR−71ブラックバードの3機である
「だが、MLシステムってもんをいまひとつ理解できないんだが…」
「ソユ中尉に説明してもらってはどうです?」
バートレットの呟きにソフィアがある人物の名前を挙げながら答える
ソユ中尉とは実質的にMLシステム機の開発を提案したウスティオ軍技術開発部航空部門(TA)所属システム軍団MLシステム開発部の若手であり、蒼晶石研究の第一人者でもあるトモタダ=ソユ中尉であり、若干21歳の青年だ
「呼んだか? ソフィア?」
「はい。バートレット大尉がMLシステムについて解説してほしいと…」
名前を呼ばれたためソユが会話に参加してきた
ソフィアに頼まれた彼はバートレット相手にMLシステムの説明を手短に開始した
「要するに、過去に悲惨な目に遭ったパイロットの残留思念によって誕生するのがソフィアみたいな精神生命体ってわけか?」
「そうです。搭乗者とMCがリンクすることによって現行の戦闘機を遥かに凌ぐ性能を発揮させる…それがMLシステムです」
ソユの解説にバートレットはなるほどと納得しながら頷きながら格納庫へと向かう



同じ頃、格納庫ではバートレット以外のパイロットが話している
「ウスティオ軍がMLシステムの実用化に成功したということは、俺たちのおかげでもあるな」
「はい。私たちの実践データが役に立ったようです」
ラリーの言葉にソフィアが続く
彼らの目の前には2人の男性と2人の少女が居る
無論、少女の方は精神生命体である
1人は神話などに登場する竜の翼と尻尾を付けており、もう1人はごく普通の少女の姿だ
「えと、あの…その…リルです」
「姉さん、もう少しリラックス。エルテアよ。よろしく」
竜娘がリル、少女の方がエルテアというらしく、それぞれが挨拶をする
どうやら、覚醒した時期が近いのか2人は姉妹のような関係のようだ
それぞれJ−35JとMIG−21−93を媒体としている
「まさか、片羽の妖精もMLシステム機を使っていたなんて…」
「それだから活躍できることもある」
そう口々に言うのはリルとエルテアのマスターであるマルスとタクトである
マスターたちを横目にリルたちはもう一人の仲間を心配する
「と、ところで、偵察に出撃したレンはちゃんと戻ってくるのかな?」
「大丈夫よ。レンはああ見えてもしっかりものだから」
レンとは偵察に出撃したSR−71の精神生命体である
つまり、ヴァレー空軍基地には最低でも4人の精神生命体が存在することになる
一方のユウイチはタクトの息子であるアキト=シイナと遊んでいるアヤト、ユウカの姿を見ていた
「この作戦に失敗すればあいつらも死んでしまうか…」
迎撃が失敗すればヴァレー基地が焦土と化すことは確実だろう
それだけは阻止しなければならない
「すまない。遅れた」
ソユの説明を聞いて遅れたバートレットが到着したことから各パイロットたちが自分の機体のコクピットに滑り込む
ユウイチはアヤトたちに外部スピーカーで言う
「いい子で待ってるんだぞ。父さんはすぐに戻ってくる」
「わかってるよ〜。それまではアキトと遊んでる」
アヤトがそう答えるのに安心しながら彼は自身の機体であるF−15Cイーグルを滑走路向かわせる
既に滑走路では第7師団の機体が発進し、次はラリーのF−15C・ソフィアとバートレットのF−14Aトムキャットが離陸を開始する
「こちら、ガルム1。これより離陸する」
ユウイチがそう告げると彼のイーグルが加速し、ヴァレー空軍基地の滑走路から飛び立った


ヴァレー空軍基地上空 13:00

「降ってきたな」
「ああ」
ラリーの問いかけにユウイチは呟く
外では雪が降っており、眼下には白い雪山が広がっている
ガルム、テュール両隊の所属機全てが上がったことを確認した基地司令から通信が入る
「こちら基地司令部。全機上がったみたいだな。ガルム2、3はガルム1、テュール2はテュール1の指揮下に入れ」
「「「了解」」」
猟犬ガルムとそれと相打ちになった剣神テュールの名から取ったそれぞれの飛行隊は編隊を整えて飛行する
「方位315、ベルカ軍の爆撃機接近」
「雪山でベイルアウトなんざ、ごめんだぜ。頼むぞ、一番機」
「了解」
バートレットからそう言われたユウイチは苦笑しながら答える
一方のラリーは基地司令に告げる
「報酬はきっちり用意しとけ」
「互いが無事であればな」
彼のその言葉に基地司令が苦笑しながら答える
その会話にユウイチも参加する
「お財布握り締めて待ってろよ。すぐに片付けてくる」
「とりあえず、給料分くらいの活躍はしないとな」
バートレットは正規のオーシア軍人であるため、基本的には給料なのだが現在は補給戦が寸断されてオーシアに帰還できないためウスティオ軍から手当てを支給されている
そこへ先行しているマルスからの通信が入る
「こちら、トリック。敵爆撃機を捕捉した。エコーと共に攻撃に移る。エンゲージ」
「了解」
トリックはマルス、エコーはタクトのタックネームである
彼らのJ−35JドラケンとMIG−21−93フィッシュベットは敵編隊に突っ込んでいく
それに続くかのようにガルム隊も敵編隊に向かう
「両隊へ。敵爆撃機を全機撃墜せよ。基地には到達させるなよ」
基地司令からの命令が下り、ガルム隊3機も敵編隊に向かう
そこへラリーから通信が入る
「ユウイチ、高いプライドは命取りになるぞ?」
「ほっとけ。それが俺の主義なんだ」
3年前のユージア紛争でも共に戦ったことのあるラリーはユウイチの戦い方である攻撃目標以外には手を出さないに関して言っている
他の言い方をすれば騎士道…ユウイチの場合は武士道を突き通すことが彼の主義である
「まあいいか…さっさと片付けてホット・ワインでもやるか」
「付き合わせてもらう」
バートレットも通信でそう言うと、2機のF−15Cと1機のF−14Aもそれぞれ散開して迎撃を開始した
先に突入したドラケンとフィッシュベットは迎撃に向かって来たF−5Eが2機に真正面から挑んでいく
「さて、ようやく初陣だ。リル、やれるな?」
《は、はい。なんとかやってみせます》
マルスの問いかけにリルは頼りない返事をするが、それは彼女の性分なので仕方がないと彼は思う
「来るぞ。エルテア!!」
《任せて。マスター》
エルテアもタクトの声に冷静に答えると2機は敵機に機関砲を浴びせかけて撃墜
先鋒の護衛機が撃墜されたことでベルカ側の護衛機はドラケンとフィッシュベットに群がる
「数が多いが…やるしかない!!」
《お、お手伝いします!!》
マルスの言葉にリルが続く
ドラケンには旧式戦闘機であるF−106Aデルタダートが2機編隊で向かってくる
その機体に目を疑うマルスとリル
「デ、デルタダートだって!? なんだってそんな旧式!?」
《戦域を広げすぎているのでしょうか?》
当然ながら旧式戦闘機がMLS機に適うはずもなく、真正面から挑んできたF−106AはファルコンAAMを撃ち込まれて2機とも撃墜される
タクトの方もF−4EとF−5Eを同時にロックオンし、AA−2を撃ち込んで撃墜する
「く、くそ!!」
「こ、こんなところで!!」
《な、何!? この声!?》
エルテアは突然自分の脳裏に響いてきた声に恐怖を覚える
その様子にタクトが声を掛ける
「残留思念ってやつだろうな……大丈夫か」
《え、ええ。初めてだからちょっと…》
この答えに彼はエルテアが戦いに向いていないのではないかと思うが、再び向かってくる敵機に考える時間を奪われた
サイファーとピクシーのイーグルは爆撃機部隊の先鋒を務めているB−52を捕らえた
「行かせるわけにはいかない!! サイファー、フォックス・スリー!!」
ヘッドオンでAIM−120を発射し、回避行動に移ったB−52の右主翼を粉砕した
爆撃機からは搭乗員たちが脱出していくのが見える
その様子とユウイチのイーグルのカラーにベルカ軍側に動揺が走る
「くそっ!! アイツはウスティオのエース『蒼穹の荒鷲』!?」
「『蒼穹の荒鷲』だと!? あの3年前のユージア紛争での英雄『スカーフェイス1』じゃないか!?」
どうやら彼の名前はベルカ空軍にも轟いているらしく、それなりに恐れられるパイロットなのだ
また1機のJ−35Jがサイファーに落とされる
F−4Eが迎え撃つが、バルカンで蜂の巣にされて墜落していく
「死にたくない奴は俺の前にでるな!!」
ユウイチはそう叫びながらなおも向かってくるベルカ軍機をロックオンする
隣ではピクシーのイーグルがAIM−120を発射し、2機目のB−52を撃墜する
「相変わらずの腕だな」
「そっちもな」
《マスター…上空に敵機》
ソフィアの呟きにラリーが上空を見やると高空を飛行している一機の爆撃機を発見する
その敵機は長距離超音速爆撃機として有名なXB−70ヴァルキリーである
ラリー自身もユージア紛争で始めてユウイチと組んだ作戦「RISING HIGH作戦」にてこの機体と出くわしたことがある
「XB−70ヴァルキリーだと!? ベルカはあんな骨頂品まで持ち出してきたのか!?」
彼はそう言いながらも自機を上昇させてXB−70の高度に追いつくと一気に距離を詰めにかかる
一方でXB−70のパイロットも後方から迫るイーグルを確認する引き離そうとするが、時既に遅しだった
「ピクシー、フォックス・スリー!!」
AIM−120を発射、XB−70は6基あるターボジェットエンジンの内3基が破壊され、高度を落としていく
瞬時にラリーは下降すると爆撃機の第3陣に当たるBM−335部隊に上から襲い掛かった
その中の1機を彼は20mmバルカンをぶち込んで両翼のエンジンから火を噴かせた
同時に煙を上げながらBM−335が墜落していく
「金に群がる傭兵が!!」
彼とソフィアの脳裏にその言葉が聞こえてきた
エルテア同様に残留思念が聞こえたが、彼女はユージア戦争の頃から聞いているため慣れてしまっている
「ちっ…ソフィア? 大丈夫だな?」
《はい。ユージア紛争の時は辛かったですが、今はもう大丈夫です》
ラリーはそれを聞いて安心し、後方から20mmバルカンを撃ってくるF−4Eを振り切って後に回り込むとサイドワインダーを発射して撃墜した


「あれがウスティオのエースである『蒼穹の荒鷲』と傭兵『片羽の妖精か』…すごいな」

バートレットは2機の活躍を見て呟きながら目の前のB−52にAIM−54を発射する
命中率が低いことで有名なフェニックスであるが、動きの鈍い爆撃機相手なら命中させることは容易い
フェニックスを命中させられたB−52は墜落していく
「またやられたぞ!?」
「残りは2機だ!! なんとしても守りきれ!!」
ベルカ側の護衛機はなんとしても残っている2機のBM−335を守りきる覚悟だ
既に1機がエンジントラブルで離脱したが、この2機を逃すわけにはいかない
バートレットも敵爆撃機に向かおうとするが、彼のトムキャットの前に色の異なるF−5Eが向かって来た
「敵のエースか!? ハートブレイクワン、フォックス・スリー!!」
当たる確立は低いが、囮役くらいにはなると思い彼はAIM−54を再び発射
案の定、回避行動に移ってフェニックスを避けたF−5Eだが、バートレットはそれを予測してF−5Eの後方に回り込んだ
「チェックメイト……てな!!」
20mm機関砲を撃ち込まれた敵機は四散するが、どうやらパイロットは脱出したようだ
バートレット機の後方からなおもJ−35JがファルコンAAMを撃ち込んできたが、彼はそれを回避するとヘッドオンに持ち込んで瞬時に機関砲をドラケンに撃ち込んで撃墜する
護衛機はバートレットとテュール隊に任せてサイファーとピクシーは残りの爆撃機に襲い掛かる
「1機ずつだな」
「ああ」
「「フォックス・スリー!!」」
同じタイミングで2機のイーグルからAIM−120が発射され、残っていた2機のBM−335を撃墜した
敵爆撃機の全滅を確認した司令部から通信が入る
「基地司令部からガルム隊、テュール隊へ…敵攻撃部隊の迎撃に成功。ヴァレー空軍基地を甘く見たようだな。ベルカの奴らも身に沁みたはずだ」
反撃の狼煙にはふさわしい戦いに基地司令も満足しているようだ
「逃げ帰ったベルカの奴らが上に戦果報告する様を見てみたいもんだ」
その言葉にパイロットたちの間で笑いが起きた
確かに、敗北寸前であったウスティオ軍に敗れたとあっては面目丸つぶれだ
ユウイチにはラリーが通信回線で声を掛けてきた
「またよろしく頼む。相棒」
「こっちこそな」
彼はその言葉に力強く答えた




「そう。あの雪の日が始まりだった。久しぶりに会ったアイツは相変わらず筋は良かった」

ラリーはブレットにそう答える
ベルカ戦争から既に10年…
ラリー自身も2003年から始まった大陸戦争にISAF陸軍に志願兵として参加していたが、2004年の中頃から再び空に舞い戻り、ISAF空軍内でリボン付き、双子星などのエースパイロットについでエルジア軍に恐れられたのだ
「やはり、大陸戦争で空に戻ったのも彼に関係が?」
「まあな」
そこへ別の部屋から1人の女性がコーヒーを運んできた
「マスター…お話の方は?」
「ああ。ヴァレーでのことが終わったところだ」
ブレットはマスターと呼んだことから彼女が話の中に出てきた精神生命体であるソフィアであると確信する
緑の髪と灰色の瞳、白いローブでラリーよりも10cmほど低い身長…
彼女を見たブレットの第1印象は人間とほとんど変わらないであった




あとがき
あくてぃぶF−15さん同様にラリーはMLS機にしてあります
ベルカ側はグリューン、インディゴ、シュネー、ゴルトがMLSの予定ですが、こちらの設定ではベルカ側でのMLS機はまだ試作段階なので隊長機のみに搭載されているということになります
現実組からはまずリルとエルテアの2人を登場させました
外機からも若かりし日の祖湯 智任少佐のご登場
年齢は5編の2010年で外機と同じ36歳なのでそこから−15なのでこの時は21歳です
性格もまだ宇和島軍曹みたいになってます
ちなみに、ZERO編ではFX−10デスティニー及びFX−11ヘブン・ランサーは登場してきません
無人機の本格的な出番は5編なので…
インタビューでは既に04編とのクロスオーバーが開始されてます
では、また



 2006/10/06:メビウスさんから頂きました。
秋元 「デルタダート……いいよ……デルタダート……もっといいよ、デルタダガァァッァァァア!!!」
アリス 「……(ジー」
秋元 「ギクッ)──ハッハッハっ、何か聞こえたかな? 今後は、エルテアのツンデレ発揮に期待(笑」

プロローグへ  第2話へ
戻る  トップ