ACE COMBAT ZERO THE BELKAN WAR −全ての始まり−




『ベルカ戦争』には謎が多い
終戦から10年経った現在、やっと一部の情報が開示された
私はその資料をすぐに入手すると同時にそれでは足りず出所不明な裏情報にも手を出した
私がそこまで掻き立てられたのには理由がある
この戦争は1988年のベルカ連邦法見直しに端を発する
当時 財政難に荒れたベルカは東側諸邦の独立を許した
ウスティオ共和国はこのとき誕生する
しかし ベルカの財政難は収まる事はなかった
一方でその流れに乗じて肥大化していく巨大国家オーシア…
その経済恐慌の中、ベルカ国内では極右政党が政権を獲得する
強く正当なベルカを取り戻すために…

1995年3月25日
ウスティオでの天然資源発見をきっかけについにベルカは隣国への侵攻を始めた
『ベルカ戦争』の開戦である
準備不足の各国は伝統のベルカ空軍の前に敗走
ベルカ戦争の3年前にユージア大陸で発生したクーデターに対してユージア正規軍の支援を行ったウスティオ軍も例外でなかった
紛争の英雄である『スカーフェイス1』を有するウスティオ軍も数日の内に山岳地を除く全域を占領下におかれた
そして、政府軍は正規軍の生き残りと外国人傭兵部隊による合同部隊を組織
オーシア、サピン王国との連合作戦に望みをかける


ここまでは 教科書にも載っている
だが 資料に奇妙な類似点を見つけた
1人のパイロットに関する記述…
そしてそこに残された『鬼』という暗号…
情報としては不十分なものが多い
だが 私はそこに惹かれた
私はこのパイロットを通してベルカ戦争を追いかけることにした
その先には何かがある
この戦争の隠された姿か、ただのおとぎ話か…
最終的に私はそのパイロットに直接会うことが出来た
存在はあやふやではなかった…
同時に『彼』と関わりのあった人物数人を突き止めることも出来た
『片羽』はその中の1人だ

第2話 171号線奪回

1995年4月15日ヴァレー空軍基地
ベルカ空軍のヴァレーへの空爆を阻止してから約2週間が経過した
その間もガルム、テュール両隊は同基地に残されていたブラックバード・レンの偵察によって攻撃目標を探っていた
さらに、同基地所属の第7師団の方には新たなメンバーが加わっている

「い、痛いじゃないの!! 不意打ちなんて卑怯よ!! このバラライカ!!」

「バラライカはそっちだろうが!! おっとスマイルスマイル♪」

新入りと思われる魔女っ娘とエルテアがなにやら言い合っているようだ
その様子を見て同じく新入りである女子高生の姿をした少女が呟く

「これだからフロッギーは…」

「調子に乗んじゃねえぞロスビフ!! 第一にACE COMBATだからイギリスもフランスもないでしょ!! おっといけない。スマイルスマイル♪」

どうやら魔女っ娘と女子高生は犬猿の仲らしく、睨み合った視線が火花を散らしている

「味方同士で何言っているんだよ!!」

最年少であるSR−71ブラックバードのMCであるレンが割っては言って仲介に入ろうとする
だが、年上である2人に睨まれてしゅんとしまう

「ミラ、いい加減にしておけ」

「リズもだ。味方同士で潰しあってどうする…」

ミラと呼ばれたのは魔女っ娘であり、リズが女子高生の方だ
それぞれのマスターであるフォルス=アドレードとシュライク=リキュールである
ミラとリズはそれぞれMIR−2000CとEF−2000タイフーンの精神生命体である
理由は知らないが、お互いにいがみ合っているらしい

「第7師団もにぎやかになりそうですね」

「ああ。隊長としては気苦労が増えるがな…」

レンのマスターであるホルスト=マーベラスからの問いかけに隊長であるマルスが答える
確かに、にぎやかなのは良いのだがこれで問題を起せば自分が始末書を書くことになってしまう
そこへ司令官からの呼び出しが来た


ブリーフィングルームに集められたガルム、テュール両隊のメンバーはさっそく司令官から今回の作戦の内容を聞かされた

「地上兵力の輸送活路を確保するには アルロン地方をはしるルート171を奪還せねばならない」

「171号線…ウスティオの補給ラインの生命線ですね?」

司令官の言葉にマルスが呟く
彼の言葉に司令官は頷きながら答える

「そうだ。今回の任務は幹線道路を封鎖するベルカ地上部隊に打撃を与え、我が軍とオーシア軍を結ぶ補給ルートを奪回することだ。頼んだぞ」

敬礼を返したパイロットたちは格納庫でそれぞれの機体に乗り込んで出撃した



171号線
この地はウスティオ共和国首都ディレクタスから、サピン王国西部を抜け、オーレッド湾海岸までの全長1100kmを結ぶ幹線道路である
ウスティオの生命線であるため、開戦当初のベルカ軍の電撃作戦で完全制圧されてしまった
ここを取り戻せばウスティオにとって少しは追い風となるだろう
作戦空域に到着したガルム隊とテュール隊に上空に待機しているAWACSであるE−3セントリーから通信が入る

「こちら、空中管制機イーグルアイだ。本作戦から両隊の指揮を執ることになった。よろしく頼む」

「AWACS 上からちゃんと見といてくれよ」

「任せておけ。各機に告ぐ。輸送ルートを封鎖するベルカ地上部隊を叩き潰せ」

ラリーの言葉にそう返すと命令を出す
同時に全機が散開し、攻撃に移る

「攻撃対象に民家がある。あれも作戦内か?」

《どうしますか? マスター…ユウイチさん》

「ほっとけ。撃ってくるやつだけ撃てばいい」

彼とソフィアの言葉にユウイチは返す
脅威がなければ撃つ必要はない
彼らはまず、最初の目標として南部の橋に群がる敵戦車や装甲車に狙いを定めた
大型爆弾の照準を敵地上部隊のど真ん中に合わせて投下した

「ビンゴ!!」

橋にはそれぞれ両端に敵が布陣しているが、もう一方もテュール中隊の攻撃を受けている
SAMや対空射撃を避けてMIR−2000Cとフィッシュベットが突入する

「ベルカは徹底的に叩く!!」

《マスター!! 少し冷静に!!》

ベルカへの憎しみを抱くフォルスはミラの制止を受けつつも小型爆弾を連続して投下する
その横ではフィッシュベットがロケットランチャーを発射
爆弾とランチャーの雨を受けた地上部隊は撃破される

「よくやった。エルテア」

《ありがとう…褒めてくれたから御礼を言っただけよ》

「第1守備隊が撃破された!! 全軍!! 連合の奴らを叩きのめせ!!」

対するベルカ側も大慌てだ
いきなり第一守備隊が撃破されたことからこちらに戦闘機が向かってくる
だが、そのどれもが旧式であるF−102AデルタダガーやSu−15フラゴン、ミラージュVだ

「旧式でMLS機の相手をするなんて無謀だな」

《仏機はぶっ潰すです!!》

これを迎撃するのはEF−2000とF−14A、J−35Jの3機だ
敵機はそれぞれ3機編隊で向かってくるが、旧式戦闘機が最新鋭機に敵うはずがない
ミラージュVの編隊を目標に定めたのはEF−2000・リズである

「まったく、そう血気盛んになるな。少し落ち着け」

《マスターはうるさい!! 私はこの風を纏った拳で、あのフランス機殴りたいのです!! とにかく殴らせろ!!》

「落ち着け!! 相手はベルカ機だ!!」

同時にサイドワインダーAAMを発射し、1機目を撃破
さらにミラージュVに急接近して27mm機関砲を直撃させて撃墜
残りの1機も僚機が撃墜されたことから離脱しようとするが、長射程AAMを撃ち込まれて爆発する

《仏機が私の相手をしようなんて100年早いのです!!》

「だから、ベルカ機だ!!」

シュライクがリズを必死に落ち着かせようとするが、気持ちが高ぶった彼女を元に戻すのは難しいことである
Su−15フラゴン3機の相手をしているのはバートレットだ

「所詮は旧式のフラゴン……トムキャットの相手じゃねえ」

後方からR−98Rアナブ空対空ミサイルを撃ってくるが、Su−15を遥かに上回る性能を持つF−14Aの機動性に回避される
逆に後を取ったトムキャットが3機のSu−15に同時ロックオンを掛けてAIM−120を発射する
フェニックスよりも命中率の高いアムラームは直撃して3機を同時に撃墜した

「ヴァレーのときのデルタダートもそうだけど、ベルカはウスティオのことを舐めすぎてないか?」

《ど、どうなんでしょう? 実際には旧式戦闘機ばかりですし…》

マルスは先程から後方でうるさくAIM−4を撃ってくるデルタダガーのミサイルを避けながらリルと共に呟く
同時に急上昇すると空中で機体を反転させてデルタダガーの編隊長機に向けてアデン30mm機関砲を撃ち込んでエンジンを爆発させる
残りの2機は編隊長がやられたことから混乱が生じる

「戦闘機パイロットは常に冷静を心がけないとな」

マルスはその2機にそれぞれファルコンAAMを撃ち込んで撃墜した
既にベルカ側もガルム1、2の活躍で第2守備隊を撃破され、ガルム3とテュール小隊に護衛機の大半を撃墜されて総崩れの様子だ

「こちらイーグルアイ、敵軍は戦意を喪失して撤退中。作戦は成功だ。これで連合軍の兵力輸送ルートも確保できる……両隊とも、よくやった」

AWACSからの通信を受けて全機が帰路に付く
同時に、イーグルアイがラリーに通信を繋ぐ

「悪運は今日も味方だったな『片羽』」

「翼無しの帰還はもうお断りだ」

《マスター…私が覚醒していなければ落ちていましたもの…》

ソフィアのその言葉に部隊内に笑い声が溢れた
だが、彼らの長きに渡る戦いはまだ幕を開けたばかりだ



あとがき(今回は座談会です)


メビウス「よし、これで第2話完了っと…」
ユウイチ「次回はいよいよ円卓か…」
ラリー「ロトとグリューンの同時襲来…手強そうだな」
メビウス「こうでもしないと全エース部隊が出られないからね」
ベルンハルト「聞いた話だと、俺はこっちでもMLS機らしいな」
メビウス「あとはシュネー、インディゴ、ゴルトだな」
ユウイチ「被らないか?」
メビウス「名前とか性格が違うから大丈夫だと思うけど…」




 2006/10/22:メビウスさんから頂きました。
秋元 「ミラの猫被りは、航空ガール内では有名です」
アリス 「……だからでしょうか、他人の前に居る時意外はいっつも素の状態です」

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