ACE COMBAT X skies of Deception 〜英雄と偽りの空〜
第二章




オーブリー岬でのオーレリア軍機撃墜のシーンを背景にクソったれな演説をしたナバロのドラ声が二日酔いの頭に響いている。
「レサス軍、開戦から10日でオーレリアの95%を占領」
レサスは長き内戦が終結した翌年、突如友好関係にあったオーレリア共和国に進攻を開始。
「長年の不当な搾受に対する報復」という大義名分の下、姿見えぬ空中要塞グレイプニルを背景に一挙に電撃戦を仕掛けた。そして僅か10日足らずでオーレリア全土を支配下に置いた。・・・正確にはまだだが時間の問題だろう。
レサス軍本部はオーレリアの首都にある“ガイアスタワー”に置かれ支配の象徴とされている。オーレリアの平和の象徴として建てられたのだが、皮肉なもんだ。
ホテルの窓から外を見上げると左回りの太陽が目に染みた。・・・全くこんな先の見えた戦争取材はとっとと終わらして国に帰りたいもんだ。南半球にあるこの国には馴染めそうもない。
そんなことを言っていても仕事は仕事だ、きっちりしなければならない。今日もガイアスタワーでナバロの声を1日中聞かなければならない。だが、その演説会場に置かれている料理は演説と違い絶品だ。これを楽しみに演説会場に来てると言っても過言ではない。
しかしここ最近の奴の話は空中要塞の話だけだ、それも宣伝のように。ただでさえクソな話がさらにつまらなくなっている。そんな話をまた聞かされると思うと気が重くなる。
そう考えていると携帯が鳴った。
「はい、ジュネット」
「お、ジュネット。元気ねぇな」
聞こえてきたのは記者仲間の声だった。
「まあな。ところで何の用だ?珍しいじゃないか。そっちから掛けてくるなんて。酒のツケを払う気にでもなったのか?」
「馬鹿いえ。お前の方がツケがデカイじゃねーか。一昨日の分まだ払ってもらって無いぞ?」
チッ、あいつのことだから忘れたと思ったのに。そう考えている間に次の話になった。
「さて本題だ。昨日レサスの航空制圧部隊が全滅したらしい。」
「全滅?オーレリアはもう空軍は壊滅してるだろ?どこにそんな戦力があるんだ?」
「俺が知るか。まぁ直接会って話したいから俺の部屋に来てくれ。どうせあのクソ野郎の話はいつもと同じだ。一日くらい聞き逃しても問題ない」
「分かった。すぐ行く」
そう言って電話を切る。なんてこった。まだ国に帰れそうにないじゃないか。
ジュネットはそうぼやきつつ記者仲間のいるホテルへ向かった。

ジュネットが彼の部屋に到着したのはそれから5分後であった。
「おお。来たか」
「ああ、んで本当なのか?全滅した。って話」
「もちろんだ。この俺様が不確かな情報を流すと思うか?」
「・・・余計に不安になったぞ」
「そう言うなって。でも今回は間違いなく真実だ。今朝この情報が入った時は俺も疑った。でも裏ルートとはいえ一番信頼性のあるルートから来たからな。間違いない。と思った訳よ」
彼がそこまで言うなら真実であろう。だがオーレリアの航空戦力は既にグレイプニルによって壊滅的な被害を被っているはず。昨日流された映像は3日前に撮影されたもので、オーレリア最後の部隊が壊滅した映像だったはずだ。
そして直後の彼の言葉で私は更に混乱した。
「そんでな。その全滅した場所がオーブリーなんだ」
オーブリー?3日前の映像の場所じゃないか!

「それじゃぁナバロの野郎は嘘をついているのか?オーレリアにもう航空戦力はないはずだぞ?」
「公式発表ではな。でもあの映像をよーく見ると2機だけ撃墜されてないんだ」
ほら。そういって差し出されたパソコンのモニターを見る。・・・確かに2機だけ撃墜されていなかった。
「確かに撃墜されてない機はあるが・・・もしかしてこいつらが全滅させたのか?」
「そう考えるのが普通だろうな。でなきゃ誰が落とすんだ?」
そう言われては反論できない。だがこれだけで頭がパンクしそうなのにまだ彼の話は続く。
「あとこっちは不確定情報だが、公海上でもオーレリア艦隊が追撃してきたレサス艦隊を壊滅させたらしい」
「何だと?」
「詳しい情報は入っていないが、どうやら外国からの援軍と共同で撃滅させたらしいな」
ああ、もう何が何だか分からなくなってきた。大体オーレリアが反撃に出たなんて信じられないし、敵を壊滅させたことなど余計に信じられない。
ただジュネットに分かる確かなことは、まだ帰国できないと言うことだけだった。



「・・・ええその通りです。非公式ですが我が国からも派遣致します。では詳しい話は後程・・・失礼します」
ふぅ、と一人の男はため息をついた。無理もない、レサスがオーレリアに宣戦布告をし、国の対応を協議している時にこの要請だ、その対応も協議しなければならなくなってしまい一腹の時間が無くなってしまった。レサスめ布告するなら世界の時間を考えろ、快適な睡眠を邪魔した地球の裏側の国にぼやきつつ次の電話をかけなければならない。
「あぁ安里君か、総理の長瀬だ。すまないが特別任務だ、至急行動を開始してくれ・・・何、データはすぐに送る健闘を祈っているよ。」
これで、一応終了だ、後は秘書達にまかせるだけ・・・
「総理。クニシフ大統領からお電話です。」
「悪い、寝てはダメかな?」
「残念ながら緊急時ですので・・・」
ふぅ、一体何時になったら寝れるんだ?そう心でぼやき彼は受話器をとった。

日本の近海では一隻の空母が進路を横須賀からオーレリアに転進していた。
第三外洋機動艦隊所属躑躅、その艦であった。雛菊級三番艦として造船された彼女は最悪単独で戦闘を行えるように設計されているだけあってかなりの大きさがある。そのため今回の任務に選ばれたと言っても過言ではない。護衛の艦船を随伴せずに行動できるため今回の様な隠密性の高い任務に適しているのだ。また、オーレリアと共同研究していたシステムを搭載していることも理由と言えよう。そんな彼女の中は少しざわつき始めていた。

「あ〜艦長の安里だ。ただ今政府より極秘任務が入った。これより我が艦はオーレリアの支援の為オーレリアに向かう。到着まで時間はあるが近海に出払ってる部隊と交戦の可能性も否定できないので各員気を引き締める様に。以上だ。」
艦内放送が入り、艦内はざわついていた。無理もないか・・・安里はそう呟いた。やっと外洋訓練を終え、いざ帰らんと帰路に付いている時にこれだ、しかもただの任務ではない。戦争に参加しろという命令。これでざわつかないのは機械位のものだろう。
「艦長。オーレリアにはあと37時間で到着します。」
「分かった。しっかしそれまでオーレリアが持つのか?」
「さあ、どうでしょうか?あの空中要塞の影響でかなりの被害が出ているそうですが・・・」
「まぁ、我々が着くまで持ちこたえてくれればいいがな」
そう言って彼はオーレリアの友人を思った。確か彼は飛行機乗りだったはずだ、彼はまだ生き残っているのだろうか?
そう言って彼は視線を前に戻す。艦橋から見えるのは朝日に染められた美しい海と空だけだ。



 2010/08/07:子鶴軍曹さん Rspecさんから頂きました。
秋元 「国際情勢で右往左往、軍隊は大変です」
アリス 「……休む暇もありません」
「空母はまだましだけどネ」

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