ACE COMBAT X skies of Deception 〜英雄と偽りの空〜 第一四章 |
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「空中要塞陥落」 「サンタエルバを襲った南十字星の悪夢」 なんてこった。 連日のパーティーは鳴りを潜め、贅を尽くした食材の代りに、首都を守る兵器が運びこまれている。 奇跡としか思えないニュースにグリスウォールは騒然としていた。だが、それ以上のニュースが裏に潜んでいたとは・・・。 オーレリアによる搾取はやはりデマだ。むしろオーレリアはレサスの最大の支援国だった。だが、その事実は国民に知らされず、兵器の購入へ消えた。それは何故か?そもそも、何故毎晩豪華な宴が開かれていたのか?答えはディエゴ・ギャスパー・ナバロを取り巻く金の流れが教えてくれた。 ナバロは軍だけでなく、レサスの資金も牛耳っていた。そして、戦争で莫大な資金を手に入れていた。この戦争は新たな兵器購入の口実と、さらなる受注拡大の為のデモンストレーションにすぎない。それをレサスの為と信じて戦う兵士達はどう思うのだろう? それに、資料では空中要塞以上の資金の流れが記載されてあった。 そして、未だ余裕の表情を浮かべているナバロ。これは一体何を意味するのか? 知らず、私はここを目指しているであろう南十字星の身を案じていた。 いつの時代もマスコミは視聴率や、発行部数しか考えない。それはこの戦争とは無関係のオーシアにおいても同じだ。 昨日までは“オーレリアの敗戦は時間の問題”と言った記事が紙面やテレビを覆っていたのに、いざ空中要塞グレイプニルをオーレリアが落としたというと一転して、“地獄からの奇跡の反撃”といったように今まで散々叩いてきた国を一転してヒーローのように報じている。無論、上からの指示とはいえ、そう書いているのは紛れもなく自分自身なのだが・・・。 ここ2週間のオーレリア軍の勢いは凄まじい。パターソンを再奪取してからというもの、各地で分断されていた部隊を吸収し、1つの軍としての態勢が戻ってきている。ターミナス島、スタンドキャニオン等の重要拠点を次々に制圧し、遂にサンタエルバ奪回へ至った。更に、これまで空を支配していた空中要塞グレイプニルを撃墜し、首都奪回へと弾みをつけた。もっと言うなら、それを成し遂げたのは“南十字星”と呼ばれているパイロットらしい。―気になって調べてみたら、彼は何とオーブリー所属だった。そう、SWBMをかいくぐり、レサスの短期決戦の野望を打ち砕いた彼は、本当に戦争をひっくり返そうとしている。間違いなく、彼は正真正銘のエースであろう。これまでの戦争において戦局を変えてきたエース達と同じ程の。 だが、それ以上に驚くべきニュースが裏に潜んでいたのだ。 それは、レサスの金の流れだ。この前気になって記者仲間と資料を集め回った。想像通りかなり危ないところからだが。しかし、協力を頼んだ人々は快く快諾してくれた。彼等もレサスの統治を快く思っていない。だから、こんな黒い仕事を引き受けてくれたのだ。その苦労は無駄にする訳にはいかなかった。 そこから分かってきたのはナバロの不可解な資金の流れだ。いくら軍需産業を牛耳っていたからといっても、空中要塞を建造したり、軍備を急速に整えるなぞ出来はしない。どこかから金が入ってきたのだ。その答えも資料に乗っていた。彼は巨大軍需企業ゼネラルリソースと契約を結んでいたのだ。ゼネラルといえば、何かと悪い噂が絶えない。一説によると強化人間の開発に乗り出しているなどだ。 とりあえず分かってきたのはこのくらい。だが、微力ではあるがこれは南十字星への援護射撃になる。そのためにも、奴の謎を早く解き明かさないと―莫大な資料の中に埋まりながら、しだいに暑くなってくる夕暮れを過ごしていく。 大勝利。誰もそれを疑う者はいなかった。交通の拠点サンタエルバを奪回し、さらに今までオーレリアの空に居座っていたグレイプニルを遂に撃破したというオマケ付きだ。それはあまりに美味しすぎるオマケだった。 市内は解放を祝う市民や、軍人達で溢れ返っている。そこに国籍や人種も無かった。さまざまな理由でサンタエルバに滞在していた人々も解放を喜んでいる。無論、それは軍においても同じで、オーレリアや日本という国境を越えて喜びを分かち合っていた。中には、「こういうときはこうするんや!」と言って橋から川へ飛び込んでいく者もいた。それを見ていた他の者や市民が参加し、もう何が何だかわからなくなっていた。とりあえず、街中がお祭り騒ぎだったことは確かだ。 ただ、ここに別の意味で騒いでいる人間達がいた― OK、とりあえず今何が起こったのか確認しよう。10分前、俺らレイニー隊はサンタエルバ国際空港に併設されているサンタエルバ基地に着陸した。そして、エプロンのスポットに入ったのが3分前。エンジンを止めたのもこの時だ。そして梯子から降りて、隊長のところへ向かったんだよな。んで、隊長が機体から降りて、機体を少し見た時に、機首の付け根あたりから光の粒子っぽい物が溢れてきて、たちまちそれが集まったと。そして、その集まったところに少女がいる―と。 無理だ無理だ、俺の実力では難しすぎて理解できない。何だよ?幻想か?俺に心当たりはないぞ?ハッ!まさかトランスフォーム!とかああいう感じなのか?―何?頭が逝ったって?副隊長じゃああるまいし、そんなことは無いはず・・・だ! マッケンジーの周囲には、レイニー隊関係の人間が集まっていた。すぐ後にランディングしたクラウディア隊も野次馬に加わっている。原因はもちろん人ごみの中心にあった。 「あ〜やっぱ外は気持ちいいわ〜。何か機体の中見たいな閉塞感が無いしね〜」 いきなりATD-Xが光り出したかと思うと、自分の前にコイツがいた。そしていきなり「あ、あんたが私のマスター?これからよろしくー」ときたもんだ。一体何のことやら。当然、激戦の後の為、酸欠気味で思考というソフトウェアがアンインストールされた今の俺には理解できない訳で、 「おい、アレックス。これお前の知り合いか?」 機付き整備長が顔をニヤつかせながら聞いてくる。 「知らね〜よ。って、何でお前そんな顔してんだよ」 奴の顔は・・・なんていうか・・・こう、餌に飢えたライオンの様な顔をしていた。すると、後ろからバールの様なものを持った一団がせまってきた。 「整備長、御同行お願いします」 「ってお前らも同志だろうg−アッー!」 とりあえず嫉妬の集団に任意(?)同行を求められた整備長をそこにいた一同で帽子を振って見送り、自分の前にいる少女と向き合う。 「とりあえずお前誰だ?あと何で俺マスターとか呼ばれてんの?」 「あー自己紹介まだだったかー。んと、私はフリージア。このATD-X機体の精神体ね。色々説明しなきゃならないと思うけど、説明は面倒だからさ、オリヴァー中尉にでも聞いといて」 「いや、それ答えになってないぞ」 「まぁいいじゃん。とりあえずこれからよろしく」 そう言うと、フリージアと名乗った少女は基地の中へ消えていった。野郎、また丁度いいタイミングで抜け出した訳で、俺の後ろにはなにやらどす黒いものが渦巻いているんだが・・・。 「へー隊長。可愛い娘じゃぁないですかぁ?ねえミヒャエル中尉?」 「そうだよなぁ、マッケンジー。これはじぃぃぃぃっくりとお話を聞かせてもらわないとなぁ?」 「あ、俺日本海軍からJE-1の使用許可とってきます」 「さっすがイェーガーだ。エンジンとレーダーかけてすぐに出来るようにしてろよ?」 「もちろんです。あの“もみじ“機をとっておきますから」 「お、お前ら何誤解してんだよ!俺はあんな奴一度も会ったことが無いって―」 「おい、ミヒャエル。こいつまだ虚言ほざいてるぞ?」 横槍を差したのは、クラウディア隊の隊長のビリーだ。 「ホントだな。じゃお前さん方で何とかしといてくれ、こっちは聴取部屋見てくるから」 「分かったぞ。じゃあ後でな〜」 今日のオーレリアは珍しく平和だ。 「久しぶりだなぁ。ここも」 ここはサンタエルバ郊外の地下駐車場。時計は午後11時を回っていた。 この町は先日まで空中要塞「グレイプニル」の基地と化していたが、つい3日前オーレリア軍により解放され、空中要塞もここに陥落した。 そしてこの町にはつかの間の平和が訪れている。 彼の前には、6台の日産S15型シルビアが並んでいた。 これらは、発売からすでに20年以上経過しているが、まだまだ現役のスポーツカーだ。 そんな6台はそれぞれ違うエアロを組んでいるが、カラーリングだけは統一されて、6台はメタリックブラックにブルーと明るいワインレッドの模様が描かれている。 それは彼らの愛機のカラーであった。 また、基地の地上パフォーマンスでもこれを使っていた。 しかし今日の彼の目的はこのクルマではなかった。 6台のシルビアに寄り添うようにして止められている1台のスポーツカー。 それが彼の“相棒”であった。 全長3728mmと小ぢんまりとしたイエローのボディに、 愛くるしい丸目4灯のフロントマスク。 だが外見に惑わされてはいけない。 そのコンパクトなボディには想像を超えるパフォーマンスが眠っていた。 かつてフォーミュラ界を風靡したウスティオの鬼才の血を汲むスパルタンな性格。 そう。彼の眼前に鎮座しているのはロータス・エリーゼ190であった。 こちらも発売からすでに22年が経過するが、いまだに第一線で戦う力を持っている。 彼はそのタイトなセミバケットシートに小柄な体を滑り込ませるとキーを捻った。 彼の後方から直動式スーパーチャージャー付き18Kの小気味良いサウンドが聞こえてくる。 次いで彼はオーディオのスイッチを入れる。 すると車内は低音優先にチューニングされたアルパイン製5.1chオーディオによって彼にとっての最高の走りの雰囲気を作り出した。 流れているのは10年ほど前から流行り始め、2020年になる今でも衰えない人気のVOC@LOID音楽。 「〜♪・・・ん?」 その音楽に身を任せていると、ウィンドウをトントンと叩く音がして、彼は目を開いた。 彼は大きな伸びを一つするとドアノブの脇にあるノブに手を伸ばす。 窓の向こうには一人の男が立っていた。 「誘ってもらってすまないな。」 「遠慮することないさ、戦友。ところで、あんたのクルマはどれだ?」 「あれさ。」 彼は男が指すほうを見た。そこには一台の軽自動車があった。 「スバル・プレオか、良いクルマじゃないか。だがどうやってこっちに持ってきたんだ?」 「なぁに、ハヤブサのパイロットに知り合いが居てな。無理言って空いたスペースに詰め込んで貰ったのさ。」 彼の発言もなかなかに衝撃的なものだった。 「・・・おいおい、それって職権濫y・・・」 「気にしないでくれ、戦友。」 「・・・そうか。で、アリスちゃんは?」 「助手席でお休み中さ。どうしても行くって聞かなくてな。」 「クク、彼女らしいな。」 「だな。」 「んじゃまあ、今晩は楽しみますか。白き猟犬殿。」 「そうですな、エブナー中尉。いや、黒き疾風殿。」 一通り会話を済ませると、彼はクルマを駐車スペースからゆっくりと通路へ進ませた。 「では、ついてきてください。取って置きのステージに案内しますよ、戦友。」 「楽しみにしてますよ、戦友。」 2台は、静かに満ちた街の光の中へと消えて行った。 彼らが何処へと向かったのかは誰も知らない。 しかし、その3人が各々の母艦に帰還したのは翌日未明だったという。 |
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2011/01/23:子鶴軍曹さん Rspecさんから頂きました。
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