あのあと、セトは逃げるように自室に閉じこもった
代わりに俺だけで報告
ミサイルへ意識を移すとき、意識が多く流れた過ぎたらしい
あまりにもリアルすぎる体験で呼び寄せてしまった残留思念
第二次世界大戦の特攻・・・


外洋機動艦隊外伝 蒼穹の守り
第五話


セトの部屋をノックする
「セト、セト・・・いるか?」
返事は返らない
もう一度ノックしてドアノブをひねる・・・鍵は開いている
「セト、入るぞ・・・」
ドアの隙間から覗いた
電気もつけず、月明かりだけが射す部屋のベットのうえで丸くなって座っているセト
その横に腰掛けた
「セト、今日は・・・」
「ごめんなさい・・・」
弱弱しい声でセトがつぶやいた
「そ、そんな。セトはなんにも・・・」
セトが首を振る
「ダメだよね、私。こんなことで・・・今まで私、実験機しかやってこんかったから・・・みんな、殺し合いしとるんだよね」
言葉が、返せない
「あそこで空母に特攻しとった人、私と同じくらいなんだ。あの人は自らいったのに・・・私なんて・・・」
セトの涙が月の光を反射してきらきら光る
セトをすっと抱きしめた
「私・・・このままじゃ一哉を殺しちゃうかもしれない・・・」
「大丈夫だから、俺が、ちゃんとお前を守ってやる。苦しかったら、その思念をこっちに流していいから」
「でも・・・」
セトは涙にぬれた瞳で俺を見上げる
「大丈夫、俺ってほら、鈍感だろ。ちょっとぐらいは大丈夫だって」
「うん・・・一哉だったら大丈夫かもね」
泣き笑いの様子でセトが言う
「うわっ、ひでぇ。普通だったら『そんなことしたら一哉は・・・』だろ?」
「何言っとるよ。私みたいなナイーブな女の子ならともかく、一哉だったら大丈夫でしょ」
二人して笑った
「そうだ、なぁ、明日はOFFにするらしいけど、二人でどこか出かけないか?」
「えっ、いいの?」
「ああ、ミサイルを回収して調査するのに時間かかるらしいし、まあ向こうもちょっと悪いかなと思ったらしくてさ」
「それじゃ、明日、朝ごはんを食べたら一緒に行こっ」
「ああ、それじゃあな」
ドアを閉めるとき、小さな声で聞こえた
「一哉・・・ありがと・・・」

次の朝・・・
朝起きて食堂に行くと、みんな雁首そろえてテレビに見入っている
「なんだ、戦争でも始まったのか?」
「いえ、それがですねぇ・・・あっ、はじまりますよ」
朝の7時の某国営放送
「おはようございます。10月16日、木曜日。七時のニュースの時間です。まずはこちらのニュースから」
下に出たテロップ
『アメリカでクーデター。各国に武装解除を求める』
「昨日日本入りしたアメリカのスナッフ大統領が江方首相との極秘会談の中で、アメリカ軍最高司令官ジェイン元帥がクーデターの用意が整っているとの情報もある、と発言したことを受けまして、ジェイン氏は会見を開きました。次がその映像です」
マイクの前に立つ男、それを取り囲む信者たち
何を言っているのか英語だから分からない。だが、下に出たテロップに釘付けになる
『我々は正義であり、力を持つ事は当然の義務だ。そこで、今後テロなど起こせぬよう他国の武力すべてを排除する事に決定した。これにより世界には平和が訪れるであろう。全世界のリーダーよ! 武装を解け! 武装を解かぬ愚か者に対しては・・・・・・我々は宣戦を布告する用意がある! すでにアメリカ軍の意向は固まった。諸君の正しい判断を期待する』
おいおい、マジかよ・・・とか、あのアメリカが・・・とか周囲がざわめき始める
時同じくして、館内に放送が入る
「飛行開発実験団所属、北見少尉、同じくセト准尉。今すぐ基地司令室に来なさい。そのままの服装でよろしい」
ったく、これから飯って時に・・・まあ、それどころじゃないけど
岐阜基地から一緒に来た顔なじみの整備員を捕まえて「この朝食の死守に世界平和はかかっている」と念押しして朝食を預け、司令室に向かった

「飛行開発実験団、北見少尉、入ります」
「同じくセト准尉、入ります」
中に入ると50代だろうか、人のよさそうなおじさんが立っていた
「ああ、朝早くから悪かったね。座ってくれ・・・」
薦められるがままにソファーに座る
・・・いいソファー使ってるなぁ、お偉いさんは
「いきなりだが・・・今朝のニュースは見たかね」
「ええ、ジェインのことですよね」
「ああ、到底日本は受け入れられないだろう。各国も反発している。多分、戦争は避けられない」
極秘と赤くハンコを押された紙を手渡される
『米軍の要求は到底受け入れられないものであり、戦争は不可避である。すべての基地で警戒態勢を厳にせよ』
「・・・ということだ。しかし、わが基地の装備は貧弱でな」
「まさか、私たちに・・・」
基地司令は重々しく頷く
「沖縄には現在MLシステム機パイロットがおらんのだよ。君たちの事は高く評価している。戦ってはくれまいか・・・」
飛行開発実験団は独立部門。いくら基地司令とはいっても頭ごなしに命令を押し付けられないってことか・・・しかし
「信頼してくださっているのはうれしいのですが・・・先日のテストでセトも傷ついています。それに、コイツは一度も実戦を戦ったことがないんです。こんな状況で戦っても満足な戦果は残せません。申し訳ありませんが・・・」
セトがいきなり立ち上がる
「戦わせてください、お願いしますっ」
セトが頭を下げる
いきなりのことに呆然とする基地司令
「お、おい、セト。何お前勝手に・・・」
「だって・・・私・・・もう守られとるだけなのはいやなの。怖い…でも、周りの人が死んじゃうのはもっと怖い・・・だから」
基地司令が頷いた
「君の言いたいことはよく分かった。私だって同じさ。そう思って軍に志願したのだから。北見少尉、もう一度お願いする
 那覇基地みんなのために、そして日本国民のために・・・戦ってはくれまいかね」
・・・こんなこといわれたら・・・いやだなんて言えないじゃねぇか・・・
「分かりました。基地司令。私たちの命、お預けします」


2004/03/23 誌ー摸乃譜さんから頂きました。
北見少尉も、鎌土と同じ事を言ってますなw 苦しかったら分け合おう、助け合いの精神!
>「この朝食の死守に世界平和はかかっている」       爆笑w そう、飯は大事ですw
セトの決心ですね、しかし沖縄・・・沖縄はクーデター軍に占領されてる・・という事は、セト達はどうなるのか!?


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