終わり無き 彼方に向けて
紡がれてゆく 記憶達
それは…
始まりの声


……九年前…

…彼らは…

…………全てを……失った………




外洋機動艦隊 -mashine with the heart- 外伝
〜終わり無き雲海の彼方に〜
第1章「始まり」




−2053年11月1日午前10時半、愛知県小牧基地格納庫内−

格納庫の中に眠る5機のSu-37jk。
動いていないようでも、この中に命が目覚めようとしている。気付く者は…わずかだ。それは、やがて具現化される。いや…具現化したものもいる。
MLSの被験者。その一人がここにいる。
「はあ…眠い…」
退屈そうなあくびをしているのは岡野光喜、階級は中尉。百武隊の2番機。
《しっかりしてよ、マスター。ちゃんと私をきれいにしてよ》
声は柚里亜。MLシステムによる精神生命体。実体化はしているが、岡野の言いつけで実体としての活動はしていない。彼曰く、「他の奴らがうるさいから。そのうち話すからいい」だそうだ。
そして、岡野は愛機ゼロ・ユリアの掃除中。
「分かってるって。ええと…布どこやったっけ?」
《ノーズギアの上だよ。大丈夫?》
「あ、そうか。やれやれ…」
布を取り、機体を拭き続ける。
しかし。
突然、横槍が入る。
「岡野、司令官殿がお呼びだ。俺ら全員」
松居である。
「おいおい…フランカーが好きなのはいいが、程々にしとけよ」
酷い言葉とも言える一言。
「はいはい、分かった分かった」
適当に受け流す。
その一方で、岡野は柚里亜に聞く。
(なあ…他の奴らにMLSはないのか?)
返事はすぐ返ってきた。
《あるけど…皆精神生命体を認めたくないみたい。松居さんは尚更》
(もう俺らは実体化出来るのに…。松居か、言えてらあ。あいつの女嫌いは…)
「お〜い、急げ」
「OK」
(おっと、じゃ、行って来る)
片づけはしていない。話が終わり次第、戻ってきて続けるつもり。
司令官の話か…長くなりそうだ。
《はーい(う〜、またかー…)》
《いいなー、柚里亜は》
《スピカ?どうして?》
《マスター、酷いのよ。どういっても私認めてくれないんだもん》
《松居さんの性格上仕方ないって》
《まーねー…》
こっちも長くなりそうだ。


−同日午前10時47分、基地司令官室−
「はあ…グアムですか」
何ともやる気のなさそうな声の主は、鱸である。隊長でありながらこれだ。
「とその周辺の東南アジア諸国だ。さっきも言ったとおり、元からのやつと、先の沖縄戦で撤退してきた奴らがいるからな。そいつらを潰してもらう。部隊再結成の前にな。もう一度沖縄に来られたらたまらん。艦隊構成表はこれだ」
正規空母水仙、原子力戦艦伊勢を筆頭に多数の艦艇が名を連ねる。
「そこら中の艦隊の寄せ集めじゃん、これ」
岡野が愚痴をこぼす。
「仕方ないだろう」
「で…何で俺たちを?」
二村だ。めんどくさそうに聞く。
「水仙の艦載機では物足りないし、空戦に不安がある。一応インドの協力もあるが、頼りっぱなしではだめだろう。そこで、お前らの出番だ。士気の向上効果も認められる」
「インド側の支援はどれくらいですか?」
岡野の疑問。
「かなりのものらしい。あの辺を占領されたらインドもかなわんからな」
「はあ」
根本的な解決にはならない。しかし、まあ納得しておく。
「艦隊は先ほど出港したそうだ。君たちには明朝発ってもらう。よって、今日の午後は自由に活動してよし。ただ、念のために基地には居ろ」
「普段とそう変わらないじゃないですか」
小澤。
「念のためだ」
防衛のためである、と言いたいようだ。理解した小澤は…
「ハイ…」
あっさり撃沈される。
「今日はこれで解散。明朝7時に出発しろ。以上!」
敬礼。

帰り道。
「変わんね〜。だるい…」
鱸がぼやく。
「同感」
皆が言う。
「掃除の続きでもするか…」
「まだやんのかよ、おい。フランカー好きもほどほどにしろ」
今度は小澤だ。また言われた。
「秋元中尉の方が上だ。しかもあの人モニノ行ったことあるって言ってたからな。俺も行きたいよ」
「はいはい」
一応、彼らは秋元中尉に会ったことがある。
「おっと、やること決まったら呼んでくれ。格納庫にいる」
「お〜い…」
彼は走って戻っていく。
「なあ、あいつ最近掃除ばっかしてねえ?」
「だよなあ。でもまあいいか。俺らよりもきれい好き+フランカー好きということで納得しておこう」
「ぬう…微妙…」
掃除の理由は簡単。柚里亜と話すため。この時の彼らが気付く訳がない。フランカー好きであるのは確かではあるが。
「で、何しよう」
松居。
「ふむ。ゲームでもするか。岡野は無視」
鱸。ひどい提案だが…
「さんせ〜」
そうして彼らは部屋に戻っていく。


−同日午後12時14分、格納庫内−

会議から戻って1時間以上たった。お昼時である。
掃除という名の会話中だった岡野は、自分の腹の虫の音で気付く。
「げ、もう昼か」
《だね》
「とすると…」
岡野の頭にあることが浮かぶ。
「さてはあいつら…俺無視してゲームでもやってるな。飯はまだだな、多分」
見事な推理である。
《言えてるかも》
「ようし…許さん!」
《あ、待ってよマスター!》
不敵な笑みを浮かべて走り去る岡野に、柚里亜の声は届かない。


−同日12時23分、百武飛行隊専用ルーム−

「お、飯の時間だ」
二村が気付く。
「ふ〜ん…あ、それ無しだろ!」
「ふははは、アリなのだよ!」
鱸の反応は薄い。後は小澤だ。ゲームに相当のめり込んでいる。しかし…
「よっしゃ!」
「あっ、やりやがったなっ!」
「卑怯なんかするだよ!」
試合終了。
「で、何、二村?」
「だ〜か〜ら、飯の時間だっての」
呆れている。
「そんなことよりさ、光どうなってる?」
「無視かよ…」
二村の苦悩。
「まだ格納庫じゃね?」
松居が答える。
「御生憎様。お前らの後ろ」
機会を伺っていたようだ。戸口に岡野が立っている。
「おお光!」
鱸が暖かく迎えようとする。
「全く、予想通りのことやってんじゃねーよ」
「読まれとったか」
「俺をなめるな。中学校時代から学年トップクラスだったことを忘れたか?」
「いいや、忘れてない」
そう、岡野は非常に成績優秀な男なのである。
「でさ、飯まだだろ」
「よく分かったな」
「見りゃわかる」
「ふむ、飯おごりで許してやる」
痛烈な岡野の言葉。何せ、岡野、いや鱸以外はよく食べる。
「勘弁してくれ」
松居の言葉。
「4人いるんだ、割り勘なら少なくて済むだろう?」
「まあそうだが…それだけはっ!」
皆頼む。金に困っている訳では無いのだが。
「ジョークだ。ほれ、行くぞ。いつもの食堂に、だ」
「ふう…」
4人同時に安堵のため息をつく。
しかし。
それを聞いて岡野の頭にまた嫌らしい考えが浮かぶ。
「やっぱおごりで逝く?」
鬼である。
「ええ〜…」
ブーイング。
「ははははははは、そんなに俺は悪どくない」
「確かに…でもやりかねんだろ」
松居だ。間違いではない。
「確かにな。でも今回は許すってんだ、ありがたく思え。ちなみに、次は無いぞ」
「ハ〜イ…」
そうして、短い午後は過ぎていく…


−翌日、午前5時46分 食堂−

朝早く。人影はまばらな食堂。
「なあ、岡野」
松居が聞く。朝食はハムエッグだ。なかなかおいしい。予定としては一応食べておき、水仙の食堂で再補充する。腹が減っては戦は出来ぬ、というわけだ。
「何だ?」
「水仙に…沙紀いたよな」
「ぼけたか?」
皆が同時にいう。
「やっぱりいるのか…」
「だから?」
「ああ、ちょっと記憶が曖昧で。何、確認したかっただけ」
「つまらね〜」
小澤の一言。皆笑う。
「それはどういう意味かな、小澤くん?」
「いや、読んで字のごとく」
また笑う。そして、松居は固くなっていく。そして…爆発。岡野が抑えにかかる。
しかし…
「朝っぱらからけんかするなぁ!」
寝起きだったのか、止めたのは…他の隊の人だった。


−同日午前6時47分、格納庫内−

出発の時が来た。
彼らの向かう先は南の海に浮かぶ、正規空母水仙。
チェックを終え、フラッシュAJ−24ターボファン・エンジンが回り始める。非常時のために、武装も搭載済み。
《武装確認…R-37jk×2、R-27jk×4、R-73jk×4。増槽その他…オールクリア》
「了解」
『何言ってんだ、ライブラ。チェックはいいのか?』
二村が聞く。
「何でもない。ばっちりチェック済みだ」
《私がね》
(確かにな)
柚里亜からのつっこみ。
「あ、そ」
何とも微妙な反応である。柚里亜からも言われる。
《隠す必要ないのに》
(あいつらうるさいもん。そのうち言うよ)
《いつになることやら》
(敵でも出てきたら今日言う)
《期待してるよ、マスター》
(敵さんに言え)

そして。
『コメットリーダーより全機。行くぞ』
「コメット2、ラジャー」
『コメット3、ラジャー』
『コメット4、ラジャー』
『コメット5、ラジャー』
明け方の空に舞い上がる機械鳥達。
その先に…何があるのか…
全ては…回り続ける…


紡がれし 記憶は
全てを 繋ぎ 道とする
続くであろう 永遠に
それは…
終わり無き詩




           〜あとがきという名の何か〜
どうも、蒼剣です。
駄文ではありますが、楽しんでいただけたでしょうか?MLS搭載の部隊というかなり強そうなコンセプトで書いてみました。まだ岡野以外二次覚醒に至ってませんがorz とりあえず、かなり長編となりますので、どうかご声援よろしくお願い致します!

それでは、第2章をお楽しみに!



 2005/11/08:蒼剣さんから頂きました。
秋元 「爆撃された学校……沢山死んだのでしょうなぁ。彼ら彼女らの活躍も楽しみですが、インド軍の登場も楽しみですw」
アリス 「……Su-30MKIがお目当てですか(ジー」
秋元 「ギクッ)大丈夫、最高はゼロ・アリスだから!」
もみじ また始まりましたわ


      第2章へ
戻る  トップ