かたちあるものは いずれ滅びる
かたちあるものは 永遠に残る
違いはない
二つは 一つなり
決めるは 己




外洋機動艦隊 -mashine with the heart- 外伝
〜終わり無き雲海の彼方に〜
第3章「始まりの声」




−11月4日午後2時、水仙より南約300km−
絶対防空圏内の外れに近いこの場所。編隊飛行だ。
『何もねえなあ』
鱸。眼下にひたすら雲海と海が続く。
『全く』
松居だ。
『敵さん、いらっしゃいませんか〜』
「おいおい、FX-10みたいな無人機ならまだしも、殺したがるのはよくないぜ」
『まあ、それが一番じゃねえの』
小澤。
『そうそう。よくないぜ、グリス』
二村。こんな会話を延々としている。退屈なのだ。
しかし、岡野の場合、どう伝えるか考えていた。柚里亜と一緒に。まとまってきてはいるが、
結論は…まだのようだ。

3分後。
《マスター!》
(どうした?)
《前方に…何だか小さくて機械的な物を5つ…いや、6つ感じる。戦闘機みたいだけど…》
レーダー感度7%の今、MLS索敵でないと発見は難しい。
(機械的な物か…もしかしたら?)
《もしかして、だね》
敵さんの襲来である。
日本は、無人戦闘機は実用化していない。そして、計画の実行時。
(FX-10だな、多分。ようし、4人に遭遇させる。まずは編隊から離脱だ)
《がんばって、マスター》
30分間の成果の発揮である。
「コメット2より全機。ちょっとあたりを見てくる」
並、いや、それ以下のいいわけ。
『何をいきなり言うかと思えば…いいぞ、行って来い』
さっきから松居を言葉でたこ殴りにしていた隊長さんだ。許可は下りた。
(よし、逃げられる。そして…)
「そうそう、困ったら“声”を信じてみろ」
そう言って、岡野はゼロ・ユリアを右に旋回させ、離脱する。
『何言ってんだ、あいつ』
『さあてね』

ゼロ・ユリア機内。
(よし。後は遭遇を待つのみ)
《大成功〜…といいたいけど、そう簡単にいくかなあ》
(大丈夫だっての。俺らは生きるのにはことさらにしぶといから)
そう。テロにせよ何にせよ、修羅場をくぐり抜けてきた猛者なのだ。
《ふ〜ん》
(ぬ、信じてないな)
《半分》
(信じろっての)
《はいはい》
中途半端である。

編隊側。
『いいのか、隊長さん』
二村が聞く。
『あいつはなめん方がいいぜ。お前、あいつに模擬空戦で勝ったことあんのか?』
小澤だ。なめると痛い目に遭うのは確かだ。
『勝てたやつがおったかどうかが問題だ』
『そうだった』
『マジ笑えねえけどな。それよりも』
鱸が乱入する。
『続けたいが…敵だ!』
警戒を少し怠っていた。レーダー画面上の敵影の方向から、ミサイルの光点が接近する。
『く、R-73jkモーニング・コール、フォックス・スリー!』
迎撃する。
『敵は…何だ!?』
『おい、ライブラ!戻ってこい!』
敵機が視界に入る。そこで、彼らは敵がFX-10と知る。
『グリス…当てんなよ』
『やかましい!でも…無人機なんぞに負けられるかぁ!』

ゼロ・ユリア機内。
(頑張れ〜)
《うわ〜、マスターひどっ!》
間違ってはいない。
(お前とあいつらのためだ)
こっちもだ。
《ぅ〜ん…あ》
(早速?)
柚里亜に情報が入ってくる。
《うん…これは鱸さんかな?留美菜の思念も感じる》
(へええ…)
《感心するのもいいけど…1機こっちに来るよ!》
(やるしかないか)
機体を反転させ、ヘッドオン。
「R-73jkモーニング・コール、フォックス・スリー!」
《R-73jk、スタート》
ロケットモーターに火がつき、白い線が空を横切る。
FX-10は、迎撃のためAIM-9FFを発射。そして、二つの線がぶつかり…爆発。
「迎撃しやがったか…レーダー・ドッグファイト、やるぞ!」
《うん!》
歯車がまた一つ…

MLSを上手く使える岡野は、あっという間に撃破する。
「さて、他の奴らは…?」
《まだ撃破してないね。もう少しなんだけど…》
「手伝ってやるか」
《あ、でもちょっと遅かったかも》
「終わったか…ちぇっ、つまらん。戻るか」
《そだね》
「やな予感がする」

2分後。
『ラ〜イ〜ブ〜ラ〜』
「何かな、皆さん?」
大当たり。
『なぜ、言わなかった?』
「何のことかな?」
『しらばっくれてもムダだ。こいつらのことだよ』
『そうだそうだ』
かなり追い込まれている。まだ話すことがあるのに…
『こいつらてのは無いんじゃないの?』
『ハイ…』
あっという間に松居がスピカにやられた。きつい。
「そのうち話す」
『いっつもそうじゃねえか』
二村だ。
『人間不信じゃないの?』
『ちがうって』
エリザだ。凶悪な一言だ。
「あれ…ベアは?」
『喋ってばっかりですよ』
「ありがと、留美菜。さてと!」
『今度は何だよ?』
「厄介者が一人増えるぞ」
柚里亜のことだ。そして。
『もう十分だよ…』
松居の本心が見えた。相当スピカがいやな様子だ。やれやれ…


−数分後、空母水仙艦橋−
「ナルシッサス・コントロールより百武。交代だ。小隊を出した」
『ラジャー、帰投する』
「お疲れかい?」
『まあな…いろいろあって』
みんなそうだ。
『勘弁してくれ…』
「どうした?グリス」
『こいつ』
お手上げ。

彼らの機体が接近してくる。
そして…優哉から着艦。
すんなりときれいに出来たようだ。さあ…

そして。
「話って、何?」
「うんうん」
全員に問いつめられる岡野。後ろには、ゼロ・ユリア。
「ぅ〜…まあ、こういうこと。柚里亜、出てこい」
ゼロ・ユリアの機首付け根から、淡い、まるで生命の光のようなものがこぼれ落ち、人のかたちとなっていく…そして、柚里亜が実体化する。
が。
「ひゃっ」
それだけ言って柚里亜はまた同化してしまった。怖かったようだ。
「…………」
「…………」

沈黙…

「柚里亜〜…」
岡野は機体に向かって言っているため、端から見ればおかしい光景だ。何人かこっちを見ている。
《だって怖いんだもん》
「分かったから出てこい」
《やだ〜…》
だだっ子のようだ。
(俺にくっついてでもいいから!)
流石に恥ずかしくて口に出せない。
《いいの?》
(いいから早くしろ!)
《はーい!(やった〜!)》

しきり直しでもう一回。ただ、実体化した柚里亜は岡野にくっついている。
「こいつが俺のパートナー、Su-37jkフランカー・ゼロ“ユリア”の実体化した姿だ。ほれ、挨拶しとけ」
顔が半分しか見えてないが、挨拶。
「始めまして…柚里亜です」
やけに声が小さいのはまあ仕方がないのかもしれない。それだけではすまない。
「う〜、マスタ〜」
そう言って…泣き出した。
(同化してるときはこうじゃないのに…)
「とりあえず頼む。後、泣かれると困るから暫くこいつとは話さんどいてくれ」
「………」
黙りこくったまんまだった。これから忙しくなりそうだ…


滅びし物は 繰り返す
残りし物も 繰り返す
愚かな物はこう紡がれる
それは 人の 所業なり



 2006/01/02:蒼剣さんから頂きました。
秋元 「柚里亜たんは実体化すると性格が変わるようですなw 俺にもくっついて──」
アリス 「……(じー」
秋元 「ぎくっ)はっはっはっ、冗談だ!」


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