ACECOMBAT0 INNOCENTSNOW




『そっちに行ったぞ!』
『くそ何としてでも爆撃機を守れ!』
『またやられた!俺たちじゃ歯が立たない』
『諦めるな、数じゃこっちが上…ロックされた!逃げ切れない、うっ、うわああ!』
『どうした応答しろ!くっ、なんてやつらだ』
『機長!上!』
『何ぃ!?うわっ!?』
『オットー1がやられた、爆撃機が全滅!?』
『くそっもう駄目だ、全機全速で離脱せよ!くそっウスティオめ』


ACECOMBAT0 INNOCENTSNOW
第二話 雪の降る場所振らぬ場所


1995年4月3日 アインバウム
「ふんふん、我が爆撃機はウスティオ残存戦力を爆撃、その大半を撃破、うーん景気がいいねぇ」
朝登校前にサイスが新聞を見ている、毎朝新聞を広げて戦争の記事を見るのが彼の日課だ、この年ぐらいの子供としては変わっている。
「サイスさっさと学校行きなさいよ、遅れるわよ」
「ウィルコー」
姉に言われてサイスは新聞を畳みランドセルをつかむ、姉が玄関まで見送りに来る、両親はいない、サイスが生まれた直後ベルカは経済難に陥っており社会保障が滞っていた、その時にサイスを生んで間もない母親は病気にかかってしまった、父親はそんな妻と子供たちを見捨てて姿を消した。
サイスの母は子供たちを育てるために病気にも関わらず働いた、その時昔の知り合いであるエーリヒの父、ルドルフに再会した、ルドルフはサイスの母に同情していろいろと手助けしてくれたが、間もなくサイスの母はルドルフに子供たちを任せ死んだ。
以後サイスとマレーネはいろいろと世話になっていて、現在マレーネはルドルフの会社に勤めている。少しでも恩がえしをするためにだ。
サイスもいろいろと雑用を手伝っているのだが、ルードヴィヒ家の人に最も感謝されているのはエーリヒと遊ぶことだ。
エーリヒの両親、ルドルフとエヴァは超がつくほどの親バカで、息子に親友と呼べる友達がいることに涙を流すほどに喜んでいる。
ちなみにサイスとマレーネの事も子供同然と思っているらしい。
「いってきま−す!」
「いってらっしゃい、気をつけていきなさいよ、こっちはまだ安全だけど戦争やっているんだから」
「ラジャ」
毎日マレーネが送り出してくれる、彼女は小さいころから母の手伝いをして、母が死んでからはその仕事を受け継いでゾーデンシュテルン家の家事を仕切っている、今では母親代わりは板に付いている。
幼いころに母を亡くし、他人の家に預けられたという厳しい環境と、弟に辛い思いをさせたくない、そういった事が彼女を強く成長させた、サイスはそんな姉を心から尊敬し、また感謝していた。
実はそんな姉に対する感謝を姉への誕生日プレゼントで示すつもりなのだが、プレゼントを何にするかまだ決めかねていた。
「まっじっくり考えるさ」
サイスはそう独り言を言うと皆と合流するために通学路の途中にある噴水広場に向かった。

1995年4月3日 アイゼン空軍基地
「…我が軍の部隊はウスティオ空軍の反撃にあい壊滅的な打撃を被った、やれやれ随分とまぁ派手にやられたみたいだねぇ」
アイゼン空軍基地司令、アウグスト・ディセンベル大佐は基地の司令部で友軍の敗報の詳細に目を通しながら疲れたように呟いた。
外見は基地司令の椅子より農村で鍬を持っていたほうが何倍か似合いそうなオジサンだがだが、その実円卓の守備を担う基地のひとつであるアイゼンを預かる切れ者である。
「ええ、そのせいでズーデントールの守備部隊や、グロウスバイルから航空隊が引き抜かれている上に、俺達には円卓の警戒を強めよ、ですよ?やはり最初の躓きに焦ったんでしょうね、上も」
それに付け加えるように言ったのは副官のヘルマン・フィーゼラー中尉だ、彼は軍に入った当初からディセンベルに気に入られ今は彼をよく補佐している。
「失礼します、参謀部から指令が来ました」
とそこに通信兵が通信文を持ってきた。ディセンベルはそれを受け取るとざっと読みあげため息をついた。
「やれやれ、アイゼンは円卓の守備が任務なんだがな、そろそろうちも戦力が足りなくなってきているらしい」
彼はフィーゼラーに向きなおると命令した。
「パイロットを集めてくれ、ブリーフィングを行う」

1995年4月3日 アインバウム
「ヤーヴォール諸君、いい朝じゃないかー」
噴水広場に到着するとサイスはすでに集まっていた友人たちに向かって、意味不明なポーズをとりながらそう挨拶した。
「さて行くかー」
「い、いやん無視しないでー」
ギュンターの声にサイスを無視して登校し始める友人たちに、サイスは情けない声を出して追いつく、
「うう、何か今日みんな冷たい」
「いや冷たくないし、何時もこうだし」
いじけていたらアンナに一刀両断されてしまった、だがここで終わるサイスではない、からみやすいリリィにその矛先を向ける。
「くぅっ、このままでは俺は三の線で終わってしまう!こうなったらリリィ!リリィは見捨てないよな?俺を」
「えっ?えーとね、んと、えっと」
いきなり振られて戸惑うリリィ、そんなリリィをじりじりと追い詰めるサイス、
「さ、サイス君、こ、怖い」
「ふふふふふふ、もはや逃げ場はないのだよ…、ぷげらっ!?」
「やめい」
脅迫半分に迫るサイスにしどろもどろになるリリィ、だがそれもリリィの保護者ことエリカに実力をもって阻止された。
そんな扱いを受けたサイスは皆に抗議を開始する。
「なんだ?今日はみんなして俺をいじめる日か?学校で先生に教わらなかったのか!いじめ良くない!はいみなさんご一緒に!いじめ良くない!」
大声を張り上げるサイス、そこにカールとエーリヒが意気消沈した顔を向けてくる。
「…あのな、今日テストだっての忘れてないかお前?」
「あの先生粘着質だからなぁ、あんまし悪いと長々とお説教をくらうことになる」
二人はため息をつく、そう今日はテストの日なのだ、この二人は友達グループの中ではベリとブービーなのだ。
「ふっ、案ずるな二人とも、ここにサイス先生の今回のテスト山勘表がある!」
「「先生!!どうかご教授を!!」」
一斉にサイスに頭を下げる二人、少々信じられない話だがサイスはこの中では一番頭がいい。
ちなみ順位をつけるとなるとこうなる、一位サイス、二位エリカ、同率四位リリィ、アンナ、ギュンター、六位エーリヒ、七位カール、以上。
さらに言えば学年でもトップクラスの成績だったりする、本当に冗談みたいだが実際にこうなのだからしょうがない。
本人は日頃勉強をしているように見えないのだが、どの教科のテストも九十点台が当たり前なのだ、そのうえスポーツも得意と来る。
あまり外見からは想像できないが一度やればすぐコツを掴み、記憶力もよく何でもそつなくこなす天才肌なのだ、おかげで神童とか言われてもいたりもするが、それよりいたずらばかりしているのでそういうイメージは薄い。
「やれやれ情けないわねー、自分の実力で何とかならないの?」
「うるさい、アンナは頭がいいからそんなこと言えるんだ」
「あーそんなことより行くぞ、遅刻する」
「あ、こんな時間さっさと行こう」
ギュンターに促され、学校に向かう、約二名軽やかな足取りで。

1995年4月3日 アイゼン空軍基地
「――このようにわが軍は現在一時的に航空戦力が不足している、よって対空部隊にも対地攻撃任務をこなしてもらう、攻撃目標はサピンに進撃している友軍と戦っている敵軍に向かう輸送部隊だ、敵地の中に行くことになる一撃したらさっと帰還するように、以上だ何か質問は?………無いようだな、よし解散」
今回の作戦について説明し終えたフィーゼラー大尉はブリーフィングルームを見回す、質問が出なかったのでフィーゼラー大尉はブリーフィングを解散させた。
「結構きつそうな任務だな、気合い入れてくか」
「ああ、そうだな」
ルードヴィヒとヴィルヘルムは格納庫の自分の期待に向かいんがら話をする。
とそこに大尉の階級章をつけた男がやってきた、彼はゴットフリート・エーバーズ、このアイゼンバウムで最も活躍しているケンプファー隊の隊長で、基地の航空隊の指揮官であり、自身エースパイロットでその撃墜数は30機に迫る。
「よう、分かっているだろうがお前さんがたには俺達と一緒に対地攻撃じゃなく対空護衛だ、ほかの連中は爆弾抱えて遅くなってるからな、ちゃんと援護してやれよ?」
「分かってますよ大尉、もう俺達もうひよっこじゃないんですから」
「ん、それを聞いて安心した、おそらくサピンの連中大慌てで戦闘機繰り出してくるだろうからな、残らず叩き落とすぞ」
「はっ」
「了解っすー」
ルードヴィヒのしっかり返事と、ヴィルヘルムのいい加減な返事に苦笑するとエーバーズはブリーフィングルームを出て行った。
「よし俺達も行くか」
「おおう」
二人は出撃準備をするためブリーフィングルームを出て行った。

1995年4月3日 アインバウム
「終わったーーーー!!!!」
「ふぃー、あーきつかった」
「ねえ、エリカ、問五の答えって、こうで良いの?」
「ん?あ、OKそれで合っているわよ」
四時間目のテストが終了、それぞれ給食の準備をするもの、答えを友人に確認するもの、色々だ。
その中でサイスは給食の準備をする派だ。
「よう、今日のテストどうだった?」
「ふっ、愚問だなギュンターもち楽勝!」
「助かったぜサイス、お前のおかげで首の皮一枚でつながった」
「結局ぎりぎりかよ…」
などと友人たちと会話をしながら給食のため席を動かし、そして給食を貰いに行く。
「さって♪昼ごはん〜、チェストチェスト〜♪薩摩示現流〜♪」
「何その変な歌、止めてよ」
「そうよ、お昼ごはんが不味くなる」
意味不明な鼻歌を歌っているとアンナとエリカに注意された。
気分を害したサイスはかなり過激な報復に出る。
「この女狐二匹…俺が気持ちよく歌っていたのに、水を差しやがって…報復じゃお前らの嫌いなピ−マンとニンジンを喰らええええ!」
アンナとエリカの食器の上にピーマンとニンジンを投げ込むサイス、投げ込まれた二人は悲鳴を上げた。
「いやああ!なんてことすんの、この馬鹿!」
「こんなの三つも四つもいらないわよ!てっ、やめええい!」
「あーもう、止めろよ、飯時ぐらい静かにしろよ」
「あうあう、三人とも止めようよぉ」
「やれやれー!」
「今のうちにいただいときますか」
周りの反応も様々、大概はいつもの痴話喧嘩が始まったと気にしない
当の本人たちも周りなど気にしていない。
「でりゃああ!!」
「させるかー!!」
教室内で発生した騒ぎは収まることなくさらにエスカレートしていき、担任が怒り出すまで続いた。

1995年4月3日 前線より東へ約100k、サピン領内
下界は修羅場となっていた、輸送トラックが横転し、護衛についていたSAM発射機は機銃によってハチの巣にされ沈黙しており、先頭を走っていた装甲車はミサイルの直撃を受けて火を吹いている。
攻撃は成功した、味方は敵機の来る前に敵輸送部隊に多大な損害を与え、味方の損害は微々たるもの、攻撃は成功した。味方から勝利を祝う声が上がる。
『あらかた片付けたな、俺達の勝ちだ』
『よっしゃあ!ざまあみやがれ!』
『よし、作戦終了帰投する』
エーバーズ大尉が帰還命令を出し、編隊を組みなおして全機帰投する。
がそこへ最後尾のヴァンピーア隊から通信が入った。敵地に奇襲をかけるため今回ヘルクレスは来ていない、これは痛かった。
『ヴァンピーア1から各機へ、レーダーに反応、数8、二つに分かれてるな、160から6機、190から2機、おそらく送り狼かと思われる』
『こっちも捉えた、ヴァイス隊準備OKか?』
「もちろん」
『待ちくたびれたぜ!』
『よし、敵機はケンプファー、ヴァイスで相手する、他の隊は離脱せよ』
『ネーベル隊了解、ヴァイス1今回は譲るぜ』
「生いってねーでさっさと行け」
『へいへい』
他の味方機はそのまま離脱していった、残ったのは自分たちと、エーバーズ大尉の指揮するケンプファー隊の「Su−27 フランカー」。
『各機へ、適当に相手をしてさっさと離脱するぞ、深追いするな』
『ラジャー、隊長こっちもさっさと帰ってシャワーを浴びたいですよ』
『敵機は二手に分かれてる俺達は数の多いほうを、ヴァイスは残りを頼む』
「ラジャー、落されないで下さいよ」
『心配するな、へまはしない』
ルードヴィヒは軽く機体を旋回させ敵機に向かう、そしてSAAMの射程に入った。
「来たな、だがすぐ退場だエンゲージ、ヴァイス2、SAAMを」
『エンゲージ!あいよー、ヴァイス2、SAAMコール』
敵機をHUDの円の中に収め発射。
「FOX1!FOX1!」
『FOX1!FOX1!』
翼からミサイルが放たれ白い煙を残して飛んでいく、レーダーでもミサイルのシンボルが敵機のシンボルめがけて飛んでいく、だが敵機からもミサイルのシンボルが飛び出した。そのシンボルはこっちのミサイルのシンボルに向かいそれが重なり合った時両方のシンボルは消えた。
「ミサイル迎撃された模様」
『ちっ、こっちもだ、しゃあないドッグファイトと行くか!』
「嬉しそうに言うなよ」
敵機の姿が見えた機体を黒と赤に塗った、「J35J ドラケン」と、「RafaleM」だ、かなりの速度で突っ込んでくる。
(速いな、ついて行くのはきつそうだな、ここはいったんやり過ごすか)
ルードヴィヒはスロットルをあげ機体を加速させる、そして敵機を牽制するべくミサイルを発射しようとしだが、敵機は射程外で右に進路を変え二手に分かれた、ドラケンはそのまま二人の前方を切り裂くように直進、Rafaleは降下。
ルードヴィヒは素早くこっちも二手に分かれて当たると指示。
「ヴァイス2、俺はドラケンをやる」
『了解、こっちはRafaleをやる、そっち頼んだ』
旋回し敵機を追う、速度はつけていたのでそうそう逃げられはしない。
「AAMモーニングコール、…ロック、FOX2!」
短射程ミサイルを選択し、敵機を捉え間髪入れず発射、放たれた矢は白い軌跡を残して行く、敵機は迎撃ではなく急旋回で回避することを選択、チャフとフレアを撒き散らし、ミサイルは欺瞞されてあらぬ方向に飛んで行った。
「ちっ」
だが敵機の速度も落ちた、これならいけると踏んでアフターバーナーを点火し、急加速で突っ込む。
敵機を捉えてガンファイア、しかし敵は急旋回で無理やりこっちの狙いを外す、かわされた、こっちは行き過ぎ、追い越してしまった。
このままだと今度はこっちが追われる番になってしまう、ルードヴィヒは敵機が速度を上げる前にスロットルを上げ距離をとる。
「くそっ」
しかし敵機はついてきた、ピッタリとまではいかないまでも、確実にこっちを追い始める。
ルードヴィヒは機体を高速のままS字飛行させ、敵機にロックオンさせない。
だが敵機はそれについてくる、しつこい。
(くっ、まずいな)
自分は確実に追い込められている、ヴィルヘルムに援護要請をしようとしたが、あっちもどうやら不利な状況らしい、まずい状況だ。
とそこに一機、火線を撒き散らしながら上空から別の機が乱入してきた、その機はドラケンを追い散らすとすぐ戻ってきた。
敵機ではない味方機、尾翼に『33』という機体番号が付いたフランカー、エーバーズ大尉の機体だった。
『ヴァイス1、そろそろ潮時だ、敵の増援が来たぞ』
見ればレーダーに別の反応があった。
『連中が来る前に逃げるぞ、いいな?』
「了解、ヴァイス2聞こえてるな?」
『聞こえてる、こっちは敵さんが速くて速くて、うちの娘じゃ少々きついきつい、ぶっちゃけケンプファーが来てくれて助かった』
『とにかく急いで離脱だ、とんずらするぞ』
「はっ」
「あいー」
ケンプファー隊と合流、双方被害なし。
両隊はサピンの援軍が来る前に素早く戦場を離脱した。
今回の戦果によりサピン方面の連合軍は遅滞を余儀なくされ、この方面のベルカ軍は多少の余裕を得、若干ながらも航空戦力の補充をすることができた。
だがそれでも、少しずつベルカ軍は劣勢に立たされていった。




舞台裾(あとがき)
天鶴「二話目終了ー!」
サイス「んー、ちったー戦闘描写頑張ったつもりだとか言うなよ?」
天鶴「…そのつもりですが」
サイス「ザケンナボケー」
天鶴「キャーうちのサイスがぐれた!」
サイス「エーバーズ大尉登場させて適当に終わらせただけじゃねーか」
天鶴「そんな、頑張ったのに」
サイス「うるせえ」
天鶴「ひっ、そ、それとお解りかと思いますが、戦ったのはエスパーダです」
サイス「解りにくい!」
天鶴「ひーーーーーー、十歳なのに怖!」
サイス「んで?次は?」
天鶴「(にへら)えーお次は戦闘なしのラブコメ全開です。ヒロイン三人暴れまくります」
サイス「!?」
天鶴「ご期待してください!」
サイス「えっ、ちょっ、まて、WAIT!」



 2007/08/09:天鶴さんから頂きました。
秋元 「ドッグ・ファイトは楽しい! 後ろを取り合い、撃ち、落とす! そんな単純な戦闘の中に、高度な技量が求められる!」
アリス 「……ミサイルは撃って逃げるだけ……撃ちっぱなしタイプはですが」

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