ACECOMBAT0 INNOCENTSNOW | ||||
「うーむ」 基地司令官の部屋でディセンベルは唸った、このところ味方からくる知らせは良くないものばかりで、今ベルカ軍はじりじりと押されている状況だ。 特にウスティオに、オーシアとの補給線を奪還されたのは痛かった、これにより瀕死だったウスティオは息を吹き返しつつある、そのためただでさえ逼迫してきている戦力、ひいては航空戦力がウスティオに送られている。 「………」 ディセンベルは手元にある写真を見た、それには強硬偵察した偵察機が持ち帰ったウスティオの航空基地と、そこに駐機している戦闘機の姿が写っていた。 ACECOMBAT0 INNOCENTSNOW 第三話 幸せ因子は健在なりや? 1995年4月17日 アイゼン航空基地 「じーーーーー」 「…」 「じーーーーー」 「……」 「じーーーーー」 「………いやお前なに口でじーーとか言いながら、もの欲しそうにこっち見てんだ」 「解ってんなら通してくれてもいいじゃん」 「アホぬかせ」 アイゼンバウムの検問でサイスは口で「じーー」と言いながら一人の守備兵を見つめたが、その守備兵に声をかけられたのでやめた。 この守備兵の名は、ウィリー・ホープマン、階級は大尉、このアイゼンバウム守備部隊の隊長だ、サイスはこの大尉と仲が良く、敬語を使わない一人である。 開戦前は良く基地の中に入れてもらったりしていたが、さすがに開戦後は中に入れてもらえるのは無くなった。 常識的に考えて軍事基地の中、軍隊のど真ん中に民間人の子供を半ば勝手に入るなど非常識とか考えられないが、この守備兵長は非常識の塊みたいなものなのであった。 この男は真面目に仕事をしている時間より、ポルノ雑誌を読みふけっている時間のほうが多いのではないかと思えるほどにグータラなのだ。 じつはこの大尉について色々と噂があったりするが、それはまた今度にしよう。 「今日は何の用だ、この頃色々と忙しいからな、入れてやれんぞ」 「んー最近何か慌しいなと思って、何かあったのかなと思って」 (やれやれ、こいつは鼻が利くな、もう嗅ぎつけやがった) サイスは日々のこの基地の出撃頻度で、今のベルカ軍の劣勢を敏感に感じ取り、それを調べに来たらしい。 「あーもうお前は、そんなことやってるとスパイと間違えられて憲兵に連行させられるぞ」 「んなもん逃げ出す」 ホープマンは苦笑してサイスを見つめている、これ以上ないくらい即答したからだ。 「お前空軍入って、パイロットになるんじゃなかったのか?憲兵に連行なんかされたら経歴に傷つくぞ」 「うん、だが問題なし!書類をちょいちょいすれば良いだけだし」 「こいつは」 半ば呆れてホープマンはこの小さなお客を見下ろす、こいつだったら本当にやりそうだ。 このまま問答を続けても埒があきそうにない、そこでサイスの関心を他に向けさせることにした。 「それよか、マレーネちゃんのプレゼント決めたか?」 「うっまだ決めてない」 素直に反応するサイス、これで話題をそらす。 「ほうら、こんなとこで油売ってねーで、さっさと帰って考えるがいいさ」 「…でも何にすれば良いのかわかんない…普通に買ってあげるのも見劣りしそうだし…」 (見劣り?) 最初ホープマンはその意味をはかりかねたがすぐ思いついた、ルードヴィヒのせいだ、マレーネの彼氏であるルードヴィヒも当然彼女にプレゼントを渡すはずだ、負けず嫌いで、姉の事が好きなサイスはルードヴィヒに対して妙なライバル心が芽生えてしまっているのだろう、だから何とかしてルードヴィヒより良いものをということなのだろう。 (中尉に懐いているのに、変な所で意地を張る奴だな) ホープマンは苦笑しながらアドバイスをした。 「そういうことなら女の子に聞いたほうがいいんじゃねえのか?自分一人で考えるよりよっぽどいいと思うぞ」 「なるほど」 そういって検問のゲートを潜ろうとするサイス、もちろんホープマンに襟首を捕まえられる。 「どこに行く気だ、てめえは」 「いえなに、アドバイスどおり基地の女性兵たちに相談しようかと」 まだ中に入る気だったらしい、ホープマンはサイスを基地と反対側を向かせると手を離した。 「たく、お前将来大物になるよ」 「それは素直に褒め言葉と受け取ってよいので?」 「そういうことにしとけ、とにかく基地にゃ入れられん、町戻って女の子に相談してきな」 「うぃー」 サイスはそう言うと自転車に飛び乗り、町へ戻っていった。 1995年4月17日 アインバウム サイスは町に戻ったが、そこで再び悩むことになる、たしかに女性の事は女性に聞くのが良いのだろうが、知り合いは同級生ばかりで姉と同年代の女性がいない。 サイスはだれか適当な人がいないか考えながら町の中を自転車を走らせていた。 そのうち噴水広場に出た、そこにアンナ以下、女子グループがベンチに座りながら何やら話をしているのを見つけた。 (ちょうどいいとこに、同年代じゃなくてもやっぱり女の子だから分かるかな?) サイスはそう思い声をかける。 「よっ、皆の衆、優雅に広場でお話かい?」 「さっ、サイス!?」 「わっ!?えあ、えっと」 「えぇっ!は、はわわ」 サイスに声をかけられた三人は何やら焦った様子であたふたしている。しかも何やら顔が赤い。 (なんだこいつら?怪しいな、…まあいいかとりあえず相談するか) 「んーと、ちょっといいか?ちょっと聞きたいことがあんだけど」 「え、ええーと、な、なに?なっ、なんなのかな?」 アンナが代表して答えるが思いっきり声が裏返っている、サイスはますます変だと思ったが、とりあえず姉へのプレゼントの相談を優先させた。 「実はプレゼントをあげようと思ってんだけど、女の子ってどんなのプレゼントされるとうれしいんだ?」 「「「えっ!?えええぇぇぇっ!!??」」」 大袈裟に反応する三人、三人は何やらごにょごにょ囁き合うと、アンナが何やら鬼気迫る表情で詰め寄ってきた。 「さっ、サイス!だ、誰に、誰にあげるの!?」 「え?あのアンナさん?ちょっと怖いんですけど?」 「だから誰!?早く言いなさいい!!言えっ!!!」 「アンナさん、チョーク!チョーク!」 このままいくと、サイスを絞め殺さんばかりのアンナの迫力に、サイスは他の二人に目で助けを求めたが、二人も期待と不安とが入り混じったような表情で真剣にこっちを見つめている。しょうがないので素直に答える。 「姉貴だよ、もうすぐ誕生日だもんで」 「は?マレーネさん?」 急速に三人のボルテージが下がるのがわかった、サイスはとりあえず解放されたので質問を再開した。 「で、ちょっとばかしお知恵を拝借、つーわけですよ」 サイスは先程の出来事からなるべく離れたくて明るく言ったが、アンナたちはそれに答えず無言。 「えーと、どしたの?おーいおーい?みなさーん?」 「…ふーん、そうか、そうなんだ」 返事が無いので何回か声をかけると、アンナがゆらりと近づいてきた、サイスはその動きに只ならぬ雰囲気を感じ取り思わず後ずさりする。 「いきなり何を言い出すのかと思えば…期待させといて、何?マレーネさんに?」 アンナの声はどこか地の下から響いてくるような、そんな不気味さをたたえている。 「あ、あの、アンナさん?ちょっち怖いんですけど」 「人がせっかく期待したのに…ぬか喜びさせて…」 後ろから声が聞こえたので振り向くと、そこにはいつの間にかエリカが立っていた、これまたまるで幽鬼のように不気味に。 「はう!?な、なに?なんか俺挟み打ち!?ちょっ、怖いよお二人さん!」 前後から追い詰められ、行き場を失ったサイスは、一番この場でこういう悪意と無縁であろうリリィに救いを求めた。 「おーいリリィ?この二人どうにかしてくれーん?なんつーか、やばげな雰囲気がするんで、俺を助けてー」 リリィはベンチに座ったまま、首だけこっちに向けた。 「…サイス君」 「はい?」 「残念」 「はいいいぃぃぃっ!?」 直後、噴水広場に一人の少年の消え入りそうな悲鳴が木霊した。 所変わってここはリリィの家であるガスナーベーカリーのリリィの部屋。 サイス達は噴水広場からここに移動してきた、アンナとエリカは最初サイスをそのままにして帰ろうとしたのだが、リリィがサイスを家に連れて帰って相談に乗ろうとしたため、無理やりついてきた。 サイスは今の状況が全く理解できておらず、「何なんだ?」と頭に?を付けているがさっぱりわからなかった、今までこんな状況になったことがなかったのだ。 「あーその、とりあえずプレゼントね、プレゼント」 「あ、ああ」 最初に口を開いたのはアンナだった、どこかとってつけたような、変な口調の上に、顔が少々赤い、ほかの二人も同様だった。 サイスはなぜアンナ達がこんな風になっているのか分からなかった、だけど相談に乗ってくれるようなのであまり深く考えるのをやめた、というか考えたくなかった、考えると先程よりひどい目にあいそうな予感がしたからだ。 「ま、好きなものを送るのが定石よね、マレーネさんの好きなものってなんだっけ?」 「えっと、ココア」 「ココアか、うーんなんかインパクトに欠けるわね」 「そうね、自分で作ること出来ないし、高級なココアなんてどこに売ってんだろう?」 「んと、他に好きなものはないの?」 リリィに聞かれサイスは少し考えて。 「猫…かな」 「猫?マレーネさん猫好きだったんだ」 「うん、よく野良猫にえさやってる、そのとき「猫良いなぁ」とか恍惚の表情で言ってる。」 「…なんか危険な香りがするわね」 「えと、でも猫なんて勝手に飼えないんじゃないかな、マレーネさん喜ぶかもしれないけど世話大変だよ?お仕事で忙しいだろうし、プレゼントで負担かけたりしちゃダメなんじゃないかな」 「あーそうかも、サイス他には?」 「うーん特に思いつかない…姉貴あんまり好き嫌い言う方じゃないから」 好きなものが切れて、結局他の物を考えることになりそうになったとき、エリカが提案した。 「あのさ、なにも生きてる猫を送る必要無いんじゃない?」 「あ、そっか」 「言われてみればそうだね」 「でしょ、んで、あの、そのサイス」 なぜかうつむき加減になり、恥じらうようにサイスを直視しようとしないエリカ、サイスはその光景に頭の中でレッドアラートが鳴り響く。 「な、なんでしょう」 「うと、その」 ちらっとこっちを見るエリカ、その顔が朱色に染まっている、サイスはその表情に一瞬かわいいと思ってしまうが、その思いをに振り切るように顔を振る。 (お、落ち着け自分!あっ、相手はあの冷血メガネことエリカだぞ!きっとこれは何かの間違えだ!冷静に!クールクール!クール宅急便!) 頭の中で意味不明なことを考えるサイス。思いっきりテンパっている。 エリカはしばらくそのままうつむいていたが、意を決したように顔をあげると。 「あ、ああ、あたしさ、そのっ、ぬ、ぬいぐるみ作るの好きで、えと、それで、ね、猫!猫作ってマレーネさんにあげたらとかなんとか、その…」 最初は勢い良く言ったが、最後の方はしぼんでよく聞こえなかった。 「えーとぬいぐるみで猫作るってことだよな、ふーん」 「いやならいいけど…」 小さくなってしまうエリカ、普段からは想像できない姿だ。 サイスはその姿を見てあわてて取り成す。 「いやその、作ったことないからさ、いいんじゃないの、面白そう、あ!そういやエリカぬいぐるみ作るんだ、なかなか可愛い趣味してるじゃん」 「はう!」 エリカが珍妙な声を出した、耳まで赤くなっている、良く見ると何か呟くように言っている。 「かわいい…かわいい…」 「おーい、エリカさーん?…ダメだこりゃ」 エリカが何を呟いているのか分からなかったが、いくら声をかけても無反応だった。 「さて、どうしたものか」 「あ、あの」 「ん?」 振り返るとリリィがサイスの服の裾を「くいくい」していた。 「どした?リリィ?」 「うんと…読書って可愛い趣味かな?」 「へっ?」 いきなり予想外の質問をされ、混乱するサイス、思わず肯定する。 「あ、えーと、か、可愛いんじゃないかな、リリィが本読んでたりすると」 「!!え、えへへへへへへへへへへ」 可愛いの一言でだらしない笑みを浮かべ続けるリリィ。 そこにアンナが、「ズズイ」という感じに出てきた。 「サイス!あの、その、動物の世話ってかわいいに入る?」 「いや、他の娘ならいざ知らず、お前じゃなあ」 さっきのリリィの時より冷静になって、茶化したのがいけなかった、サイスの答えを聞いたアンナは顔を般若に変える。 「ふーん、あっそう、私は可愛くないんだ」 「!!!!イ、イヤ、カワイイデスヨ、デ、デスカラソノフリアゲタコブシヲオロシテクダサイ」 「死ね!」 「ひぎいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」 その後いろいろあったせいですっかり暗くなってしまった、もう遅いのでぬいぐるみ作りはまた今度ということになり、お開きになるはずだったのだが。 「…で、俺は何で捕まってるんで?」 「いいじゃん、ふんっ」 拗ねる様に言うアンナ、サイスの右腕はアンナに拘束されている、早い話が腕を組んでいる。 「まあ、アンナはどうでもいいとして、リリィ?」 「ん?なあに?」 サイスは左腕を拘束している人物のほうを向く、リリィは少し恥ずかしそうに、けれども思いっきり左腕を組んでいる。 「なあんでこんな風になったんでしょうねえ…」 帰り支度を始めた時、エリカがサイスに、酒場をやっておりリリィの家の隣にある、自分の家で夕食を食べていくよう誘ったのだが、それを聞いてなぜかアンナも、リリィも、我も我もと張り合うように言い出したので、半ば収拾のつかなくなったが、結局最初に言ったエリカの家で食べることになった。 エリカは先に家に帰り家族に友達が来ることを伝えに行って、今はいない。 「とりあえず放して、家に電話するから」 「ふん!」 「うん、わかった」 両者言っていることは違っても、どこか名残惜しそうに手を放す。 (なんだいったい、今日は異常だぞ、明日は爆弾の雨でも降るのか?それともフリー○ムでも舞い降りるのか?馬鹿な、種にゃ皆川純子は出てないぞ) あまりに想定外なことが連続して起こった今日の出来事を反芻しながら、ボタンを押すサイス、間もなくマレーネが出た。 『はい、ゾーデンシュテルンです。なんだサイスか』 サイスは夕食をエリカの家で食べること説明した。 『わかった、迷惑かけないようにね』 「あいあい、はあ…」 『どうしたの?我が弟よ、元気が無いぞ』 「…じつはさあ」 今日起こった出来事を話すサイス、無論プレゼントの事は伏せた。 『ふんふん、ほうほう』 「何姉貴?その変な声」 マレーネはなぜか嬉しそうに、電話の向こうで頷いている、それがサイスには無気味に聞こえた。 『うーん♪あんたもそういう年になったか!お姉ちゃんはうれしいぞう♪』 「は?なに言ってんの姉貴?」 『サイス!とにかく楽しんできなさい!朝帰りしてもいいわよ!』 「はい?泊って来いってこと?そんな迷惑かけれ…」 『じゃあね!頑張ってきなさい!!』 そう言って電話を切る、マレーネ。 「あ!おいちょ!…なんだよ…」 釈然としないまま子機を置き、アンナたちのもとに戻るサイス。 戻ってきたサイスにアンナとリリィは当然のように腕を組んだ、そのまま外に出て隣のエリカの家に向かう、と外に出るといきなり見知った顔に出会った。 「お?カール何してんの?」 「それはこっちのセリフだ、サイス」 なぜかそこにいたカール。 カールはその目線をサイスの左右にいる二人に向けた。 「ふむふむ」 「?」 何やら考え込むカール、とそこにエリカが来た。 「おーい、準備出来たって、って、あれ?カール?」 カールはエリカを見て納得したように頷くと、サイスのほうを見て。 「サイス、お前もそっちに行ってしまったか」 「は?」 「グッバイ!マイフレンズ!」 「え?あ、ちょっ」 「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!何で主人公ばっかりーーーーーー!!!」 そのまま叫びながら走り去るカール、残った四人は訳が分からず立ちすくむ。 「何?今の?」 「さあ?」 「ま、いいか、とにかく準備出来たから入って!」 「よし突撃!」 「あ、待ってよー」 酒場の中に入る四人、その後四人は酒場の中で騒ぎながら楽しく夕食をとった。 追伸 次の日、サイスは「モテ男」というわけのわからない尊称(?)を貰い、なぜか男子からの風当たりが厳しくなった。 了 舞台裾(あとがき) 天鶴「三話目終了」 サイス「おい、何だこれ、絶対投稿するところ間違っているぞ」 天鶴「いいじゃん」 サイス「よかねーよ」 天鶴「あ、主要なキャラ全員一様で終わったんで設定書ける」 サイス「まだ書いてなかったのか」 天鶴「うん、アキモトさんの手をわずわらせるのも何だから、一回に統一しようかと」 サイス「つーかこれあと何話続くの」 天鶴「とりあえず、ラブコメは次の一話で一時中断、戦闘増える」 サイス「やっとまともになるのか」 天鶴「やーでも、ラブコメ書いてて楽しいわ、くはははは」 サイス「うるせー死ね」 |
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2007/08/09:天鶴さんから頂きました。
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