ACECOMBAT0 INNOCENTSNOW




前方で一機、敵機が火を吹いて落ちていく。
それを屠った戦闘機のパイロットは、不機嫌そうに軽く息を吐くと、単座だというのに誰かに話しかけた。
「撃墜、次だ」
『了解しました。マスター』
(マスター、ボクはあなたに好かれたい)
「反応が遅い、もっと早く反応出来ないのか!?」
『努力します…』
(あなたに嫌われたくない)
「機械なんだ、ちゃんと仕事をしろ」
『はい、マスター…分かりました』
(けどマスター、あなたは…)
「ふん、のろまが」
『………』
(マスター、ボクは…ボクは…)


ACECOMBAT0 INNOCENTSNOW
第六話 激突


1995年4月24日 フトゥーロ運河
『カノン!後ろに付かれてる!チェックシックス!』
「ちぃぃぃっ!」
カノン――ゴットフリート・エーバーズ――は愛機・Su-27を急旋回、直後今までいた場所を真っ赤な火線が通り抜ける。
フトゥーロ運河、北の河口、ここでケンプファー隊は、ウスティオ傭兵部隊を相手取り、激戦を繰り広げている。
『援護します!ケンプファー4、FOX2!』
部下がミサイルを放ち、自分の後ろに付いていた片羽の赤いイーグルを牽制する。
敵は予想以上の腕だ、こっちが苦戦している、機数の差をものともしない見事な機動を見せている。
『くそっ、ミス!』
狙っていたミサイルを敵も急旋回で回避、エーバーズは上から逆落としに突っ込んでくるもう一機のイーグルに気付き、味方に警告する。
「上だ!ケンプファー4かわせ!」
『うお!?』
狙われたケンプファー4は間一髪、横転して回避した。
「ケンプファー2、敵の1番機を牽制しろ!先に片羽を仕留める!」
『了解!この野郎待ちやがれ!』
ケンプファー2が降下して敵の1番機を追う。
「この、いい加減墜ちろ!」
エーバーズは片羽の赤いイーグルを追いながら、叫んだ―――

ドォォォン!!
大音響とともに燃料タンクが吹き飛べ、周りにいた兵士達はその炎の中に消える。
必死に敵の戦車に向かって機銃弾を吐き出していた重機が沈黙し、また一つ、ベルカ軍の陣地が潰された。
フトゥーロ運河南側では、ベルカ軍の防衛線が崩れかかってきた。
当初戦線を支えた航空隊は、物量に勝る敵の戦闘機部隊の対応に忙殺され、地上の敵に対する攻撃は殆ど出来ない状況に追い込まれている。
それはこの南側に配置されたヴァイス隊も一緒だった。

「FOX2!」
翼下からミサイルが放たれ、そのミサイルに撃ち抜かれたF-16Cはばらばらになって果てた。
だがしかし、敵機を落としたというのにヴァイス1――ルードヴィヒ・シュトラウス――は焦っていた。
(くそ、見失った!)
原因は先程までドッグファイトの相手であった、F-14Dを見失ったからだ。
あのトムキャットのパイロットはかなりの腕で、後ろに付かれでもしたらまずいことになる、振り切るのが難しい。
(どこだ!?どこに…)
レーダーを見てもどれがどいつか分らない、電波攪乱と、数が多いためだ。
ルゥはキャノピーの向こう、空戦の行われている大空を見回す、蒼穹に墨を垂らしたように出来る高射砲の煙に、煙を吹いて落ちていく敵だか味方だかの戦闘機―――
「くっ」
見つからない、それとともに焦燥感が高くなる。
(どこだ、どこに―――)
前、右、左、後ろ、上、下、全方位に目を見張る、そして―――
「!いたぁっ!」
奴らしきF-14Dが右下方にいた、それに向かってルゥは機体を急降下させ突っ込む。
「墜ちろっ!」
機首から放たれた弾丸は、真っ直ぐF-14Dに向かっていき胴体部に着弾、直後パッと真っ赤な火を噴いた。
「……?」
先程まで凌ぎを削っていた相手にしてはあっけない最後に首をかしげるルゥ、奴か確認するためにすれ違う際に尾翼を見た。
「くっ」
尾翼を見て思わず呻いた、尾翼に書かれていたのは鳥のマークで、奴のハートではなかった。
(違った、くそっ)
改めて周囲を確認、見付からない。
(離脱したか?)
そう思ったが、油断はできないと思い、機体を制御しつつ、周りを見続ける。
『ヴァイス1、そんなに気張るな、落ち着いていこう』
ヴァイス2、僚機のヴィルヘルムが声をかけてくる、傍目から見ても焦っているのが解ったらしい。
空戦では動きを乱した奴から落とされる、今敵から見たらルゥはいいカモなのかもしれない。
「ああ、ありがとう、少し冷静にならなきゃな」
『お代は帰ったら一杯奢ってくれや』
「………」
ルゥは戦闘中にもかかわらず脱力した、だがこれで過度の緊張から解き放たれもした。
今度こそ落ち着いて、目を光らせた、そして――見付けた。
「いたぞ、マートン!左上!」
やっと見付けた、奴は機体をロールさせこっちに対して攻撃態勢をとっている所だった一瞬でも早く相手に気が付いて良かった、気付かなければ一方的にやられる所だった。
「ブレイク!」
ルゥは散開を指示、素早く二機は離れた。
敵機はどちらも狙わずに、そのまま機速を上げて離れる、奇襲が失敗し、1対2では不利だと判断したからだろう。
「逃がさん!」
小さな旋回で機首を奴に向け、こっちもスロットルを上げる、アフターバーナー使用、敵に詰め寄る。
奴はそれを見て受けて立つ気か、こっちに機首を向けた、正面からぶつかる。
「FOX2!」
ルゥはミサイルを発射、だが相手も発射、二つのミサイルは空中で激突、火炎の塊となって消える。
「くっ」
二機とも正面のまま接近、そしてすれ違いざまに一連射。
ガンガンッ
何かがぶつかる音とともに期待に衝撃がはしる。
(くそっ)
被弾したのは右翼だった、一筋の細い煙が後ろに流れていく。
(あいつは?)
ルゥは後ろを振り返ってみた、F-14Dは明らかに被弾したと解る煙を吹いていた。
「相打ち…と言っていいか?」
『大丈夫か!?』
呟いていると先程の散開で離れたヴィルヘルムが合流した。
「ああ、損傷は大したはことは無い、だがもう弾も燃料もないな」
『ふぃー、良かった、良かった』
ヴィルヘルムはルゥの機体の周りを見て、損傷状態を確認した、ヴィルヘルムから見ても大丈夫だったようだ。
「俺は帰投する、お前は戦闘を続行しろ」
『や、お前一人で帰らせて、死なれでもしたら色々と恨まれちまう、護衛する』
「おい、命令だぞ」
『俺はマレーネちゃんやサイスから石投げつけられるのは嫌じゃー』
実際、被弾した戦闘機など敵から見ればただの獲物だ、まして今は乱戦状態。
しょうがないので従うことにした
「…勝手にしろ」
ルゥは味方を残して退くことにやましさを感じながらも、機を旋回させた。
「………」
旋回する時に、先程のトムキャットが避退した方向を睨んだ、次こそは必ず落とすと決意して。

オーシア空母ケストレル以下、オーシア第三艦隊はすべて配置についた。
ケストレル艦橋では艦長のウィーカーが相変わらず仁王立ちして、前線からの報告を聞きながら絶え間なく続く発着艦を見ている。
「そろそろか…」
ウィーカーはそう呟くと、大声で指令を出した。
「全艦に通達!これより運河に突入する!」

「撃てぇ!撃ちまくれぇ!」
フトゥーロ運河南側に配置されたフリゲート艦・ツェッペリンの艦長、ダンネブルク少佐は大声で怒鳴りながら、部下を鼓舞した。
既に航空戦力も擦り減り、南側の艦隊は四分の一の戦力まで低下して、今では各艦の連携も上手く取れない状況だ。
その中でツェッペリンは、海上に浮遊する味方艦の残骸の間をすり抜けながら疾走し、持ちうる限りの火力を放っている。
艦の前方の上空で火の玉が出現した、敵機がツェッペリンの対空砲火によって撃墜されたのだ。
だが今のツェッペリンのクルー達に戦果を喜ぶ暇は無い、敵はわらわら寄ってくるのだ。
「艦長!敵艦隊前進を開始します!目標はやはりこちらかと!」
「くっ」
さらに悪いことに敵が主力を送り出してきた、それにつれて敵の空襲が激しさを増し、残っていた僚艦が次々に被弾していく。
「ミサイル接近!」
そしてツェッペリンもまた、敵機が撃った対艦ミサイルを右舷に受け、それにより約二分後に横転沈没した。
南側の残存艦隊、最後の艦となったツェッペリンの撃沈と共に、南側のベルカ軍は組織的な抵抗を急速に失い、実質南側の河口は連合軍が占領した

「くそっ」
敵のあまりに見事な連携に、エーバーズは思わず口の中で罵った。
奴等――二機のイーグル――は引き離そうとしても、その連携の鎖を断ち切らせない。
それどころか自分達が危険な状況に陥ることもしばしばあった、なかなかこちらのペースに持って行けない。
だが所詮は衆寡敵せず、他の味方の力を借りつつ、敵を自由に動かさせないように包囲し、消耗させた、連中はミサイルを撃ち尽くし、後は機銃のみ。
これならば何とかなるか、そう思ったエーバーズだが油断はできない、このまま包囲を崩さず、粘り強く追い詰める。
幸い、まだフトゥーロ運河北側では、味方の艦隊が健在で、さらに航空機部隊もまだまだ戦える状況だ、それでこいつ等に集中できた。
『本当にしぶとい連中だな…くそっ、またロックを外された』
『落ち着けケンプファー4、連中は疲弊しているんだ、無理に攻撃するな』
部下も焦る気持ちを抑え、少しでも油断すれば崩されてしまう機動を乱さずに、冷静に当っている。
が、その冷静さも、機動もヘルクレスからの一報で乱れを生じ始めた。
『各機へ!南の河口が突破された!現在敵艦隊が運河を北上中!敵の航空機の増援が来るぞ、気を付けろ!』
「っ!」
南側の友軍の敗走の報せに、北側にいたベルカ軍全体が衝撃を受けた。
もちろんエーバーズも驚いたが、今できることをする以外にない、南側が堕ちた今、自分等が殿になったのだ、動揺するわけには行けない。
『隊長、まずいです!このままじゃ連中に逃げられちまいますぜ!』
「落ち着け、ケンプファー4!単機で挑むな!」
『強攻します!』
「待て!えぇい、援護しろ!」
敵の接近の報に焦ったケンプファー4が、片羽に向かって突撃、敵の左下から突き上げるように突っ込む、その後から遅れて他のケンプファー隊の面々が続く、援護するには位置が悪い。
『墜ちろ!』
焦ったケンプファー4がミサイル発射、だが角度があり過ぎて、逆にそれを回避した片羽に上空からかぶられる。
『しまっ!』
片羽の撃った火線はケンプファー4の尾部を吹き飛ばした。
『ガガガ―――脱出――す!』
無線からノイズだらけながらもケンプファー4の声が聞こえ、その直後にケンプファー4の機体から何かが射出された、そしてそれは空中で花開いた、イジェクションシートだ。
ケンプファー4を叩き落とした片羽は、仲間が撃墜されたことに気を取られた2,3の上を飛び抜け、最も離れていたエーバーズも回避しようとする。
(好き勝手させるか!)
その片羽にエーバーズはインメルマン・ターンで喰いさがる。
「2,3そのまま、敵の一番機を抑えろ!こいつは俺が」
『ラ、ラジャー!』
『了解、そっち任せます!』
エーバーズは部下の応答を聞き、後ろに気を逸らす必要が無くなってから、前方で急降下する片羽を睨みつけた。
「今度こそ…」
自分も急降下し、逃げ回る片羽の後ろに喰らい付き、ミサイルの照準を合わせる。
「THEENDだ!FOX2!」
十分に近づいてからミサイルを発射、ミサイルはエーバーズの期待に応えてか正確に突き進む。
(いける!)
が、エーバーズの期待は脆くも崩れ去った。
片羽は何と、地上の味方のクレーンの下を潜りぬけた、ミサイルは片羽の動きについていけずクレーンの脚に命中してしまった。
(なんて奴だ…)
空中サーカスが目を丸くするような動きをして、悠々と離れていく片羽、それに思わず呆然となりするエーバーズ。
その動きを止めていた時が最大のミスとなった。
「っ!」
後ろに殺気を感じたエーバーズは、反射的に操縦桿を倒した、コクピットのすぐ横を弾丸が通り過ぎていく。
(まずい!)
ガンッガンッガンッ!
機体がまるでハンマーに殴られるように振り回され、コクピット内に被弾を表す警報が鳴り響く。
エーバーズを銃撃した敵機が飛び抜けていった、前進翼が目立つ機体だった。
(Su-47!?いや、違うか?)
とにかく初めて見る戦闘機であった、そいつは恐ろしく小さく旋回すると再び攻撃態勢に入る。
エーバーズは避けようとするが、損傷のせいだろう機体が言うことを聞いてくれない、エーバーズは撃たれる前に脱出する覚悟を決めた。
「………?」
だが敵機はエーバーズを攻撃すること無く、そのまま飛んで行ってしまった。
腹を決めていたエーバーズは、肩透かしにあったような気分のまま、その見慣れぬ戦闘機を見送った。
(何だ?情けをかけられた…いや違うな、と言うと…弾切れか?何にせよ運が良かった)
エーバーズはホッとしつつも四苦八苦しながら機体を動かす、完全に死んだわけではなかったらしい、だいぶ緩慢動きながらも言うことを聞いてくれた、そこに部下が同じアイゼン基地所属のヴァンピーア隊と一緒に合流してきた。
『隊長、無事で?』
「ああ、とりあえず生きている」
『良かった』
『俺達が援護します。後退しましょう』
「連中の一番機は?」
『逃げられました。あいつ凄いですよ、本当に』
「…戦況は?」
『敵の増援により艦隊の被害がかなりのものになりました。すでにフトゥーロ運河は放棄するそうです』
「そうか…」
エーバーズは唇をギュッと噛むと、呟くように言った。
「退こう、今回は…俺達の、負けだ」




舞台裾(あとがき)
天鶴「六話目が終わった、やっと…orz」
サイス「うぉい!アイゼン組惨敗じゃねえか!」
天鶴「まっ、相手が相手だから」
ハリマ「…ガルム1の描写少ない」
天鶴「言うな、あの人に活躍されすぎると、ケンプファー隊が全滅する」
シャドウ「微妙に短いですね」
天鶴「言うな、やはり空戦描写はむずい」
サイス「次は?」
天鶴「次回は戦闘無しの、サイスとアイゼン基地の兵士のコミュニケーションメインにしようかと、次も戦闘を挿れると死ぬ、私が」
ハリマ「…じゃ、また次回」



 2007/10/06:天鶴さんから頂きました。
秋元 「敵に逃げられても生き残れば勝ちですね。個人的には何度も逃がしてるあいつをジャンジ(ry)のようにフルボッコしたいところですが、あいつはなかなか逃げるのがうm(ry」
アリス 「……そうやって何度も戦うわけですね」

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