WARSHIPGIRLS




降り注ぐ陽光、心地よいそよ風、その風を受けてわずかに動く木の枝
普通に見えるが違う世界
私たちの世界の理とは違う理の中で回る世界
ここでは戦艦にも魂が与えられている
この世界では彼女たちは人として暮らし、兵器といて生きること無く生活している
ただ平穏に、ただゆっくりと、そんな日常ばかりだ
けどそれでいい、それが一番
世界は回る、今日も穏やかに

WARSHIPGIRLS
ハリマ「お茶の時間です」

カチャカチャ
食器同士がぶつかり音。
音の元の食器棚に並んでいるのは、いずれもアンティークの食器ばかりで、綺麗に手入れされている。
その食器棚からティーセットを出そうとしているのは、百八十近い長身の、肩まで伸ばした紫色の髪と、右が赤、左が髪の色と同じ紫のヘテロクロミア(双眸異色)が特徴の女性、超兵器・超巨大双胴戦艦『ハリマ』である。
彼女はティータイムにしようとその準備をしている、彼女はティーセットを取り出しテーブルの上に並べる。
彼女の趣味はお茶をすること、紅茶、緑茶、コーヒー、ハーブティー、中国茶、何でも一通り淹れることができる。
「………」
彼女はあまり喋る方では無い、むしろ物静かだ、まあ今は相手が居ないのだから当たり前だが。
並べ終わり、今日何を飲むか決める、どれにしようか、玉露にしようか、いや今は玉露に合うお茶受けが無い、ではアールグレイにしようかこれはビスマルクとティルピッツ姉妹から贈られたものだ…これは今度にしよう、それじゃあブルーマウンテンにしようか、これも贈り物で、キーロフから贈られたもので一級品だ…いや、やっぱりダージリンにしよう、うん今はダージリンな気分だ、ダージリンに決定。
彼女はダージリンの缶を取り出すとふたを開けた。
「…あっ」
見れば中は空だった。
「…ダージリン、切らしちゃってる」
彼女は少し考えると。
「…買ってこよう」
そう呟くと財布を持って家から出て行った。

家から出たハリマは行き付けの店に向かう、少々高いがとても良い茶葉を扱っていて、喫茶店も一緒にやっている紅茶専門店だ、歩いて十分ほどかかる。
家を出たころ誰かの視線を感じたような気がしたが、気に留めなかった。
歩き出して二分ほどすると前から知り合いが歩いてきた。
「…こんにちは、雪風」
「あっ、どうもこんにちはハリマさん」
小柄な少女、日本海軍駆逐艦・雪風はハリマの挨拶に丁寧に応えた。
「今日はどうしたの?」
「えへへ、実はですねこの前懸賞に応募したら見事当ったんですよ!北海道海の幸セット、今日はその海の幸セットで夕飯にするので足りない食材を買い足しに行くんです」
雪風は強運の持ち主で、宝くじを買えば必ず一万円以上が当たり、おみくじを買えば大吉を引く、最近では台湾三泊四日ペアチケットが当たった。
「というわけで今日はご近所で鍋パーティーです!どうですハリマさんも?」
「いいわね…じゃ、お邪魔させてもらいましょうか」
「はいはい、これでメンバーはえっと、まず最上さんに、矢矧さんでしょ、それからアドミラル・ヒッパーさん、ブルーリッジさん、秋月さん、あとワスプサンと、フッドさんですから、ハリマさんと私含めて十人ですね」
「…随分と大人数ね、買い物一人で大丈夫?」
「あっ、それは大丈夫です、足りないもの買い足すだけですから」
「そう…それじゃまた後でお邪魔するわ」
「はいそれじゃ!」
そう言うと雪風は元気に走って行った。
ハリマはその姿を微笑ましそうに見送った。

雪風と別れて約八分後、やっと目的の場所、紅茶専門店『青い鳥』に到着。
カランカラン
ベルのこ気味良い音を聞きながら扉を開ける、店内はシックで落ち着いた内装でこれもハリマの気に入る理由だった。
「いらっしゃいませ」
中に入ると店主、オーシア海軍空母・ケストレルが出迎えた。
「…こんにちはケストレル、景気はどう?」
「まっ、それなりに、ってとこですかね、とりあえずあちらさんのおかげで閑古鳥は鳴いてませんよ」
見れば店の奥の席で四人ほど客が座っていた、うち二人は口論でもしているか少々声を荒げている。
「先ほどからあんな感じで」
「…いつもどおりじゃなくて?」
「ですよね」
「ん…茶葉だけ買って帰るつもりだったけど、ちょっと御喋りでもしていきましょうか」
ハリマはケストレルにダージリンセットをオーダーするとその騒がしい席に向かった。
「こんにちは…」
「ん?なんだハリマ?」
「今忙しいから後で」
挨拶もする暇も無いとばかりに口論に戻る二人の女性、米海軍の将校の服を着た米空母・二ミッツ、二ミッツと口論しているのが露空母・アドミラル・クズネツォフだ。
この二人仲が悪い、他の米艦、露艦娘達は別段仲が悪いというわけではないのでこの二人が個人的に仲が悪いのだ。二人とも真面目で祖国に誇りを持っているので似た者同士いがみ合っているといったところか。
「こんにちはハリマ、やれやれ礼儀を知らない娘たちね」
「こんにちは、ハリマさんあなたもお茶を飲みにきたのかしら?」
そして残る二人は先に喋ったがアドミラル・グラフ・シュペー、ハリマに質問してきたのが独巡洋戦艦・シャルンホルストである、シャルンホルストは外見から落ち着きがにじみ出ていてまさに大人の女性といった感じ、グラフ・シュぺーは一見なかなかのプロポーションをしているように見えるが実際は凹凸が無いぺったん娘である、彼女は変装が得意なのだ。
「?どうしたのシュぺー?」
「なーんか今すーごく不快な気分になった…」
「…ところでお二人はなぜここに?もっと静かな席に座ればいいのに」
ハリマは四人の座っている六人席の空いている席に座りながら聞いた。
「ん?あーそれはねあの二人見てると面白いのよ、表情ころころ変わって面白いよ〜?」
「私はあまり気にしないし、さっきまではこうじゃなかったから」
シャルンホルストは微笑を浮かべながら紅茶を少し飲んだ、こういった一挙一動が優雅で様になっている。
ハリマは少しうらやましいと思った、ハリマも落ち着いているがシャルンホルストの落ち着きとは違うような気がした。
「あーそういえばソブレメンヌイに会わなかった?」
「…いいえ、どうかしたの?」
少しシャルンホルストに見惚れているとグラフ・シュぺーが話しかけてきた。
「や、あたしたちがここに来た時彼女慌ててここから出てったのよね、ちょっと気になって」
「…それなら彼女三丁目にのスーパーに行ったんじゃないの?あそこ今日台所用洗剤と、トイレットペーパー半額だから」
「「えっ!?」」
ハリマのその言葉に横で口論していた二人がいきなり振り向く。
「しまったこの馬鹿に世の摂理を教えていたら忘れてた!」
「誰が馬鹿よこの間抜け!店長会計お願い!」
慌ててレジに向かう二人、がどっちが先に会計をするかでまた口論になる、ケストレルは苦笑いしながら応対するが嫌そうではなさそうだ。

しばらくしてハリマの紅茶が運ばれてきた、彼女は軽く一口。
「ん…美味しい」
「おー様になっとりますな」
「シュぺーそれじゃまるで中年男性よ」
グラフ・シュぺーが茶かすがシャルンホルストが窘める、オヤジ臭いとか言わないあたりが彼女らしい。
「ふふーん♪いやーここの紅茶は美味いねー」
グラフ・シュぺーは紅茶をすすりにんまりしながら呟く。
「…本当、美味しい」
「そうね、お茶受けもちょうどいい甘さで」
ゆっくりとした時が流れる二ミッツとクズネツォフがいなくなったので店内はいたって静かだ。
「…ふう」
ハリマは軽く息をついた、この時間がとても心地良いこの時間がずっと続けばよいと思う、友人がそばにいて、毎日が楽しくて。
世界は回る穏やかに。

了…ではない

「…ところでハリマ気になってることがあるんだけど」
「…ん、何?」
グラフ・シュぺーが話しかけてきたのでそちらを向く、彼女は店の外を指さしていた。
「あれは?」
見れば店の窓に一人の少女、超兵器・超巨大光学迷彩艦ストレンジブラッタが張り付いていた、涙を流しながら。
「…あら、居たのストレンジブラッタ、光学迷彩使っているからわからなかった」
「居ましたよ最初からずっと!てゆうか光学迷彩使ってません!しかもさらりと酷いこと言いますね!それに何終わらせようとしてんです!危うく登場せずに終わる所だったじゃないですか」
「…いつの間に居たの?」
「最初からです!あなたが食器並べているところから!後あの家あなたの家じゃなくて私の家ですからね!あなた居候って設定ですからね!」
「…まあいいじゃないそんな細かいこと、むしろ私の家って設定にした方が自然」
「細かいか?細かくないわ!何普通に私の家奪おうとしてるのです!?」
「…お茶が美味しい」
「無視するなー!!」
一人の少女の悲痛な叫びが『青い鳥』に木霊した。

今度こそ了


舞台裾(あとがき)
天鶴「えー書き終わりました、一つ」
ハリマ「…御苦労さま」
天鶴「こういうの初めてなので自信が無いです」
ハリマ「…とりあえずシャルンホルストをメイドにしなかったのは褒めてあげる」
天鶴「このような感じで書いていきますのでよろしくお願いします、ほかにもエースコンバットの小説も書くつもり」
ストレンジブラッタ「…というか、私の扱いあのまま!?」
天鶴「うん」
ストレンジブラッタ「しくしくしく(泣)」
天鶴「えーこの娘が泣いたところで、読んでくれた皆様、もしもこの軍艦を書いて欲しいというご希望がありましたら掲示板のほうへ、最後に暁天さんありがとうございました」
ハリマ「…じゃさようなら」
ストレンジブラッタ「うわーん(大泣)」



 2007/06/27:天鶴さんから頂きました。
秋元 「哀れゴキ──いやなんでもない」
アリス 「……ある意味超兵器?」

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