外洋機動艦隊 外伝 −空母雛菊音楽隊−




 -夜、雛菊音楽隊第一合奏室にて-


「さて、一週間後は本番だ」隊長が言った。今は練習後に毎日必ずするミーティングの時間だ。
「皆も知っての通り、今回は横須賀周辺の楽団や学校も出演する」
「そして、本番が終わってからはしばらくの間は自由にしてもらって構わない。屋台を廻るのもよし、ほかの団体の演奏を聞くもよし。詳しい時間は追って連絡する。とにかく、楽しんでくれ。以上、解散」
 久々の本番を皆楽しみにしている。

 その中でも特にはしゃいでいるのが約一名。幡村である。
「ヒャッハー!久しぶりの本番だな、テンション上がるぜ!遊びまくってやるぜ!!」
全員がそちらを向く。
「おいコラ幡村」
そこに冷静に突っ込む山内。
「折角ほかの楽団の演奏が聞けるんだ、遊んでないで聞いておまえも学べ」
「な〜に堅いこといってるんだよ。もっとパアーッと楽しまなきゃな、な!?」
「ダメだコイツ、もう手遅れだな……」
「……(>_<)b」
 途端に全員どっと笑う。
 本番前に限らず、ミーティングの後は三人の漫才もどき、、、、、の時間だ。
「(あの三人のお陰だな。ここがこんなに和やかなのは)」
 彼らを見て、隊長はそう考えた。




第三話 変奏曲第二番“非日常的な一日”

[こんな日、いつぶりだろう]




-二〇五二年〇八月〇五日一九時一九分、第一個人練習室にて-


「さて、と」宇和島が帰ってすぐに師匠から借りていた楽器を定期便で送り返した山内は、早速練習していた。新しい楽器に慣れるために。そして、一週間後の本番に向けて。
「音程……癖がない。音色……素直だ。ダイナミクスレンジ……広い。音が割れにくいのに、抵抗が大きすぎたりもしない。……うん、良い楽器だ」
 そこに、「リーダー、ちょっとええ?」「少しいいですかぁ〜?」二人、入ってきた。
 前者は中平なかひら 龍蒼たつお、階級は大尉。後者は鷹崎たかさき あや、階級は小尉。それぞれ1stプルトと3rdプルトのトップメンバーだ。
「どうしたんですか、りゅうさんと彩ちゃん」山内が応える。
「あのぉ〜、らいしゅーの本番のことなんですけどぉ〜、えんそーが終わったらぁ〜、かずきさんはどうするんですかぁ〜?」
 大抵、楽器の音と話し方は似るものである。しかし鷹崎は例外で、こんな脱力系の話し方をするが、楽器の音はそうではない。みんな「どうして話すときと楽器を吹くときであんなに違うんだろうか」と不思議に思っている。
「うーん、今のところ何も考えてないけどな。何かあるの?」山内が質問返しすると、今度は中平が答えた。
「まだ中身は何も決まっとらへんねんけど、パート連中みんなして祭をまわらへんか、って考えとるんや。せやさかい、みんなしてパーリー(パートリーダーの略)にええかどうか聞いてみようって事になったんや」で、わいと彩ちゃんがリーダーに聞く役になったんや、と中平が付け加える。彼は大阪出身で、いつも大阪弁で話している。
「そうなんですか」山内が淡々と答える。
「どない?ええと思わへんか??」どうやら中平は行きたくて仕方無いらしい、どうするん?なあ、どうするん?と急かしている。
「うーん……」山内はしばらく考えていたが、「よし、そうしましょう」と決めた。
「ほ、ほんとおにいいんですかぁ?」鷹崎が首を傾げながら聞く。
「どうして嘘をわざわざ言う必要があるんだい。もちろん良いよ」パートのみんなとまわるのも楽しいだろうし、と山内は言う。
「よし、決まりや。ま、たぶん細けえ予定やこ決めんとまわったほうが楽しいさかい、適当にいこうや」
「そうしましょう」山内が同意すると、「はぅ〜、いいですねぇ〜。すっごく楽しみですよぉ〜」と、鷹崎も答えた。

 二人が出ていくと、山内は練習を切り上げ、工作室を覗いてみることにした。
「さて。どんな所かな」彼は鼻歌混じりで楽器を片付けた。

 山内がIDカードを通し、中の電気をつけると、「……おお!」そこには町工場のような一室が広がっていた。そこには、大小様々な工作機械が整然と並んでいた。
「これは……、ボール盤、旋盤、……超音波加工機まである。しかも全部NC(数値制御)方式だ」
 それらに目を奪われつつも、山内は奥に進む。そして、目当ての場所へ。
「ええっと、『第三個人実験室』は……ここか」ゆっくりとドアを開けて、中を見る。何か音がしている。よく見ると、どうやらコンピュータの電源が点いているようだ。電気をつけると、「わっ!」驚いてしまった。
 そこにあったのは、六畳ほどの広さの部屋。そこには二台の机と、一台の工作台があった。机のうち一方にはコンピュータがあった。そして工作台の奥にある棚には、「オシロスコープ、安定化電源装置、……こっちにはファンクション・ジェネレータも」これでもか、と言わんばかりの種類の計測器具類があった。
 山内はパソコンに目をやり、ディスプレイをつける。するとそこには、一つのウインドウが開いていた。
「……何だ?テキストデータの様だが」そこには、こう書いてあった。
「なになに、『連絡事項。1:この部屋のコンピュータ関連以外のブレーカ容量は、100Aです。2:ディスプレイの電源のみを落とし、このコンピュータ本体の電源は落とさないでください。3:このコンピュータからTAに参加していただく可能性がありますので、その点はご了承下さい。なお、宇和島への連絡は、このコンピュータをご利用願います。4:この部屋の利用料金は月額一万円で、給料から自動的に引かれます。5:使用部品はこのコンピュータにて注文することができ、部品代は全てTAから支給します。  宇和島より』……って、えぇっ!?」更に驚いた。要するに、月一万円払えば、部品代は要らないってことだ。しかも自由に注文できる。
「……天国だな、ここは」山内は呟いた。

 一通り機具をいじっていると、山内は音楽隊隊長に呼ばれた。
 彼の名は尾原おはら たかし。階級、中佐。雛菊音楽隊が結成されたときからの古参、つまり雛菊音楽隊と共に歩んできた人物の一人である。
「何かご用でしょうか、隊長」山内は敬礼しながら言った。
「うむ。わざわざ出てきてもらってすまん。実は、今度の本番の次の週に一つ本番が入ったんだよ」やれやれ、という表情で尾原は言った。「そこで演奏する曲のことなんだが、全て今回と同じ、というわけにはいかんのだよ。何かいい曲はないかな?」
「どのようなジャンルでしょうか。あと、どんな雰囲気の曲でしょうか」山内はすかさず質問する。
「クラシック、または吹奏楽オリジナルの曲、要するにおまえさんの得意分野だ。曲調は、華やかなものか、明るいものだ」山内は、音楽の中でもこのようなジャンルに明るい。しかしポップスになると全く分からず。定期演奏会のプログラムを考えるときも、主に一部の方だ(二部構成の場合、大抵一部がクラシカルステージ、二部がポップスステージである)。
「練習期間から考えると、」山内が考えながら言う。「スーザの『星条旗よ永遠なれ』とか、ちょっと冒険したとして、映画『遠すぎた橋』のエピローグのマーチとかでしょうか」
「なるほど。いいな、その二曲でいこう」尾原は答えた。
「え……。そんなに簡単に決めちゃって良いのでしょうか」山内が心配そうに聞く。
「大丈夫だ、問題無い」尾原はそう言い切った。
「それなら良いのですが。ところで」と、山内は話題を切り替える。「今年の定期演奏会ですが、デ・メイの『交響曲第一番 指輪物語』を今年こそ全曲しましょうよ」
「……そうだな。今年はしよう」尾原は言った。苦笑しながら。「前々から散々全曲したいと言ってたからな、お前は」ちなみに、山内が言っていた『交響曲第一番 指輪物語』の第一楽章“魔法使いガンダルフ”は、ここの十八番である。ただ、全曲するととても長いため(全五楽章構成で、総演奏時間は約45分である)、実際に全て演奏することには今まで踏ん切りがつかないでいた。
「ええ、勿論。なんせ、この音楽隊にすごく合っているんですから」ま、他にもプッチーニの歌劇『トスカ』の第一幕とか、保科ほしな ひろしの『風紋』とかもですけどね、と山内は言った。ここの音楽隊の売りは、音の厚さと響き、そして表現の豊かさである。故に、歌曲や映画音楽などが得意分野なのである。
「やれやれ。おまえさんには敵わんよ」、と尾原はお手上げの格好をしつつ言った。「どこでそんなたくさんの曲を知ったんだ?俺にも教えてほしいんだが」彼は頼んだ。
 しかし山内は、「そんなこと聞かなくても。インターネットです」と、簡単に答える。
「動画投稿サイトって奴か?」尾原が聞き返す。
「そうです。そこなら、様々な団体の演奏が沢山聞けますからね」楽曲数やジャンルが多いのも特筆すべき点です、ただ演奏の善し悪しはピンからキリまでですが、と山内は得意げに言った。
「なるほどな。今度教えてくれないか?」尾原が聞くと、山内は「勿論です、隊長」と満面の笑みを浮かべながら答えた。


 尾原との打ち合わせをすませた山内は、自分の部屋に戻り、CDを聞くことにした。曲は、『指輪物語』。スコア(「総譜」とも。全ての楽器の楽譜が書いてあり、指揮者はこれを見ながら指揮をする)も本棚から引っ張りだしてくる。演奏しているのは、日本陸軍第一中央音楽隊である。こちらも音の厚みに定評があるが、世間では雛菊音楽隊の方が僅かだが勝ると言われている。
 彼はしっかりと聞いていた。
「…………ここのファンファーレの所は重厚に、か?……いや、それよりも荘重に、威厳を持っての方が良いかもな。なんてったって魔法使いガンダルフだもんな」「ここは走って逃げてるシーンだからな……。テンポは指定より少し早い方がそれっぽいか?」「ここのピッコロは重要だな」……とかぶつぶつと呟きながら。




第四話へ続く







後書きという名の何か

 どーも。小鶴巡人です。
 また懲りずに今度はXBOX360ごとAC6を買いました(ぇ
 そしてクリアしました!(何
 ちなみにAC04はしてないけど、AC5もクリアしました(殴
 ……全く、何やってんですかね、俺は。まあいいです。
 もし作中にでてくる曲や用語が詳しく知りたい場合は、ググってみてください。そんな人居ないと思うけど。たぶん。
 なんかこれから更新頻度や話の進む早さが乱気流に巻き込まれた飛行機のようになる気が……
 まあ、我慢してください(待て

 それではまた次回お会いしましょう!



 2012/06/15:小鶴巡人さんから頂きました。
「大阪弁を扱えるとは羨ましい! キャラのレパートリーが増えますからねぃ。私は横須賀弁って言うか神奈川東部弁?なら扱えます(キリッ」
「……○○じゃん?ですね」
「方言らしいネ」
「しかしいいなぁ宇和島のサポートは、祖湯と交換してくれねぇかな?」
「いやいろいろやってくれてるジャン、ちゃんと」
「冗談だ」

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