外洋機動艦隊 外伝 −空母雛菊音楽隊−




 ……覚醒までまだ時間が掛かりそうだ。いくらその楽器が好きでも、まだ互いに触れ合っている、、、、、、、、、、時間が短すぎる。
 ある声がそう呟く。
 しかし、まだどう転ぶかは分かりません、直接彼ら、、に言うことはできませんがね。
 別の声が言う。

 ……今はただ、じっと観察していましょう。
 そう別の声が締めくくり、この会議はお開きになった。




第五話 前奏曲第四番“技術屋の音楽家”

[技術屋も楽しいですがね]




 -二〇五二年〇八月〇六日一〇時〇九分、空母雛菊メンテナンスデッキにて-


「……この機体か」
 山内は一人、TAのノートパソコンとケーブルを持って宇和島に指定された場所に来ていた。
 そこには既に、解析する対象のプログラムデータが入ったフランカー・ゼロが来ている。
「さて……始めますか」
 パソコンを起動、パスワードを入力して山内の個人アカウントにログインする。壁紙はフランカー・ゼロの三面図を背景に、T-10からSu-37jkEまでの、アサルト系を含むフランカーシリーズがずらりと並んでいる。どうやら自分で作ったらしい。
 ゼロとパソコンをケーブルでつなぐと、プログラムが自動起動、コマンド入力画面が現れる。 それを確認すると、手際よくコマンドを入力していく。キーボードを入力する音が、一人しかいないメンテナンスデッキに響く。

 五分ほど経っただろうか。パソコンからプログラムのコピー完了を知らせる音がする。それを確認した後にケーブルを抜き、パソコンを閉じる。
 そして、備え付けの内線で作業が終わったことを伝え、山内は自室に戻った。


 ……原因はすぐ見つかるだろう、と考えながら。


 -二〇五二年〇八月〇六日一一時三七分、山内の部屋にて-


 予想とは、外れ易いものである。
 山内はディスプレイとにらめっこしていた。
 誤作動の原因についてプログラムに心当たりがあったため、フェイズ2ブロック11のプログラムと、自分で保管していたフェイズ0ブロック0、つまり試作品の最終調整を終えたもののプログラムを比べて、そこから原因の箇所を洗い出そうとしている。しかし……
「……参ったな。違う記述法のところが思った以上にある……」
要するに、正常に動作する箇所もプログラムの書き方が異なるために異なる箇所として差分出力されてしまっていたのだ。プログラムというものは、評論文や小説に書き手の個性があるのと同じようにどうしても書いた人の個性が出る。だから、差異ができてしまう。仕方無く、その箇所を一つ一つ根気よく見ていき、書き方が異なるものの結果的には同じものを排除していっている。
 しかし、差分データの総件数は328件。まだ48件目である。しかも、間違っていた箇所はまだ見つかっていない。
「……んー」
 小さく伸びをして、背もたれに体を預ける。
「…………気晴らしにでも行くか」
 そう呟くと、パソコンを休止状態にし、部屋の角に置いてあった楽器のケースを持って、個人練習室へと向かった。


 -二〇五二年〇八月〇六日一一時五〇分、第二個人練習室にて-


 練習室に着くと、他の部屋で何人かが練習している音が聞こえてくる。ただ、いつものそれよりは少ない。なぜなら、今は昼前。食堂に昼食を取りに行っている人が多いからだ。そんなことをよそに、「さて、今日は何をしようかな?」と、鼻歌混じりに楽器を組み立てる。
 組み立て終えると、鞄から楽譜を引っ張り出す。それは、音楽隊のものではなく、趣味のもの。山内は気に入った曲を耳コピして楽譜にし、気晴らしなどの時に吹くのである。
 選んだのは、アニメやゲームの曲。意外に思われるかもしれないが、理由は本人曰く「動画サイトで適当に見ていたら見つけて、曲として気に入ったから」だそうだ。実際、山内はほとんどアニメを見ない。選んだ曲は、純粋に音楽として気に入った曲なのである。
 ゲームは結構する方だが。
「さて……」大きく息を吸い、唇を慣らすためまずはロングトーンを始める。一音出したところで、「今日は凄く調子が良いな」とこぼす。それだけでも、今日のことの慰めにはなっているようだった。
 ロングトーンを済ませると、引っ張り出した楽譜を譜面台に乗せる。
 ふう、と一息つくと、その曲を演奏し始めた。

 そこから、数曲を30分ほど演奏しただろうか。さすがにお腹が空いてきたので、山内は楽器を片付けることにした。片付け終えると、山内は部屋に一旦戻り、楽器を置いてから、食堂に向かった。


 -二〇五二年〇八月〇六日一二時三五分、雛菊食堂にて-


「おーい、山内ぃー」
食堂に入るなり、呼び声が聞こえてきた。たまたま、幡村が入口付近の席に座っていたのだ。
「ん、幡村か。隣空いてるか?」
「空いてなかったら呼んでねぇよ」
「ま、そりゃそうか。ちょっとご飯頼んでくる」
「りょーかい!」とびっきりの笑顔でそう答えられると、少しは元気をもらえた気がした。

 山内が食事を持ってきて席に着くなり、幡村が口を開く。
「なあ、山内よぉ」
「なんだ?」
「何か疲れた顔してるぜ」
「……そうか?」
 怪訝な表情で頷き、聞く。「どうしたんだ?」
 顔をのぞき込むような格好でそう聞いてきた幡村に向かって、山内は笑いながら答えた。
「大丈夫、そんなに心配される必要はないよ」
「そっか。まあ、無理すんじゃねえぞ?来週は本番なんだからな」
「わかってるさ」演奏に支障をきたすような事じゃないしね、と付け加えて言う。
「本当か?なら良いんだけどよ」

 その後は、お互い黙って食事を取っていたが、幡村が先に食べ終えて席を立とうとした。そのとき、幡村がふと口を開く。
「……あ、そうだ。なあ、山内」
「何だ?」
「たまには遊べよ。仕事ばっかりしてちゃ煮詰まっちまうぜ?」
「……ああ」ありがとう、と心の中で呟く。

 幡村の一言が、何かの鍵だったのかもしれない。




第六話へ続く







後書きという名の何か
 毎度ありがとうございます。そしてたいっへん遅くなりました!小鶴巡人です。
 まずはご報告を。
 無事、大学に合格する事ができました!これで思いっ切り遊ぶことができます!(違
 冗談はさておき、今後もぼちぼちと書いていこうと思いますので、どうかよろしくお願いします!
 そしていきなり書くペースがががが


 それではまた次回お会いしましょう!



 2013/05/09:小鶴巡人さんから頂きました。
「俺も、本編は見た事・プレイした事がないが曲がいいので持っている、ってCDが山ほどあるぞ」
「……多くがそうですね」
「そういうもんだな」
「そういうもんだ!」

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