2038ATCは、日本軍列車兵器の中でも異彩を放つ、装甲列車砲である。
2037年、自衛隊列車軌道(現・軍列車軌道)の整備が進む中、防衛省は、低レーダー感度下における敵の接近を危惧した。この頃多発していたテロは、大きなものから小さなものまでさまざまで、領空侵入による直接的な攻撃は成功率が低かったものの、低レーダー感度下にて防空圏を破られる事はしばしばあった。そこで、防衛省が開発を指示したのが列車型沿岸移動砲である。
計画が発表された当時は「列車砲ドーラの再来か?」「巨大すぎて運用不可能」「無駄」などの見出しが新聞を飾ったが、公開された概要はまったくの逆であった(列車砲=80cm砲を装備した“グスタフ/ドーラ”という偏見がマスコミにあった為)。
列車砲なのには変わりないが、まず第一に「分解せずに移動可能」が絶対条件で、「軌間可変台車を装備し、三六軌間狭軌から標準軌まで走行可能」「一般軌道を走行し、駅のホームを通過可能」と在来線に乗り入れる事を視野に入れ、「対空用の特殊砲弾を発射可能」と、目標は艦船や地上施設ではなく、低レーダー感度下における対空砲的な運用を匂わせていた。
2037年06月15日、防衛省が白羽の矢を立てたのは、優秀な列車兵器の開発実績がある横須賀重工。届いた仕様要求書の主な内容は、「列車兵器である事」「一般列車軌道も走行可能」「軌間可変台車装備」「分解せずに移動可能」「アイアンホイール製300mmカノンを搭載」などで、横須賀重工の技術者の中には、「防衛省は浪漫が分かる」と運用方法以前に列車砲という響きに惹かれ、やる気が向上した者も居たという逸話もある。
結果、開発は順調に進み、2038年08月22日には試作車両の『YTG-001試作管制車』及び『YTG-002試作列車砲』が完成し、演習場へ引きこまれた鉄道軌道を伝って数々の試験を行い、2038年12月23日に量産1号車が完成した。
尚、『対空炸裂弾』はこの2038ATCが世界初で、のちに艦艇用の39式対空炸裂弾を完成、2045年には新型の45式対空炸裂弾を配備した。これの影響を受けたのが、アメリカ軍のタイタンだと言われている(タイタンはグレイプニルより更に発展して、レールガンを装備したクローラー走行型の兵器だった)。
●列車砲
列車砲と言えば、80cm砲を搭載した、第二次世界大戦のドイツが保有していたグスタフ/ドーラが思い浮かぶが、かの兵器は移動に分解を必要とし、組み立てに約六週間を要して、尚且つ一日に最大14発程の発射が限度であった。
しかし、それでは迅速な移動が必要となる局面ではとても使えない上、80cmという超大口径を必要とする攻撃目標は、沿岸移動砲としてのグレイプニルにはない。しかしマスコミは、グスタフ/ドーラにばかり目が行き、こぞって間違った予想図とそれに対する批判の数々を挙げていたが、インターネット上ではだいぶ馬鹿にされていたという事実もある(一番笑えたのは、陸自の隊員がドーラ列車砲のような物体を運用しているイラストと、それを大真面目に批判している記事だとも)。
2038ATC グレイプニルの主目標は航空機であり、あるいは対地目標、あるいは海上目標で、グスタフ/ドーラのように要塞を相手にする訳ではないのは、日本の状況からして明白だったのだ。
●射撃姿勢
2038ATCは自動装填装置を装備している為前後に長く、射撃にはある程度の旋回スペースを必要とした。但し、砲塔の位置自体が高いので、多くは塀を乗り越えて旋回可能だとの事で、場合によっては塀や金網を除去する事も已む無しとし、鉄道会社に対する保障体制も整えていた。
とは言え、基本的には自衛隊列車軌道(軍列車軌道)上での射撃が前提となる為特に問題はなく、また、主に標的となりうる空港や軍港の軌道周辺は広い為、やはり問題はなかった。
その上で、この2038ATCには別の目的もあったので、沿岸移動砲としての役目はあくまで「基本的な運用」であって建前に近い。
●対空炸裂弾
この兵器がのちの日本軍に一番貢献した部分は、恐らくこの対空炸裂弾だろう。
対空炸裂弾は、内部に無数の金属球を仕組んだ文字通りの炸裂弾だ。砲弾の速度に、砲弾が炸裂した時の加速がプラスされ、金属球は凄まじい速度で広範囲に広がり、殲滅範囲内の航空機を高確率で葬る事が可能である。砲弾が大きくなる程に内蔵される金属球も増える為、大口径砲の対空炸裂弾は殲滅範囲も広くなる。
2038ATCの場合は300mm砲弾なので、殲滅範囲自体はかなり広い。
●実際の役目
対テロ戦争に発展する以前は、基地に集中配備され十数機程の敵航空機を葬ったが、対テロ戦争に突入してからは役目が一転した。前線への投入である。
敵地に合わせて台車を可変させた2038ATCは、列車軌道上にて大量の砲弾を発射し、密集する敵地上兵器を破壊、接近する敵航空機を拠点防衛兵器として迎撃、時には対空ミサイル車両を牽き、レーダー車両を牽きと、攻撃面でも支援面でも重宝し、射撃→移動のプロセスもかなり素早くこなせた(但し、移動しながらの射撃は不可能であったが)。
また、対テロ戦争中の日本軍にとって、2038ATCを除けば2020AHV ヘルデイズの210mm榴弾砲、次いで2028AHV
エレファントの180mm榴弾砲が最大口径だったのだが、2038ATCの登場のおかげで圧倒的な火力を得る事ができ、地上戦における勝利の一因となったとも言われている。
●使用砲弾
使用するのは通常の「榴弾」 地下施設貫通攻撃用の「突撃徹甲榴弾」 広範囲破壊用の「拡散弾」 対装甲探知破壊弾である「SADARM弾」 対艦用の「徹甲弾」 対空用の「対空炸裂弾」など。
●編成
基本は動力車兼管制車の「TG-001」と列車砲「TG-002」を接続した物が「2038ATC グレイプニル」となり、その後方には弾薬輸送車「TG-003」と燃料供給車「TG-004」を連結、輸送用の台車や拠点防空用のT.O.L.S.編成車両(CIWSとアースムXI、レーダーを装備した編成。TOLS-001)を繋ぐ事も可能。
編成の基本形は、「TG-001」「TG-002」「TG-003」「TG-004」「TOLS-001」「TG-003」「TG-002」「TG-001」である。
●制限
列車からの射撃になるので、どうしても機動面で制限がある。鉄道軌道がなければ進出できないのだ。逆に言うと、鉄道軌道が整備された場所では強い。戦艦の主砲クラスの砲を、陸で運用できるところにメリットがある。そしてやはり、デメリットがある為、使いどころを間違えないようにしなければならない。
●2053年クーデター以前現在・保有数
TG-001/87両、TG-002/120両、TG-003/160両、TG-004/174両。管制用の高価な電子機器はTG-001に集中している為、TG-002以降は比較的安く、部隊によってはTG-002を2両連結している。
対テロ戦争時には、TG-002が5両や6両といった長蛇の列も見られたと言う。
タイプ |
横須賀重工業 【YOKOSUKA-HEAVY INDUSTRY】
2038ATC グレイプニル 【2038ATC Gleipnir】 |
用途名 |
装甲列車砲(ATC) |
年式名称 |
38式列車砲(38列砲:サンハチレツホウ) |
全長 |
12m(TG-001)
17.67m(TG-002) |
全幅 |
2.9m |
全高 |
4.1m(TG-002) |
自重 |
64,100kg(TG-002) |
最高速度 |
130km/h(通常編成時) |
航続距離 |
1500km(最適速度でTG-002とTG-003を1両ずつ牽いた場合) |
エンジン |
横須賀重工製 TD-T004 ディーゼルエンジン(TG-001) |
乗員 |
3名(TG-001)
3名(TG-003) |
武装 |
H300 300mmカノン(TG-002) |
編成可能車両 |
TG-001 |
動力つきの先頭車両。射撃管制を行う。 |
TG-002 |
無人の列車砲本体。 |
TG-003 |
弾薬輸送用の車両。再装填補助機構を持つ。 |
TG-004 |
燃料を搭載した車両。航続距離の増加に使用する。 |
連結器が他の軍列車と同規格な為、専用の車両以外も連結可能。 |
最新価格 |
TG-001 |
約4億1000万円 |
TG-002 |
約1億3900万円 |
TG-003 |
約1500万円 |
TG-004 |
約450万円 |
公開日:2006/05/02
これは、大戦略パーフェクト2.0で私自身が使う為に作った物です。
戻る
トップ
|